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【技術資料】静電気と計量:静電気を帯びたサンプルの正しい取り扱い方について

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天びんの安定性や測定ドリフトの問題は「静電気」の可能性あり!

静電気によって帯電したサンプルや容器を計量するのは困難です。天びんの安定性や測定ドリフトの問題は、しばしば静電気によって引き起こされています。この資料では、電荷蓄積を防止するために講じることのできる対策について説明しています。

目次
1 静電気について
2 帯電の発生原因は?
3 計量および計量精度へ何が影響しますか?
4 電荷はどれだけ早く消散されますか?
5 静電気を防止または回避するために何ができますか?
5.1 静電気の蓄積防止
5.2 静電気による力の低減
5.3 静電気の消散
6 静電気の除去:XPR分析天びんソリューション
7 要約
8 参考文献
9 共著者について

このカタログについて

ドキュメント名 【技術資料】静電気と計量:静電気を帯びたサンプルの正しい取り扱い方について
ドキュメント種別 その他
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このカタログの内容

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静電気と計量 静電気を帯びたサンプル 静電気によって帯電したサンプルや容器を計量するのは困難です。天びんの安定性や測定 ドリフトの問題は、しばしば静電気によって引き起こされています。このホワイトペーパー は、電荷蓄積を防止するために講じることのできる対策について説明しています。より重要 なことは、これらの電荷が発生したら消散のために何ができるのかということです。サンプ ルや容器への帯電や影響を理解することは、計量プロセスが妨げられるのを防止するため に不可欠です。XPR分析天びんは、静電気を帯びたサンプルの取り扱いを簡素化し、最高 の精度と最も信頼できる計量結果を保証します。 目次 1 静電気について 2 帯電の発生原因は? 3 計量および計量精度へ何が影響しますか? 4 電荷はどれだけ早く消散されますか? 5 静電気を防止または回避するために何ができますか? 5.1 静電気の蓄積防止 5.2 静電気による力の低減 5.3 静電気の消散 6 静電気の除去:XPR分析天びんソリューション 7 要約 8 参考文献 9 共著者について White Paper
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1 静電気について 静電気とは 静電気とは、非導電性材料の表面に蓄積する電荷です。静電気現象は、正と負の電荷の分離を必要としま す。2つの異なる材料が互いに接触する場合、電子は一方の材料からもう一方へと移動でき、一方の材料に 正の電荷を、もう一方に等しい負の電荷を残します。 2 帯電の発生原因は? 物体で帯電が生じる主な原因は摩擦です。ガラス棒を布で擦って、小さな紙片を引き寄せたり頭髪を頭か ら持ち上げたりする物理の授業の実験を誰もが覚えています。代表的なラボの例には以下のようなものが あります。 正 空気 • ガラスビーカーを布で拭く 乾燥したヒトの皮膚 • メスフラスコを使い捨て手袋で扱う ガラス • ラボ用容器をビニール袋から取り出す • 容器を遊離した材料(バルク)で満たす ヒトの毛髪 ナイロン ウール 電荷の分離は、例えば、風袋容器をつかんだり持ち上げ シルク たりする際に、擦れることによって引き起こされます。こ アルミニウム れは、PTFEまたはプラスチック材料(ポリプロピレン、ポ 紙 リカーボネート、ポリスチレンなど)のような強い電気絶 中性 綿 縁効果を有する材料だけでなく、ガラスによって促進さ スチール れます。加えて、乾燥した大気、接地が不十分な床、プラ 負 木材 スチック手袋の使用といった好ましくない外部条件は、 硬質ゴム 電荷分離の形成、ひいては静電気帯電の一因となる可能 ニッケル 銅 性があります。 / 真鍮 / 銀 但し帯電は、摩擦の関係なしに起きる場合もあります。 