WHITE PAPER|石油・石炭製品 × 戦略・経営企画
燃料の需要が減っても、
安定供給と収益を
両立できるか
石油元売・精製会社のための
需要縮小を前提にした製油所・供給網の再編の実践フレームワーク
2050年 10% 安定供給
カーボンニュートラル 2030年に航空燃料を 需要が減っても
の目標年 SAFに置き換える目標 続く供給の責任
本稿の内容 燃料・製品別の需要縮小の見通し(概念図)
ガソリン
1 燃料需要の縮小が「経営課題」になった理由
灯油
2 再編を阻む構造的な壁
軽油
3 エネルギー政策をめぐる主な動き
石油化学原料
4 製油所・供給網再編の4層フレームワーク ジェット燃料
需要縮小:大 需要縮小:中 需要縮小:小
5 セルフ診断と次のステップ ※概念図であり、実際の値は企業・製品により異なります
アクセンチュア株式会社 2026年 外部公開版
Supply Chain & Engineering(SC&E)
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EXECUTIVE SUMMARY
需要が減る中で、供給の責任を果たしながら設備の最適化が必要
自動車の燃費の向上と電動化、人口の減少、脱炭素の政策により、ガソリンや灯油などの燃料の需要は長期的に減少すると見
込まれています。一方、石油製品は災害時も含め安定供給が求められるエネルギーであり、需要が減っても供給網を維持する
責任があります。
本稿では、石油元売・精製会社が燃料需要の縮小を前提に、製油所の能力と役割、油槽所や供給網を再編し、安定供給と
収益を両立させるための考え方とアプローチを整理します。
Why 1
需要縮小を「市況」ではなく「構造」の問題として捉える
製油所は、原油から多くの製品を同時に生産する装置産業です。需要減少に伴い稼働率を落とすと固定費の負担が重くなり、収益性が
悪化します。製品ごとに需要減少の過程が異なるため、生産調整も難しくなります。
どの製油所の能力を残し、どの設備を止め、どの拠点を新しい燃料や素材の生産に転換するかは、地域の安定供給にも関わる経営判断
です。先送りするほど選択肢は狭まります。
図1 石油のサプライチェーンと需要縮小のホットスポット
原油調達 精製 物流 販売 新事業
製油所の ガソリン SAF・
原油の輸入 油槽所
稼働率 スタンド 合成燃料
中東への 製品の 内航 水素・
産業向け
依存 組み合わせ タンカー アンモニア
タンカー 設備の タンク
輸出 化学品原料
輸送 老朽化 ローリー
需要縮小の影響が大きい領域 影響が中程度の領域 転換の機会がある領域
図1:需要縮小は、製油所の稼働率や製品構成、販売網に大きく影響します(概念図)
2050年 10% 2025年2月
カーボンニュートラル 2030年に航空燃料を 第7次エネルギー
の目標年 SAFに置き換える目標 基本計画が閣議決定
※出典:資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画」、国土交通省(SAFの導入目標)。図1と表紙の図は概念図です。
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図2 製油所と供給網の再編を阻む3つの構造的な壁
第1の壁 第2の壁 第3の壁
設備の壁 供給責任の壁 転換の壁
装置産業 ・ 固定費 ・ 連産品 安定供給 ・ 災害 ・ 地域 新燃料 ・ 投資 ・ 需要
・稼働率低下による収益性の悪化 ・災害時にも安定供給の責任がある ・新しい燃料の需要が読めない
・製品が連産で調整しにくい ・地域の拠点を減らしにくい ・転換に巨額の投資が必要
・設備停止に多額の費用が必要 ・物流網の維持に費用がかかる ・技術開発や原料確保が途上
止める判断ができない 供給網を縮小しにくい 成長の柱が見えない
図2:設備・供給責任・転換の3つの壁が、製油所と供給網の再編を難しくしています
Why 2
製油所と供給網を、需要の見通しから再設計する
再編は、製品・地域ごとの需要の見通しを立てることから始まります。需要に合わせて製油所の能力を最適化し、油槽所・物流網を見直
すことで、安定供給を保ちながら固定費を抑えることができます。
同時に、停止する設備や拠点を、持続可能な航空燃料(SAF)や合成燃料、水素・アンモニアの受け入れなど、新しいエネルギーの拠
点に転換できるかを検討します。縮小と転換を1つの計画として描く必要があります。
図3 エネルギー政策をめぐる主な動き
2020年 2021年 2023年 2025年 2026年 2030年 2050年
1 2 3 4 5 6 7
2050年カーボン 第6次エネルギー GX推進法 第7次エネルギー GX-ETSが SAF10%の カーボン
ニュートラル宣言 基本計画 が成立 基本計画 本格稼働 目標年 ニュートラル
の目標年
政策・制度の整備 目標年
図3:脱炭素の政策と目標年が定まり、燃料需要の縮小と新燃料への転換が進む局面に入りました
縮小と転換を別々に考えると、設備や人員の最適化が進まない
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Why 3
再編は「製油所単位」では最適化できない
製油所の能力の調整は、原油の調達、物流網、販売網、新事業の計画に同時に影響します。地域の安定供給の要件を満たしながら、
全社で最適な組み合わせを決めなければなりません。そこには3つの課題があります。
需要見通しの共有
1 製品・地域ごとの需要の見通しを立て、全社で共有します。
能力と拠点の最適化
