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制御機器の基礎知識 (3)各論 ヒンジ形リレー

ハンドブック

リレー編

制御用リレーの仕組みや選び方・使い方を解説した制御機器の基礎知識【リレー編】。
下記章がありますが、本章では、ヒンジ形リレーについて紹介しています。
他の章や制御用リレーのカタログは制御用リレー特集 https://www.aperza.jp/feature/page/102/  にてご確認ください。

1. 制御用リレーとは
2. 総論
3. 各論 ヒンジ形リレー
4. 各論 プランジャ形リレー
5. 各論 リードリレー
6. 各論 特殊用途リレー
7. 各論 半導体リレー
8. 資 料 編

※規格に関しては、必ず現行規格のご確認をお願いいたします。
※NECA Webサイトにも、リレー編を掲載しています。https://www.neca.or.jp/standard/howto/relay/

※本コンテンツの商用目的、営利目的での利用、また無断転載を禁じます。
(本コンテンツは、一般社団法人 日本電気制御機器工業会及び第三者が有する著作権により保護されております。)
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このカタログについて

ドキュメント名 制御機器の基礎知識 (3)各論 ヒンジ形リレー
ドキュメント種別 ハンドブック
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このカタログの内容

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リレー 編 各論 ヒンジ形リレー
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制御機器の基礎知識 リレー編 3 各論 目次 3.1 ヒンジ形リレー ........................................................... 41 3.1.1 概要 ......................................................................... 41 3.1.2 定格と特性 .............................................................. 49 3.1.3 正しい選び方 .......................................................... 59 3.1.4 上手な使い方 .......................................................... 61 3.1.5 検査 ......................................................................... 76 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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3.1 ヒンジ形リレー、3.1.1 概要

制御機器の基礎知識 リレー編 3 各論 3.1 ヒンジ形リレー 3.1.1 概要 3.1.1.1 定義 ヒンジ形リレーは、コイルの励磁/消磁によって、ヒンジに係合された接極子が電磁石 に吸引/復帰され、可動接点と固定接点が開閉する機構のリレーである。 今日一般的にリレーといえば、このヒンジ形リレーをさす。 3.1.1.2 沿革 1.2 で述べたように、リレーが通信用に本格導入された後、エレクトロニクス技術が急速 に発展し、主流が通信用リレーから制御用リレーに移行する 1970 年代~ 1980 年代まで、 ヒンジ形リレーの構造が主流を占め、リレーの歴史はヒンジ形リレーが牽引していたとい えるので、本節の沿革は、 1.2 を参照していただくこととする。 3.1.1.3 構造 基本構造についても、2.1.1 で、リレーの機構として最も一般的なヒンジ形リレーをモデ ルに述べ、本章で述べるべき機能や構造とほぼ共通するので、特記事項を除き、2.1.1 を参 照していただくこととする。 3.1.1.4 種類 ヒンジ形電磁リレーは、構造、部品構造形状による分類の他、実装法、機能によって さまざまなものに分類される。ここでは、使用者の立場から見て便利な分類法に重点を おき記述する。 なお、原理その他使用上直接必要ないと思われる分類法についても、その特徴を理解 することにより、より適したリレーの選定と使用が可能となるとの考えより簡単に説明 を加えた。 3.1.1.4.1 取付方法による分類 機器への取付方法は図 3.1.1 に示すような方法に分類される。 a) プリント基板タイプ 電子部品とリレーの共載使用化にともない、小形リレーの取付けはプリント基板取付 けが最も一般的な方法となっている。 プリント基板取付けの場合は、リレー取付けと端子接続が同時に行われることになる。 プリント基板用リレーは、プリント基板設計が容易なように端子が 2.5 mm 又は 2.54 mm の基準格子に配列されたタイプと、 IC 専用基板を共用できるよう IC と同様の DIL 配列 を採用したタイプが多い。 b) プラグインタイプ(ソケット取付け) リレーを必要に応じ自由に着脱する必要がある場合や保守点検を必要とする場合など に、ソケットを使用するプラグイン取付けが便利である。この場合も、プリント基板取 付けと同様リレー取付けと端子接続が同時に行われることになる。 