金 / プラチナ プラスチック表面からのガラスフラスコの持ち上げのよう ポリエステル に、単に2つの異なる材料の分離は、強い静電荷を生成 ポリスチレン するのに十分です。 ポリウレタン ポリエチレン 帯電列(図1)は、どの材料が正に帯電する傾向が強く、 ポリプロピレン どの材料が負に帯電する傾向が強いかを示す一覧表で PVC す。それぞれの材料が帯電列にあるのとは別に、静電荷 シリコン は2つの材料が接触する時により容易に発生します。 PTFE シリコンゴム 図1:帯電列 2 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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3 計量および計量精度へ何が影響しますか? 帯電は、サンプルの取り扱いの困難さ、計量結果の誤差、より長い計量時間の原因となる可能性がありま す。測定値の精度と再現性に対する影響は、非常に重要となります。 多くの場合、静電気の存在は次の現象によって認識されます。 • 計量値が安定しない • 計量結果に繰返し性がない • 天びんの不安定さ(もしくは通常より長い安定時間) 結果のドリフトおよび非再現性、そして天びんの不安定性は、通常、電荷の消散によるものです。これらの 観測は、クーロン力の垂直方向成分によって継続的に変化し、正確な測定値の取得が困難です。 電荷はまた、サンプルまたは風袋容器開口部が帯電した場合、計量プロセスを中断させます。これが起きる と、粉体がスパチュラから風袋容器に「跳ね」、(図2に示されたように)精度を必要とする作業を試練にす る可能性があります。乾燥している粉体は静電気の影響を非常に受けやすく、計量が困難な場合がありま す。大型ガラスまたは熱伝導容器での少量計量は、静電気が計量結果の誤差を大幅に増やす典型的な使 用事例を表しています。 図2:計量ステップ中、静電気による粉体の「跳ね」 White Paper 3 METTLER TOLEDO
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これらの問題の原因は計量サンプルの正味の電荷で、追加測定なしで、減少しない、もしくはゆっくり減 少します。計量容器が帯電すると、計量室金属表面の反対極の電荷がそれらに引き付けられます(図3参 照)。計量皿の帯電した容器と、計量室の電荷との間のこの引力は、天びんの測定値を余分な重量と見な す追加の力を生成します。一般的にこのような影響下では、天びんは安定化するのに時間がかかり、余分 な力によって測定値が不正確になってしまいます。 図3:計量フラスコの負の電荷と天びん筐体の正の電荷は、天 びんと容器との間に働く力を引き起こします。この力の垂直 方向への成分がフラスコの重量に加わり、計量結果に影響を 与えます。 計量精度に与える影響は、以下が考えられます。 • 計量値が実際の重量よりも大きい、または小さい可能性 • 1~100mgの範囲の誤差が生じる 生じる電荷は負または正になるため、いずれも互いに引きつけ合い、または反発し合うため、実際の重量は 表示される値よりも大きく、または小さくなることがあります。数ミリグラムから100mgの誤差が観察され ます。これは少量のサンプル計量時のエラー率という点では、非常に重要です。 しかしながら、問題に気づくのが難しいあるいは気づくことが不可能である場合があります。例えば、静電 気が計量結果に影響することを示す一般的なインジケータなしに、正味の静電力存在によって安定した計 量を達成することは可能です。 物理学による説明 計量対象の天びん、サンプル、風袋容器の静電気は、静電力を引き起こします。静電気引力および反発力は 式を導き出すことで定義することができます。クーロンの法則 [公式 1] は、電荷は互いに(FE )を及ぼすと述 べています。 次のように簡易化 [1] されます。 ここで クーロン定数 2つの個々の物体の電荷 物体間の距離 絶対誘電率および比誘電率 4 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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電位差のために、被計量物と天びんの間に力が働きます。天びんはこの力(FE )の垂直方向への成分を測定 し、方程式2に従って、Δmの質量に相当する重量として解釈します。 [2] ここで は重力定数です 公式式1と2を組み合わせ、質量変化が方程式の対象になるよう並べ替えると、次のようになります。 [3] 公式3は、計量結果への影響を説明しています。 代表的なラボの例: 溶液を特定濃度に調整するため、規定量の粉体をガラスフラスコに分注するために分析天びんが使用され ます。100 mL測定用フラスコを計量皿上に置きます。通常の条件下では、フラスコが帯電しているため、補 足電荷が計量室に誘導されます。これは正味の引力をもたらします。 この正味の力は、フラスコを下向きに引っ張って実際よりも重く見せるか、上向きに押して軽く見せます。空 気が乾燥している状態、気候調節された環境、典型的な分析ラボでは、電荷がより簡単に発生し、計量誤 差の大きな可能性を引き起こします。天びんが安定した計量を表示する場合、ユーザーは風袋引きをし、手 作業で粉体を分注します。これは、時間がかかり、手間のかかる作業です。 いずれの方向の正味の力も、ユーザーに粉体を過剰もしくは過少に分注させ、最終的に不正確な溶液濃 度を引き起こします。一般的に、風袋容器の電荷は時間の経過と共にゆっくりと環境に放電されます。こ れはユーザーに、継続して粉体を過剰に添加させ、より大きな計量誤差につながる可能性があります、そ のため、結果として得られる溶液の濃度が誤って高くなり、分析測定値に深刻な影響を及ぼし、潜在的 に、OOS(規格外)結果や大量の再テスト作業につながる可能性があります。 White Paper 5 METTLER TOLEDO
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4 静電気の消散に必要な時間 時間の経過と共に消散する電荷: • 静電気の消散は、条件に応じて、制御された乾燥した空気(相対湿度20%以下)で数秒から数分、ある いは数時間かかる場合があります。 • 優れた絶縁体(例、ホウケイ酸ガラスやラボグレードのプラスチック)では、静電気の消散が遅くなること があります。 電荷は絶縁性の低い材料(良好な導電体)から急速に消散しますが、これは良好な絶縁体(導電性が悪 い)で作られたものでは非常に遅くなる可能性があります。ほとんどのラボ用容器は、優れた電気絶縁体で あるホウケイ酸ガラス製です。ラボ用品の製造に使用されるほぼすべてのラボ用プラスチックについても同 様です。普通の窓ガラス(ケイ酸ナトリウムガラス)でさえ、乾燥状態では良好な絶縁体になります。これら の良好な絶縁材料は、電荷消散の速度を遅くする可能性があります。ラボの洗浄機から取り出した直後の 清潔なガラス容器は、大量の電荷を持っています。 電荷消散の時定数は、表面導電率に影響されます。帯電した物体の表面導電率が高くなるほど、電荷はよ り早く放電されます。材料の固有特性の次に、表面導電率は相対湿度および表面汚染の程度にも大きく依 存します。 図4:ガラス容器- さまざまな湿度条件 下での、時間の経過による電荷の消散 図5:PTFE容器 – さまざまな湿度条 件下での、時間の経過による電荷の 消散 6 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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図4および5は、PTFE容器と比較してガラス容器の5分間にわたる電荷の消散を示します。両方のグラフは、 相対湿度の低い環境(青い線= 相対湿度20%)では測定エラーが大きくなることを示します。どの場合も、 時間が経過し電荷が消散するにつれ、計量誤差が小さくなります。図4は、ガラスフラスコが相対湿度80% (緑線)の環境では帯電できないことを示しています。ただしPTFE容器では、湿度が高い場合でも数分間 は大きな計量誤差があります(図5参照)。 5 静電気を防止または回避するために何ができますか? 帯電を制御する最適の方法は、その発生を最初から避けることです。 5.1 電荷の蓄積防止 ラボでの計量中、電荷の発生を回避するためのヒント • 可能な限り、導電性材料または静電気防止処理が施された材質を使用する; - プラスチックやガラス容器は急速に帯電しやすく、理想的な素材ではありません。 - メトラー・トレド製SmartPrep計量容器は、この目的に合わせ、特別設計されています。 • 取り扱いの際に種類の異なる材質の接触を避けます(帯電列に基づく)。 • 容器を不必要に擦るのを避けます(特に保護手袋を着用しながら触れる)。 - 可能な場合、計量用ピンセットを使用して容器を取り扱います。 • エアコン付きの部屋の湿度を上げます: - 電荷は、多くの場合、冬季に暖房した(乾燥した)部屋で発生します。 - 最適な相対湿度は45~60%です。 • 天びんと計量皿が、常に電気的に接地されていることを確認してください - 3ピンプラグを搭載したすべてのメトラー・トレド天びんは自動的に接地されます • 電気絶縁された履物の着用を避けます。代わりに静電靴とアース用ストラップを使用します。 静電荷を回避する最も簡単な方法は、例えば、メト ラー・トレド製SmartPrep計量容器のような、多数の プラスチック製ラボ用容器で既に提供されている導 電性材料を使用することです(図6)。これらの容器 では、余計な電荷はアースされた計量皿を介して放 電され、電荷が除去されます。残念なことに、しばし ばユーザーにとって、多くの用途で風袋容器の材料 を自由に選択することが不可能です。 また、絶縁された靴を着用したり、保護手袋で不必 要に擦ったり、容器を握ったりして、ユーザーが実 質的に電荷蓄積の一因とならないことを確認する のに役立ちます。非常に乾燥した大気、特に冬はま た、計量サンプルの電荷を促進します。多くの場合、 これだけでは問題がすべて解決するわけではあり ませんが、45~60%の相対湿度が問題を緩和でき ます。 図6:SmartPrep計量容器:特別な帯電防止素材の使い捨てプラ スチック計量補助具です。 White Paper 7 METTLER TOLEDO
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5.2 静電荷によって生じる力の低減 ラボでの計量中、電荷の発生を回避するためのヒント • 風袋容器およびサンプルを金属製バスケット(ファラデーケージとして機能)で、電気的に遮断します。 例えば、メトラー・トレド製ErgoClip風袋容器ホルダーを使用します。 • 生成された力に直接関係する表面積と重量を減らすため、より小さな風袋容器を使用します。 • サンプルが計量皿の中央に配置されていることを確認し、縁をこえてはみ出る可能性を最小限に抑える ようにします。 • 光導電性の下敷きを使用して、風袋容器と計量エリアの表面との間の距離を長くとります。 5 .2.1 ErgoClip(ファラデーケージ)の使用 ファラデーケージは導電性材料のメッシュからなる 囲いで、静電気および電磁場を遮断するために使 用されます。メトラー・トレド製ErgoClip(図7)は、 ファラデーケージとして作動する小型金属バスケッ トで、電荷を遮蔽するのに最適に設計されていま す。ErgoClipは、異なって荷電された風袋容器と天 びん内部にある余計な影響を与える電荷を排除し、 風袋容器を確実に所定の位置に保持するという追 加の利点があります。簡単に導入でき、試薬ガラス 器具やチューブ(例、試験管、PCRチューブ、遠心分 離管)のような広範囲の標準ラボ用容器で使用に最 適な各種ErgoClipsを取り揃えております。 図7:小さな金属バスケットであるErgoClipでの計量。風袋容器 ホルダーとして機能し、容器を帯電から保護します。 5.2.2 大型風袋容器向けソリューション 大型風袋容器の重量や寸法により、電荷を遮断するために金属バスケットを使用することが不可能となる 可能性があります。このような場合は、容器表面の余計な電荷を中和する代替え方法を探す必要がありま す。静電気除去ピストルを使用するラボもあります。トリガーが引かれると、ピエゾクリスタルが陽イオンと 陰イオンを生成します。しかし、すべての場合に真に効果的ではないため、推奨されません。高電圧を使用 して動作するイオナイザーがより適しています。なぜなら、構造的に一体化されているためです。(5.3.2章 参照)。 8 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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5.3 静電荷が存在する場合、その消散 ラボ計量中に電荷が存在する場合、それらを消散するためのソリューション: 1. 