WHITE PAPER|その他製品 × 製造・生産
小ロットの注文が
増えても、
工場は稼げているか?
印刷会社のための
デジタル印刷への設備投資と生産体制最適化に向けた実践フレームワーク
小口化 短納期化 準備時間
1件あたりの 受注から出荷まで 印刷以外に要する時間の比率が上昇
印刷部数の減少 の時間の短縮
本稿の内容 注文部数別の準備時間比率(概念図)
1万部以上
1 小ロット化が「収益課題」になった理由
3,000部
2 生産体制が整うまでの道のり
1,000部
3 設備投資を阻む構造的な壁
300部
4 生産体制最適化の4層フレームワーク 100部以下
準備時間比率:高 準備時間比率:中 準備時間比率:低
5 セルフ診断と次のステップ ※概念図であり、実際の比率は設備・品目・工程により異なります
アクセンチュア株式会社 2026年 外部公開版
Supply Chain & Engineering(SC&E)
SupplyChain_Engineering@accenture.com
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EXECUTIVE SUMMARY
注文の小口化・短納期化に対応する生産体制の構築が必要
印刷の需要は、デジタル化の進展により総量が減る一方、注文の小口化と短納期化が進んでいます。オフセット印刷は大ロット
では効率が高いものの、版の作成や色合わせなどの準備に時間がかかり、小ロットでは採算が合いにくくなります。
本稿では、印刷会社がデジタル印刷機への設備投資を判断し、オフセット印刷と組み合わせて工場全体の生産体制を最適化
するための考え方と、実践的なアプローチを整理します。
Why 1
小ロット化は「営業の課題」ではなく「生産体制の課題」
注文の部数が少なくなるほど、印刷そのものの時間に比べて、版の作成、色合わせ、機械の調整といった準備の時間の比率が大きくなりま
す。稼働率が高くても、収益につながらない準備時間が増えている場合があります。
デジタル印刷機は版が不要で、小ロットや可変データの印刷に向いています。一方、デジタル印刷機には大規模な設備投資が必要であり
、大ロットではオフセット印刷が有利です。注文の構成に合わせて、どの設備で何を刷るかを決める必要があります。
図1 印刷のバリューチェーンと収益悪化のホットスポット
受注 制作・準備 印刷 後加工 出荷
小ロット オフセット
版の作成 断裁・製本 小口配送
の注文 印刷
短納期の デジタル
色合わせ 加工の外注 在庫
要求 印刷
機械の
見積の精度 データ処理 検品 納期管理
切り替え
収益への影響:大 収益への影響:中 収益への影響:小
図1:小ロット・短納期の受注や版の作成・色合わせ・機械の切り替えが、収益に大きく影響します(概念図)
小口化 短納期化 準備時間
1件あたりの 受注から出荷まで 印刷以外にかかる
印刷部数の減少 の時間の短縮 時間の比率の上昇
※図1と表紙の図は概念図であり、部数と準備時間の関係は設備・品目・工程により異なります。
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図2 小ロット時代の収益改善を阻む3つの構造的な壁
第1の壁 第2の壁 第3の壁
原価 投資 工程
準備時間 ・ 見積 ・ 稼働率 設備 ・ 回収 ・ 品質 振り分け ・ 後加工 ・ 人材
・準備時間が原価に反映されていない ・デジタル印刷機への投資負担が大きい ・設備の振り分けが担当者の経験に依存
・ロット別の採算を把握できていない ・投資回収期間の見通しが立たない ・後加工がボトルネック
・稼働率が高くても利益が薄い ・色・紙の再現性に対する懸念 ・デジタル印刷機を扱う人材の不足
採算性の低い注文を把握できていない 投資の判断ができない 工場全体で効率化できない
図2:原価・投資・工程の3つの壁が、小ロット時代の収益改善を難しくしています
Why 2
注文構成を起点とした設備投資・工程の設計
デジタル印刷機の投資効果は、どのような注文をどれだけ移せるかで決まります。ロット・品目・納期別に注文の構成を分析し、オフセット印
刷とデジタル印刷の損益分岐を見極めることが出発点になります。
設備を導入するだけでは、後加工や出荷が新たなボトルネックとなる可能性があります。受注から出荷までの工程を通して、注文の振り分
けと生産計画を設計する必要があります。
図3 小ロット時代の生産体制が整うまでの道のり(概念)
開始 1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 9ヵ月 12ヵ月 18ヵ月~
1 2 3 4 5 6 7
注文構成 ロット別の 損益分岐 デジタル印刷機 振り分け 後加工・出荷 生産計画の
の分析 原価把握 の試算 の導入 ルールの運用 の最適化 継続的な改善
分析と投資判断 導入と最適化
図3:注文構成と原価の分析を先に進め、導入後は振り分けと後加工の最適化を進めます
設備選定の前に、注文別の採算性を把握する必要があります。
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Why 3
設備投資は「工場だけ」では判断できない
デジタル印刷機の投資判断には、営業の受注構成、見積の考え方、工場の工程設計が関わります。営業と工場が共通の原価基準に基
づいて判断できる仕組みが必要です。そのためには、次の3つの取り組みが必要です。
ロット別の原価の可視化
1 準備時間を含めて、ロット・品目別の原価と採算を把握します。
損益分岐に基づく投資判断
