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制御機器の基礎知識 (6) 多方向スイッチ-

ハンドブック

スイッチ・表示灯編

操作用スイッチや表示灯の仕組みや選び方を説明した制御機器の基礎知識【スイッチ・表示灯編】。
下記章がありますが、本章では、多方向スイッチの仕組みや選び方を解説。
他の章や操作用スイッチのカタログは操作用スイッチ特集 https://jp.cluez.biz/feature/page/101/ にてご確認ください。

1.安全規格と用語の説明
2.押しボタンスイッチ
4.表示灯
5.カムスイッチ
6.多方向スイッチ
7.トグルスイッチ
8.設定/信号入力用スイッチ
9.マイクロスイッチ
10.リミットスイッチ
11.ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)
12.3ポジションイネーブルスイッチ
13.資料編
※第3章は統合による欠番
※第1,2,4,5,6,7,8,9,11,12,13章はNECA Webサイトにてご確認を
お願いいたします。http://www.neca.or.jp/standard/howto/switch/
※規格に関しては、必ず現行規格のご確認をお願いいたします。

※本コンテンツの商用目的、営利目的での利用、また無断転載を禁じます。
(本コンテンツは、一般社団法人 日本電気制御機器工業会及び第三者が有する著作権により保護されております。)
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このカタログについて

ドキュメント名 制御機器の基礎知識 (6) 多方向スイッチ-
ドキュメント種別 ハンドブック
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このカタログの内容

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スイッチ・表示灯編 多方向スイッチ
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制御機器の基礎知識 【スイッチ・表示灯】 6.多方向スイッチ 目次 6.1 定義............................................................................... 2 6.2 種類............................................................................... 2 6.3 原理と構造 ......................................................................... 3 6.3.1 スティック部(操作部、グリップ部またはハンドル部) ............................. 3 6.3.2 機構部 ......................................................................... 4 6.3.3 検出部 ......................................................................... 7 6.4 定格と特性 ......................................................................... 8 6.4.1 定格値と規格値 ................................................................. 8 6.4.2 耐久性 ......................................................................... 9 6.4.3 保護構造 ....................................................................... 9 6.4.4 スティックの位置と検出部の出力状態 ............................................. 9 6.4.5 標準使用条件 .................................................................. 12 6.4.6 操作部(スティック部)の強度 .................................................. 12 6.4.7 耐振動性及び耐衝撃性 .......................................................... 12 6.5 正しい選び方 ...................................................................... 13 6.6 上手な使い方 ...................................................................... 14 6.6.1 注意点 ........................................................................ 14 6.6.2 定期点検 ...................................................................... 14 6.7 故障とその対策 .................................................................... 14 6.8 検査と試験 ........................................................................ 17 6.8.1 形式試験 ...................................................................... 17 6.8.2 受渡試験 ...................................................................... 17 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 1
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6.1 定義、6.2 種類

6 多方向スイッチ 6.1 定義 多方向スイッチという名称は、JIS C 8201-5-1(低圧開閉装置及び制御装置第5部:制御回路機器 及び開閉素子 第1章:電気機械制御回路機器)の“基本定義”で、“操作部がピンまたはスティッ ク状をなして、その一つの位置で、パネルまたはきょう体面から直角に突き出ており、これに角偏位 を与えることによって操作する制御スイッチ。” と定義づけられている。また基本定義の注記 1 及び 2 で“多方向スイッチは、スティックの偏位の異なる方向に 2 つ以上の位置をもち、接点素子の操作 を変えることができる。このような多方向スイッチは、ジョイスティックセレクタと呼ばれる。” “ピ ンまたはスティックは、スプリングリターンを備えても、備えなくてもよい。”とも定義している。 この定義に従えば多方向スイッチは機械的開閉装置と限定されてしまうが、以下で述べるとおり現 在の多方向スイッチでは各種スイッチのほかにポテンショメータなどが組込まれたものが製造され ている。本章ではこれらも含め多方向スイッチを開閉装置及び制御装置の制御、信号、インタロック などを意図するように作られている電気機器、いわゆる電気機械制御回路機器として取扱う。 なお、多方向スイッチはジョイスティックセレクタのほかに、一般的に多方向操作スイッチ、ジョ イスティック(コントローラ)などの名称で呼ばれている。 6.2 種類 多方向スイッチのスティックの動く方向、傾斜角及び経路などは、種々複雑なものであるが、基本 的には、スティックの傾斜角を直交する 2 本の軸の回転に変換し、それぞれの軸にロータリスイッチ をはじめとして各種のスイッチを結合した構造になっている。またスイッチのほかに、ポテンショメ ータ、ロータリエンコーダ、レゾルバ、シンクロ発信機、差動トランスなどの機器類を結合して精密 工作機械、医療機器、光学機器、画像処理装置、3 次元座標測定器などの精密制御を可能にしたもの もある。このように多方向スイッチは使用分野に合わせてその種類も多岐にわたっている。 このように多岐にわたっている多方向スイッチを種類分けする方法の一つに、表 6.1に示すように 制御している軸の数で行うことがある。また表 6.2に示すように用途により種類分けを行うこともあ る。 表 6.1 多方向スイッチの種類(操作軸数による分類の例) 軸 数 単軸操作 2 軸操作 3 軸操作 4 軸操作 操 前後操作 前後及び左右操作 前後、左右及び上下操作 前後、左右、上下及び 作 左右回転操作 方 向 前後、左右及び 左右操作 前後及び左右回転操作 左右回転操作 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 2
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6.3 原理と構造、6.3.1 スティック部(操作部、グリップ部またはハンドル部)

