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Thinking in Systems
インターネットをはじめとしたテクノロジーの発達によって人・モノ・情報がかつてない規模で相互作用するようになり、 現代社会は極めて複雑になりました。そのような状況の中で、多様な問題を解決し、価値あるものを創造するためには、モノゴトを総合的・多面的に考える「システム思考」が重要となってきます。
このテキストは、初学者がシステム思考とは何かを理解し、その基本的な実践方法を知るための入門書です。特にシステム思考を自然な形で実践するための表現手法である「システムモデル」に焦点をあて、簡単な例題を通してその活用方法をお伝えします。
このテキストが皆さんにとって、複雑な問題の解決や価値あるものを創り出していくための第一歩となれば幸いです。
Contents
1 . システムとは何か?
・システムの定義
・システムを記述することば
・システムの例
2 . システム思考とは何か?
・システムとして考える
・ビューポイントとビュー
・システムモデル
・システム思考の第一歩
3 . システム思考のプラクティス
・フィジカルビュー
・コンテキストビュー
・オペレーショナルビュー
・ファンクショナルビュー
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このカタログについて
| ドキュメント名 | システムとして考える〜システム思考&システムモデル入門〜 |
|---|---|
| ドキュメント種別 | その他 |
| ファイルサイズ | 6.2Mb |
| 登録カテゴリ | |
| 取り扱い企業 | 株式会社レヴィ (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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Thinking in Systems
システムとして考える
~システム思考&システムモデル入門~
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Thinking in Systems
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はじめに
インターネットをはじめとしたテクノロジーの発達によって人・モノ・情報がかつてない規模で
相互作用するようになり、 現代社会は極めて複雑になりました。そのような状況の中で、多様
な問題を解決し、価値あるものを創造するためには、モノゴトを総合的・多面的に考える「シス
テム思考」が重要となってきます。
このテキストは、初学者がシステム思考とは何かを理解し、その基本的な実践方法を知るための
入門書です。特にシステム思考を自然な形で実践するための表現手法である「システムモデル」に
焦点をあて、簡単な例題を通してその活用方法をお伝えします。
このテキストが皆さんにとって、複雑な問題の解決や価値あるものを創り出していくための
第一歩となれば幸いです。
C o n t e n t s
1 . システムとは何か?
・システムの定義
・システムを記述することば
・システムの例
2 . システム思考とは何か?
・システムとして考える
・ビューポイントとビュー
・システムモデル
・システム思考の第一歩
3 . システム思考のプラクティス
・フィジカルビュー
・コンテキストビュー
・オペレーショナルビュー
・ファンクショナルビュー
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1 . シ ステムとは何か?
システムの定義
「システム」という言葉を聞いたり使ったりする機会はあると思いますが、「システムとは何か?」と聞かれるとはっき
りと答えられない人も多いのではないでしょうか。ここではシステムの定義についてあらためて確認しておきます。
システムの定義を辞書や文献で調べると、様々な記述を見かけます。例えば三省堂大辞林とJISではそれぞれ次の
ように記載されています。
三省堂大辞林 JIS Z 8115
個々の要素が有機的に組み合わされた、まとまりを 所定の目的を達成するために、選定され、配列され、互いに
もつ全体。 連係して動作する一連のアイテム(ハードウェア、 ソフトウェア、
人間要素)の組合せ。 ※JIS Z 8115は信頼性/品質管理に関する用語の規格
他にも様々な定義の文章が見受けられますが、このテキストでは多くの定義文に共通する記述を参考にして、次の
3つの性質を備えているものをシステムと呼びたいと思います。
<システムの定義> 次の3つの性質を備えるものをシステムと呼ぶ。
● 多数の要素が集まって ● 要素同士が ● 時間の経過に伴って
目的を果たす 相互作用を持つ 変化、動作する
システムを記述することば