41 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 ソケットへの端子挿入保持力だけでは振動その他によりゆるみが生ずるおそれがある 場合は、リレーが抜けないように専用保持金具などで固定する方法がとられる。 c) 端子台タイプ b)と同様にリレーを必要に応じ自由に着脱する必要がある場合や保守点検を必要とす る場合などに、金属製の基台や DIN レールに端子台を設置して、それにリレーを取付け る。端子台による取付けは制御盤内で多く使われている。 d) トップフランジタイプ( TM 型) カバーに取付用フランジが付いているタイプ。 基台にフランジをねじ止めして取付ける。 分類 プリント板取付け ソケット取付け 端子台取付け TM 型 取付形状 ソケット 端子台 図 3.1.1-リレーの取付方法 3.1.1.4.2 接続端子による分類 接続端子は図 3.1.2 に示すような形状に分類される。 a) プリント基板端子 はんだののりが良い材料の使用又は予備はんだなどによる表面処理が行われている。 b) プラグイン端子 ソケット、端子台が使用できるような端子形状となっている。 c) はんだ付端子 配線をひっかけてはんだ付をするのに便利なように穴、切り込み、折り曲げなどがつ いている端子で、通常、はんだのりが良い材料の使用又は予備はんだなどによる表面処 理が行われている。 d) サーフェースマウント( SMD)端子 プリント基板の配線パターンの表面上に直接はんだ付けできるようにした端子形状。 e) ワイヤラッピング端子 特殊工具(ラッピングツール)によって、線を強い力で端子に巻付けて接続を行う。 線に端子がくいこんで完全な接続を行わせるため、角のある形状となっている。 f) クイックコネクトターミナル端子 無はんだ圧着接続方法で、リレー側のタブ端子とリセプタクル端子との挿入圧着によ り接続が行われる端子である。 42 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 はんだ付け端子 ワイヤラッピング端子 プリント基板端子 スルーホール用 SMD 用 平型接続端子 接続側 リセプタクル端子例 図 3.1.2-端子の形状 3.1.1.4.3 機能による分類 a) 直流リレー 直流リレーはバッテリー又は平滑化された直流電源で駆動するタイプであり、動作、 復帰などの動作性能を電流で規定した電流タイプと電圧で規定した電圧タイプとに分け られる。この駆動タイプがヒンジ形リレーの中ではもっとも標準的なリレーである。 電磁石の吸引力は、巻線に流れる励磁電流と巻線の巻回数の積に比例するため、リレ ーの動作性能は電流で規定した方が直接的である。しかし電圧で規定した方がなじみや すいため、電圧リレーが汎用リレーとして広く普及している。 電圧リレーの場合、周囲温度又は自己発熱などによる巻線抵抗値の変化にともない、 巻線に一定電流を流すための印加電圧が変化するため動作電圧、復帰電圧などの特性が 変化する。したがって、電圧リレーでは一定条件(例えば周囲温度 20 ℃、コイル Cold 状態)における動作規定を採用するのが一般的である。 b) 交流リレー 交流リレーでは、コイルに交流信号を流しても吸引力が周期的に変動し、リレーは正 常動作しないため、磁極の一部にくま取りコイルを設け、吸引力を平滑化し、正常動作 ができるようにしている。 また整流回路を直流リレーに内蔵させ交流リレー化を行っているタイプもある。 c) 双安定リレー 一度動作/復帰すると、反転のための信号が入力されるまで動作 /復帰状態を保持する ものである。正負両極性の信号を交互に加え動作、復帰を行う 1 巻線タイプと、同一極 性のパルスを動作、復帰専用コイルに加え動作、復帰を行う 2 巻線タイブとがある。 また、保持原理上より機械的自己保持形リレーと、磁気的自己保持形リレーとがある。 さらに磁気的自己保持形リレーには、永久磁石を使用して保持する有極自己保持形リレ 43 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 ーと半硬質材を使用して保持する無極自己保持形リレーとがある。 双安定リレーはラッチングリレーとも呼ばれている。 d) 特殊機能付きリレー 特殊機能付きリレーには、動作復帰状態の確認を外部より目視にて容易に行えるよう にした動作表示付きリレー、手動ボタンにより外部より手動で接点開閉ができるように した押ボタン付きリレー、リレーからのノイズ放射と外部からのノイズ被害を抑制する ため、リレーに磁性体ケースを付加した磁気シールドリレー等がある。 3.1.1.4.4 耐環境保護構造による分類 耐環境保護構造とはリレーを外力や周囲雰囲気の塵埃、有害ガス、湿度、その他より保 護するため、特有のカバーやケースを付けた構造である。保護対象、気密性の度合い等で 分類すると、表 3.1.1 に示される RT 0 ~ RT V(RT; relay technology categories)の六つに 分けられる。 表 3.1.1-耐環境保護構造によるリレーの分類 密閉形( RT) 耐環境保護構造 RT 0 開放形 異物の付着や侵入対して保護するカバーやケースがない構造 RTⅠ 防じん形 機構をじんあい(塵埃)から保護するケースがある構造 RTⅡ 耐フラックス形 はんだ付け時、はんだフラックスが内部に侵入し難くした構造 RTⅢ 耐洗浄形 自動はんだ付け工程で、フラックスのはい上がりを防ぎ又は洗浄溶剤の 侵入を防止できるよう、樹脂等のケースで保護した構造 注記 このタイプのリレーは、はんだ付け又は洗浄工程後、使用中に、 通気口を開けることがある。 