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5ZEROマニュファクチャリング ~NECAの考えるDX化の第一歩~

ホワイトペーパー

seiden特別号

NECA(日本電気制御機器工業会)ではものづくりの将来像「5ZEROマニュファクチャリング」を提言しました。
「5ZEROマニュファクチャリング」とは
日本のものづくりの強さの源泉であるQ(品質)、C(生産性)、
D(納期)、S(安全・セキュリティ)、MT(設備保全)の各領域で、
5つの「ZERO」を達成することを最終目標とした究極なものづくり像です。
詳細は以下からご確認ください。
https://www.neca.or.jp/info/monokoto/

本書では、対象生産ラインの5ZEROマニュファクチャリングレベルを確認できる「チェックリスト」や
具体的な事例に加えて、世界における安全・安心の新潮流、NECA委員会活動を紹介しております。

◆ 「seiden特別号 2022」の発行にあたり
(一社)日本電気制御機器工業会 会長 北折 良

◆Part1 5ZEROマニュファクチャリング
     NECAの考えるDX化への第一歩
 第1章 5ZEROマニュファクチャリングの背景
 第2章 5ZEROマニュファクチャリングの活用法
 第3章 5ZEROマニュファクチャリングのチェックリスト
 第4章 5ZEROマニュファクチャリングの概要
 第5章 5ZEROマニュファクチャリング導入ガイドライン
 第6章 ユースケースのご紹介NECAが目指すものづくりの将来像

◆Part2 安全・安心化により働く人のウェルビーイングの向上を
     実現するグローバルな新潮流

◆Part3 NECAの委員会紹介
  第1章 環境委員会
  第2章 技術委員会
  第3章 防爆委員会
  第4章 模倣品対策研究会

※本コンテンツの商用目的、営利目的での利用、また無断転載を禁じます。
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このカタログについて

ドキュメント名 5ZEROマニュファクチャリング ~NECAの考えるDX化の第一歩~
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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取り扱い企業 一般社団法人日本電気制御機器工業会 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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seiden 2022特別号 5ZEROマニュファクチャリング 5ZEROマニュファクチャリング ~NECAの考えるDX化の第一歩~ ●  5ZEROマニュファクチャリングの活用法、チェックリスト ●  5ZEROマニュファクチャリングの概要、要件定義 ●  ユースケース 世界における安全・安心の新潮流 NECA委員会活動紹介 ●  環境委員会 ●  技術委員会 ●  防爆委員会 ●  模倣品対策研究会
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seiden 2022 特別号 contents 1 「seiden特別号 2022」の発行にあたり (一社)日本電気制御機器工業会 会長 北折 良 Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 2 第1章 5ZEROマニュファクチャリングの背景 3 第2章 5ZEROマニュファクチャリングの活用法 5 第3章 5ZEROマニュファクチャリングのチェックリスト 7 第4章 5ZEROマニュファクチャリングの概要 10 第5章 5ZEROマニュファクチャリング導入ガイドライン 13 第6章 ユースケースのご紹介 20 最後に Part2 安全・安心化により働く人のウェルビーイングの向上を実現 するグローバルな新潮流 21 ─ここ数年の国際会議でのテーマを振り返り、NECAが リードして進めてきた安全・安心の将来を展望する─ Part3 NECAの委員会紹介 27 第1章 環境委員会 29 第2章 技術委員会 31 第3章 防爆委員会 33 第4章 模倣品対策研究会
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「seiden特別号 2022」の発行にあたり 一般社団法人 日本電気制御機器工業会 会長 北折 良 コロナ禍により世界は大きな変貌を遂げました。ニューノーマルが浸透しリモートワーク を初めとして働き方も関連する技術も従来と比較できないスピードで変化しています。 我々製造業を取り巻く環境も激変し、サプライチェーンの強靱化やカーボンニュートラル への対応、DXの取組み等が強く求められています。 一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA)では、2017年1月に「NECAが目 指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング~」を提唱し、同年11月の 「SCF2017/計測展2017 TOKYO」で5ZEROマニュファクチャリングの内容を掲載し た「seiden特別号」を発行しました。 その後、5ZEROマニュファクチャリングをより具体的に推進するための「導入ガイドラ イン」をまとめ、「IIFES 2019」において「seiden特別号2019」として発行しました。  2019年の「IIFES 2019」以後の活動では、ものづくりにおけるデジタル化に焦点を当て 5ZEROマニュファクチャリングで提唱する「レベル」を自己評価できる「チェックリスト」 を開発し検証を重ねてきました。また、お客様が現場で推進する参考となる具体的な事例を 収集し「ユースケース」として蓄積を始めています。 これらの成果や取り組み内容を今回の「IIFES 2022」で「seiden特別号2022」として お届けします。「チェックリスト」と、具体的な事例を織り交ぜ、DX化に向けた5ZERO マニュファクチャリングの取り組みが、より現場で活用し易くなる内容とさせていただいて おります。 また、NECAで推進しております「標準化」「安全」「環境」に関する取り組みに関しまし ても、最新の動向も交えてご紹介をさせていただいております。 ぜひ、本書をお手に取っていただき、課題解決の気づき、製造現場の改善へのヒントにご 活用いただくとともに、NECA活動へのご理解を深めていただければ幸甚です。 今後とも当工業会活動へのご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。 2022年1月 seiden 2022 特別号 1
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Part 5ZEROマニュファクチャリング  1 NECAの考えるDX化への第一歩 NECAでは、第4次産業革命検討WGを2015年5月に発足後、2017年1月にものづくりの将来像としての5 ZEROマニュファクチャリングを提唱しました。その後、本WGの後継委員会であるものづくり・ことづくり委員会が 5ZEROマニュファクチャリングの要件定義、導入のポイント、導入ツール、ユースケースなどに関する検討作業を進め、 SCF2017、IIFES 2019に合わせseiden特別号を発行し、検討内容の成果・進捗について紹介してきました。今回は 導入ツールで重要な役割を担う、製造現場の「チェックリスト」を新たに作成し、DX化に向けて5ZEROの取り組み がより現場で活用し易くなる工夫をしていますのでその内容をご紹介します。 第1章 5ZEROマニュファクチャリングの背景 わが国のものづくりは、これまでトヨタ生産方式に代 また、昨今では新型コロナによるパンデミックや自然 表される現場主導によるPDCAを通じたカイゼン活動 災害など予期しない大きな障害が多発し、サプライチェ が強みとされて生産性や品質を維持、向上させてきた。 ーンや生産計画に大きなダメージが生じるリスクが高ま 欧米各国に比べ、GDP全体に占める製造業の比率が高 り、不確実性の時代と言われる状況にあります。 い産業構造を抱える日本が、少子高齢化時代による労働 そのような状況の中、従来からの日本のものづくりの 力人口の急速な減少が予測される将来において、その繁 強みは活かしつつ、第4次産業革命と称されるIoT、ビ 栄を継続的に享受していくためには、いかにものづくり ッグデータ、AI、協調ロボットなどのデジタル応用技術 の強みを維持、発展していけるのかが問われていると言 を積極的に導入しながら、ものづくりを発展させていく えま内す。(外図環1)境とものづくりの未来像提示必の要背性が景あります。 各国の老齢人口比率 また、将来的に目指すべき未来社会である「Society 各国のGDPにおける製造業比率 45 % 5.0」は、様々な繋がりによって新たな付加価値の創出 40 韓国 や社会12課.2% 日本 (26.7) 題の解決が必要であり、そのためにはDX(デ 実績 35 予測 ドイツ (21.2) 中国 ジタルトランスフォーメー29.3% 30 中国 (9.6) ション)の推進を加速する必 アメリカ合衆国(14.8) 25 12.2% 先進地域 フランス (17.6) 要があります。