組み込みシステムやアプリケーションソフトウェアなどの一般的なシステムの設計開発者は、システムの全体像や
ある側面、一部分を様々な形で記述します。ここでは、システムを記述する代表的な概念と言葉を紹介します。
要素
部品
システムをつくっている一つ一つのもののことを要素と呼びます。
ソフト 要素が多数集まり、相互作用を持つことではじめてシステムが成り立ちます。
一番分かりやすいのは、家電製品や機械などの部品です。スイッチやランプ、
機能 歯車、シャフトなどの部品はシステムを構成する物理的な要素と考えること
ができます。
しかし、要素は物理的なものだけにとどまりません。ソフトウェアを構成するクラ
スや変数、特定の機能なども要素として扱うことができます。さらにシステムを
操作する人間(ユーザ)などもシステムの要素として捉えることもあります。
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相互作用
システムでは、要素と要素の間に様々な相互作用が働いています。相互作用
は「要素と要素の関係性」と言い換えることもできます。
例えば、懐中電灯のような簡単なシステムを考えるとき、電池という要素と
電球という要素の間には「電流が流れる」という相互作用があります。
代表的な相互作用は、エネルギーの伝達、情報の伝達、包含関係・抽象化関係
です。電流が流れるという相互作用はエネルギーの伝達の一種と考えること
ができます。
入出力
要素間の相互作用の代表的なものに、エネルギーの伝達と情報の伝達があり
入力 出力 ます。着目する要素に対して別の要素からエネルギーや情報が伝達されると
き、それらは着目する要素の「入力」と呼ばれます。また、着目する要素から別
の要素に対してエネルギーや情報が伝達されるとき、それらは着目する要素
の「出力」と呼ばれます。
入力と出力は着目する要素を決めることではじめて定義されます。ある要素に
とって出力だったものが、別の要素に着目すると入力となることもあります。
階層性
システムは複数の要素から成り立っていますが、その要素について詳しく見
ていくと、その要素はさらに小さい(さらに具体的な)複数の要素から成り
立っています。また、それぞれの要素が特定の目的や機能を持っていることが
多いです。つまり、システムの要素もまたシステムであることが多いのです。
このように入れ子構造になっていることをシステムの「階層性」と呼びます。
あるシステムに着目したとき、その上位の階層のシステムをスーパーシステム
と呼びます。着目しているシステムのある要素をシステムとして捉えるとき、
それはサブシステムと呼ばれます。
コンテキスト
コンテキストとは一般的に「文脈」や「状況」を示す言葉です。システム開発に
おいてコンテキストとは「着目しているシステムがおかれている状況」のこと
を指し、そのシステムが外部の要素とどのように相互作用するかを記述する
ことで表現されます。
コンテキストを考えることで、そのシステムが外部からどのような影響を受
けるのか、そして外部にどのような影響を与えるのかを整理することができ
ます。これは、システムの外と中を分けるということでもあるので、「どこま
でが対象のシステムなのか?(システムの境界)」をはっきりさせることも
できます。
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システムの例
実際の世の中にはどのようなシステムがあるでしょうか?代表的なシステムの例を挙げて、前節で紹介した言葉を
使って記述してみたいと思います。
C a s e . A 人工衛星
人工衛星は複雑なシステムの代表例です。多数の電子部品、
機械部品、構造体等から構成され、複雑なソフトウェアで動
作が制御されています。そして「ミッション」と呼ばれる達成
すべき事柄が設定されており、ミッションの達成を通して特
定の目的を果たします。
超小型人工衛星OPUSAT
入出力 人工衛星は地上と通信するための通信機を備えています。通信機は人
工衛星が取得したデータや、人工衛星の状態を表すデータなど、様々な
通信機 データを受け取って、通信のための電波に変換して地上に送信します。
このとき、通信機という要素に対して「データ」が入力で、「電波」が出力
データ 電波
であると考えることができます。
階層性 システムとしての人工衛星は、
・電源系(電力を適切に供給するための機能を担う部分)
人工衛星 ・姿勢制御系(人工衛星を適切な姿勢に保つための機能を担う部分)
・ミッション系(ミッションを達成するための特別な機能を担う部分)
など、様々な機能を担う要素から構成されます。このうち、例えば電源系は、
バッテリーや充電回路などの様々な要素から構成され、電力を適切に供給
電源系
するという独自の目的のために動作します。つまり、電源系もまたシス
テムなのです。さらに電源系の要素である充電回路も、抵抗やコンデンサ
などの様々な部品から構成され、充電という目的を持つため、やはりシス