RTⅣ 封止形 2×104 s 以上の時定数で、腐食性ガスの侵入を防ぐ気密性を有する構造 ( JIS C 60068-2-17 参照)をもつリレー RTⅤ ハーメチック・ 2×106 s 以上の時定数( JIS C 60068-2-17 参照)を保証した強化レベル シール形 の封止リレーで、腐食性ガスの侵入を防ぐ気密性を有する構造、通常、 金属でハーメチック・シールしたケースの場合が多い 3.1.1.4.5 接点による分類 3.1.1.4.5.1 接点構成 a) メーク接点 平常時は開路状態にあり、動作時及び保持時に閉路状態となる接点 [1]。a 接点、NO 接 点ともいう。 b) ブレーク接点 平常時は閉路状態にあり、動作時及び保持時に開路状態となる接点 [1]。b 接点、NC 接 点ともいう。 c) 切換接点 メーク接点とブレーク接点をともに備えた接点構造で、動作時にブレーク接点が開放 され、メーク接点が閉成される接点を主としていう [1]。 閉じる前に開く切換接点を c 接点又はトランスファ接点といい、開く前に閉じる 切 換接点を MBB 接点又はコンティニュアス接点という。 (MBB;メーク ビフォア ブレーク の略) ヒンジ形電磁リレーでは上記 a)、b)、c)又はその組合せにより接点組が構成されている。 44 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.1.1.4.5.2 形態 接点の形態は、図 3.1.3 に示すようなシングル接点とツイン接点に分類され、両者を組み 込んだリレーの障害発生率は図 3.1.4 に示すようになる。ツイン接点は、シングル接点で発 生しがちな塵埃による障害の発生率軽減を目的にツインの一方が不具合になっても他方が 不具合にならなければ障害とはならないことを想定し、考えられたものである。また、ツ イン接点の一方に、ある大きさの埃が入った場合、他方の接点接触力に影響を与える程度 をツインの独立性と呼んでいるが、当然ながらツイン接点のスリット深さが深い程、独立 性は高くなる。 ツイン接点の障害発生率低減効果は顕著であり、最近の小形リレーではこの方式を採用 しているものが多い。 シングル接点 ツイン接点 (完全独立) ツイン接点 図 3.1.3-シングル、ツイン接点の形状 累 積 障200 シングル接点 害 回 数 (回) 100 ツイン接点 0 0 20 40 60 80 100 120 動作回数(×103 回) 図 3.1.4-シングル、ツイン接点の障害率比較例 3.1.1.4.5.3 接点形状 ヒンジ形リレーに使用される接点形状は図 3.1.5 に示すようなクロスバー形と円筒対円 筒形の 2 種に分かれる。クロスバー形は、多少の接点ずれがあっても良好な接点整合が得 られる利点があり、比較的小さい電流容量用として多く用いられている。一方、大きな負 荷電流を開閉する場合は、接点大きさ及び熱容量を大きくする必要があるため、円筒対円 筒、角板対角板などを使用することが多い。また各形状において、対向面を半円球や、カ マボコ形とし接点接触点の安定を図っているリレーもある。 45 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 a) クロスバー形 b) 円筒対円筒 図 3.1.5-接点形状 3.1.1.4.6 駆動方式(接点ばね負荷系)による分類 駆動方式は図 3.1.6 に示すような直接駆動形、フレクシャー形、リフトオフ形の 3 種に分 類され、そのばね構成及び駆動上の特徴は表 3.1.2 に示されるようになる。 いずれの形がよいか一概には言えないが、直接駆動形は片持ち張りのばね特性の特徴を そのまま生かした比較的単純な形のリレーに適用されるのに対して、リフトオフ形は比較 的低電圧でかつ低電流の開閉に優れ、小形リレーに用いられることが多く、フレクシャー 形は耐溶着性と接点やばねの温度上昇の点で優れているためパワー用に多く使用されてい る。 名称 駆動方式例 直接駆動形 接極子に可動ばねが直接取付けられている。 接極子に回転力を加え、ばねのたわみにより 接点接触力を確保する。 フレクシャー形 接極子に取付けられたカードにより可動ばねを押し ばねのたわみにより接点接触力を確保する。 リフトオフ形 可動ばねを予備曲げすることにより、可動ばね自体で 接点接触力を確保する。 接極子に取付けられたカードにより可動ばねを押し 接点を開閉する。 図 3.1.6-接点ばねの駆動方式 46 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 表 3.1.2-接点ばね駆動方式の特微比較 駆動方式 直接駆動形 フレクシャー形 リフトオフ形 項 目 接点組数 少 中 多 接点動作順序 難 易 易 接点バウンス 多 多 少 耐久性 中 短 長 ばね負荷力 大 大 小 部品数 少 中 多 ここで、利用度の多いフレクシャー形及びリフトオフ形のリレーの細部構造を示すと、 それぞれ図 3.1.7、図 3.1.8 のようになる。 フレクシャー形のリレーは絶縁材料で形成された端子板⑩にメークブレーク両固定接点 端子⑦⑧、コイル端子④が固定され、電磁石は鉄心①継鉄②コイル③が一体となってこの 端子板にネジ止めされている。また、接極子⑤には可動接点⑥を装着した可動ばねモール ド⑬がリベット⑫によって固定され、常に復帰ばね⑪によってブレーク接点側に可動接点 が押しつけられている。 一方、リフトオフ形のリレーは接触子⑤にカード⑨が係止されており、カードがブレー ク・メーク両可動接点ばねを動かし固定接点端⑥の先端に溶接された固定接点に可動接点 を接触させたり開離させたりする。 