経済産業省からも「ものづくり白書」の 20 開発途上地域 (6.4) ドイツ 中でこのDX化19を.3%強く提唱しています。 15 英国 9.6% 10 5 米国 N1E0.3C%Aは、このような社会、産業動向を背景に、もの 0 日本 年 づくりのQ(16.7品% 質)、C(生産性)、D(納期)、S(安全・ 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 内外環境とものづくりの未来像提世示界の全体背での景老齢化が進む中、日本は世界 日本セの産キ業ュ全リ体テでィは)、、製M造T業(は設備割保程度全を) 35.の0% 各領域で、下記の  2 で最も早く老齢化が進む 占めるよ重う要なな5基つ幹の産「業ZでEあRるO」を達成することを最終目標とす 各国の老齢人口比率 る5ZEROマニュファクチャリングというものづくり 各国のGDPにおける製造業比率 45 % の将来N像EをCA2が0目17指年すにも提の言づしくりまのし将た来。(像図2) 40 韓国 12.2% 日本 (26.7) 実績 35 予測 ドイツ (21.2) 中国 29.3% (Quality:品質) 30 中国 (9.6) Q Zero Defect アメリカ合衆国(14.8) 欠陥ゼロ 25 フランス 12.2% 先進地域 (17.6) (Cost/ Efficiency:生産性) 開発途上地域 (6.4) C Zero Production Loss 20 ドイツ 19.3% 生産ロスゼロ 15 ( Delivery time:納期) 英国 9.6% D Zero Late Deliver 10 納期遅延ゼロ Copyright 2019 NECA All rights reserved. (Safety& Security:安全、セキュリティ) 1 5 米国 10.3% S Zero Accident 0 事故ゼロ 日本 16.7% (Equipment Maintenance) 年 MT Zero Downtime マニュファクチャリング 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 生産ライン停止ゼロ 世界全体での老齢化が進む中、日本は世界 日本の産業全体では、製造業は2割程度を で最も早く老齢化が進む 図2 占める重要な基幹産業である Copy right 25019 ZNECAE All RrightsO reserマved. ニュファクチャリングの基本コンセプ2ト 図 1 全日本のものづくりの生産性向上の必要性 本特集号では新たに作成した「チェックリスト」を紹 (出所:国連統計、世界銀行) 介するとともに、実際の製造現場での5ZEROの活用を ステップごとに解説し、最後にこれまでの活動で見えて きた市場の状況を考察します。 2 seiden 2022 特別号 Copyright 2019 NECA All rights reserved. 1 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 第2章 5ZEROマニュファクチャリングの活用法 本章では、5ZEROマニュファクチャリングを実際に進める時の手順や考え方を提示します。具体的に5ZEROマニ ュファクチャリングを推進する手順を理解することで、自社への展開のイメージが掴めることを期待します。 第3章では、5ZEROマニュファクチャリングのスタートラインで使用するチェックリストの使い方を紹介します。 このチェックリストにより、現在の5ZEROマニュファクチャリングのレベルが把握できます。まずはこのチェックリ ストから始めて頂き、その後どのように進めるか検討頂くことでDX化への導入がし易くなります。5ZEROマニュフ ァクチャリングの要件定義などの全体的な説明は第4章でご案内します。 り大きな目標を立てず、小さなところからスタート(ス 2-1 5ZEROマニュファクチャリングの目的 モールスタート)することが肝心です。具体的な対象ラ 前章での説明の通り、急速に進むデジタル化や不確実 インの選定は、工場内の重要ラインや普段から改善が必 性の高い社会背景を受けて、現代の企業には企業変革力 要だと認識されているラインを候補とするのが良いので (ダイナミックケイパビリティ)の強化が必要とされて す。 います。ものづくりの分野においても同様で、不確実性 いくつかの対象ラインの候補が出たらチェックリスト が非常に高まっていると言えます。その理由のひとつは による診断を行ってください。具体的な使い方は後述し サプライチェーンの広域化と複雑化です。一昔前は、工 ますが、チェックリストでの診断結果により対象ライン 場周辺の部品製作会社から部品を購入して組立を行うと として適しているか検討します。 いった地域と密接な関係を持つサプライチェーンが多く 次に、チェックリストでの診断結果を踏まえて、その 存在しましたが、現代のサプライチェーンは海外調達を ラインのどこの工程を対象とするのか決定します。最終 含め広域化しています。市販品なども、多くの流通を経 的にはライン全体をレベルアップしたいのですが、効果 て供給されるため、全く関係のないと思われる地域の災 の高いところから順番に行った方が良いです。目標につ 害が納期に影響することもあります。特に電子部品など いてはQ、C、D、MT、Sのどの項目をレベルいくつか は正確な生産地を把握せずに使っている事も多く、突然 らいくつへ向上するのか設定します。 供給不安に陥ることもあります。また、製品の販売先や 対象と目標が定まったら、具体的な取り組み内容を計 提携する企業が海外企業となる事も多く、国際的な影響 画する必要があります。チェックリストで不達となって から自社の製品への反映を余儀なくされることもありま いる項目を改善や、次のレベルとして必要な項目を新規 す。パンデミック影響や貿易摩擦など、国レベルでも対 導入するなどの観点で計画します。進め方を検討する上 処できない変化が発生する時代で、何がどのように連鎖 で参考になるのが導入ガイドラインです。自動化、セン して生産が困難になるか分からない状況です。今は何も シングデータの収集と管理、そのデータの解析、といっ 問題がなくても将来の安定を約束するものではなく、い た切り口で進め方を提示しています。ガイドラインを参 つ何が起こるか分からない不安定な時代に突入している 考にしながら具体的な進め方を計画します。 と言えます。 ガイドラインでは一般的な進め方を提示していますの ものづくりの現場においても、将来起こりうる変化を で、対象ラインの実状とは合わない部分があるかもしれ 敏感に察知し、柔軟に対応できる体制を作っておく必要 ません。担当者の固有技術や社内のノウハウなどを使用 があります。そのために重要になってくるのは製造業の して具体的な手法を導き出す必要があります。そのヒン DX化です。5ZEROマニュファクチャリングの活動目 トはユースケースの中にあるかもしれませんので参考に 的はこのDX化に向けた道筋を示すことにあります。 してください。ユースケースは第6章にまとめてありま DX化とは、単なるデジタルツールの導入ではなく、そ すので、過去の発刊物やNECAホームページなども参照 れを使いこなす組織形成や、意識の改革を含めた概念で してください。全く同じではなくとも応用できる事例が す。5ZEROマニュファクチャリングの概念がDX化へ あるかもしれません。ユースケースは今後も順次追加し の最初の一歩となる事を期待しています。 て行きます。 具体的な計画が決まったら、投資判断が必要になりま す。DX化を進める上で多くの企業が悩んでいるところ 2-2 5ZEROマニュファクチャリングの活用法 だと思います。単純に費用と効果を金額で比較するのか、 5ZEROマニュファクチャリングを生産ラインに適 会社方針との整合性から予算枠を決めて対応するのか、 用しようとした場合、最初に行う必要があるのは対象ラ などいろいろな判断基準があります。判断は各社の基準 インの選定です。工場全体にいきなり適用しようとして に従うことになります。この段階まで進めているという もなかなか取り組みが進まず、課題も多く、活動が発散 事は5ZEROマニュファクチャリングを始めてみよう、 することが懸念されます。特に導入の初期段階ではあま とすでに決断されていますので、まずはやってみる事が seiden 2022 特別号 3
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重要です。そのためにも、スモールスタートで成果を実 感しながら順次拡大するのが着実な進め方です。やって みないと分からない付加的な効果も出て来るかもしれま せん。実際、社内の人材交流の活性化や新たな課題への 気づきなど、予定外の効果が表れている事例も多くあり ます。 最後の実行段階では、自社内で進めることと社外へ依 頼することを区分して進めることになります。自社内に ノウハウがない事については積極的に社外のリソースを 活用することが有効です。特に先端技術を活用する場合 は専門家の意見を取り入れることによりスムーズに進め ることができる場合があります。 繰返しになりますが、5ZEROマニュファクチャリン グの具体的な進め方としては、対象ラインの選定、チェ ックリストによる診断、対象工程と目標の設定、具体的 な進め方の検討、実行または外部業者への依頼となりま す。(図1) 次章では「チェックリストによる診断」、第5章で「導 5入ZEガRイOド マラニイュフンァ」ク、チ第ャ6リ章ンでグ「のユ進ーめス方ケース」について ご紹介します。 ③ユースケース による気づき 対 投に② メ自 象 よ① (決改 レ 資よ導 ー社 生 るチ ベ定善 額る入 カ設 産 ラェ ルと対 ッ 検進 設目象 ガ へ の計 ラ イク 定標工 討めイ ま イ ン 支 診リ 方ド た ン ス )設程 援 のラ 選 断 定の 検 依は ト イ投 定 に 討 頼商 ン資社 判、 5ZEROマニュファクチャリング 断 図1 5ZEROマニュファクチャリングの具体的進め方 4 seiden 2022 特別号
