WHITE PAPER|その他製品 × 調達・購買
海外で作れば安い、
その前提は
まだ成り立っているか?
玩具・スポーツ用品・家具・文具メーカーのための
生産拠点・調達先の再配置と近接調達に向けた実践フレームワーク
約10日 総コスト 近接調達
喜望峰への迂回による輸送遅延 単価だけでなく 需要地に近い生産拠点・調達先の活用
物流・在庫まで比較
本稿の内容 海外生産と近接調達の総コストの比較(概念図)
1 「海外生産なら安い」が崩れた理由 欠品損失
在庫・保管
2 海外調達をめぐる環境変化
物流費
製品の単価
3 拠点の再配置を阻む構造的な課題
4 調達先再配置の4層フレームワーク
海外生産 近接調達
5 セルフ診断と次のステップ 単価が高くても、総コストでは近接調達が有利になる場合があります
アクセンチュア株式会社 2026年 外部公開版
Supply Chain & Engineering(SC&E)
SupplyChain_Engineering@accenture.com
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EXECUTIVE SUMMARY
製品単価が安くても、輸送に要する時間やコストが収益性を低下させる場合がある
玩具・スポーツ用品・家具・文具の多くは、人件費の低い海外の工場で生産されてきました。しかし、生産国の人件費上昇や為
替変動、海上運賃の高騰により、海外生産・調達にかかる総コストが上昇しています。2023年11月以降は紅海での船舶攻撃
で喜望峰への迂回が広がり、10日前後の遅れが生じました。
本稿では、単価ではなく総コストとリードタイムで生産拠点と調達先を評価し直し、近接調達を含めて再配置するための考え方と
、実践的なアプローチを整理します。
Why 1
事業環境の変化により、「海外で作れば安い」とは限らない
海外生産の判断は、長らく製品の単価を基準に行われてきました。しかし、物流費、在庫の保管費、欠品による販売機会の損失まで含
めると、単価の差だけでは有利かどうかを判断できなくなっています。
季節や流行の影響を受けやすい商品の場合、リードタイムが長いほど需要予測が外れやすく、売れ残りと欠品が同時に発生するリスクが高
まります。リードタイムの長さそのものが、利益を圧迫する要因になっています。
図1 海外生産品のサプライチェーンとコスト・遅延のホットスポット
企画・発注 海外生産 国際輸送 国内物流 販売
生産国の
需要予測 海上運賃 通関 店頭・EC
人件費
原材料の
仕様の決定 輸送日数 倉庫保管 売れ残り
調達
発注ロット 品質検査 港の混雑 国内配送 欠品
コスト・遅延の影響:大 コスト・遅延の影響:中 コスト・遅延の影響:小
図1:海外生産・国際輸送と販売段階の需給のずれが、コスト増・遅延につながる主な要因となっています(概念図)
約10日 2023年11月~ 総コスト
喜望峰への迂回で 紅海での船舶攻撃と 単価に物流費・在庫費・
生じた輸送の遅れ 迂回ルートの拡大 欠品損失を加えて評価
※出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「紅海情勢悪化による物流への影響」(2024年)
※図1は傾向を示すための概念図であり、コスト構成は製品や取引条件によって異なります
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図2 生産拠点と調達先の見直しを阻む3つの構造的な壁
第1の壁 第2の壁 第3の壁
評価 移管 需要
単価 ・ 物流費 ・ 在庫 品質 ・ 金型 ・ 取引先 季節性 ・ 流行 ・ ロット
・単価だけで拠点を比較している ・新たな生産拠点への移管による品質低下へ ・季節や流行で需要が変わる
・物流費や在庫費用が予測しづらい の懸念 ・発注ロットが大きく柔軟性が低い
・欠品の損失を数値にしていない ・金型や治具の移設が必要 ・予測が外れると在庫が残る
・長年の取引先との関係がある
採算性が正しく把握できていない 移管にはリスクも伴う 需要変動への対応の難しさ
図2:評価・移管・需要の3つの壁が、生産拠点と調達先の見直しを遅らせています
Why 2
総コスト・リードタイムに基づく拠点の再評価
生産拠点を評価するときは、製品の単価に加えて、海上運賃、保険料、在庫の保管費、欠品による機会損失を含めた総コストで比べる
必要があります。リードタイムが短くなれば、発注を小口化し、需要変化に対応しやすくします。
国内や近隣国での生産・調達は、単価が上がっても総コストでは有利になる場合があります。品目ごとに最適な拠点を選ぶことが、収益性
と安定供給を両立させる鍵になります。
図3 海外調達をめぐる主な環境変化と求められる対応
2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 今後 今後
1 2 3 4 5 6 7
感染症の拡大で 海上コンテナ 円安が進み 紅海での船舶 迂回の長期化と 総コストでの 近接調達による効率
工場の稼働が停止 運賃が高騰 輸入コストが上昇 攻撃と迂回の 運賃の高騰 拠点評価 化
始まり
企業に求められる対応 調達環境の変化
図3:調達環境の変化が続く中、総コストでの評価と近接調達の組み合わせが求められています
製品単価だけでなく、販売までに必要な総コスト・リードタイムに基づく評価が必要です。
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Why 3
拠点の再配置は「調達部門だけ」では決められない
生産拠点や調達先を移すには、品質基準・製造条件の確立、金型の移設、販売計画の見直しが伴います。調達・生産・品質・販売の
各部門が同じ指標で判断できるようにする必要があります。そこには3つの課題があります。
総コストの可視化
1 単価・物流費・在庫費・欠品の損失を、品目ごとに同じ基準で算出します。