11 5 14 2 12 13 3 No. 部品名 No. 1 部品名 ① 鉄心 ⑧ a 接点側 6 固定接点端子 ② 継鉄 ⑨ コモン端子 ③ コイル ⑩ 端子板 ④ コイル端子 ⑪ 復帰ばね ⑤ 接極子 ⑫ リベット 10 7 ⑥ 可動接点 ⑬ 可動ばねモールド 4 ⑦ b 接点側 ⑭ カバー 8 9 固定接点端子 図 3.1.7-フレクシャー形リレーの構造例 47 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 5 9 1 8 6 3 7 14 No. 部品名 No. 部品名 11 ① 鉄心 ⑧ a 接点側 可動接点ばね ② バックストップ ⑨ カード 2 ③ コイル ⑩ 端子板 ④ コイル端子 ⑪ 復帰ばね ⑤ 接極子 ⑫ ヒンジばね 10 4 13 ⑥ 固定接点端子 ⑬ 絶縁板 ⑦ b 接点側 ⑭ カバー 12 可動接点ばね 図 3.1.8-リフトオフ形リレーの構造例 3.1.1.4.7 磁気回路による分類 接点ばね負荷系を駆動する磁気回路は、図 3.1.9 に示すように、無極形と有極形に大別さ れ、さらに無極形は直流と交流、有極形は永久磁石とコイルの起磁力の配列形によって細 かく分かれる。 無極形 継鉄 ヒンジ 接極子 コイル 鉄心 くま 取りコイル a) 直流形 b) 交流形 有極形 永久磁石 δ M M NI コイル 磁極間隙 NI δ 永久磁石(M)とコイルの起磁力(NI)が c) 磁極間隙に直列に作用する磁気回路 直列形 図 3.1.9-ヒンジ形リレーの磁気回路例 48 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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3.1.2 定格と特性

制御機器の基礎知識 リレー編 M δ δ NI d) 並列形 δ NI M δ e) ブリッジ形 図 3.1.9-ヒンジ形リレーの磁気回路例(続き) 3.1.1.4.7.1 無極形 磁気回路に極性のない電磁石をいう。 a) 直流形 鉄心、継鉄、接極子などの磁気回路部品で構成されており、巻線に電流を流し、励磁 することにより磁束を発生させ、接極子を鉄心に吸引させる。 b) 交流形 交流形電磁石は、直流形電磁石の一部にくま取りコイルを設け、交流信号においても 正常に動作するようにしたものである。交流信号でコイルを励磁すると吸引力が交流周 波に応じて変動する。 くま取りコイルを設けることにより、そこで発生する磁束と主磁束との間に位相差が 生じ、各々の磁束による吸引力が合成されることにより、吸引力が平滑化され正常動作 する。くま取りコイル位置は鉄心頭の磁極部が一般的である。 3.1.1.4.7.2 有極形 電磁石の一部に永久磁石があり、極性がある磁気回路をいう。 a) 直列形 永久磁石と巻線の起磁力が接極子ギャップに直列に作用するように構成された磁気回 路である。 永久磁石による磁束と同一方向になるように巻線を励磁するとリレーが動作する。 b) 並列形 永久磁石と巻線の起磁力が接極子ギャップに並列に作用するように構成された磁気回 路である。 c) ブリッジ形 永久磁石、巻線及び接極子ギャップが、ブリッジ形の磁気回路を構成しているもので ある。高感度化が容易な有極磁気回路のうちで最も高感度化が容易な磁気回路である。 最近の小形リレーは、高感度化を目的とし、有極磁気回路を採用しているタイプが多く、 その方式はブリッジ形が最も多い。 3.1.2 定格と特性 本項では、交流及び直流 250 V 以下の電路に使用される電磁式エレメンタリ リレーに関 49 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 して規定した NECA C 4530 :2011(旧 JIC C 4530) [9]を中心とし、 JIS C 4540-1 :2010[10] を参考に、定格と特性、それらの持つ意味、試験方法も含め説明する。 3.1.2.1 定格値 3.1.2.1.5~ 3.1.2.1.12 に記載されている推奨値には、技術的な可能性も全て含んでいると は限らないので、操作及び使用上の条件によって他の値を採用してもよい。 3.1.2.1.1 定格絶縁電圧 リレーの絶縁設計の基準となる電圧を定格絶縁電圧といい、これを基準にして絶縁距離、 絶縁抵抗試験、耐電圧試験などが規定される。 この値は表 3.1.3 のとおりである。 表 3.1.3-定格絶縁電圧 単位 V 30 60 125 250 3.1.2.1.2 定格接点電圧、定格接点電流 リレーの接点開閉部の性能を定める基準となる電圧を定格接点電圧といい、電流を定格 接点電流という。この値は電気的耐久性、閉路電流容量、遮断電流容量と交流負荷、直流 負荷、抵抗負荷、誘導負荷などの負荷種類によって定まり、表 3.1.4、表 3.1.5 のとおりで ある。 表 3.1.4-定格接点電圧 単位 V 交流・ 定格接点電圧 直流の別 交流 50 100 110 120 200 220 250 直流 24 30 48 100 200 表 3.1.5-定格接点電流 単位 A 0.1 0.3 0.5 0.7 1 2 3 4 5 7 8 10 15 20 25 30 以上の定格値の他に、大容量負荷開閉を目的とした大形のリレーの中には、定格接点電 圧の最大値が AC500 V、DC250 V のものがあり、定格接点電流が 20~ 30 A のものもある。 3.1.2.1.3 定格通電電流 定格通電電流は、接点を開閉することなしにリレーの接点、端子、その他各部の温度上 昇限度を超えることなく連続して開閉部に通電できる電流をいい、その値は表 3.1.6 のとお りである。 