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 第3章 5ZEROマニュファクチャリングのチェックリスト 5ZEROマニュファクチャリングの具体的な進め方の第一歩は「チェックリストによる診断」となります。本章では、 そこで使用するチェックリストついてご紹介します。選定した対象生産ラインが5ZEROマニュファクチャリングのど のレベルにいるかを把握し、次に進むためのポイントを示すツールとして、今年度新たに用意しました。チェックリス トを5ZEROマニュファクチャリングの推進ツールとして活用いただくため、概要と使い方についてご紹介します。 なお今回紹介するチェックリストはNECAのWebサイトから入手可能です。 URL https://neca.or.jp/info/monokoto/ 質問の中には【未実施】、【非該当】となるものもある 3-1 チェックリストの概要 かと思います。それを選択すること自体は全体の得点に チェックリストは図1のように、Q、C、D、MT、S は大きな影響を与えないようにしています。 で構成されています。それぞれの構成要素ごとに、質問 図3の紫色グラフは各項目の質問で最大値となった得 票が用意されており、回答は【実施済み】、【計画中】、【未 点を採用する方法にしていますので、「まだやれてない」 実施】、【非該当】4つの選択肢の中から選ぶ形で作られ ときは【未実施】、「うちの会社(ライン)はその回答に ています。 は当てはまらない」ときは【非該当】と答えていただい てもレベルを押し下げることはありません。 Dのチェックリスト MTチェックリスト 最後にその最大値同士を平均したものを合計値(青色 Cのチェック・・リ・ス・・ト・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ Sの・チ・ェ・・ッ・・ク・リ・・ス・ト・□ グラフ)としています。これを5ZEROマニュファクチ Qのチ・ェ・・ッ・ク・・リ・・ス・ト・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ャリングの現時点の到達レベルとして示しています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ チェックリストの概要説明に続き、Q、C、D、MT、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□ Sそれぞれ図の2 チチェッェクリッストク(質問表) 図2 チェックリスト(質問表) ・・・・・・・・・・・□ リストを少し掘り下げて説明しま ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ す。 図1 チェックリストの構成 図1 チェックリストの構成 ■Q(品質)チェックリスト 質問内容に対して、選定した改善対象ラインの状態を 発生・流出防止や品質関連データの活用状態などに昨 照らし合わせ、既に実施済、計画中、未実施、非該当な 今重要度を増しているトレーサビリティを加えた5つ観 のかを選択していきます。(図2) 点で質問を用意しています。 その質問に答えていただくと、5ZEROマニュファク 【5つの観点】 チャリングのレベルが(図3)のように、点数として示 組立作業、トレーサビリティ、記録・データ管理、 されるようになっています。 センシング、解析 Dのチェックリスト ■C(生産性)チェックリスト Dのチェックリスト MTチェックリスト Cのチェック・・リ・ス・・ト・・・・・・□ MTチェックリスト 図3 チェックリスト(判定結果) Cのチェック・・リ・ス・・ト・・・・・・ 総合評価 2.5 人・設備・工程の効率やコスト管理状態など直観的な ・・・・・・・・・・・□ Sの・チ・ェ・・ッ・・ク・リ・・ス・ト・□ Qのチ・ェ・・ッ・ク・・リ・・ス・・ト・・・・・□・・・・・・・・・・・・・・・□□ Sの・チ・・ェ・・・ッ・・・・ク・・Qリ・・(・・ス・・品ト・・□・質・□) 2.6 Qのチ ・・ ェッ ・・・・・・ ク ・・・ リスト ・・・・・・・・□・□・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ 観点に、技術伝承の課題感から技能・技術の自動化の観 ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・・・・・・ □ ・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□・・・・・・・・・・・□ C(生産性) 1.8 ・・・・・・・・・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□ □ ・・・・・・・・・・・・・・・・D・・(・・納・□期) 2.5 ・・・・・・・・・・・□ ・□ 点を加え、8つの観点で質問を用意しています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・M・・・・T・・(・・□□ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・□ 設備保全) 2.8 ・・・・・・・・・・・・・□・・・・・・□□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□□・・□ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・□・・・□ S(安全・セキュリティ) 3.0 図図22  チ図ェチ2ックチェリェックリスリトス(質問ト表() 質問表) 【8つの観図点2 チ】ェックリ図ス2ト(質チ問ェッ表ク)リスト(質問表) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□ ・・・・・・・・・・・□ スト(質問表) ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□ 図4 総合レベル評価 段替え計画、部品ピッキング、作業指示・作業標準書、 図1 チェックリリスストトのの構構成成 設備配置、組立工程、検査工程、コストダウン、 技能・技術の自動化・簡易化 ■D(納期)チェックリスト 受注、購買、生産の計画・状態可視化レベルなどの観 点に災害等のリスク対応の課題感からBCP対応を加え た、7つの観点で質問を用意しています。 図6 参照資料 【7つの観点】 生産計画・管理、部品手配計画、標準工数設定・管理、 図3 チェックリスト(判定結果) 設計手法、BCP対応、生産方式、受注・納期管理 総合評価 2.5 Q(品質) 2.6 図3 チェッ図ク3リチスェットクリ(ス判ト(判定定結結果果)) 総合評価 2.5 Q(品C(質生)産性) 2.16.8 D(納期) 2.5 C(生産性) 1.8 MT(設備保全) 2.8 D(納S(期安)全・セキュリティ) 2.35.0 MT(設備保全) 2.8 図5 C(生産性)のレベル評価 S(安全・セキュリティ) 3.0図4 総合レベル評価 図4 総合レベル評価 seiden 2022 特別号 5 図6 参照資料 図6 参照資料 図5 C(生産性)のレベル評価 図5 C(生産性)のレベル評価
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■MT(設備保全)チェックリスト 次のレベルを狙うためには、「Cのレベルを底上げす 設備保全に関するPDCAのレベルを4つの観点で質 る」というのが一つの改善ターゲットなります。スコア 問を用意しています の低いQ、C、Dの3つをまとめて重点課題に取組む、 【4つの観点】 という改善目標もあり得ると思います。このように改善 保全方法、保全計画、管理、現場サポート ポイントを総合レベル評価の結果から決めていくやり方 が一つ目のポイントとなります。 ■S(安全・セキュリティ)チェックリスト 2つ目のポイントは一段階ブレークダウンして項目別 安全に関しては対象ラインの診断という観点ではな のレベル評価に焦点を絞って次の改善ターゲットを把握 く、工場全体の安全に対する取組状況という観点で質問 するやり方です。 を用意しています。 質問票に回答すると、総合レベル評価に加え、項目別 情報セキュリティはSの重要な観点であると認識して のレベル評価も示されます。 おりますが、ものづくり場面だけでなく、会社全体で取 (図4)の例でスコアの低かったC(生産性)の項目別 Dのチェックリスト り組む課題の側面も大きいことから、現段階ではまず安 レベル評価の結果を(図5)に示します。