充電回路 テムであると言うことができます。電源系から見たとき、人工衛星全体は
スーパーシステムで、充電回路は要素またはサブシステムです。
コンテキスト 左の図は、ロケットで打ち上げられた人工衛星が分離されるときのコン
テキストを表現しています。着目するシステムを人工衛星とするとき、分離
人工衛星 装置はシステムには含まれない外部の要素です。左の図では、分離装置
が人工衛星を加速することになっています。これにより、人工衛星は(分離の
加速 ために)加速するという機能を持たなくてもよいということが分かります。
「どのシステムがどの機能を持つべきか?」を曖昧にすると、システムの
分離装置 開発が上手くいきません。コンテキストを考えることで、そのような曖昧
さをなくし、システムの境界をはっきりさせることができます。
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C a s e . B 企業
「企業や組織はシステムである」と聞くと少し違和感があるかも
しれません。しかし、企業や組織は「利益を出す」などの特定の
目的を持っており、「人」を要素と考えると、要素が多く集まっ
たものです。また、要素である人と人同士は様々な形でコミュ
ニケーションを行い、相互作用を持ちます。よってシステムの
定義を満たすので、企業や組織もシステムであると言えます。 株式会社レヴィの創業メンバー
入出力 株式会社レヴィは営利企業なので、サービスやプロダクトを通して顧客
に価値を提供し、その対価としてお金をもらいます。抽象度を最も高く
レヴィ し、レヴィ全体を1つの要素として見るとき、レヴィに対して「お金」が
入力で、「価値」が出力であると考えることができます。
金 価値
階層性 組織システムの階層性は皆さんにとって想像しやすいものでしょう。
レヴィは開発チームや営業チームなど、様々なチームから成り立って
レヴィ います。このとき、各チームはレヴィというシステムの要素として考える
こともできますが、各チームは複数の社員から成り立っていて、特定の
開発チーム 目的や役割を担っているので、チームそのものもシステムであると考える
こともできます。
開発チームから見たとき、レヴィ全体はスーパーシステムで、テスト担当者
テスト担当者 は要素またはサブシステムです。
コンテキスト レヴィは様々な組織や人と、サービスの提供や業務委託などの関係性を
持っています。左の図は、インターン学生を外部要素であると考えたとき
レヴィ のコンテキストを図で表したものです。インターン学生はレヴィに労働力
労働力 報酬 を提供し、レヴィからはその対価として報酬を与えるという関係があり
ます。
インターン学生
その他
その他にも、皆さんの身の回りにはシステムがたくさんあります。家電製品、スマートフォン、車など一般的に
システムとして認識されているものはもちろん、先程例として挙げた企業や組織もシステムです。街や社会は、
建物や人などを構成要素とするシステムであると考えることができます。皆さん自身も、臓器や細胞を構成
要素とするシステムの1つであると言うことができます。
「システム」とはモノゴトの捉え方です。p.03で示したシステムの定義に当てはまるものとして捉えるかどうか
で、対象をシステムとして考えることもできるし、システムではないと考えることもできます。世の中のおお
よそのものは、捉え方次第でシステムとして考えることができます。
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2 . シ ステム思考とは何か?
システムとして考える
p.05で例として挙げた人工衛星や、コンピュータ、家電製品、車、航空機などは一般的にシステムとして認識されてい
ます。それらは電子部品や機械部品、ソフトウェアの機能ブロックなどの多数の要素から成り立っていて、要素同士が
相互作用することで動作し、特定の目的を果たします。このような一般的なシステムの設計開発を担う技術者たちは、
きちんと目的を果たすことのできるシステムを実現するための優れた考え方や視点を持っています。例えばp.03~
p.04で紹介したような言葉や概念を用いてシステムを記述したり理解したりすることもその一部です。一方で、前節の
最後に書いたように、世の中のほぼ全てのモノゴトはシステムとして捉えることができます。上記のような一般的なシ
ステムだけでなく、p.06で例として挙げた企業や組織もそうですし、街や社会、生命やサービスなどもシステムとし
て考えることができます。そして一般的なシステムの設計開発者と同じような考え方や視点を適用することで、対象を
より適切に理解したり、問題を解決したりすることができるようになる場合があります。実は、これがシステム思考の
本質です。システム思考とは、様々なモノゴトをシステムとして理解し、システムの設計開発者と同じように考えること
なのです。
システム思考とは?