表 3.1.6-定格通電電流 単位 A 0.5 1 2 3 5 7 10 15 20 25 30 50 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 以上の定格値のほかに、各種安全規格への適用などを考慮した AC120 V、 240 V などの 特殊電圧のリレーあるいは AC100/110 V- 50/60 Hz などの二重定格をもつリレーもある。 3.1.2.1.4 定格コイル電圧及び定格電圧範囲 a) 交流電圧、推奨の実効値 6 V、 12 V、 24 V、 48 V、 100/√3 V、 110/√3 V、 120/√3 V、 100 V、 110 V、 115 V、 120 V、 127 V、 200 V、 230 V、 277 V、 400 V、 480 V 及び 500 V。 b) 直流電圧、推奨値 1.5 V、3 V、4.5 V、5 V、9 V、12 V、24 V、28 V、48 V、60 V、110 V、125 V、220 V、 250 V、 440 V 及び 500 V。 c) 定格電圧範囲(例: 220 V~ 240 V)及び相当する周波数(例: 50 Hz 又は 60 Hz)は、 製造業者が指定しなければならない。 3.1.2.1.5 動作範囲 リレーコイルの動作範囲は、次の 3 項目に従って指定することができる。 a) 推奨する動作範囲は、次の二つのクラスのどちらかで指定する。 1) クラス 1:定格コイル電圧(又は範囲)の 80 %~ 110 % 2) クラス 2:定格コイル電圧(又は範囲)の 85 %~ 110 % 上記の値は、製造業者が指定した全ての周囲温度範囲で適用する。 規定するクラスから逸脱する場合は、製造業者が定格コイル電圧(範囲)及び相当 する動作範囲を指定する必要がある。 b) 上記 a)で定めた動作範囲の代用として、製造業者は周囲温度に対する動作範囲を図で 表してもよい。 c) リレーがパルス幅変調( PMW)及び /又は他のコイル電力減衰の方法で動作する場合は、 製造業者が指定する方法で行う。 3.1.2.1.6 復帰 次の復帰値は、製造業者が指定した全ての周囲温度範囲で適用する。 a) 直流リレー 動作範囲を 3.1.2.1.5 の a)によって規定する場合、単安定リレーの復帰電圧は定格コイ ル電圧(又は定格コイル電圧範囲の上限値)の 5 %以上とする。 動作範囲を 3.1.2.1.5 の b)によって規定する場合、単安定リレーの復帰電圧は動作範囲 の下限値の 10 %以上とする。 b) 交流リレー 直流リレーの復帰値 5 %又は 10 %の代わりに 15 %を使用する。 3.1.2.1.7 リセット 推奨値は、他に製造業者が指定した場合を除き、 3.1.2.1.5 で規定した値と同じとする。 3.1.2.1.8 電気的耐久性 推奨する開閉数は 5 000 回、 10 000 回、 20 000 回、 30 000 回、 50 000 回、 100 000 回、 200 000 回、 300 000 回及び 500 000 回とする。 3.1.2.1.9 開閉頻度 推奨する開閉頻度は、360 回/時、 720 回/時、 900 回/時及びその倍数とし、周波数は 0.1 Hz、 0.2 Hz、 0.5 Hz 及びその倍数とする。 51 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.1.2.1.10 接点負荷 抵抗負荷及び誘導負荷の推奨値は、次による。 a) 抵抗負荷の推奨値 電流:0.1 A、0.5 A、1 A、2 A、3 A、5 A、6 A、8 A、10 A、12 A、16 A、25 A、35 A、 60 A 及び 100 A 電圧: 4.5 V、 5 V、 12 V、 24 V、 36 V、 42 V、 48 V、 110 V、 125 V、 230 V、 250 V 及び 400 V(AC/DC) b) 推奨の誘導負荷は、 JIS C 4540-1 :2010 を参照すること。 3.1.2.1.11 周囲温度 特に指定がない限り、リレー動作の周囲温度範囲は- 10 ℃~ 55 ℃が好ましい。 その他上限の推奨値は、+ 200 ℃、+ 175 ℃、+ 155 ℃、+ 125 ℃、+ 100 ℃、+ 85 ℃ 及び+ 70 ℃とし、その他下限の推奨値は、- 65 ℃、- 55 ℃、- 40 ℃及び- 25 ℃とする。 3.1.2.1.12 使用率 使用率の推奨値は、 15 %、 25 %、 33 %、 40 %、 50 %及び 60 %とする。 3.1.2.2 特性(性能) 3.1.2.2.1 動作 a) 動作電圧、復帰電圧 動作電圧(又は感動電圧)は、復帰状態のリレーのコイル電圧を増加しリレーが動作 状態になるときの最小の電圧をいい、復帰電圧(又は開放電圧)は動作状態のリレーの コイル電圧を減少させ、リレーが復帰状態になるときの最大の電圧をいう。 一般に動作電圧は 20 ℃におけるコイルが cold 状態で表示される場合が多く、定格電 圧の 70~ 85 %以下で動作するが、プリント基板搭載用のリレーの中には定格電圧の 65 % 程度で動作するものもある。 また、復帰電圧も 20 ℃におけるコイルが cold 状態で表示されるが、交流操作のリレ ーは定格電圧の 20~ 30 %以上、直流操作のリレーは 5~ 15 %以上のものが多い。 なお、リレーコイルの励磁による発熱、リレーの周囲温度の変化などでリレーのコイ ルが温度上昇すると動作電圧、復帰電圧も共に上昇するが、その変化の割合は直流操作 のリレーの場合は約 0.4 %/℃、交流操作の場合は約 0.1~ 0.2 %/℃である。 