MTチェックリスト Cのチェック・・リ・ス・・ト・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ 全に絞った内容にしています 生産計画・管理、Q作 Sの・チ・ェ・・ッ・・ク・リ・・ス・ト・□ のチ・業ェ・・ッ・ク・指・リ・・ス・示ト・・□・・・、・・・・検・□査工・程・・・・は・・・・・2・□.5を超える ・・・・・・・・・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ レベルの一方で段替え・・・・・計・・・・・・・・画・・・・・・□・、・・□・・コ・・・・ス・・□トダ・・・・ウ・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□・・・・・・・・□ ン、技術・技能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ 取得の簡易化がレベル1となっています。 図2 チェックリスト(質問表) 図2 チェックリスト(質問表) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□ ・・・・・・・・・・・ほ□ ぼ人に頼っ 3-2 チェックリストの使い方 ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ た状態ですので、ここ・・・・・を・・・・改・・□善ポイントにすることで、C 図1 チェックリストの構成 チェックリストの質問票に答えることで5ZEROマ のレベルを押し上げ、さらには総合レベル評価のスコア ニュファクチャリングの到達レベルが示されます。 も改善することが見込まれます。一段階ブレークダウン ここではその算出された結果をどう活用するかという することで、改善点を明確化するのが2つ目のポイント 使い方について2つのポイントをご説明します。 です。 1つ目のポイントは、総合レベル評価で全体感を捉え このように、5ZEROマニュファクチャリングを進め て、次の改善ターゲットを把握するやり方です。 るための最初の一歩として現状を把握し、改善ポイント Q、C、D、MT、Sの質問票に答え終えると、(図4) を絞って、次に進むべき道標を得るためのツールとして のような総合レベル評価として結果が示されます。この チェックリストが有効であることをご理解いただけたの 図3 チェックリスト(判定結果) 例の場合、総合評価は「2.5」となっており、次に狙う 総で合評は価 ないかと思い2.5ます。 Q(品質) 2.6 べきレベルは「3」となります。(図4)のレーダーチ C(生何産性も) ないところ1.8から道具も持たずに新しい道を進むの D(納期) 2.5 ャートを見たとき、S、MTDはのチェ次ックのリスト目標のレベル「3」 MはT(設勇備保気全)が必要です2.8が、5ZEROマニュファクチャリング MTチェックリスト S(安全・セキュリティ) 3.0 Cのチェック・・リ・ス・・ト・・・・・・□ 相当に達している状況です。・一・・・・方・・・・で・・□CのSのレ・チ・ェ・ベ・ッ・・ク・リ・ル・ス・ト・□が「1.8」 においてはチェッ図ク4 総リ合レスベルト評価を携えて、初めの一歩を踏み Qのチ・ェ・・ッ・ク・・リ・・ス・ト・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ となっており明らかに他・・・と・・・・比・・・・□・べ・・・・て・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□ □ レベルが低い状況で 出してほしいと考えています。 ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・□ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ す。その後、Dの「2.5 ・・・・・・・・・・・□ ・・・」・・・・、・・・・・・・・Q・・・・□・の・・□「2.6」・・と・・・・・・・続・・・・・・・・き・・・□・・ま□ す。 図2 チェックリスト(質問表) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□・・・□ 図2 チェックリスト(質問表) ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ ・・・・・・・・・・・□ 図1 チェックリストの構成 図6 参照資料 図5 C図(5 生C(生産産性)の)レベのルレ評価ベル評価 図3 チェックリスト(判定結果) 総合評価 2.5 Q(品質) 2.6 C(生産性) 1.8 D(納期) 2.5 MT(設備保全) 2.8 S(安全・セキュリティ) 3.0 図図44総 合レ総ベ合ル評レ価ベル評価 図6 参照資料 6 seiden 2022 特別号 図5 C(生産性)のレベル評価
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 第4章 5ZEROマニュファクチャリングの概要 ものづくりのQ:品質、C:生産性、D:納期、MT:設備保全の各領域における進化のプロセスを5ZEROマニュフ ァクチャリングの全般的なレベル区分と、それぞれの要件定義や目標指標をレベルアップのポイントとともに解説しま す。 ①コイル生産ラインの構成 4-1 全般的なレベル区分 コイル生産ライン構成は、エナメル線をコイル状に加 ターゲットのラインをチェックシートでレベル診断し 工し、端末を処理する工程から成り立っています。その た後、どのレベルまでラインをデジタル化により進化・ 詳5Z細ERはO下 マ記ニュのフとァクおチりャリでングすの。適(用図-3コ)イル生産ラインの例① 改善していくかの目標を定めます。 コイル生産ライン構成 第1章で述べたように、ものづくりの将来像である 巻線機 ハンダ漕 テープ巻線機 特性検査装置 外観検査装置 5ZEROマニュファクチャリングでは、ものづくりのQ( ノズル エナメル線 品質)、C(生産性)、D(納期)、S(安全・セキュリティ)、 MT(設備保全)の各領域におけるレベル 1~4の要件を ボビン 定義している一方、その実現時期を2030年までの長期 設備 巻線機 ハンダ漕 テープ巻線機 特性検査装置 外観検査装置 作業 巻線作業 ハンダ付け 絶縁処理 特性検査 外観検査 的視点にもとづくロードマップで示しています。(図1) からげ作業 エナメル線端末処理 段取り替 エナメル線交換 ハンダ量調整 テープ交換 また、そのレベルはデータ活用の形態やデータがつな (C、D) 巻き数設定 品質管理 テンション管理 成分分析 テンション管理 がる範囲によりおおよそ区分することが可能です。(図2) (Q) 設備管理 設備故障診断、設備保全、チョコ停対応 測定器校正 検査器校正 (MT) ノズル交換 Copyright 2019 NECA All rights reserved. 3 図3 コイル生産ラインの構成 ②品質向上(Q)に関する要件定義、目標指標 品質に関して、レベル1の作業者の検査強化による再 発防止から、レベル2では機械化された仕組みにより源 流改善を行う再発防止に向上し、レベル3では自動的に 取得したセンシングデータにより不適合製品が後工程に 流出しない状態になります。 図1 5ZEROマニュファクチャリングのロードマップ レベル4では品質ネットワークと人工知能(AI)の融合 5ZERO マニュファクチャリングのレベル区分の考え方 により不適合製品が作られないレベルに向上します。 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 マニュ 手動 一部自動化 このようなレベルアップにともない、工程内の不適合 5ZERO    自動化  自律自動化 ファクチャリング  一部協調  協調  AI適用 のレベル区分 率は、レベル1の1%から、レベル2の0.1%、レベル3 の100ppmに、レベル4ではゼロにそれぞれ改善する ものと想定しています。(図4) データ活用の切 紙データ管理 電子データ ビッグデータ AI り口で区分する 見える化 解析 自律制御 と・・・ レベル区分 定義 目標 不適合率 レベル 2⇒レベル 3のポイント ☑ 完成試験の自動化 ➡通電試験 つながる範囲の 個別生産ライン内 複数生産ライン間 複数工場間 複数企業間 品質ネットワークとAIの ☑ センサの活用 切り口で区分 レベル 4 融合による品質確保 ゼロ ➡ テンション管理 すると・・・ ➡ ハンダ成分分析 ➡ エナメル線巻き状態 センサによる計測で品質 ☑ カメラの活用 レベル 3 特性を測定し、不適合 100ppm 品が発生しない ➡ エナメル線供給用ノズル先 C図opyrig2ht 20 19 N5ECAZ All ERO 端部状態の管理、監視 rights reserveマd. ニュファクチャリングのレベル区分の考え方 2 品質管理活動のフィード ☑ 品質検査結果のデジタルデータ バックにより不適合品が 保存 レベル 2 再発しない機械化され 0.1% たしくみ ノズル部 4-2 要件定義と目標指標 管理 エナメル線 作業者による品質確認 状態管理 レベル 1 を実施 1% テンション管 理 本項では、制御リレーや電動機などに搭載されている コイルの生産ラインを参照しながら、5ZEROマニュフ 図4 5ZEROマニュファクチャリングの要件定義《Q:品質》 ァクチャリングのQ(品質)、C(生産性)、D(納期)、MT( 設備保全)の各領域における各レベルに関する要件定義 ③生産性(C)に関する要件定義、目標指標 や目標指標を提示します。さらに参考までにレベル2か レベル1ではコイル巻き工程でギアを利用した巻き工 らレベル3に向上するためのポイントを図示します。 具で人が作るが(手作業組立)、レベル2ではコイル巻き の回転部分をモータ駆動にしてエナメル線の配置位置を seiden 2022 特別号 7