表 6.2 多方向スイッチの種類(操作頻度、方法、用途による分類の例) 名称 主な用途 激務操作用 土木、建設機械および車両、荷役機械、製鉄機械、船舶、 鉱山機械、移送機械 一般操作用 土木、建設機械および車両、荷役機械、製鉄機械、船舶、 鉱山機械、木工機械、農業機械および車両、 産業機械(プレス、インジェクション、ダイカストマシンその他、な ど)、食品加工機械 精密操作用 工作機械、各種ロボット、光学機器、画像処理装置、計測機器、 医療機器、音響機器、事務機器 バックアップ操作用 各種機械および車両などの自動運転のバックアップシステム用 その他 各種ゲームマシン、コンピュータのポインティングデバイス、 シミュレータ機械 6.3 原理と構造 図 6.1に多方向スイッチの基本的な構造を示す。一つの多方向スイッチは図中に記したようにそ の機能に従って、スティック部(操作部、グリップ部またはハンドル部)、機構部と検出部に分け られる。 スティック部 (操作部、グリップ 部又はハンドル部 機構部 検出部 図 6.1 多方向スイッチの基本構造 6.3.1 スティック部(操作部、グリップ部またはハンドル部) スティック部は単に握って操作するためだけのボールまたはスティック状のものから、コントロ ールグリップと呼ばれる、極小形の多方向スイッチ、機器用スイッチ、押しボタンスイッチ、ロッ カースイッチ、ポテンショメータ、ロータリエンコーダなどを組込んだものまで非常に多彩である。 また操作部の機械的なインタロック機能を持った操作グリップなどもある。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 3
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6.3.2 機構部

このグリップに組込まれた多方向スイッチ、押しボタンスイッチ、ロッカースイッチなどは前項 に示した JIS C 8201-1(低圧開閉装置及び制御装置-第1部:通則)および JIS C 8201-5-1(低 圧開閉装置及び制御装置第 5 部:制御回路機器及び開閉素子 第1章:電気機械制御回路機器)が 適用されている。なお、機器用スイッチ、ポテンショメータ、ロータリエンコーダなど他の規格で 取扱う附属機器類はそれぞれの個別規格が適用されているが、多方向スイッチに使用されている限 りにおいて、上記 JIS に準拠するようにしている。 また、グリップ内にサーボモータ、ソレノイド、圧電セラミック、などを組込み、多方向スイッ チで操作(運転、制御)している機械類の状況に応じた外部信号でこれらを動作させ、スティック のオペレータに操作状況を知らせるフィードバック機構を持ったものもある。 図 6.2にスティック部(各種グリップ)の例を示す。 図 6.2 スティック部の例 6.3.2 機構部 機構部はスティックの偏位(主には角偏位)を直交する 2本の軸の偏位(検出部の動作に適した 偏位)に変換する部分とスティックの自動復帰や手動復帰などの動作方式を決定する部分とから成 り立っている。スティックの偏位を直交する 2 本の軸の偏位に変換する方法の例を図 6.3 に示す。 変換部分は要求される操作方法、強度、耐久性、スティック部の大きさや結合される検出部の機 能に適した種々の方式があり、またスティックの動作方式は表 6.3に示すようなものがある。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 4
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図 6.3 スティックの偏位を直交する 2本軸の偏位に変換する方法の例 表 6.3 スティックの動作方式 スティックの動作方式 動作説明 自動復帰形 操作中スティックから手を離したとき、あらかじめ定めら れた位置(通常は中立位置)にスティックが自動復帰する。 この、あらかじめ定められた自動復帰する位置をホームポ ジションと呼ぶことがある。 手動復帰形 フリクション形 操作中スティックから手を離したとき、その位置でスティ ックが停止する。任意の位置でスティックを停止させるこ とができる。中立位置への復帰は手動にて行う。 ディテント形 あらかじめ定められた位置でスティックが停止する。中立 位置への復帰は手動にて行う。 複合復帰形 スティックが上記の動作を組み合わせた動きをする。 このほかに、多方向スイッチの用途によってはスティックの動作経路の制限が必要な場合があり、 この制限を行うために機構部内に制限装置を持ったものもある。この制限された動作経路(ガイド パターンと呼ぶこともある)のパターン例を図 6.4に示す。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 5
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図 6.4 スティックの動作経路制限のパターン例 なお、操作経路を規制したスティックの場合、不必要な力が制限装置に負荷されないように、そ の経路を示す銘板をスティックの近くに設置することが望ましい。 このほかにも、多方向スイッチで操作(運転、制御)する機械類の安全方策として、スティック の操作経路やスティックの位置を明確にして誤操作を防止する目的でガイドプレート(インジケー タ銘板を兼用することもある)をパネル面に取付けることもある。この例を図 6.5 に示す。 図 6.5 ガイドプレート取付け例 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 6
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6.3.3 検出部

