WHITE PAPER|鉄鋼 × 戦略・経営企画
安値の鋼材が
あふれる市場で、
何で勝ち続けるか?
鉄鋼メーカーのための
過剰供給時代の製品ポートフォリオ転換と供給体制の再設計
1億390万t ▲19.4% 5割超
中国の鋼材純輸出量 中国の鋼材輸出単価 世界の粗鋼生産量に占める中国の割合
(2024年、初の1億t超) (2024年、前年比)
本稿の内容 中国の鋼材純輸出量(万トン)
1 過剰供給が「構造問題」になった理由
2015年 9,962
2 鋼材の貿易と通商措置をめぐる動き
3 高付加価値化を阻む構造的な壁
2024年 10,390
4 製品ポートフォリオ転換の4層フレームワーク
出典:中国海関総署の公表データ(東洋経済オンライン、2025年1月)
5 セルフ診断と次のステップ
アクセンチュア株式会社 2026年 外部公開版
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EXECUTIVE SUMMARY
量で競う構造から、選ばれる品種と供給力で稼ぐ構造への転換
中国では不動産不況で国内の鋼材需要が落ち込み、行き場を失った鋼材が海外に流れています。2024年の中国の鋼材純輸
出量は1億390万トンと初めて1億トンを超え、輸出単価は前年から19.4%下がりました。汎用品の価格競争はさらに厳しくな
っています。
本稿では、日本の鉄鋼メーカーが過剰供給の時代に収益を守るため、製品ポートフォリオを高付加価値品へ転換し、需要地の
近くに供給体制を構築するための考え方とアプローチを整理します。
Why 1
過剰供給はもはや、一時的な問題ではない
世界の粗鋼生産量は2021年をピークに減少し、2025年は18億5,021万トンとなりました。中国は依然として世界の生産量の半分以
上を占めています。中国国内の需要が減少しても、生産能力が維持される限り、輸出圧力は続くと考えられます。
汎用品で価格を競うほど、利益率は市況に左右されます。どの品種で、どの顧客に、どの地域から供給するかを見直すことが、経営の課題
になっています。
図1 鉄鋼のバリューチェーンと価格競争のホットスポット
製品企画 製造 加工・流通 販売 顧客
汎用品の 高炉の稼働率が変えられ コイル
市況に応じ汎用品を販売 自動車
品種構成 ない センター
高機能鋼 電炉の ひも付き
加工・切断 建設・土木
の開発 小ロット対応 契約
顧客との 品質の
在庫拠点 輸出販売 造船・機械
共同開発 作り込み
価格競争の影響:大 価格競争の影響:中 価格競争の影響:小
図1:汎用品の製造・市況販売・輸出は、価格競争の影響を受けやすい領域です(概念図)
1億390万t ▲19.4% 5割超
中国の鋼材純輸出量 中国の鋼材輸出単価 世界の粗鋼生産に
(2024年) (2024年、前年比) 中国が占める割合
※出典:中国海関総署の公表データ(東洋経済オンライン、2025年1月)、世界鉄鋼協会(日本貿易振興機構「世界的な過剰供給と保護主義が塗り替える鉄鋼サプライチェーン」
2026年5月)。図1は概念図です。
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図2 過剰供給からの脱却を阻む3つの構造的な壁
第1の壁 第2の壁 第3の壁
量 開発 供給
稼働率 ・ 固定費 ・ 汎用品 高機能鋼 ・ 顧客 ・ 期間 需要地 ・ 通商措置 ・ 物流
・高炉の稼働率が下げられない ・高機能鋼の開発に時間がかかる ・輸出は通商措置の影響を受ける
・固定費を回収するには一定の生産量が必 ・顧客との共同開発の機会が限られる ・需要地での加工拠点が不足
要 ・品種ごとの収益が見えにくい ・短納期・小ロットの要求への対応力不足
・汎用品の比率が高い
量を追う構造から抜けにくい 付加価値の源泉が育たない 供給体制の最適化
図2:量・開発・供給の3つの壁が、過剰供給の影響から抜け出すことを難しくしています
Why 2
通商措置の拡大による鋼材流通の変化
中国からの安価な鋼材に対し、各国・地域は関税の引き上げや貿易救済措置で自国の産業を守る動きを強めています。輸出先が閉じ
れば、鋼材は別の市場に向かい、その地域の市況を押し下げます。
通商措置の動きは、輸出の採算だけでなく、需要地での生産・加工体制のあり方にも影響します。市場ごとの規制と需給を継続的に把
握し、供給体制に反映することが必要です。
図3 鉄鋼の過剰供給をめぐる主な動き
2015年 2016年 2018年 2019年 2021年 2024年 2025年
1 2 3 4 5 6 7
中国の鋼材 鉄鋼の過剰 米国が鉄鋼に EUがセーフ 世界の粗鋼 中国の純輸出 各国で
輸出が急増 生産能力の 追加関税 ガード措置 生産がピーク が1億t超 通商措置が拡大
国際協議
各国の通商措置・政策 市場の動き
図3:過剰供給と通商措置が繰り返され、鋼材を取り巻く環境は変わり続けています
量的競争から脱却しない限り、市況変動からの影響を受け続けます。
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Why 3
部門横断によるポートフォリオ転換が不可欠
高付加価値品への転換には、開発・製造・営業が、共通の指標に基づき収益性を判断する必要があります。品種ごとに収益を可視化し
、設備と人材の配分を変えていかなければなりません。そこには3つの課題があります。
品種別に収益を可視化
1 市況や原料の変動を含めて、品種・顧客ごとの収益性を把握します。
開発における顧客との連携
2 顧客の製品開発に早い段階から関わり、高機能鋼の需要を作り出します。