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手動で調整する段階になります。(一部自動化) ⑤設備保全(MT)に関する要件定義、目標指標 レベル3では基本的には工程要素は機械が自動的に行 レベル1では、作業者によるブレークダウンメンテナ い、工程・設備間の搬送や外観検査のみをひとが行う状 ンス(事後保全)と設定した点検項目による定期点検を実 態になります。(総合的な自動化) 施します。 さらにレベル4ではライン内に作業者は存在せずに、 レベル2では、定期点検を不要にして設備側でセンサ 設備段替え、故障診断も機械が行うこととなります。 などにより常時故障監視を行い、異常時にはブザーや接 (完全自律自動化)これにより、自動化率はレベル1の 点信号などで知らせるとともに設備停止します。 5%から、レベル2の50%、レベル3の80%にそれぞ レベル3では、技術者がリアルタイムで遠隔監視を行 れ向上し、レベル4では自動化率は100%となりライン なえる状態になり、現場での故障修理もロボットが実施 内の作業者は完全にゼロとなります。(図5) できるようになります。 さらにレベル4では、故障診断や修理の判断をAIが行 レベル区分 定義 目標 自動化率 レベル 2⇒レベル 3のポイント * ☑ 基本の工程作業は自動化。 うことになり、機械学習により修理作業や故障の予知診  巻き線 完全自律自動化 100%  エナメル線のトラバース レベル 4 無人化 エナメル線のボビンからげ 断もAI適用ロボットが自律的に実施する状態に移行し    エナメル線の切断  端末はんだ処理 ます。このようなレベルアップにより、設備停止率はレ  絶縁テープ ほぼ自動化。ワーク脱着 レベル 3 は手動 80%  完成試験 ベル1の5%から、レベル2の3%、レベル2の1%とな ☑ 設備間の搬送、段取り替え、外 観試験。ワーク脱着のみヒトが 行う り、究極のレベル4では0%のダウンタイムゼロを達成 自動化設備と手作業の レベル 2 混合作業 50% します。(図7) 治具等の使用はあるが レベル区分 定義 設備 停止率* レベル 2⇒レベル 3のポイント レベル 1 手作業が中心の工程 5% ☑ センサ、カメラ等でリアルタイムで コイル巻線自動機 設備自身が自己診断を 使用期間・回数、劣化状況を 確認⇒部品交換時期を予測 (注*)5ZERO マニュファクチャリングの目標値は最終的に「ゼロ」を目指すが、ここでは数値 目標を自動化率として「100%」としている レベル 4 行い、自動的に保全を ゼロ 実施する ☑ カメラによるエナメル線供給用ノ 5 ズルの状態の遠隔監視、保全 図5 5ZEROマニュファクチャリングの要件定義《C:生産性》 ➡ ノズル先端部のカケ発見 リモート診断 ➡ ノズル部品の供給 レベル 3 保全員による遠隔修理 1% ➡ ロボットアームでノズル交換  ➡試運転で自己診断 ④納期(D)に関する要件定義、目標指標 各種センサによる異常検 レベル1では、100個程度の工程ごとの標準品のロッ レベル 2 知 3% ノズル部 故障カ所の自動診断 管理 ノズル部 交換 ト生産を行い、工程間を中間在庫としてのトレーに入れ オペレータによるマニュア 5% て移動させます。 レベル 1 ル保全 エナメル線供 給用ノズル レベル2ではロット数を少なくして工程間の在庫をな (注*)設備停止率=(故障修理、点検、メンテナンスなど設備停止時間)/(設備停止時 間+設備稼働時間) くしたものとなり、レベル3ではロット生産は行わず、 図7 5ZEROマニュファクチャリングの要件定義《MT:設備保全》 1個流しが可能な状況となるが、外観検査待ちのような 工程間の在庫は僅かながら存在します。 このように5ZEROマニュファクチャリングについ レベル4にレベルアップすると全工程が連続的に実施 て、品質:Q、生産性:C、納期:D、設備保全:MTの されるようになり工程間在庫がなくなります。このよう 各領域で要件定義されたコイルの生産ラインでは、理想 なレベルアップにともない、コイルの生産リードタイム 的なレベル4において、下表のような手法を取ることが は、レベル1の1週間程度から、レベル2の1日、レベル 想定されます。 3の1時間に短縮されて、レベル4では10分と限りなく この実現のためには、コイル生産メーカは、ITベンダ、 ゼロに近づくこととなります。(図6) 情報通信ベンダ、装置メーカ、材料メーカとの連携、協 力関係を構築することが必要となります。(図8) レベル区分 定義 目標 生産LT レベル 2⇒レベル 3のポイント 巻線 ハンダ付け 絶縁処理 特性検査 外観検査 ☑ 1個流しが可能。 カスタム品生産 ☑ 自動化の推進が前提。  工程 1個流し 10分  巻き線⇒からげ⇒端末処理 レベル 4  停滞ゼロ ⇒絶縁処理⇒特性検査の  自動化  自動化のためのセンサ設置 多品種生産  ID、データの管理 センシング テンション センサ カメラ ハンダ成分測定器 振動 温度 電気特性検査装置 センサ センサ (電流・電圧・抵抗) カメラ レベル 3 1個流し 1時間  搬送手段 中間在庫あり ☑ 工程間には、中間在庫が存在。  特性検査後に(ヒトが行う)外 データ収集 テンション ノズル形状 ハンダ液成分 モータ軸受 モータ巻線 コイル電気特性 コイル全体 観検査待ちのトレーに一時 データ 画像 振動 温度 (電流・電圧・抵抗) 画像 複数種類生産 保管 レベル 2 小ロット生産、 1日 中間在庫なし 解析 巻線状況 ノズル摩耗 ベアリング ハンダ付け適合性 摩耗 負荷状況 コイル品質 コイル品質 自動化の推進が必要 ノズル 同じモノを生産 1個流し 自律 テンション 制御 自動交換 ハンダ液自動交換 モータ交換 負荷制御 不良製品自動排除 不良製品自動排除 レベル 1 ロット生産 1週間 最短生産LT (モノカスタ  マイゼーション 自動制御 ) Q C Q MT Q C D MT Q MT Q C Q C D Q C D ITベンダ 情報通信ベンダ 装置メーカ 材料サプライヤ 実現方法  コンピューティング技術  ネットワーク技術  ロボット制御技術  材料品質管理技術 図6 5ZEROマニュファクチャリングの要件定義《D:納期》  AI適用技術  セキュリティ技術  自動搬送技術 図8 コイル生コ産イルラ生産イラインンでのでレベのル4レの達ベ成方ル法4の達成方法 8 seiden 2022 特別号
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 ⑥安全・セキュリティ(S)に関する要件定義 目標指標 5REROマニュファクチャリングにおける安全(S) のレベルの考え方はQ,C,D,MTとは異なり、やるべ き対策の内容が実施されているかをチェックする考え方 で作成しています。 労働安全、機械安全はそれぞれの職場や製造現場の危 険度で対策のカテゴリーは異なるため、5ZEROの観点 では必要な安全対策が実施されているかどうかを確認し ます。また、昨今のDX化に伴い、情報セキュリティは 安全の観点から重要であり、独立行政法人 情報処理推 進 機 構(IPA) が 作 成 し て い る 対 策 を 参 考 に 今 後 5ZEROの考え方を整理していきます。 よって、現在の5ZEROのチェックリストは労働安全、 機械安全の観点で作成しています。 seiden 2022 特別号 9
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第5章 5ZEROマニュファクチャリング導入ガイドライン 本章では、ものづくりの実務者の視点で、IoT、AI、デジタル化を活用したものづくりの自動化、センシングデータ の収集と解析の要点を示すことにより、ものづくりのQCDを改善し、5ZEROマニュファクチャリングの全体のレベ ルアップに寄与することを目指しています。各項目の内容については状態に応じて“ステップ”と言う表現で説明をし ています。 5-1 自動化への取組みについて レベル 1 レベル 2 5ZEROマニュファクチャリングのもっとも基本的 な基準である自動化の進化について、ステップ1では部 材、製品の確認やピッキング、搬送、組立などの作業は ☑部品倉庫からのピッキング作業はヒトが紙の製作指示書、 ☑部品のピッキング作業にバーコードリーダ、PCを導入 材料表を目視で照合したうえで行なう ☑前準備作業は内段取りから外段取りに進化 手作業から、ステップが上がるに伴い、部材情報の取得、 レベル 3 レベル 4 MES/ ERP MES/ERP 照合作業にバーコードやPCの導入など、あらゆる場面 バーコードリーダー 検査装置 コントローラ 検査装置 部品倉庫 コントローラ 部品倉庫 バーコードリーダー 搬送車 でデータ収集と活用が進み、搬送作業にもロボット、搬 搬送装置 ロボット 搬送車 設備機器・ロボット 搬送装置 ピッキング作業 送装置が導入されます。さらに、生産計画も製造実行の ☑部品ピッキング作業に搬送車が導入されて自動化。部材 ☑自動搬送機、自律型搬送ロボットの導入が進む 受け渡しや払い出しもコントローラが導入 ☑ IoT、AI機能を搭載したPCシステムによる4M情報の管理 ための最適スケジューラが活用されて生産性は格段に向 ☑部品実装機や画像検査機により組立、検査が自動化 ☑製造実行システム、最適スケジューラによるデジタル生産 【図2: 自動化のレベルアップのポイント】 上していきます。