表 6.3に示した動作方式は、一般的には、各種ばねを用いた機械装置によって機能が達成されて いるが、DC 又は AC ソレノイドを用いて電気的に動作方式を達成しているものもある。たとえば、 常時はソレノイドの励磁電流が OFF で自動復帰形のものを必要なときに励磁電流を ON にして操作 途中でスティックを停止させたり、ノッチ感触をスティックに与えたりするものがある。この他に も自動復帰形の機構部に復帰用ばねのほかに扇形の金属製ディスクと電磁クランプとからなるデ ィスクブレーキ機構を組込み、電気信号によって任意の位置でスティックを停止させたり、電気信 号を切りスティックを自動復帰させたりすることができる多方向スイッチもある。 6.3.3 検出部 多方向スイッチは専用にコンポーネント化された種々の開閉装置や制御装置が組込まれており、 さまざまの入出力形態が可能となっている。一般的には表 6.4 に示す負荷の種類に応じた検出部の 選択が可能となっている。その標準的なものとしてはロータリスイッチ、機器用スイッチ(JIS C 4526-1(機器用スイッチ-第1部:一般要求事項)でマイクロスイッチなどに適用)、ポテンショメ ータ、ロータリエンコーダ、レゾルバなどがある。 ロータリスイッチなどは、前に述べた通り JIS C 8201-1 および JIS C 8201-5-1が適用されてい る。なお、機器用スイッチ、ポテンショメータ、ロータリエンコーダ、など他の規格で取り扱う附 属機器類はそれぞれの個別規格が適用されているが、多方向スイッチに使用されている限りにおい て、上記 JISに準拠するようにしている。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 7
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6.4 定格と特性、6.4.1 定格値と規格値