2 注文の構成から、デジタル印刷機の台数と配置を決めます。
工程全体の最適化
3 注文の振り分けルールと後加工・出荷の工程を見直します。
図4 従来の生産体制と目指す姿
従来の生産体制 目指す姿
稼働率の高さで工場を評価する ロット別の採算で工場を評価する
部数と単価を基準とした見積 準備時間を含む原価に基づく見積
担当者の経験に依存した設備の振り分け 損益分岐に基づく設備の振り分け
老朽更新を基準とした設備投資 注文構成の変化に応じた設備投資
印刷工程の効率化が中心 受注から出荷までの工程全体を最適化
アプローチ
注文構成・原価を起点とした設備・工程の再設計
ロット・品目・納期別に注文の構成と原価を可視化し、オフセット印刷とデジタル印刷の損益分岐を見極めます。そのうえで設備の台数と
配置、注文の振り分けルール、後加工・出荷の工程を一体で設計します。それを支えるのが次の4層の仕組みです。
図5 印刷工場の生産体制最適化 4層フレームワーク
Layer 4 経営・投資判断
設備投資 工場の役割 外注方針
設備投資と工場の役割分担を全社で決定
Layer 3 工程の最適化
後加工 出荷 人材配置
後加工・出荷を含めた工程全体の設計
Layer 2 生産計画と振り分け
振り分け 生産計画 納期管理
損益分岐に基づく注文の振り分け
Layer 1 原価の可視化
ロット別 品目別 準備時間
ロット・品目別の準備時間と原価を把握
図5:原価の可視化を土台に、振り分け・工程・投資判断を積み上げます
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図6 印刷工場の生産体制最適化 実行ロードマップ
STEP 1 0~6ヵ月 STEP 2 6~18ヵ月 STEP 3 18ヵ月~
注文構成と 設備投資と 工程全体の
原価の可視化 振り分けの設計 最適化と定着
注文構成の分析 設備の台数と配置 後加工・出荷の改善
ロット別の原価把握 振り分けルールの策定 生産計画の改善
損益分岐の試算 見積方法の見直し 人材の育成
収益性の高い注文の明確化 設備投資の効果を見極める 小ロット生産の採算性向上
図6:可視化・設計・最適化の3段階で、小ロット時代に稼げる生産体制をつくります
STEP 1 どの注文で稼いでいるかを把握する
ロット・品目・納期別に注文の構成を分析し、準備時間を含めた原価と採算を把握します。オフセット印刷とデジタル印刷の損益分岐を試
算します。
STEP 2 設備と振り分けのルールを決める
注文の構成から、デジタル印刷機の台数と配置を決めます。損益分岐に基づく振り分けルールを定め、準備時間を反映した見積の考え方
に見直します。
STEP 3 工程全体を最適化し、定着させる
後加工と出荷の工程を見直し、新たなボトルネックを解消します。生産計画を継続的に改善し、デジタル印刷機を扱う人材を育成します。
期待する成果
段階ごとに得られる成果
短期(0~6ヵ月) 中期(6~18ヵ月) 長期(18ヵ月~)
→ 注文構成の把握 → 設備投資の計画 → 準備時間の削減
→ ロット別の原価把握 → 振り分けルール → 短納期への対応力向上
→ 損益分岐の試算 → 見積方法の見直し → 小ロットの採算改善
※成果の時期は目安であり、対象範囲や状況により異なります
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セルフ診断
あなたの工場は、小ロットの注文でも採算を確保できていますか?
以下の項目に1つでも当てはまる場合、注文が増えても収益性が改善しない可能性があります。
図7 印刷工場の生産体制 セルフ診断チェック
ロット別の原価と採算を把握していない
要対応レベル
→ 優先的な対応をご検討ください
見積に準備時間が反映されていない 0
→ 優先的な対応をご検討ください 現時点では大きな懸念なし
設備への振り分けを担当者の経験で決めている
1~2
→ 優先的な対応をご検討ください
注意が必要
デジタル印刷機の損益分岐を試算していない
→ 優先的な対応をご検討ください
3以上
後加工や出荷がボトルネックになっている 早急に着手
→ 見直しをご検討ください
当てはまる項目の数
デジタル印刷機を扱える人材が不足している
→ 見直しをご検討ください
図7:紫の背景は早急な対応が必要な項目、灰色の背景は早期の見直しをおすすめする項目です
1つでも当てはまる場合 3つ以上当てはまる場合
注文が増えても収益性が改善しない可能性があります。まず 生産体制の見直しに早急に着手すべき段階です。注文構成
は、ロット別の原価と採算を確認してください。 と原価の可視化から始め、設備投資の判断基準を定めること
をおすすめします。
次のステップ
生産体制の現状診断から始める
小ロット時代の生産体制づくりでは、設備の導入を先行させる必要はありません。まず、注文別の採算性を把握することが重要です。アクセ
ンチュアでは、現状診断から、設備投資の判断、振り分けルールの設計、工程全体の最適化まで、段階的に支援しています。
印刷工場の生産体制について、まずは相談してみませんか?
現状診断のご相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
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本稿のデータは公表情報・統計資料に基づきます。図は概念図を含みます。個別の投資・経営判断については、当社の専門家にご相談ください。
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