(図1) 図2 自動化のレベル区分 5-2 センシングデータの収集・管理による改善 何らかのエネルギーや事象を検知し、電気信号に変換 する機器であるセンサは技術革新によりその対象、検出 速度、容量、大きさ、耐環境性などが向上、拡大すると ともに、自動認識機能、簡易設定機能、メンテナンス対 応機能などの新たな付加価値機能が搭載されるようにな ってきました。 さらには、ディープラーニングをともなうAI技術の利 図1 自動化のレベル区分 用により、画像認識用のセンサなどのように、膨大なデ ータ処理を前提とするアプリケーション例も具体化しつ また、ここでのポイントとして、ステップ1からステ つあります。このようなセンサやデータ処理の発達によ ップ2へ進化する場合、棚番や部材情報を電子データ化 り、ものづくりの領域でもシステムの制御や工程異常の する必要があります。この作業をデータ化するためバー 検知などが、より高精度化、高度化、高速化、大容量化 コードリーダなどの活用で、部品準備作業が内段取りか されて、これまで考えられなかったような品質改善、生 ら外段取りへと変更されて作業性が向上します。 産性向上、設備保全の合理化などに寄与できるようにな 次に、ステップ2からステップ3に進化する場合、部 っています。 材のピッキング、搬送作業など人が主体ですが、制御機 このようにものづくりの改善に貢献するセンサ活用で 器や搬送装置の導入、組立・検査作業に自動化装置が活 は、どのような対象やデータをセシンシングするのかと 用されることで作業がインライン化されていきます。 いうことが重要になってきます。 また、生産ラインの装置や部品の状態監視にも、セン ものづくりのQ、C、D、MT、Sの各領域で改善を達 サやデジタル計測機器が全面的に導入されて品質レベル 成するために必要なセンシングの対象や方法との間には や設備保全の効率が向上していきます。 相関性があるために、充分考慮する必要があります。(図 更に、ステップ3からステップ4への進化の際には、 3) AI機能を搭載したコントローラや上位システムと連携 したリアルタイムのデータ管理や制御が行われて、設備 稼働も含めた生産計画の最適化がスケジューラの活用に より究極の自動化が実現すると想定されます。(図2) 10 seiden 2022 特別号
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 による“品質データの見える化”、工作機械の表示灯の ものづくりの領域 データの種類 検査 情報とセンシング可能な作業状態を結びつけた“稼働率 寸法 温度 湿度 計量値 Q 品質関連 の見える化”をしてみる。ライン全行程規模の取り組み 日付 ロット 製造番号 作業者 設備番号 では、工程毎に課題を抽出して工程単位で改善ポイント C コスト関連 設備稼働率 (設備運転時刻) 生産実績 を決めるなどの工夫でスモールスタートを検討するな 工程内 ど、電子データ活用の第一歩を踏み出すことが必要であ D 納期関連 部品入荷日 進捗記録 生産計画 ると考えます。 S 安全関連 事故報告書 ヒヤリハット 安全パトロール 記録 記録 MT 設備保全 点検項目 故障履歴 総稼働時間 5-3 データ解析、AI適用  データ収集と管理にはコストが発生するために、費用対効果も考慮し、記録、保存する対象を決定する必要がある 図3 【図デ3:ーデータタのの種類種】 類 ものづくりの現場に多量のセンサの設置や、他の手段 によりいわゆるIoT化が浸透していくと、ものづくりで その一方で、そのセンシングによるデータ収集には、 扱われるデータ量は加速度的に増加します。先進的な工 コストが発生するために、費用対効果も考慮しながら、 場においては、リアルタイムで製造データ収集が進み、 その対象や方法を決定する必要があります。このセンシ ビッグデータを活用した設備故障の予兆管理や部品まで ングによるものづくりの改善でも、5ZEROマニュファ を含む統合的なトレーサビリティシステムやミリ秒単位 クチャリングの各ステップ別の要件が定義されていま の品質管理などに活用されると想定されます。 す。 このようにセンシングなどにより収集されたビッグデ ステップ1では、自動化のステップ区分と同様に、セ ータの高速のデータ処理や解析にAIが活用されて、もの ンシング作業は人的作業に負うことが多く、センシング づくりの現場における品質異常に対する予兆管理やロボ データは紙による記録が中心で、センサも単独で使用す ットによる生産性の改善に大きく貢献することが予測さ るもの、またはアナログ式の場合が多くなります。 れます。工場全体の大規模な取り組みだけではなく、特 ステップ2に進化すると、センサはアナログ出力や通 定の“設備の非稼働時間の削減”や“熟練工の技術伝承” 信機能が備わったものが使用されるために、センサ出力 など、課題や目的をはっきりさせ、必要なデータに絞っ をそのままデータとして収集可能となり、サーバなどの たデータ解析やAIの適用で成果を得る事も可能となり 電子機器により保存できるようになります。 ます。 ステップ3では高速化、大容量化したセンサが使われ テクノロジーの発展を背景に、ものづくりの品質、生 てMESなどでデータ管理できるようになり、 産性、納期、設備保全などの改善に寄与すると想定され ステップ4では、センシングのマルチ化、デジタル化、 るデータの解析についても、5ZEROマニュファクチャ インテリジェント化が進み、クラウド上にデータが保存 リングのレベル区分にしたがって、取り組みのステップ されて他社との連携に活用されるようになると想定され を定義付けることが可能です。(図5) ています。(図4) 図5 データ解析のステップ区分 図4 センシングデータの収集と管理のステップアップ区分 ものづくりのデータ解析も、自動化やセンシングと同 このようなセンシングデータの収集、管理において、 様にレベル1では解析作業を人が行うのに対して、セン 現在の生産現場担当者の多くが関心を持つステップ1か シングデータ収集の自動化、高速化、大容量化が進むに らステップ2への進化については、現場主導で費用対効 したがって、解析の「ツール」も表計算アプリから専用 果を踏まえて具体化を検討する必要があります。計測器 解析アプリ、さらにはクラウドやAI、多変量解析手法な のメーターを撮影して画像処理でデジタル化して活用す どを適用した状態まで進化していくことが予測されます。 るなどポイントを絞った取り組みや、記録のデジタル化 このような方法により解析されるデータは、 seiden 2022 特別号 11
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ステップ1では人による収集されることが多いために 機器の導入が前提となってきます。 短期的な傾向管理や限定的な範囲での予測にとどまりま また、センシングされたデータの活用でステップ3に す。 進化するためには、製品固有のIDによりトレーサビリ ステップ2ではPC端末ベースで中長期的な傾向管理 ティを確保してリレーショナルなものづくり体制を構築 や不適合品の未然防止活動への活用が可能となります。 して、高速大容量の通信ネットワークやMES対応の大 ステップ3では常時収集された膨大な計測データと制 容量サーバなどのインフラの導入が必要になっていきま 御機器の処理データに基づき解析用アプリケーションを す。 活用して不適合の未然防止が可能となります。 さらにデータ解析では、ステップ3への向上に向けて、 ステップ4ではセンサや生体監視機器により収集され リアルタイムで常時監視が可能な計測データを解析する た超大量の計測データや制御機器の処理データに基づき ための解析アプリケーションの導入が必要となり、その MES/ERPや複数のアプリケーションが活用されて不 場合には、ものづくりの現場でのすり合せのためのベテ 適合の発生予測や未然防止制御が可能な解析が実現でき ラン有識者とSIerとの協業を可能とする業務フロー設 ると予想されます。 計も必要となってきます。 収集されたデータ活用としての見える化については、 このように、5ZEROマニュファクチャリングでレベ ステップ1では作業者が日々の生産情報を記入したグ ル3以上にレベルアップさせて、ものづくりの品質、生 ラフを製造現場に掲出して改善活動に役立てています。 産性、納期、設備保全の改善を実現させるためには既存 ステップ2ではデータが電子化されてPC端末で集計 の制御機器メーカとして保有するリソース(ヒト、モノ) されて、グラグなどの加工ができるようになります。 にとどまらず、 ステップ3では膨大に増えたデータを解析する専用の ①コンピューティング技術やAI適用技術、トレーサビ 解析アプリケーションが見える化でも活用されるように リティ技術を保有するITベンダ なり ②ネットワーク技術やセキュリティ技術を保有する情 ステップ4ではAIが活用されてリアルタイムによる 報通信ベンダ 常時監視が可能となります。(図6) ③ロボット制御技術や自動搬送技術を保有する装置 メーカ ④材料品質管理技術を保有する材料サプライヤなどと の協力、連携が必須となります。また、そのような連携 により、新たなインフラなどのハードウェアやソフトウ ェアを自社のものづくりに導入する際には、それを導入 するための投資とその導入によるものづくりのQ、C、 Dの向上としての効果を数値指標化して、適正な範囲や 規模により新しいものづくりのインフラなどを導入する 経営判断が必要となってきます。(図7) 図6 データ解析の見える化 5-4 ものづくりの進化におけるセンシングデータ とデータの活用について(まとめ) 5ZEROマニュファクチャリングでは、ものづくりの 品質、生産性、納期、設備保全の改善を図るためにデジ タル化を伴う自動化が大きな要素となることを前提条件 としています。 その要件定義では、レベル2からレベル3へレベルア 図7 5ZEROマ【図ニ7:ュフ5ZEァROク マチニュフャァクリチャンリンググののレベレルアベップルのたアめのッ検プ討事の項た】 めの検討事項 ップする際に自動化が大幅に進展するものとされていま す。 これまでに見てきたように、レベル3で自動化を定着 させるためには、部材の取り出し、搬送装置の受け渡し のためのロボットや搬送装置の導入が必要となってくる とともに、その部材情報をICタグなどで読み取るための 12 seiden 2022 特別号