需要地に近い供給体制
3 加工拠点と在庫拠点を見直し、納期と小ロットの要求に応えます。
図4 従来の事業モデルと目指す姿
従来の事業モデル 目指す姿
稼働率を優先して生産量を確保する 収益性の高い品種を重点生産
汎用品の比率が高い 高機能鋼の比率を計画的に高める
収益は製品群の合計で把握する 品種・顧客別の収益を把握する
国内で製造し、余剰を輸出販売 需要地での加工と供給を組み合わせる
通商措置には都度対応する 市場ごとの規制を計画に織り込む
アプローチ
品種別の収益を起点としたポートフォリオと供給体制への転換
品種・顧客・地域ごとの収益性を可視化し、過剰供給の影響を受けやすい汎用品と、強みを生かせる高機能鋼を区別します。そのうえで
、生産の振り向け、開発の重点項目、需要地での供給体制を一体で設計します。それを支えるのが次の4層の仕組みです。
図5 製品ポートフォリオ転換の4層フレームワーク
Layer 4 経営・投資判断
品種構成 設備配分 拠点投資
品種構成・設備配分・拠点投資を全社で決定
Layer 3 供給体制
加工拠点 在庫拠点 物流網
需要地での加工・在庫・物流の設計
Layer 2 開発・営業の連携
共同開発 高機能鋼 技術営業
顧客との共同開発と高機能鋼の提案
Layer 1 収益の可視化
品種別 顧客別 地域別
品種・顧客・地域別の収益性を把握
図5:収益の可視化を土台に、開発・供給体制・投資判断を積み上げます
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図6 製品ポートフォリオ転換 実行ロードマップ
STEP 1 0~6ヵ月 STEP 2 6~18ヵ月 STEP 3 18ヵ月~
品種別収益の ポートフォリオ 転換の実行と
可視化と分類 と供給体制の設計 継続的な見直し
品種・顧客別の収益把握 生産能力の配分計画 高機能鋼の拡販
市況影響の分析 重点開発テーマの選定 拠点の立ち上げ
品種の分類と方針 需要地拠点の検討 市況・規制の継続把握
収益をけん引する品種の特定 転換計画の具体化 収益構造の強化
図6:可視化・設計・実行の3段階で、過剰供給に強い事業構造へ転換します
STEP 1 品種ごとの収益力を把握する
品種・顧客・地域ごとに、市況や原料の変動を含めた収益性を把握します。過剰供給の影響を受けやすい品種と、強みを生かせる品種を
区別し、方針を定めます。
STEP 2 生産・開発・供給の計画を組み替える
収益性の高い品種の生産に注力し、重点開発を進める高機能鋼を定めます。需要地での加工・在庫拠点を検討し、納期や小ロット生
産などの要求に応える供給体制を構築します。
STEP 3 実行し、市況と規制に合わせて見直す
高機能鋼の拡販と拠点の立ち上げを進めます。市況と各国の通商措置を継続的に把握し、品種構成と供給体制を定期的に見直します
。
期待する成果
段階ごとに得られる成果
短期(0~6ヵ月) 中期(6~18ヵ月) 長期(18ヵ月~)
→ 品種別の収益把握 → 生産能力の配分計画 → 高機能鋼比率の向上
→ 市況影響の分析 → 重点開発テーマ → 市況に強い収益構造
→ 品種ごとの方針 → 需要地拠点の計画 → 顧客との関係強化
※成果の時期は目安であり、対象範囲や状況により異なります
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セルフ診断
あなたの会社の鉄鋼事業は、過剰供給に強い構造になっていますか?
以下の項目に1つでも当てはまる場合、市況に収益が左右されるリスクが潜んでいる可能性があります。
図7 鉄鋼事業の構造 セルフ診断チェック
品種・顧客別の収益性を把握していない
要対応レベル
→ 早急な対応が必要な可能性があります
汎用品が売上の大半を占めている 0
→ 早急な対応が必要な可能性があります 現時点では大きな懸念なし
稼働率の維持を優先して生産を決めている
1~2
→ 早急な対応が必要な可能性があります
注意が必要
顧客との共同開発がほとんどない
→ 早急な対応が必要な可能性があります
3以上
需要地での加工・在庫拠点を検討していない 早急に着手
→ 早期の見直しをおすすめします
当てはまる項目の数
各国の通商措置を計画に織り込んでいない
→ 早期の見直しをおすすめします
図7:紫の背景は早急な対応が必要な項目、灰色の背景は早期の見直しをおすすめする項目です
1つでも当てはまる場合 3つ以上当てはまる場合
市況に収益が左右されるリスクが潜んでいる可能性があります 製品ポートフォリオの転換に早急に着手すべき段階です。品種
。まずは、品種・顧客別の収益性を確認してください。 別の収益を可視化し、生産と開発の重点を見直すことをおす
すめします。
次のステップ
事業構造の現状診断から始める
過剰供給に強い事業構造への転換は、すべてを一度に変える必要はありません。品種ごとの収益力を正しく把握することから始まります。
アクセンチュアでは、収益の可視化から、ポートフォリオと供給体制の設計、転換の実行まで、段階的に支援しています。
鉄鋼事業の構造転換を、まずは相談してみませんか?
現状診断のご相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
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本稿のデータは公表情報・統計資料に基づきます。図は概念図を含みます。個別の投資・経営判断については、当社の専門家にご相談ください。
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