表 6.4 検出部の使用負荷の種類(代表的適応例) 交直流の別 代表的適応例 負荷種別記号 JIS C 8201-1 による 交流 巻線形モータの始動、停止 AC-2 かご形モータの始動、運転中の停止 AC-3 かご形モータの始動、プラッギング(1)、インチング(2) AC-4 手動復帰式過負荷引外し装置付密閉冷却用コンプレッサモータの制御 AC-8a 自動復帰式過負荷引外し装置付密閉冷却用コンプレッサモータの制御 AC-8b フォトカプラによって絶縁された抵抗負荷及び半導体負荷の制御 AC-12 変圧器によって絶縁された半導体負荷の制御 AC-13 小形電磁負荷(≦72VA)の制御 AC-14 交流電磁負荷(>72VA)の制御 AC-15 中程度の過負荷を含む、抵抗負荷の開閉 AC-21 中程度の過負荷を含む、抵抗・誘導混合負荷の開閉 AC-22 モータ負荷その他の高誘導負荷の開閉 AC-23 直流 分巻モータの始動、プラッギング(1)、インチング(2)、発電制動 DC-3 直巻モータの始動、プラッギング(1)、インチング(2)、発電制動 DC-5 白熱灯の開閉 DC-6 フォトカプラによって絶縁された抵抗負荷及び半導体負荷の制御 DC-12 直流電磁石の制御 DC-13 回路に節約抵抗を含む直流電磁負荷の制御 DC-14 無負荷での接続・切断 DC-20 中程度の過負荷を含む、抵抗負荷の開閉 DC-21 中程度の過負荷を含む、抵抗・誘導混合形負荷の開閉(分巻モータなど) DC-22 高誘導負荷の開閉(直巻モータなど) DC-23 注(1) プラッキングとは、モータ運転中にモータの一次側接続を逆にして、モータを急激に停止又は逆転させ ることをいう。 (2) インチング(ジョギング)とは、モータを 1 回または短時間繰り返して付勢し、被動機構を小さく移動さ せることをいう。 6.4 定格と特性 検出部の定格と特性の詳細はそれぞれに適用される規格類によるので、ここでは、JIS C 8201-1 及び JIS C 8201‐5‐1で規定している主な定格と特性について述べるが、その詳細は第 1章の用 語の定義及び用語の説明を参照されたい。 6.4.1 定格値と規格値 (1) 定格使用電圧(Ue) 定格使用電圧は、定格使用電流と組合わせて、多方向スイッチの運用を決める電圧の値で、関 係する試験及び使用負荷種別がこの値を基準にして決められる。 (2) 定格絶縁電圧(Ui) 定格絶縁電圧は、多方向スイッチの耐電圧試験の電圧及び沿面距離の基準となる電圧の値であ る。いかなる場合でも定格使用電圧の最大値は定格絶縁電圧の最大値を超えてはならない。なお、 定格絶縁電圧の指定がない場合、定格使用電圧の最高値を定格絶縁電圧とみなす。 (3) 耐電圧 耐電圧の特性は多方向スイッチの製造者が定格インパルス耐電圧(Uimp)を宣言している場合に は JIS C 8201-1の 8.3.3.4 による。多方向スイッチの製造者が定格インパルス耐電圧(Uimp)を宣 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 8
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6.4.2 耐久性、6.4.3 保護構造、6.4.4 スティックの位置と検出部の出力状態