モノゴトをシステムとして捉え、一般的なシステムの設計開発者と同じような考え方を
適用することで、対象を適切に理解したり、設計したり、問題を解決したりすること。
では、「一般的なシステムの設計開発者と同じような考え方」を実践するためにはどのようにすればよいのでしょう
か?このテキストでは特に重要なものとして、以下のような考え方を挙げます。
システム思考の実践方法
時間変化
システムの (システムや要素の動作、発展)
全体像や範囲 を考える
要素、相互作用、入出力、
(コンテキスト)
階層性などの考え方を から考える
適用してシステムを
ドキュメントや
理解し、記述する
様々な モデルを使って
ビューポイントから システムに関する
システムを捉える 認識を一致させる
世の中には「システム思考」について扱う参考書が多々ありますが、その多くで「氷山モデル」、「フィード
バックループ」、「ストック&フロー」などの考え方が主な内容として解説されています。それらの考え方
もシステム思考の重要な一部なのですが、それらの解説は他書に譲り、このテキストではシステム思考
本の中ではあまり明示されることのない「システム設計の考え方」を中心に扱います。
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ビューポイントとビュー
多くの場合、システムはたくさんの要素と複雑な相互作用を持っているため、その全ての側面を一度に理解したり
表現したりするのは難しいです。そこで、次に示すような「ビューポイント」や「ビュー」という考え方が必要となります。
ビューポイントとは?
要求 ある側面に関心をあててシステムを記述し
たり理解したりしようとするときの視点。
ビューとは?
システム
あるビューポイントから見たときの、シス
機能 運用 テムの全部または一部を表現したもの。
システムを適切に理解したり設計したりしようとするとき、どのようなビューポイントが必要になるかは、対象のドメ
イン(領域)によって異なります。例えばビジネスについて考える場合は「お金の流れ」というビューポイントからシス
テムを記述する必要があります。生態系について考える場合には「捕食 / 被捕食関係」というビューポイントからシス
テムを記述して、理科の教科書に載っている「食物連鎖の図」のようなビューを描くことが役に立つかもしれません。
このように対象とするシステムの種類や目的によって有効なビューポイントのセットが異なるので、「どのような
ビューポイントを持っておくべきか」については一概には言えません。しかし「一般的なシステムの設計者がよく使う
ビューポイント」として次のようなものを挙げることができるため、まずはこれらを押さえておくのが良いでしょう。
一般的なシステム設計者がよく使うビューポイント
● コンテキストビューポイント( Context Viewpoint)
システムの全体と境界、外部との相互作用に関心がある視点
● ファンクショナルビューポイント( Functional Viewpoint)
システムの機能に関心がある視点
● オペレーショナルビューポイント( Operational Viewpoint)
システムを操作する、運用するという側面に関心がある視点
● フィジカルビューポイント( Physical Viewpoint)
システムの物理的な構成や特性に関心がある視点
あるビューポイントを選ぶと、それに対応するビューを記述することができます*。ビューは様々な形で表現することが
できます。文書(ドキュメント)で記述することもできますし、絵や図で描くこともできます。コンテキストビューポイント
から描かれたビューを、コンテキストビューと呼びます。他のビューポイントに関しても同様です。
このテキストでは特に、システム思考を実践するのに適した方法として「システムモデル」という図を用いてビューを
記述する方法を紹介します。
*正確には、ビューポイントを決めるだけではビューを記述することはできません。ビューを記述するため
には、ビューポイントだけでなく「どの抽象度でビューを記述するか?」と「どの範囲を記述するか?」も
決めなければなりません。
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システムモデル