b) 動作時間、復帰時間 動作時間はリレーのコイルに定格コイル電圧を加えた時点から、接点が動作するまで の時間をいい、復帰時間はリレーのコイルから定格コイル電圧を取り除いた時点から接 点が復帰するまでの時間をいう。 しかしこの時間の中には、リレーの可動部分である接極子と鉄心の衝突又は接点相互 の衝突によって生じる衝撃、振動などに起因する接点間の異常な間欠的開閉現象である バウンス時間は含まれない。 図 3.1.10 に動作、復帰、バウンス時間のパターン図を示す。 動作時間、時間復帰ともに 10 ms 以下のものが多いが、プリント基板用の小形リレー では 2 ms 程度、大形リレーでは 30~ 50 ms のものもある。 一般に交流操作用のリレーの動作時間、復帰時間は、コイルに電圧を印加した時点あ るいは OFF した時点の位相によって大きく変化する。 52 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 ON OFF 操作コイル入力 a 接点 OT:動作時間 RT:復帰時間 b 接点 BT:バウンス時間 OT BT RT BT 図 3.1.10-動作、復帰、バウンス時間のパターン図 3.1.2.2.2 接触抵抗 開閉部に直流 6 V 以下の電圧を加え、表 3.1.7 の測定電流を通じて、電圧降下法により電 源側-負荷側両端子間で測定し、通常は 100 mΩ 以下で規定されている。 低電圧及び小電流で測定する必要がある場合は、回路電圧 30 mV 以下、電流 1 mA 又は 10 mA で測定する。 表 3.1.7-接触抵抗の測定電流 測定電流 接点電流 ( mA) 又は開閉電流( A) 0 .01 未満 1 0 .01 以上 01 未満 10 0.1 以上 1 未満 100 1 以上 1 000 3.1.2.2.3 絶縁抵抗 絶縁抵抗は、接点-コイル間や導電部端子と(鉄心枠、鉄心のような)非充電金属部間、 あるいは接点相互間の絶縁された部分の抵抗をいう。 この値はリレー単体における値で、基板のランドなどは含まない。 絶縁抵抗は、リレーの全ての測定対象箇所に対して、約 500 V の直流試験電圧で測定す る。試験電圧を印加し、 1 分後に測定する。 絶縁抵抗は、表 3.1.8 に規定する値以上でなければならない。 表 3.1.8-絶縁抵抗の最小値 単位 MΩ 試験する絶縁 絶縁抵抗 機能絶縁 2 基礎絶縁 2 付加絶縁 5 強化絶縁 7 3.1.2.2.4 耐電圧 耐電圧は、絶縁抵抗測定箇所と同じ箇所に高電圧を 1 分間印加した時、絶縁破壊の起こ らない限界値をいう。 AC 電圧回路では、おおむね正弦波の試験電圧を用い、 50 Hz 又は 60 Hz の周波数で、そ 53 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 の絶縁の耐電圧試験を実施する。DC 回路には DC 試験電圧を用いる。電圧は、 0 V から表 3.1.9 又は表 3.1.10 に示す値まで 5 秒以内で一様に上昇させ、フラッシュオーバがなく、60 秒間その値を維持しなければならない。 漏れ電流は、 3 mA を超えてはならない。 表 3.1.9-耐電圧- AC 試験 電 圧 a ) b )は回 路の 定 格電 圧 によ る( 実 効値 ) 100 V~ 200 V 50 V~ 230 V/ 400 V 400 V/ 400 √3 V 50 V 以下 c ) 120 V~ 240 V 120 V 277 V/ 480 V 480 V/ 480 √3 V 125 V~ 250 V d ) e ) f ) 試 験 す る 絶 縁 g ) 又は 断 路 L- E L- E L- E L- L L- E L- L L- E L- L V V V V 機能 絶 縁 h ) 500 1 300 1 300 1 500 1 500 1 700 1 700 1 700 基礎 絶 縁 i ) 500 1 300 1 300 - 1 500 - 1 700 - 付加 絶 縁 i ) - 1 300 1 300 - 1 500 - 1 700 - 強 化 絶 縁 又 は 500 2 600 2 600 - 3 000 - 3 400 - 二重 絶 縁 i ) マイ クロ 断 路 j ) 400 400 400 500 500 700 700 700 完全 断路 500 1 300 1 300 1 500 1 500 1 700 1 700 1 700 注 a ) 試験 に使 用 する 高 電圧 ト ラン スは 、 出力 電 圧を 試験 電 圧 に調 整後 、 出力 端 子間 の短 絡 時 の出 力電 流 が 2 00 mA 以上 にな る よう に 設計 しな く て はな らな い 。出 力 電流 は 3 mA 未満 とし 、 過電 流 はト リッ プ し ては なら な い。 試験 電圧 値 (実 効 値) は、 ±3 %以 内で 測 定し な くて はな ら な い。 b ) 完全 断 路と 同 様に 機能 絶 縁 ・基 礎絶 縁 ・付 加 絶縁 に関 し て 、式 U N+ 1 2 00 V(概 略 値) か ら値 を算 出 する 。 マ イク ロ断 路 に関 し ては 、 式 U N+ 25 0 V( 概略 値 )か ら 値を 算 出す る。 c ) 50 V 以下:電 源に 直 接接 続 しな い 。 JI S C 603 64- 4 - 44 の箇 条 44 2 にお ける 、一 時的 な 過電 圧は 発生 し ては な ら ない 。 d ) 単相 シ ステ ム 、中 間接 地 。 e ) 三相 シ ステ ム、 中 間接 地。 