言していない場合には JIS C 8201-5-1の 8.3.3.4.1、8.3.3.4.2及び 8.3.3.4.3による。 (4) 開放熱電流(Ith) 多方向スイッチの温度上昇試験に使用される試験電流の最大値で、開閉なしに連続通電できる 電流の最大値である。 (5) 定格使用電流(Ie) 定格使用電流は、定格使用電圧と組み合わせて、多方向スイッチの運用を決める電流の値で関 係する試験及び使用負荷種別がこの値を基準にして決められる。 (6) 温度上昇限度 多方向スイッチ各部に取付けられている部品の温度上昇限度は端子部とアクセスできる部分に 分けられ、それぞれについて JIS C 8201-1にてその限度が示されている。 6.4.2 耐久性 一般的に耐久性とは、多方向スイッチの部品の修理または交換が必要になるまでの無負荷(主接点 に電流が流れない)での操作回数を示す機械的耐久性と有負荷での操作回数を示す電気的耐久性の両 方を言う。 6.4.3 保護構造 多方向スイッチは一般的にパネルやボックス状のきょう体に取付けて使用するため、単体としての IP コードの指定はない。しかしながら、多方向スイッチを屋外で使用するときなど使用環境上の理 由から、箱もしくは操作盤に取付けたとき、取付面の表面に出る部分に IP コードを指定することが ある。この IPコードは JIS C 0920 (電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)) によるが、JIS C 8201-1 の附属書 C に、“箱入り装置の保護等級”、として明確に規定している。なお、NECA C 4520(制 御用スイッチ通則)では“油に対する保護性”及び“腐食に対する保護性”についても規定している。 なお、操作盤内の部分についても IP コードを指定する必要がある場合は、使用者と製造業者の間 で耐水性、耐じんあい性に関する品質目標を別に定める必要がある。 6.4.4 スティックの位置と検出部の出力状態 多方向スイッチのスティックの位置と検出部の出力状態を示す方法は現状では規格化されてはい ないが、一般的な方法として図 6.6、図 6.7に示したような展開図を用いることが多い。なお、検出 部がロータリスイッチ(カムスイッチ)のみの場合は JIS C 8201-5-1 でロータリスイッチの動作ダ イヤグラムを描く方法の推奨例(表 6.5に示す)が記載されているのでこの方法を用いてもよい。 図中にも説明したが、一般的な展開図ではスティックの動作方式を示していないので、スティック の動作と検出部の動作(出力)の関係に特別な条件などがある場合は、使用者と製造業者の間でステ ィックの動作と検出部の動作(出力)に関する仕様を別に定める必要がある。例えば、ディテント形 の多方向スイッチで、ディテント位置の感触(ノッチ感触)と接点動作の関係(順番)を規定しなけ ればならないとき、つまり感触がある前に接点が ON しなければならないのか、それとも感触と同時 に接点が ON しなければならないのか、それとも感触の後なのかを示さねばならないときなどである。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 9
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スイッチ 1 スイッチ 4 スイッチ 2 スイッチ 3 説明 ・スティックは十文字方向に操作可能(中央のハッチング範囲) ・スティックを上方向(+Y方向)に操作するとスイッチ 1が動作する。 ・スティックを上方向(+X方向)に操作するとスイッチ 2が動作する。 ・スティックを上方向(-Y方向)に操作するとスイッチ 3が動作する。 ・スティックを上方向(-X方向)に操作するとスイッチ 4が動作する。 ・中立位置では全てのスイッチが開である。 ・この展開図の例ではスティックの動作方式(自動復帰、手動復帰など)は示されていない。同様 にディテントポジション(操作途中の感触の有無やスティックが停止する位置)も示されていな い。 また、各スイッチにおいてそれぞれの接点が閉となる順序も規定されていない。 このように、展開図ではスティックと検出部の動作の関係を示すのみで、スティックの動作方 式の詳細やスイッチ部の動作の詳細などは展開図とは別に示すのが一般的である。 図 6.6 スティック位置と検出部出力状態 図示例(1) Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 10
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角度条件 α°<β° スイッチ 2 γ°<λ°<δ° ポテンショメータ 1 スイッチ 1 ポテンショメータ 2 説明 スティックは全方向に操作可能(中央のハッチング範囲) スティックを上下方向(+Y、-Y方向)に操作するとポテンショメータ 1 とスイッチ 1 が動作する。 スティックを左右方向(+X、-X方向)に操作するとポテンショメータ 2 とスイッチ 2 が動作する。 スイッチ及びポテンショメータの角度表示はスティックの中立(直立)位置からの角度を示す。 この展開図の例ではスティックの動作方式(自動復帰、手動復帰など)は示されていない。同様にデ ィテントポジション(操作途中の感触の有無やスティックが停止する位置)も示されていない。 このように、展開図ではスティックと検出部の動作の関係を示すのみで、スティックの動作方式の詳 細やスイッチ部の動作詳細などは展開図とは別に示すのが一般的である。 図 6.7 スティック位置と検出部出力状態 図示例(2) Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 11
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6.4.5 標準使用条件、6.4.6 操作部(スティック部)の強度、6.4.7 耐振動性及び耐衝撃性

表 6.5 ロータリスイッチの動作ダイヤグラムを描く方法の推奨例(JIS C 8201-5-1による) 操作部の位置 例 接点素子の配列 1 2 3 4 5 1 操作部の位置 No. 1だけ閉路する接点素子 × 2 操作部の位置 No. 2, 4, 5で閉路する接点素 × × × 子 3 端子で切換接点素子として用いる二つ × 3 の接点素子 × 4 操作部の位置の No. 2, 3 の間で瞬時閉路 × する接点素子 5 操作部の位置の No. 3, 4 の間で瞬時開路× × × × する接点素子 6 操作部の位置の No. 4, 5 の間で接触を保 × × 持する接点素子 操作の位置 No. 1, 2の間で開路前に閉路す × 7 る二つの接点素子 × 操作部の位置 No. 1, 2の間で閉路前に開路 × 8 する二つの接点素子 * × 接点素子 B が接点素子 A より早く閉じて A × × 9 早く開路する動作 B × × 注* 閉路前に開路する接点素子は、他の回路に電流を投入する前に、一方の回路の電流を遮断するために用いる。 6.4.5 標準使用条件 多方向スイッチの標準的な使用条件を示すもので、周囲温度、標高、湿度、汚損度などが規定さ れている。 6.4.6 操作部(スティック部)の強度 操作部の先端で必要な操作力Fを最初に決め、操作端において、操作力の 3 倍の力を試験力とし て操作部の先端に衝撃を加えることなく、10 秒間加える。試験力の印加方向はスティックに直角で 操作と同じ方向に行う。試験力解除後、操作部はスティックの動作を損なうような損傷があっては ならない。 NECA C 4520 における試験方法は、個別に定めた力(一般的には操作力の 5 倍)を操作部に徐々 に加え、1分間保持し、各部に異常があってはならない。 6.4.7 耐振動性及び耐衝撃性 JIS C 8201-5-1では耐振動性、耐衝撃性ともに規定はなく、原則的には、製造業者と使用者間で 協議していくことになる。なお、NECA C 4520 では以下の規定がある。 (1) 振動応答解析試験 供試品の共振点を検出する試験。 (2) 固定振動数耐久試験 いわゆる定振動耐久試験である。 (3) 衝撃試験 各部の有害な緩み、ひび割れなどの損傷の発生の有無を検証する、衝撃耐久性試 験と、1ms を超えて閉路接触子が開路することなく、また開路接触子が閉路しないことを検証す る、衝撃誤動作試験がある。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 12
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6.5 正しい選び方