システムモデルとは、システムの「要素」と「要素間の相互作用」をネットワークダイアグラムで表現したものです。
ネットワークダイアグラムとは、四角形や円形などの図形で表される「ノード」を矢印や線などで表される「リンク」で
つないだ図のことです。システムモデルでは、システムの要素をノードで、要素間の相互作用をリンクで表現します。
これは具体例を見た方がわかりやすいでしょう。以下に例として3つのタイプのシステムモデルを紹介します。
物理構成モデル
物理要素 物理要素
部品やハードウェアモジュールなどの物理的要素をノードとし、電気や情報
の流れなどの相互作用をリンクで表現したシステムモデルです。フィジカル
物理要素 物理要素 ビューを記述するのに有効です。
物理要素
コンテキストモデル
外部 外部
要素 要素 着目しているシステムと、システムの外部要素との相互作用を記述したシス
テムモデルです。通常は着目するシステムを表すノードを中央に置き、その周
システム 囲に外部要素を表すノードを配置します。相互作用には、システムが外部要素
から影響を受けるものと、システムが外部要素に影響を与えるものがあるた
め、矢印で影響の方向を明記します。コンテキストビューを記述するのに有効
外部 外部
要素 要素 です。
アクティビティモデル
アクション
着目しているシステムやサブシステム、または要素がどのように振る舞うか
アクション を表現するシステムモデルです。振る舞いの単位をアクションノードとして
記述し、順序関係やデータの入出力の関係をリンクとして表現します。皆さん
アクション は「フローチャート」という図を見たことがあると思いますが、フローチャート
はアクティビティモデルの一種です。ファンクショナルビューやオペレーショ
アクション ナルビューを記述するのに有効です。
ビューをシステムモデルで表現することの主な目的の1つは、対象のシステムについてチームのメンバー
や関係者らの認識を揃え、円滑に議論したり共同作業したりできるようにするということです。そのため
には、描いたシステムモデルが他のメンバーや関係者にも理解しやすいものでないといけません。そこで、
「◯◯というタイプの要素は四角いノードで描く」とか「点線の矢印は□□の関係性を表している」のよう
にシステムモデルの描き方や読み取り方について共通のルールを定めておく必要があります。一般的なシ
ステム開発に用いられるシステムモデルの描き方・読み取り方を定めたものとしてUML(Un i f i e d
Modeling Lanugage)やSysML(System Modeling Language)などがあります。このテキストでは、
わかり易さを重視してUMLやSysMLに厳密には従っていない簡易的な描き方のモデルを用いています。
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要素間の相互作用をグラフィカルに直接的に表現するシステムモデルは、文書(ドキュメント)でビューを表現するの
と比較して、以下❶~❸のような面で優れています。
❶理解・伝達のしやすさ
❷管理・運用のしやすさ
❸トレーサビリティ VS
システムモデル ドキュメント
システム思考の第一歩
モノゴトを理解したりデザインしたりしたいとき、システム思考が有効かもしれません。まずは対象のモノゴトをシス
テムであると考え、いくつかのビューポイントに立ってそのシステムがどんな要素からできていて、要素間にどんな
相互作用があるかを考えてみましょう。そしてシステムモデルを用いてビューを記述すると、対象のモノゴトについて
様々なことが分かってきます。ここまでがシステム思考の第一歩です。そこから先は、システム思考を使って何をした
いか、どんな問題を解決したいかによっていろいろなやり方や選択肢があります。
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3 . シ ステム思考のプラクティス
それでは、簡単な例題を使ってシステムモデルを用いたシステム思考を練習してみましょう。
例題は「娘の部屋を設計する」です。次のような場面を思い浮かべてみて下さい。
来年小学生になる6歳の娘が、
「部屋が欲しい」と言い出しました。
そこで、あまり使っていなかった
部屋を片付けて、娘の部屋にする
ことにしました。
どこに、どんなものを置きましょ
う?