f ) 三相 シス テ ム、 一相 設 置。 g ) 試験 が 実施 でき な い特 殊 部 品、例 えば LE D、フリ ー ラン ニ ング ダイ オ ード 及 びバ リス タ は 、試 験 する 絶 縁が 適 切に なる よ うに 、 一方 を外 す か 、ブ リッ ジ する か 、又 は取 り 除 いた 状態 に すれ ば よい 。 h ) 例と し て、 正 しく 機能 す る ため に必 要 な接 点 間の 絶縁 。 i ) 基礎 絶縁・付 加 絶縁・強 化 絶縁 又は 二 重絶 縁 の試 験で は 、全て の充 電 部を 相 互接 続し 、全 ての 可動 部 が最 も 不 利な 位置 に なる よ うに 注意 し な けれ ばな ら ない 。 j ) 接点 の適 切 な機 能を 確 保す る接 点間 隔 (マ イ クロ 開路 を 含 む。 )。 54 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 表 3.1.10-耐電圧- DC 回路 の定 格 電圧 に よる 試験 電 圧 a ) b ) c ) 50 V~ 120 V~ 250 V 50 V 以下 240 V~ 480 V 120 V 125 V~ 250 V 試 験 す る 絶 縁 d ) 又は 断 路 L- E L- E L- E L- L L- E L- L V V V 機能 絶 縁 e ) 500 1 300 1 300 1 500 1 500 1 700 基礎 絶 縁 f ) 500 1 300 1 300 - 1 500 - 付加 絶 縁 f ) - 1 300 1 300 - 1 500 - 強化 絶縁 又 は 500 2 600 2 600 - 3 000 - 二重 絶 縁 f ) マイ クロ 断 路 g ) 400 400 400 500 500 700 完全 断路 500 1 300 1 300 1 500 1 500 1 700 注 a ) 試験 に使 用 する 高 電圧 ト ラン スは 、出力 電 圧を 試験 電 圧 に調 整後 、出力 端 子間 の短 絡 時 の出 力 電流 が 2 00 mA 以 上に な るよ う に設 計し な くて は なら ない 。 出 力電 流 は 3 mA 未 満と し 、過 電 流は トリ ッ プし て はな らな い 。 試験 電圧 値 は、 ±3 % 以内 で 測 定し なく て はな ら ない 。 b ) 完全 断 路と 同 様に 機能 絶 縁 ・基 礎絶 縁 ・付 加 絶縁 に関 し て 、式 U N+ 1 200 V( 概略 値 )か ら値 を算 出す る 。マ イ クロ 断路 に 関 して は、 電 源シ ス テム の公 称 電 圧に よ る U N 及び 式 U N+ 250 V (概 略値 ) から 値 を算 出す る 。 c ) 50 V 以 下: 電 源に 直 接接 続 しな い。 JI S C 60 364 -4 -44 の 箇 条 44 2 にお ける 、 一時 的 な過 電 圧は 発生 して は なら な い。 d ) 試験 が 実施 で きな い特 殊 部 品 、例 え ば LE D、フ リ ーラ ンニ ング ダイ オ ード 及 びバ リス タ は 、試 験す る絶 縁 が適 切 にな るよ う に 、一方 を 外す か、ブリ ッジ す る か、又 は 取り 除い た 状態 に すれ ばよ い。 e ) 例と し て、 正し く 機能 する ため に必 要 な接 点 間の 絶縁 。 f ) 基礎 絶縁 ・付 加 絶縁 ・強 化 絶縁 又は 二 重絶 縁 の試 験で は 、 全て の充 電 部を 相 互接 続し 、 全 ての 可動 部が 最 も不 利 な位 置に な る よう に注 意 しな け れば なら な い 。 g ) 接点 の 適切 な機 能 を確 保 す る接 点間 隔 (マ イ クロ 開路 も 含 む。 )。 3.1.2.2.5 機械的耐久性 リレーの開閉部には通電せず、コイルには定格電圧(交流の場合は定格周波数)を加え て表 3.1.11 に規定の開閉頻度で、表 3.1.12 規定の動作回数にわたってリレーを動作したと き、耐久回数経過後もリレーの機能が正常であること。 表 3.1.11-機械的耐久試験の開閉頻度 単位 回/時 機械的耐久性試験の開閉頻度の標準値 3 600 7 200 12 000 18 000 36 000 72 000 表 3.1.12-標準耐久回数 標準耐久回数の標準値 1 3 5 10 20 30 50 100 200 300 500 1 000 2 000 3 000 5 000 10 000 3.1.2.2.6 電気的耐久性 リレー開閉部に定格負荷を、コイルには定格電圧を印加し、表 3.1.13 に規定の開閉頻度 で、表 3.1.14 に規定の動作回数にわたってリレーを開閉したとき、耐久回数後も接点の溶 着や異常消耗などの異常がないこと。電気的耐久性は、リレーの適用回路、負荷の種類、 55 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 開閉頻度によって異なるが、抵抗負荷の場合、定格接点電圧、定格接点電流において 10 万 回以上の耐久性を有するリレーが多い。 表 3.1.13-開閉頻度 単位 回/時 電機的耐久性試験の開閉頻度の標準値 600 1 200 1 800 3 600 表 3.1.14-動作回数 標準耐久回数の標準値 1 3 5 10 20 30 50 100 200 300 500 1 000 2 000 3 000 5 000 10 000 なお、耐久性の判定基準は通常表 3.1.15 で、負荷は表 3.1.16 にて行われている。 