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 第6章 ユースケースのご紹介 本章では、NECA会員およびNECA会員顧客による、先進的なものづくりの取組み事例を紹介し、5ZEROマニュフ ァクチャリングを進めていく上での活用方法について解説します。 これまで述べてきた通り、5ZEROマニュファクチャリングは「Q、C、D、MT」の各領域について現状を診断し目 標レベルを定めた上で、改善に取組んでいきます。今まで取組んできたユースケースの一覧を(図1)に示し、(図2) には各ユースケースの達成レベルの一覧を示します。今回は、ユースケース⑨、⑩、および⑪を紹介いたします。 図1 ユースケース一覧    図2 各ユースケースの達成レベル 機能付き積層表示灯とWeb監視カメラを後付けで導入 ユースケースの活用について することで機械の稼働監視を実現し、生産性レベルを2 5ZEROマニュファクチャリングの進め方について、 に向上したケースです。 汎用的な視点による、ガイドラインと導入ツールとして のチェックリストについて紹介してまいりました。 ユースケース3 一方で、5ZEROマニュファクチャリングを実現する 『セル生産ラインのデジタル化による品質・生産性の向上』 うえでの具体的な手法については、企業規模、業種、対象 所謂、多品種少量生産ラインの事例です。セル生産の 設備や範囲などにより千差万別になると考えられるため、 工程毎にQ、C、MTの診断と目標レベルを定め、ライ ユースケースは参考情報として有益なものとなります。 ン全体における品質と生産性レベルを1から3に向上し たケースです。 例えば、「先進的なものづくりの狙い、5ZEROマニ ュファクチャリングのレベルアップのポイントと効果、 今回ご紹介するユースケースは、チェックリストの検 および具体的な導入ツールなど」について、自社のQ、C、 討・作成と並行して取組んできたものになるため初期の D、MTの改善による利益の創出のヒントがユースケー 診断は各メーカのノウハウに依存していますが、その内 スの中にあるかもしれません。 容をチェックリストに反映させてきたものでもありま 今回ご紹介するユースケースについていえば、作業記 す。 録や品質データのデジタル化のようなシンプルなものか ら、汎用の積層表示灯とWeb監視カメラを組み合わせ 今後は更に、初期診断からチェックリストを活用した たもの、セル生産ライン全体の改善に取組んだものと、 ユースケースの拡充も図ってまいります。 それぞれ特徴のあるものをピックアップしました。 これらのユースケースが、5ZEROマニュファクチャ リングを検討・実行していくにあたり、ものづくりの実 ユースケース1 務に携わる方々の一助になれば幸いです。 『生産現場の作業記録デジタル化とデータの見える化』 超多品種混流生産ラインにおいて、ほぼすべての工程 で人に頼っていた作業記録・品質データをデジタル化・ 見える化し、品質と生産性レベルを2に向上したケース です。 ユースケース2 『表示灯を活用した工作機械の稼働率見える化』 NECA会員顧客の事例です。既存の工作機械に、無線 seiden 2022 特別号 13
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ユースケース1 アズビル 株式会社 湘南工場 C From to 生産現場の作業記録デジタル化(生と産デ性ー) タの見レえベるル化1⇒レベル2 C FromC toF r o m to   (生産性) レ(生ベ産ル性1) ⇒レレベベルル21⇒レベル2 1.湘南工場の紹介 くの時間がかかり、また不具合是正などの品質管理活動  アズビル湘南工場(神奈川県高座郡寒川町)では、自 のPDCAサイクルにも遅れが生じてしまう状況でした。 動調節弁や差圧・圧力発信器などのフィールド機器、工  過去には、市販のトータルパッケージの採用を試みま 業市場・ビル市場向けのシステム製品、センサや流量計 したが、多くのカスタマイズ費用が必要なため導入を断 などのコンポーネンCトopy製righ品t 20と20 NいECっA Aたll righ多ts re種ser多ved. 様な製品を生 念し、社内のIT部門主導でシステム導入も試みま1 したが、 産しています。 現場の細かい課題への対応ができずに断念しました。  2019年4月に新棟竣工、国内生産拠点の集約により  このような失敗例もあったため、作業記録・品質デー Cアopyrズight ビ 202ル0 NのECAマ Allザ righーts re工serv場ed. とCoしpyrigてht 2役020割NEをCA ス All タrightーs resトerveさd. せました。 タは手書きのままの状態が1続いており、5ZERO1マニュ  マザー工場として高い品質レベルを確保するため、「直 ファクチャリングのレベル1のままで停滞していまし 感的に分かる品質データの可視化と共有、PDCAのス た。 ピードアップ、それを工場全体に展開し、品質KPIの標 準化」を目標に掲げておりますが、工場全体を見渡すと、 3.改善内容(具体策) 人に頼った管理が多く存在している状況でした。 【スモールスタートで、レベル1から抜け出す一歩を踏  今回、湘南工場で実践した、人に頼った作業記録・品 み出す】 質データをデジタル化・見える化し、現場管理の生産性  マザー工場の目標と課題、過去の失敗事例を踏まえ、 と品質向上を図った取り組みをご紹介します。 まずは現場主導でのスモールスタートを目指し、以下の 3点の重要視して取り組みました。 2.現状課題 ①手書き工程のデジタル化とデータ活用に機能を絞って 【超多品種混流生産ラインのほぼすべての工程で作業記 電子化 録、品質データが人による手書き記録】 ②現場メンバーが中心となって実施できるような体制・  差圧・圧力発信器の生産ラインでは数万台/年(2018 ツールの提供 年度実績)の生産に対して、およそ8,000種類の型式 ③ターゲット工程を決めて、小さく始める を生産している超多品種混流生産ラインです。(図1)  差圧・圧力発信器ラインの最終検査工程では多品種の 各種品質チェックを実施しており、ここで非常に多くの 手書き記録を実施していたため、そこをターゲット工程 に設定しました。(図2) 図2 差圧・圧力発振器ライン ライン構成とターゲット工程  製品の型式毎に違う検査項目を自動設定し、それぞれ の品質チェックする作業をパソコンやタブレットで実施 する方式に変更しました。 弊社のIT部門が開発したツ 図1 差圧・圧力発振器 製品ラインアップ ールを使用し、設定から導入までの作業は現場主導で実 施しました。(図3)  この生産ラインでは、ほぼすべての工程で作業記録・ 品質データを作業員が紙に手書きで記録していました。 そのため、情報の取り出し、集計、報告書作成などに多 14 seiden 2022 特別号
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩 4.導入効果  最終検査工程は5ユニットの作業エリアが設置されて おり、そこに必要な初期投資はソフトウエアライセンス とタブレット・バーコードリーダーなどハードウエア費 用をあわせ、80万円ほどの費用が必要でした。  これに対し、生産現場や品質管理上で下記に示すよう な月40時間分のマンパワーが効率化されました。 ・紙データの情報まとめ、報告用再まとめ ・現場不具合の追跡作業、効果確認作業  直接的な効果としては上述の通り、現場作業員やリー ダーの負担軽減による生産性向上とタイムリーな品質デ ータの活用により品質向上への取り組み(PDCAサイ クル)のスピードアップが図られました。  加えて、現場主導でデジタル化、見える化を実施した ことにより、以下のような間接的な効果も得られており ます。 ・現場改革に対する気持ちづくり(ムード向上) ・標準化(定着化)に向けた取り組み加速  アズビルの取り扱う生産品目には個別受注生産やカス タマイズ生産が多く含まれており、その生産ラインでは、 まだまだマンパワーに頼った生産・品質管理が多く存在 しております。  今回は人に頼った作業記録を現場主導でデジタル化・ 見える化した事例となります。はじめの一歩を踏み出し 図3 手書き作業記録のデジタル化ツール たばかりですが、実感した成功体験を、更に発展、展開 させるべく、継続的に取り組んでいきたいと考えており  これにより、現場に埋もれていた品質データがデジタ ます。 ル化され、分断された情報が型式や時間などと繋がりを 持った情報として容易に取り出す事が可能になったこと アズビル株式会社 で、品質データの見える化にもつなげることができまし 技術開発本部、工程開発部 た。(図4) 先進工程開発Gr 矢野 貴史 〈引用〉 アズビルホームページ:生産 https://www.azbil.com/jp/corporate/production/index.html アズビルホームページ:作業記録システム https://www.azbil.com/jp/rcd/ 図4 品質データの見える化  手書き記録のデジタル化、品質データの可視化が、現 場主導で実現し、効果を体感するという成功体験を得る ことができました。 seiden 2022 特別号 15