これらの定格と特性は、複雑であり、小形の多方向スイッチ本体にそのすべてを表示することは 困難で、通常は検出部の種類と仕様、並びに多方向スイッチの形式記号などが表示され、個々の用 途における使用上の性能は、納入仕様図、カタログ及び技術資料などに記載される。使用に際して の要求が、これら資料による保証値で満足できないときは、製造業者と使用者の間で十分打合わせ をすることが必要で、要求をはっきりするために、性能の各項について数値と、あわせて試験方法 を明示し、判定の基準を確定しておくことが大切である。 6.5 正しい選び方 多方向スイッチの選択は、製品に関する品質情報を集め、使用を検討している多方向スイッチの仕 様と比較することから始まるが、多方向スイッチの用途は非常に範囲が広く、それぞれの用途におい てすべてを満足させることができるオールラウンドな製品がないために機種選定がスムーズにいか ないことがある。そこで、使用目的に合った多方向スイッチを選ぶために特に重要と思われる事項を 以下に示す。 (1) 使用環境 周囲温度及び湿度、スティック部、検出部(接点部)の保護構造の必要性、振動及び衝撃条件。 (2) 機械的特性 スティック部の動作方式及び形状、取付方法、操作部の強度(スティック部に負荷される力の 種類と大きさ)、操作方法、操作頻度と期待する機械的寿命。 スティック部の形状、大きさ及び多方向スイッチが取付けられている位置などによっては、予想 を超える力がスティック部に負荷される場合がある。スティック部で体重を支えたり、物がよく ぶつかるなど、当初は予想もしなかったことで操作部分が故障し事故の原因になることがあるの で、このような状況が予想される場合は、この危険性を回避するために操作部の強度に関する使 用目的を別に定める必要性がある。 (3) 電気的特性 検出部の種類と入出力条件、定格絶縁電圧 (Ui) 、定格使用電圧 (Ue) 、開放熱電流(Ith) 、 定格使用電流 (Ie) 、使用する負荷の種類。 (4) 接続(配線)用品の整合性 接続電線、圧着端子などの適用サイズと、多方向スイッチの端子部適合性。 (5) 使用条件に合わない項目 使用条件と合わない項目とそれに対する具体的な数値を製造業者に提示し、解決策があるかを 調査する。 (6) スイッチのシリーズ化 仕様変更に対する対応性、使用条件が変わり、要求する各特性値が変わっても対応できるかは 重要な課題である。カタログなどから選択したスイッチがシリーズ化されているかをあらかじめ 調査する。 なお、多方向スイッチの仕様として示されている各種の数値は極めて限定された条件下での試験 結果に基づいているため、実際の使用条件がこの試験条件に一致しないことが多い。したがって、 厳格さが求められる場合については実負荷による各種試験の実施を製造業者に求めることになる。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 13
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6.6 上手な使い方、6.6.1 注意点、6.6.2 定期点検、6.7 故障とその対策