高電圧イオナイザーを使用して、サンプルと風袋容器を放電 • 内部イオナイザーの使用 - XPR天びんオプションのイオナイザーモジュール • U字型電極のような外部イオナイザーの使用 - 小型容器や少量のサンプルに適する、天びん側面に取り付けられたコンパクトイオナイザー - より大きな容器およびサンプル量に適するU字型電極 2. 空気をイオン化するための放射線源(ポロニウム 210、弱い x 線源など)の使用(国ごとの規制対象) メトラー・トレドでは、さまざまな高電圧イオナイザーのオプションを取り揃えております。これらは天びん 風防内に組み込まれる(内部イオナイザー)か、天びんドアの隣に配置される(外部イオナイザー)ように設 計されています。これらの帯電防止ソリューションはすべて、交流(AC)高電圧を使用して、電極で正および 負に帯電したイオンの両方の「雲」を生成し、余計な気流を発生させることなく、サンプルおよび計量容器 の電荷を中和するために作用します。これは、たとえ電極周囲の特定領域内でしか機能しないにもかかわ らず、非常に効果的なソリューションです。 備考:ファンと組み合わせて使用するイオナイザーは、一般的には推奨されません。有害なサンプルが攪拌 され、作業空間の周りに吹き飛ばされるリスクが排除できません。ファンはまた、安定化の速度を落とし、 あまり正確ではない測定結果を引き起こすので、測定結果を混乱させます。 5 .3.1 内蔵型イオナイザー 一体化された内蔵型イオナイザーは、メトラー・ト レドXPR分析天びんのオプションアクセサリです。 最初に選択されていない場合は、遡及的に簡単にイ ンストールできます。風防内部にある小さなブラン キングカバーパネルは簡単に取り外され、イオナイ ザーモジュールに交換できます(図.8参照)。 内部イオナイザーは、きちんとした効果的、効率的 なソリューションです。天びんの風防内側に導入さ れ、それ故に計量皿に近くなったイオナイザーによ り、サンプルと容器の放電がより効果的になります。 静電気検出機能 (StaticDetect™) によって風防内 で電荷が検出されると、イオナイザーが自動的に作 図8:XPR分析天びんに取り付けられたイオナイザーモジュール 動します。静電気の検出および除去プロセス全体が ユーザーの手動介入なく自動的に行われるため、この方法に効率的な利点があります。さらに、最初の工程 で存在する静電気をすべて除去するには不十分であった場合、天びんのドアを開けてサンプルを回収し、 電極を繰り返し通過させて完全放電を試みる追加の時間は必要ありません。代わりに、さらに除電作業が 必要な場合、サンプルは計量皿に乗せ風防ドアを閉めたまま、ユーザーは天びんのターミナルからワンク リックでイオナイザーをオンすることができます。 White Paper 9 METTLER TOLEDO
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5.3.2 外部イオナイザー U字型電極やポイント型電極などの外部イオナイ ザーは、ほとんどのタイプのラボ用天びんでの使用 に適しています。これらのタイプのイオナイザーは、 天びんのドアのすぐ隣に配置する必要があります。 イオナイザーの有効化と無効化は、風防と連動し ています。ドアが開くとイオナイザーは自動的にオ ンになり、ドアが閉じるるとオフになります。この方 法には効率的な利点があります。サンプルのイオン 化は、ユーザーが分注操作を行っている間に起こ り、時間を節約します。サンプルまたは容器が計量 室内に置かれると、それらは電極を通過し、そこで 放電されます。ポイント型電極またはU字型電極の 選択は、一般的には容器のサイズ次第です。U字型 図9:メトラー・トレド製XPRミクロ天びんをポイントイオナイ ザーと組み合わせ 電極は、より大きな雲を生成するので、より大きな サンプルおよび容器に使用されます。このようなシ ステムは、日常操作での長寿命が特徴です。 5.3.3 放射線源の使用 また高電圧イオナイザーの使用には、制限がいくつかあります。制御された空気内で作業する場合、電 荷レシーバーは通常、酸素が不足し、そのため放電されません。ポロニウム、アメリシウム、その他の弱ア ルファ放射素材などのストリップは、そのような空気において有効であると判明しています。