品目特性に応じた生産・調達拠点の選択
2 需要の変動と製品の特性に応じて、海外・近隣国・国内の拠点を使い分けます。
段階的な移管計画と品質基準の確立
3 新たな拠点への移管を段階的に進め、品質と供給を安定させる計画を立てます。
図4 従来の海外調達と目指す姿
従来の海外調達 目指す姿
製品単価を基準とした生産拠点の選定 総コストとリードタイムで選ぶ
全品目を同じ海外工場で生産する 品目の特性に応じて拠点を使い分ける
大きなロットでまとめて発注する 需要変動に応じた発注数量・頻度の調整
在庫積み増しによる輸送遅延への対応 複数の拠点とルートで遅れに備える
拠点の見直しは数年に1度 環境の変化に合わせて定期的に見直す
アプローチ
品目ごとに、最適な生産拠点と調達先を選び直す
全品目を一度に移す必要はありません。総コストとリードタイム、需要の変動の大きさで品目を分類し、近接調達の効果が大きい品目から
拠点と調達先を見直します。それを支えるのが次の4層の仕組みです。
図5 生産拠点・調達先再配置の4層フレームワーク
Layer 4 モニタリング・見直し
コスト推移 輸送状況 定期見直し
コスト・リードタイム・リスクの継続的な把握
Layer 3 移管・立ち上げ
移管計画 品質確保 金型移設
新しい拠点への移管と品質基準の確立
Layer 2 拠点ポートフォリオ
海外 近隣国 国内
海外・近隣国・国内の最適な組み合わせ
Layer 1 総コストの可視化
単価 物流費 在庫・欠品
品目別の単価・物流費・在庫費・欠品損失
図5:総コストの可視化を土台に、拠点の組み合わせ・移管・見直しを積み上げます
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図6 生産拠点・調達先の再配置 実行ロードマップ
STEP 1 0~6ヵ月 STEP 2 6~18ヵ月 STEP 3 18ヵ月~
総コストの可視化と 候補拠点の評価と 本格移管と
品目の分類 移管の試行 継続的な見直し
品目別の総コスト算出 候補拠点の比較評価 対象品目の本格移管
リードタイムの把握 試験生産と品質確認 複数拠点からの供給
見直しの優先順位 発注方法の見直し 拠点の定期的な見直し
移管する品目の選定 移管の効果検証 柔軟な調達体制の構築
図6:可視化・試行・本格移管の3段階で、生産拠点と調達先を最適化します
STEP 1 品目別総コストの把握
製品の単価に、海上運賃・保険料・在庫の保管費・欠品の損失を加えた総コストを品目別に算出します。需要の変動の大きさと合わせ
て品目を分類し、見直しの優先順位を定めます。
STEP 2 候補拠点における試験生産
近隣国や国内を含む候補拠点を、総コスト・リードタイム・品質・リスクで比較します。優先度の高い品目で試験生産を行い、品質と効果
を確かめます。
STEP 3 本格移管と、拠点構成の定期的な見直し
移管効果が確認できた品目から本格的に移管し、複数の拠点から供給できる体制を整えます。コストと輸送の状況を継続的に把握し、
拠点の組み合わせを定期的に見直します。
期待する成果
段階ごとに得られる成果
短期(0~6ヵ月) 中期(6~18ヵ月) 長期(18ヵ月~)
→ 品目別の総コスト把握 → 候補拠点の比較評価 → リードタイムの短縮
→ 品目の分類 → 試験生産の実施 → 在庫の適正化と欠品の削減
→ 見直しの優先順位 → 発注方法の見直し → 調達網の強靭化
※成果の時期は目安であり、対象範囲や状況により異なります
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セルフ診断
あなたの会社の海外調達は、総コストで判断できていますか?
以下の項目に1つでも当てはまる場合、利益を削る調達のリスクが潜んでいる可能性があります。
図7 海外調達 セルフ診断チェック
生産拠点を製品の単価だけで比べている
要対応レベル
→ 早急な対応が必要な可能性があります
物流費や在庫管理費を品目別に把握していない 0
→ 早急な対応が必要な可能性があります 現時点では大きな懸念なし
1つの国・工場に生産が集中している
1~2
→ 早急な対応が必要な可能性があります
注意が必要
輸送の遅れを在庫の積み増しで吸収している
→ 早急な対応が必要な可能性があります
3以上
近隣国や国内での生産・調達を検討していない 早急に着手
→ 早期の見直しをおすすめします
当てはまる項目の数
拠点の見直しを数年以上行っていない
→ 早期の見直しをおすすめします
図7:紫の背景は早急な対応が必要な項目、灰色の背景は早期の見直しをおすすめする項目です
1つでも当てはまる場合 3つ以上当てはまる場合
利益を削る調達のリスクが潜んでいる可能性があります。まず 生産拠点と調達先の見直しに早急に着手すべき段階です。
は、主力品目の総コストとリードタイムを確認してください。 総コストで品目を分類し、効果の大きい品目から試行すること
をおすすめします。
次のステップ
海外調達の現状診断から始める
生産拠点と調達先の再配置は、全品目を一度に移す必要はありません。品目ごとの総コストとリードタイムを把握することから始まります。
アクセンチュアでは、調達の現状診断から、候補拠点の評価、移管の計画と立ち上げ、継続的な見直しの仕組みづくりまで、段階的に支
援しています。
海外調達の見直し方を、まずは相談してみませんか?
現状診断のご相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
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本稿のデータは公表情報・統計資料に基づきます。図は概念図を含みます。個別の投資・経営判断については、当社の専門家にご相談ください。
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