表 3.1.15-耐久性判定基準 判定項目 規 定 値 外 観 各部分の緩み、変形、損傷がないこと 絶縁抵抗 特に規定がない限り 2 MΩ 以上 耐 電 圧 初期規格値の 75 %以上 コイルの直流抵抗 初期規格下限値の 95 %から初期規格上限値の 105 %まで 接触抵抗 下記による 動作電圧 初期規格値の 1.2 倍以下 復帰電圧 初期規格値の 0.5 倍以下 動作時間 初期規格値の 1.2 倍以下 復帰時間 初期規格値の 2 倍以下 接触抵抗 接点定格電流又は 測定電流 試験後の接点の 開閉電流( A) ( A) 接触抵抗(Ω) 0 .01 未満 0 .001 100 0.01 以上 0.1 未満 0 .01 20 0.1 以上 1 未満 0 .1 5 1 以上 1 2 表 3.1.16-電気的耐久性の負荷 試験電流 b ) 試験電圧 閉 路 開 路 a ) 用 途 時定数 時定数 電流 力率 ms 電流 力 率 ms I m1 0.9~ 1.0 I m1 0.9~ 1.0 交流抵抗回路(抵抗負荷) 交流 10 Im1 0.6~ 0.7 I m2 0.3~ 0.4 交流電磁接触器、交流ソレノイド操作用 ( Em1) 2 I m1 0.6~ 0.7 I m4 0.6~ 0.7 交流リレー操作用 I m4 1 以下 I m4 1 以下 直流抵抗回路(抵抗負荷) 直流 I m5 40±6 I m5 40±6 直流電磁接触器、直流ソレノイド操作用 ( Em2) I m6 7±1 I m6 7±1 直流リレー操作用 注 a ) E m1 及び E m2 は、定格接点電圧とする。 b ) I m1~ I m6 は、各負荷での定格接点電流とする。 56 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.1.2.2.7 温度上昇 開閉部に定格通電電流を連続通電し、コイルには定格電圧の 1.1 倍の電圧(交流の場合 には定格周波数)を加えて温度上昇が一定となったとき、リレー各部の温度上昇値を測定 する。 特にリレーを周囲温度が高い場所で長時間連続励磁して使用する場合は、リレーの耐熱 寿命、すなわちリレーを構成するコイルを含む絶縁物の耐熱寿命を十分考慮し、絶縁物の 許容最高使用温度を超過することのないようリレー開閉部の通電電流を低減するなどし、 リレー各部の温度上昇を低く抑える必要がある。 リレー製造業者は、リレーの通常使用で過度の温度に到達しないように構成する必要が あるため、次のどちらか一つを実施する。 - 耐熱クラスを明らかにする各試験及び表 3.1.17 に従って、材料の耐熱クラスを選ぶ。 - ボールプレッシャー試験によって材料の適合性を評価し、最大温度を指定する。 表 3.1.17-耐熱クラス 耐熱クラス 最大温度 Y 90 ℃ A 105 ℃ E 120 ℃ B 130 ℃ F 155 ℃ H 180 ℃ 200 200 ℃ 220 220 ℃ 250 250 ℃ 注記 耐熱クラスは JIS C 4003 による。 試験の手順は、 JIS C 4540-1 に基づいて行う。 コイルの温度上昇値は抵抗法で求め、次の式で計算する。 (
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制御機器の基礎知識 リレー編 RTⅣ及び RTⅤのリレーに対しては、JIS C 60068-2-17 の適切な試験を製造業者が選択し なければならない。 3.1.2.2.9 耐寒性 a) 耐寒動作性 リレーを低温で使用するときの動作性能のことをいう。リレーに無通電のまま- 5± 3 ℃の温度の恒温槽に連続 2 時間保った後、その状態で操作コイルに定格電圧を印加し、 リレーの各部の動作に異常がないかを確認する。 b) 耐寒貯蔵性 リレーを低温で保管するときの貯蔵性能のことをいう。リレーを、- 25±3 ℃の温度の 恒温槽に連続 72 時間保ち、次に標準試験状態で水滴をふきとり 2 時間放置した後、前述 した動作電圧、復帰電圧、耐電圧特性を満足し、絶縁抵抗は、5 MΩ 以上であることを確 認する。 3.1.2.2.10 耐熱性 a) 耐熱動作性 リレーを高温で使用するときの動作性能のことをいう。リレーの操作コイルには定格 電圧(交流の場合は定格周波数の)、開閉部には定格通電電流を流した状態で、40±2 ℃ の温度の恒温槽に連続 2 時間保った後、そのままの状態で表 3.1.18 の a 又は b の電圧を 加えてリレーを動作させたとき、リレーの各部の動作に異常がないかを確認する。 b) 耐熱貯蔵性 リレーを高温で保管するときの貯蔵性能のことをいう。 リレーを 70±2 ℃の恒温槽に連続 16 時間保ち標準試験状態で 2 時間放置した後、前述 した動作電圧、耐電圧特性を満足し、絶縁抵抗が 5 MΩ 以上であることを確認する。 表 3.1.18-耐熱動作試験電圧 区分 試験電源 a 定格電圧の 95% b 定格電圧の 85% 3.1.2.2.11 耐湿性 リレーが高い相対湿度のもとでの使用及び貯蔵されるときの性能をいう。 温度 40±2 ℃、相対湿度 87~ 92 %の環境に連続 48 時間保ち、次に標準試験状態で水滴 をふきとり、 2 時間放置後、前述した動作電圧、耐電圧特性を満足し、絶縁抵抗は、 5 MΩ 以上であることを確認する。 3.1.2.2.12 耐振動性 a) 耐久振動性 リレーが輸送中又は使用中において受ける一般の振動に対する耐久性能のことをいう。 リレーに表 3.1.19 の振動を与えたとき、外観、構造の異常、部品の緩み、損傷などが なく前述の動作電圧を満足するかどうかを確認する。 58 Copyright 2018 NECA All rights reserved.