6.6 上手な使い方 6.6.1 注意点 多方向スイッチを用いた設計を実施する上での注意、確認事項には以下のようなものがある。 (1) 多方向スイッチで操作(運転、制御)する機械類によって生じる危険源の詳細のうち多方向 スイッチに求められる安全方策を明確にし、使用する多方向スイッチの仕様がこの求められた安 全方策を満足することを確認する。以下に、この安全方策について例を示す。 ① スティックの誤操作防止のため中立位置(ホームポジション)で作動する機械的(又は、電 気的)なロック装置を操作部に設けたり、スティックの周囲にバリアを設ける。また、スティッ クの操作方法、操作条件などを銘板などにはっきりと分かるように表示し、誤操作を防止する。 ② スティックが故障したとき、操作されている機械類が安全な方向に停止し暴走しないように 電気的、機械的処置を施す。このとき、多方向スイッチに全ての機能を集約することが不可能な 場合があるので、このときは補助的な装置が必要になる。 ③ 実際に多方向スイッチを使用する以前に操作部(スティック部)に過負荷が作用するのを防 止する。例えば、多方向スイッチを取付けるコントロールボックスを組立てているとき、ボック スの持ち運びに取付けられた多方向スイッチのスティックをボックスの取っ手代わりに使い操 作部に想定外の過負荷が作用することがある。 前項のガイドプレートの装着(図 6.5)も安全方策の一つであるが、このほかにも、安全方策に ついては非常に広範囲にわたる事項があるので十分な検討が必要である (2) 検出部の変更や追加などが将来考えられるような場合は、取付寸法、製品寸法などの変更箇 所の互換性をあらかじめ考慮しておくこと。 (3) 接続電線や圧着端子などの適用サイズが、使用する多方向スイッチの端子部と合っており十 分な配線と作業スペースがあること。このとき、形式記号及び端子番号などが、配線や他の器具 で見えない配置にならないこと。 (4) 多方向スイッチを複数取付ける場合は、スティックどうしが互いに干渉しないように、また 盤内の結線の際、隣接する多方向スイッチが互いに干渉して、ドライバなど、結線用の工具が使 用できなくならぬよう、多方向スイッチの取付けピッチを考慮すること。 (5) 多方向スイッチの質量、スティックの操作力に対し、安全なパネル厚を設定すること。 6.6.2 定期点検 多方向スイッチの定期点検は他の制御機器類と同様に、安全を維持する上で非常に大切なもので あるが、点検作業の取扱いを誤れば逆に事故の原因となることもあるので、点検工具、点検用計測機 器類、点検の順序及びその方法(必要ならば多方向スイッチの製造業者に要領書を依頼)などについ て慎重に検討し、実施することが肝要である。 多方向スイッチの場合、耐水性や耐じんあい性などの保護機能の一部または全部をゴムカバー(ゴ ムブーツ)に依存していることが多く、ゴムカバーが破損したとき機構部や検出部の不具合発生の危 険性が高くなるため、ゴムカバーの点検は重要な点検項目の一つである。 なお、多方向スイッチの使用現場での部品交換は操作グリップ(単純な構造の場合に限る)やゴ ムカバーなどごく一部の部品に限り可能な場合があるが、それ以外の部分は基本的に使用現場では不 可能であるため、部品交換が必要な場合は、製造業者に依頼することになる。 6.7 故障とその対策 多方向スイッチは、定められた条件の下では簡単に故障するものではない。ここでは、製造業者の 経験をもとに、主な故障モードとその推定原因を表 6.6 に示す。 過去の実績で最も多い故障原因は、検出部では検出部の仕様を決定するとき電気的使用条件(負荷 の種類、通電電流、遮断電流、負荷の入力抵抗、その他)の把握が不十分であったことに起因するこ Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 14
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とが多い。また、スティック部(操作部)及び機構部についても、操作部に当初予想していた操作力 を上回る力が負荷され操作部や機構部が破損してしまうことが多く報告されている。 多方向スイッチの故障に対する処置は現品交換が原則である。故障品の分解、修理、再使用は品質 の保証が損なわれるばかりではなく、新たな事故を招きかねない。また、正しい対策を実施するため の当該品調査による原因究明を阻害することになる。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 15
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表 6.6 主な故障モードと推定原因 故障箇所 故障モード 推定原因 スティック部 グリップの緩み。 ・想定外の過負荷が作用。 ・想定外の過負荷が作用。 グリップに組み込まれた機 ・ 機器類の引き出し電線の長さ不良、組立不良による断線。(パ 器類の動作不良。 ネル、ボックスに組込むとき、電線のタワミ長さが少なかっ たり、ボックス内のほかの部品等と干渉したため) スティックのレバー部の曲 ・ 想定外の過負荷が作用。(過大操作力や物が衝突するなどの り。 異常外力) スティックのレバー部の折 ・ 想定外の過負荷が作用。(過大操作力や物が衝突するなどの れ。 異常外力) 機構部 ・ゴムカバー部を握ったまま操作。 ゴムカバーの破れ。 ・じんあいの堆積。 ・ケミカルクラック。 ・ ゴムカバーの破れのため、じんあい、異物などが機構部内に 侵入。 操作不円滑。 ・ 想定外の過負荷が作用。(過大操作力や物が衝突するなどの 異常外力) ・ ゴムカバーの破れのため、じんあい、異物などが機構部内に 侵入。(機構部のリンク機構にカジリなどが発生したため) 自動復帰せず。 ・ 検出部の異常。(検出部に焼損などの不具合により動作不良 が発生したため) ・ ロック位置で想定外の過負荷が作用。(ロック状態での過大 操作力や物が衝突するなどの異常外力) 中立位置で機械的または電 ・ ロック信号用機器類の引き出し電線の長さ不良、組立不良に 気的にロックせず。 よる断線。(パネル、ボックスに組込むとき、電線のタワミ 長さが少なかったり、ボックス内ほかの部品等と干渉したた め) スティックの停止位置(中 ・ ゴムカバーの破れのため、じんあい、異物などが機構部内に 立位置、その他)のガタ増 侵入。(機構部の各部に異常摩耗が発生したため) 加。 ・ 想定外の過負荷が作用。 ガイド(スティックの動 ・ 想定外の過負荷が作用。(操作不慣れなどによるガイドパタ 作経路制限装置)の破損。 ーンを無視した過大操作力や物が衝突するなどの異常外力) 操作角度の増加。(操作端で ・ 操作端において想定外の過負荷が作用。 の出力異常など) 検出部 ・ 想定外の振動、衝撃が作用し検出部に不具合が発生。(過負 出力状態の異常、基準位置 荷操作など自身で発生する場合と環境条件など外部からの での出力電圧や出力信号な 影響による場合) どのズレ。 ・ 入力異常。 ・ 入力異常。(主に誤配線、誤接続) ・ 想定外の振動、衝撃が作用し検出部に不具合が発生。(過負 接触不良。 荷操作など自身で発生する場合と環境条件など外部からの (導通不良やチャタリン 影響による場合) グ、その他) ・ 負荷の不適合。 ・ 高抵抗皮膜生成。(侵入気体による) ・ 微細粉塵などによる不導体異物の介在。 ・ 入力異常。(主に誤配線、誤接続) ・ 負荷の不適合。 接触子の溶着。 ・ トラッキングの発生。(接触部付近に水などの導電性液体が 浸入) Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 16
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6.8 検査と試験、6.8.1 形式試験、6.8.2 受渡試験