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ユースケース2 株式会社 ツボサカ精工 様 表示灯を活用した工作機械の稼働率見える化 CC FrFormom tot o   (生(生産産性性) ) レレベベルル11⇒⇒レレベベルル22  本委員会所属の株式会社パトライトの顧客である株式  また、稼働率ではなく生産実績のみを管理していたた 会社ツボサカ精工様は1964年(昭和39年)の創業以 め、正確な稼働率やロスの時系列分析は困難で、加工サ 来、精密機械加工を主とし建設機械、農業機械、クレー イクルもストップウォッチで計測されていました。 ン等の油圧機器、産業機械部品(図1)を製造し、製品  稼働状況の把握という点では設備のHMIの履歴を見 の品質・技術の向上をはかる為、最先端の機械設備や産 れば設備ごとの稼働監視は可能ですが、全設備を見て回 業用ロボットを導入してお客様からは高い信頼をいただ ることは不可能です。その機能がない設備も多数あるこ けるよう日々努められている企業です。 とから、そのような環境下で作業員への指導や教育で改 CopyCroigphytr i g2h0t2 020N20ECNAE CAAll r iAghll trsig rhetsse revseedr.v ed. 善効果を数値化できない為、客観的な1 生1 産性評価もでき ませんでした。  このような課題を解決するため、まずは各設備の稼働 状況を可視化ツールで正確に把握する必要がありまし た。また、課題解決のための費用面においては、中小企 業である同社では導入促進のために、システムのコスト を極力下げた小額投資で既存設備を流用したソリューシ ョンを構築する必要がありました。 2.5ZEROマニュファクチャリング導入ツール の具体例  今回、ツボサカ精工様の対象となる既存の工作機械に、 ①無線機能付き積層表示灯(80台) 図1 ツボサカ精工様 生産品目 ②受信機(4台) ③Web監視カメラ  以下にツボサカ精工様の工作機械の稼働監視に関する ④可視化ソフト 取組概要をご報告いたします。 を後付けで導入し、積層表示灯の赤、黄、緑の情報を活用 することで、機械の運転、段取り替え、異常停止、正常休 1.導入の背景・課題 止などの正確な稼働状況をデータとして収集し、そのデー  同社で保有する多くの工作機械において、設備稼働状 タを自動で日報出力できるようにされました。(図3) 況の確認は日々の手書き日報(図2)を集計されており、 データの入力、資料作成に非常に手間を掛けられていま した。 図3 データ通信無線式積層表示灯システム 図2 手書き日報と集計データイメージ 16 seiden 2022 特別号
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Part1 5ZEROマニュファクチャリング NECAの考えるDX化への第一歩  また、マシニングセンタではドア開閉のインターロッ 現在、在籍する20名ほどの外国人研修生が、作業時間 ク信号を積層表示灯の青ランプを追加することで収集 の見える化で熟練度評価や作業品質を担保する仕組みと し、段取り作業時間の詳細を把握されました。(図4) しての活用など、国内スタッフ同様に見える化でモチベ ーションの向上にも繋がっています。 5.今後の展開  同社でも、昨今の労働者不足は深刻な問題ですが、今 回の取組みで現状を正確に把握できれば何らかの解決手 段を見つけることができるという気付きを得ることがで きました。今後、対象設備を56台追加する予定であり、 組立など手作業の時間の見える化も横展開検討されてい ます。  今回の取組みは非常にシンプルですが、現場のアイデ 図4 段取り替え刃具交換時間把握 ィア次第で活用範囲はまだまだあると考えられています。  今回のシステム導入により得られたデータから稼働中 データご協力: (緑色)以外の改善可能な時間を正確に把握し、現場担 株式会社ツボサカ精工 様 当者が分析することで作業改善されました。(図5) 取材者:  最終的には、既存設備をできるだけ流用され、トータ 株式会社パトライト ルの導入コストは押さえることができています。 グローバルマーケティング本部  近藤 敦 図5 表示灯の色の意味と活用例 3.5ZEROマニュファクチャリングの適合レベル  上記のような“ものづくりの改善”を目指された結果、 ツボサカ精工様の生産ラインにおける工作機械は、5 ZEROマニュファクチャリングの適合レベルは、生産性 においてレベル1からレベル2へのレベルアップを達成 されています。 4.レベルアップの効果  同社の新工場は2交代で操業し、人手不足から夜勤は 非常に少ない人数でオペレーションされています。手書 き日報の自動出力化が実現できたことと、設備稼働の見 える化が実現したことにより、様々なロスに気付き、夜 勤の稼働率が最大20%向上されました。また、ロボッ ト導入での費用対効果も数字で管理できるようになり、 設備投資の経営判断の指標ができました。現場にはカメ ラを導入設備の異常発生時刻から録画データを分析でき るため、分析作業時間も非常に短縮できました。  さらに、製造部門でのQCサークル活動では、改善効 果を金額換算するなど、コスト評価できるようになり、 seiden 2022 特別号 17
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ユースケース3 富士電機機器制御株式会社 吹上事業所 C From to セル生産ラインのデジタル化に(よ生る産品性質) ・生産性レのベ向ル上1⇒レベル2 C From to   (生産性) レベル1⇒レベル2 1.吹上事業所の紹介 (1)工程内不良共有システム  吹上事業所(埼玉県鴻巣市)では、電磁開閉器をはじ  試験機等で取得できる情報は自動で取得し、従来手書 めとしたFAコンポーネント機器および、ビルや工場に きで管理していた情報はタブレットに入力することで、 電気を供給・分配する配電制御システムを構成する受配 工程内で発生している不良の見える化を図りました。 電機器の開発・製造を行っております。 【改善前】 Copyright 2020 NECA All rights reserved. 1  年間数百万台を超える製品から多品種少量生産品まで  工程内不良はリアルタイムでは現場レベルの共有に限 多岐に亘る製品を製造しており、部品加工から組立てま られ、記録は手書き作業で行われていた。 での一貫生産により、フレキシブルな生産およびQCD 【改善後の効果】 Copyright 改202善0 NをEC推A A進ll rigしhtsて resおerveりd. ます。 ・管理者・現場監督・品保担当者に1 よる、リアルタイム  以下に「セル生産ラインのデジタル化による品質・生 な不良情報の共有 産性の向上」の取組みについてご紹介します。 ・スピーディーな改善指示や検討の実施 2.生産ラインの概要と課題 (2)作業工程ナビゲーション  今回ご紹介するのは、所謂、多品種少量生産にあたる  組立手順の異なる機種がランダムに流れてくるため、 受配電機器の生産ラインで、生産数は凡そ10品種で月 特に初級作業者にとっては複雑な作業と品質管理ポイン 産3,000台余りのものになります。 トを理解するのに時間を要していました。  これまでも、日々、品質・生産性向上の取組みを行っ  製品トレイのRFIDと連動し、現在組立を行っている て参りましたが、今回改めてデジタル装置の導入を前提 機種の組立方法や品質管理ポイントを動画や3D画像で とした改善検討を行いました。現場でのヒアリングから、 分かりやすく表示することで、作業効率向上と品質安定 小額投資で以下の課題解決を図ることを目標としました。 確保の両立を図りました。 ①作業ミス削減による生産性の向上 【改善前】  初級作業者が、作業手順を習得しなくても作業が出   作業者が組立手順等に迷った場合は、リーダに質問す 来るようにしたい。 るか、作業手順書を読み返すことで都度確認していた。 ②品質改善の取組みの迅速化 【改善後の効果】  品質管理データや工程内不良記録の手書き作業をな ・初級作業者の作業効率と品質が大幅に向上 くし、リアルタイムな情報共有を可能にしたい。 ・作業者間の組立品質レベルの均質化 ③状況見える化・データ分析による品質・生産性の向上  リアルタイムで情報を把握し、時間/日/月/年単位に よる、生産・品質管理データの傾向分析を可能としたい。 3.改革のポイント  生産工程全体に関わる改善および、工程に絞った改善 に分けて、7ケの改革を実施しました。 図2 作業組立ナビゲーション画面 (3)使用部品ピッキング  機種により使用部品が異なるため、ピッキングミスを なくすために導入しました。前項同様にRFIDを活用し 図1 ライン構成と改革ポイント て、棚に設置した表示器で次に使用する部品棚を色分け 18 seiden 2022 特別号