注意:ここではわかり易さを重視するために、あまり複雑ではない場面を例題として設定しました。以降に示す例やプラクティス
(練習問題)では、わざわざシステム思考を使わなくても解決できるだろうと思う場面があるかもしれません。ここでは簡単な例に
対してあえてシステム思考を適用することで、システム思考の基本を体験して頂きたいと考えています。実社会のより複雑で多様
な問題に対しても、基本的にはここで紹介するような考え方やシステムモデルを用いた表現が有効です。システムモデルの例を
ご覧になったり、プラクティスに取り組んだりする際には、「自分が抱えている問題ではどうなるだろう?」ということを合わせて
考えて頂ければ幸いです。
フィジカルビュー
まずは、フィジカルビューポイントから考えてみましょう。フィジカルビューポイントはシステムの物理的な構成や
特性、形状などに関心を持つ視点です。部屋の場合は、「部屋はどんな形か?」「部屋にはどんなものが置いてあるか?」
「家具などはどのように配置されているか?」「外観や匂いはどのようになるか?」などが相当します。
「部屋はどんな形か?」や「家具などはどのように配置されているか?」という視点に対するビューとしては、それぞれ
「間取り図」や「家具レイアウト図」のようなものが考えられます。ここでは「部屋にはどんなものがどこに置いてある
か?」という視点から、例1のようなビューをつくってみましょう。これは部屋に配置するもの(部屋システムを構成する
物理要素)を付箋に書き出して、部屋を表すイラストの上に貼っただけの簡単なビューです。あえて名付けるとしたら
「物品配置検討図」というところでしょう。
例1のように娘の部屋に必要な要素を付箋に書いて貼り付けることで、物品配置
プラクティス①
検討図をつくってみましょう。
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例1.娘の部屋の物品配置検討図
コンテキストビュー
次は、いよいよシステムモデルを使ってみます。システムモデルをつかって、コンテキストビューを描いてみましょう。
コンテキストビューポイントは、着目しているシステムと、そのシステムの外側にある要素との相互作用に関心がある
視点です。このような場合は、「コンテキストモデル」というシステムモデルを用いることでビューを描くことができます。
コンテキストモデルを描くときは、まず中央に着目しているシステムを表すノードを配置します。次に、システムと相互
作用を持つ外部の要素を周りに配置します。このとき、着目しているシステムと外部要素を区別するために、ノードの
形状を変えましょう。ここでは、着目するシステムを正方形で、外部要素を楕円で表します。
例2に、娘の部屋のコンテキストモデルを示しました。このようなコンテキストモデルを描くことで、娘の部屋と相互作
用を持つ人やモノを洗い出すことができ、同時に娘の部屋の範囲を決めることができます。例えば例2からは、娘の他
にも母、父、祖父、祖母なども何らかしらの形でこの部屋と関わりを持つということが分かります。また、リビングは娘
の部屋に含まれないことが分かります。
例2.娘の部屋のコンテキストモデル
リビング
遊ぶ
勉強する 屋外
娘 隣接
寝る
日光・熱
娘の部屋
父・母 祖父
子どもと遊ぶ 子どもと遊ぶ
掃除する 祖母
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一般的に、システムのコンテキストは時間や場合によって変化します。上の例では「日常」という幅広い状況下での
コンテキストをモデルとして示しましたが、もっと細かく時間帯や場合を分けて描くこともできます。例えば、昼のコン
テキストモデルと夜のコンテキストモデルを別々に描いた方が、より目的に沿った議論や分析ができるかもしれません。
また、この家庭にもう一人女の子が生まれた場合は、「妹」という外部要素のノードが追加されます。
例2で描かれている要素以外には、どんな外部要素が考えられるでしょうか?思い
プラクティス② ついた要素を例2のコンテキストモデルに追記して、娘の部屋との相互作用を記述
してみて下さい。
オペレーショナルビュー
次は、システムの操作や運用に関心を持つ視点であるオペ
例3.部屋の掃除をする母のアクティビティ
レーショナルビューポイントから見たビューを考えてみま
しょう。オペレーショナルビューポイントでは「操作や運用の
入室する 主体はだれか?」を意識するようにして下さい。ここでは例2
のコンテキストビューで明らかになったシステムと相互作用
を持つ登場人物のうち、「母」による掃除の運用を考えてみま
す。このような場合によく使われるシステムモデルは「アク
窓を開ける ティビティモデル」です。アクティビティモデルでは、着目して
いる主体の行動や動作の単位をアクションと呼び、あるアク
ションノードから、次に行われるアクションノードに対して矢印
のリンクを描きます。このようにして、アクションのつらなりと
おもちゃを片付ける して操作や運用の流れを表現します。類似するシステムモデル
として、フローチャートなどがあります。例3に、娘の部屋の
掃除をするときの母のアクティビティモデルを示します。
大きなゴミを捨てる
このような形で掃除をするときの母のアクティビティを描い
てみると、フィジカルビューだけで考えていたときには出てこ
なかった要素を思いつくことがあるかもしれません。例えば
掃除機をかける 「おもちゃを片付ける」や「大きなゴミを捨てる」というアクショ
ンから「おもちゃ入れ」や「ゴミ箱」という要素が必要であると
いうことを思いつくことができます。
窓を閉める
退室する
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例4.新たに明らかになった必要な要素
コンテキストビューポイントから考えることで母というステークホルダが明らかになり、その母に関してオペレーショ
ナルビューポイントから考えることで、それまで見逃していた必要要素を見つけることができ、娘の部屋の設計をアップ
デートすることができました。これが、システム思考の効果です。
例2で外部要素として描かれている祖父・祖母の行動について、オペレーショナル
プラクティス③ ビューを描いて考えてみましょう。そして、そのビューから明らかになった必要
要素をフィジカルビューに追加してみましょう。
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ファンクショナルビュー
最後にファンクショナルビューポイントから娘の部屋に必要な要素について考えてみましょう。ファンクショナル
ビューポイントは、システムや要素が持つ機能に関心を持つ視点です。娘の部屋にはどんな機能が必要でしょうか?