2 安定供給の要件を満たす製油所の能力と、油槽所・物流網を設計します。
転換拠点の選定
3 停止する設備や拠点を、新しいエネルギーの拠点に転換できるかを評価します。
図4 従来の事業運営と目指す姿
従来の事業運営 目指す姿
稼働率の維持を優先して生産 需要の見通しに合わせて能力を最適化
製油所ごとに収益を管理する 全社のサプライチェーンで最適化
物流網は現状を維持する 安定供給の要件に基づき、供給網を再設計する
新燃料は研究開発で検討する 停止する拠点の転換と一体的に計画
再編は収益が悪化してから行う 需要縮小を前提に計画的に進める
アプローチ
需要見通しを起点に、縮小と転換を一体的に計画
製品・地域ごとの需要の見通しを立て、製油所の能力、油槽所と物流の網を、安定供給の要件を満たす形で最適化します。停止する設
備や拠点は、新しいエネルギーの拠点への転換と合わせて計画します。それを支えるのが次の4層の仕組みです。
図5 製油所・供給網再編の4層フレームワーク
Layer 4 経営・投資判断
投資配分 拠点転換 提携
再編と新エネルギーへの投資配分
Layer 3 転換の計画
SAF 合成燃料 水素
SAF・合成燃料・水素の拠点化
Layer 2 能力と供給網の最適化
精製能力 油槽所 物流網
製油所の能力・油槽所・物流網の設計
Layer 1 需要の見通し
製品別 地域別 供給要件
製品・地域別の需要予測と供給要件
図5:需要の見通しを土台に、能力と供給網の最適化・転換・投資判断を積み上げます
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図6 製油所・供給網の再編 実行ロードマップ
STEP 1 0~6ヵ月 STEP 2 6~18ヵ月 STEP 3 18ヵ月~
需要の見通しと 再編と転換の 実行と
現状の把握 一体計画 継続的な見直し
製品・地域別の需要予測 能力の最適化計画 再編の実行管理
製油所・拠点の評価 物流網の再設計 新燃料の事業化
供給要件の整理 転換拠点の選定 需要の継続的な把握
維持すべき拠点が 再編と転換の
需要縮小に対応できる事業構造を構築
明確になる 計画が整う
図6:見通し・計画・実行の3段階で、燃料需要の縮小に強い事業構造へ転換します
STEP 1 需要の見通しと供給の要件を把握する
製品・地域ごとの需要の見通しを立て、製油所と油槽所の稼働と収益を評価します。災害時を含めた安定供給の要件を整理します。
STEP 2 縮小と転換を一体的に計画する
安定供給の要件を満たす製油所の能力と、油槽所・物流網の再設計を計画します。停止する設備や拠点を、新しいエネルギーの拠点に
転換できるかを評価します。
STEP 3 実行と継続的な見直しによる最適化
再編を計画に沿って進め、新燃料の事業化を推進します。需要と政策の動向を継続的に把握し、計画を定期的に見直します。
期待する成果
段階ごとに得られる成果
短期(0~6ヵ月) 中期(6~18ヵ月) 長期(18ヵ月~)
→ 需要の見通し → 能力の最適化計画 → 固定費の削減
→ 拠点の評価 → 物流網の再設計 → 安定供給の維持
→ 供給要件の整理 → 転換拠点の選定 → 新エネルギー事業の育成
※成果の時期は目安であり、対象範囲や現状により異なります
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セルフ診断
あなたの会社は、燃料需要の縮小を前提にした計画を描けていますか?
以下の項目に1つでも当てはまる場合、再編の遅れにより、収益性が悪化する可能性があります。
図7 製油所・供給網の再編 セルフ診断チェック
製品・地域別の需要の見通しを持っていない
要対応レベル
→ 早急な対応が必要な可能性があります
稼働率の維持を優先して生産している 0
→ 早急な対応が必要な可能性があります 現時点では大きな懸念なし
製油所ごとに収益を管理している
1~2
→ 早急な対応が必要な可能性があります
注意が必要
安定供給の要件から物流網を見直していない
→ 早急な対応が必要な可能性があります
3以上
停止・縮小する拠点の別用途への転換を検討していない 早急に着手
→ 早期の見直しをおすすめします
当てはまる項目の数
再編と新エネルギーの計画が別々になっている
→ 早期の見直しをおすすめします
図7:紫の背景は早急な対応が必要な項目、灰色の背景は早期の見直しをおすすめする項目です
1つでも当てはまる場合 3つ以上当てはまる場合
再編の遅れにより、収益性が悪化する可能性があります。まず 製油所と供給網の再編を優先的に検討しましょう。需要見通
は、製品・地域別の需要の見通しを確認してください。 しの共有から始め、縮小と転換を一体的に計画することをおす
すめします。
次のステップ
事業構造の現状診断から始める
製油所と供給網の再編は、すべてを一度に決める必要はありません。製品・地域ごとに需要の見通しを立てることから始まります。アクセン
チュアでは、需要の見通しから、能力と供給網の最適化、転換拠点の選定、実行まで、段階的に支援しています。
製油所と供給網の再編を、まずは相談してみませんか?
現状診断のご相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
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本稿のデータは公表情報・統計資料に基づきます。図は概念図を含みます。個別の投資・経営判断については、当社の専門家にご相談ください。
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