6.8 検査と試験 JIS C 8201-1 では試験の種類を形式試験、受渡試験、抜取試験の 3 つに分類しているが、多方向 スイッチが該当するのは、以下の 2 つの試験である。 6.8.1 形式試験 形式試験は、適用しようとする規格によって製作した多方向スイッチの設計の適合性を検証するた めに行う試験で以下の項目がある。 (1) 温度上昇 (2) 耐電圧特性 (3) 出力特性 (4) 正常条件における多方向スイッチの投入及び遮断容量 (5) 異常条件における多方向スイッチの投入及び遮断容量 (6) 構造上の要求 構造上の一般要求の他に、多方向スイッチの操作力 (操作トルク) 、操作限界 (操作端の強度など) 及び操作部の強度の検証を含む。 多方向スイッチにおける構造上の一般要求事項とは、下記に示す項目である。 ① 材料 使用されている部品の材料、導体材料、絶縁材料など。 ② 通電部及び接続 通電部(接続端子部)の機械的強度及び通電容量など。 ③ 空間距離及び沿面距離 多方向スイッチ各部における導体部と絶縁部の組立寸法。 ④ 操作部分の絶縁 多方向スイッチの操作部の充電部(検出部)に対する絶縁性の検証など。 ⑤ 必要と認められる各種環境性の検証 6.8.2 受渡試験 受渡試験は、製品の不具合発見と製品が正しく機能するかどうかを確かめるために行うもので個々 の製品に対して実施する。基本的に多方向スイッチでは、機械的な動作 (検出部の電気的な開閉動作 及び出力特性も含む) を検証する機械的検査と耐電圧試験に限定されている。なお、多方向スイッチ を使用する上でこの受渡試験が品質上重要である場合は、使用者と製造業者の間で受渡試験に関する 仕様(試験項目と方法、合否判定基準、その他)を取り決めることになる。 無断複写・転載を禁じる。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 17
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スイッチ・表示灯編 リミットスイッチ