なぜそのような機能が必要なのでしょうか?その機能を実現するためには何が必要なのでしょうか?このような
ことを考えるために、ここでは要求モデルによるビューを描いてみたいと思います。
要求とは、システムが目的を達成するために満たすべき事柄のことです。システム設計の初期の段階(上流設計)では、
システムが持つべき機能や性質、制約などを要求として記述します。要求モデルは、要求同士の関係性や、要求を満た
す要素を記述したシステムモデルです。
例5は子どものお絵かきに関する要求モデルです。「子どもが座って絵を描くことができる」という上位の要求を満た
すためには、「子どもが座ることができる」と「子どもが絵を描くことができる」という2つの要求が満たされなければ
なりません。その2つをそれぞれ満たすための要素として「子ども用のイス」と「子ども用のテーブル」が部屋に設置
されることを示しています。矢印で描かれたリンクは「矢印の元の要素が、矢印の先の要素を満たす」という関係性を
持つことを表現していると考えて下さい。
例5.お絵かきに関する要求モデル 例6.祖父・祖母の休憩に関する要求モデル
子どもが座って絵を 祖父・祖母が
描くことができる 休憩することができる
子どもが 子どもが絵を 大人が
座ることができる 描くことができる 座ることができる
子ども用の 子ども用の 大きいイス
イス テーブル
もう一つ例を考えてみます。例2のコンテキストモデル(p.12)において、娘の部屋に関係する登場人物として「祖父・
祖母」が挙げられていることを思い出してみましょう。プラクティス③ではその行動についてオペレーショナルビュー
を描いてみたと思います。例えばそこで「休憩する」というアクションがあることが明らかになったとします。この
場合、「祖父・祖母が休憩することができる」という要求が満たされる必要があるので、例6のような要求モデルを描く
ことができます。
15
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ここで、広さや予算の都合で「子ども用のイス」「子ども用のテーブル」「大きいイス」の3つ全てを配置するのは難しい
ということが分かったとしましょう。例5や例6のような要求モデルがあれば、システムが満たすべき要求が明らかに
なっているので、要求を満たす代替案を考えることができます。例えば、「子どもが座ることができる」と「大人が座る
ことができる」の両方の要求を満たす要素として、背が低く幅の広いベンチ型のイスが適切かもしれません。する
と、例7のように配置する要素を更新した設計を考えることができます。
例7.更新後の要求モデル
祖父・祖母が 子どもが座って絵を
休憩することができる 描くことができる
大人が 子どもが 子どもが絵を
座ることができる 座ることができる 描くことができる
ベンチ型の 子ども用の
イス テーブル
このように、イスやテーブルなどの要素をフィジカルビューポイントだけで考えるのではなく、それらがどんな機能を
担っていて、なぜそのような機能が必要なのかというファンクショナルビューポイントから考えることで、システム全
体をより良いものへとブラッシュアップすることができました。
プラクティス①で付箋に書き出した部屋の要素のうちいくつかを選び、それが
プラクティス④ 満たす要求や、その要求が満たすさらに上位の要求を考えて要求モデルを描
いてみましょう。そして要求を満たす要素の代替案を考えてみましょう。
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株式会社レヴィ
三浦政司・南部陽介・萩原利士成
contact@levii.co.jp
https://levii.co.jp/
このテキストは文部科学省 宇宙航空科学技術推進委託費による「超小型衛星開発とアントレプレナーシップ
教育を通じた宇宙システム活用人材の育成」の一環として制作されました。