放射性粒子線 は、困難な大気で余計な電荷を排除するのに適しています。しかしながら、ラジエーターの半減期は非常に 短く、1年後に交換し、放射性廃棄物として適切に処分する必要があります。 5.3.4 難しい状況での帯電の除去 PTFE容器(もしくは強力な電気絶縁体)の使用 非常に強い電気絶縁効果を持つ材料を使用する場合は、追加の対策が必要となる可能性があります。ス パチュラと接地面の間のアース付きストラップが役立つ場合があります。時によっては、コーティングされて いないアルミホイルで容器を包むだけでも、余計な静電気の影響を排除できます。これが機能しない場合 は、メトラー・トレド製U字型電極のような、多電極高電圧イオナイザーを使用してください。サンプルを電 極エリア内に長く保持するほど、確実に放電するのにもまた役立ちます(すなわち、20秒まで)。 乾燥粉体使用時の作業 風袋容器と同様の問題がテスト物質でも生じます。 プラスチック容器で乾燥されただけの粉体物質は 簡単に帯電し、スパチュラから他の表面現象への 典型的な飛び跳ねを示します。この状況では、サン プルをのせたスパチュラを、高電圧イオナイザーの 前を通過させることが効果的であると判明しまし た。ボトルネックまたは容器開口部の内側にある粉 末サンプルは、容器がイオナイザー電極付近を通 過する時間を増加させることによって、飛び跳ねを 防止できます。 図10:XPR分析天びんと安全キャビネットでの計量 10 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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汚染された装置内の作業 安全キャビネットのような気流の下での放電は、帯電した空気粒子が気流から急速に引き離されるため、 面倒で困難です。この場合、サンプルまたは容器を気流に向かって電極間に配置し、より長時間放電するこ とが役に立ちます。 6 静電気の除去:XPR分析天びんソリューション 図11:XPR分析天びんによる静電気の除去 6.1 自動静電気検出 (StaticDetect™) StaticDetect™ は特許取得済みの革新的技術です。天びんユーザーが電磁干渉の影響を受けずに、電荷に よる計量上の問題を回避します。メトラー・トレドのXPR分析天びんでご利用いただけます。その原理は、セ ンサによる風袋容器および/またはサンプルの電荷の自動検出です。センサはまた、計量測定値への影響の 大きさを測定します。 帯電による障害を自動検出することによって、天びんの操作を容易にし、結果をより信頼できるものにしま す。既存の計量セルが検出に使用されるため、天びんは被計量物の帯電を認識するだけでなく、実際の配 置を考慮して測定エラーの大きさに関する情報を提供します。これにより、ユーザーが正確かつ信頼できる 計量結果で作業しているという保証が大幅に向上します。 静電気検出サイクルは、計量プロセスと同時に実行されます。通常は天びん安定時間内に数秒かかるのみ で、計量結果取得時の遅れを回避します。ユーザーは、許容可能な検出しきい値を選択できます。 White Paper 11 METTLER TOLEDO
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StaticDetect機能は、ドラフトチャンバーや封じ込めシステムといった困難な条件を含め、あらゆるラボ環境 で正常に動作します。サンプルを天びんに置いてドアを閉じると、自動的に開始します。天びんターミナル 画面は、最上部左隅にアイコンを表示します。 サンプルが静電気の影響を受けないことを示します; サンプルが静電気の影響を受けることを示します; イオナイザーがオンになっていることを示します。 計量プロセス中に静電気が検出される場合(赤色のアイコン表示)、内部イオナイザーモジュールが自動的 に5秒間作動し、サンプルの静電気を除去します。さらなるイオン化サイクルは、天びんターミナルから手動 で開始でき、サンプルから完全に静電気が除去される(緑のアイコン表示)必要があります。 6.2 StaticDetect™が作用する仕組み 電気的に絶縁された同心電極が、接地された計量皿の下に組み込まれています。検出の際には、振幅 60 V、周波数1.2 Hzの交流方形波電流が電極に与えられます。方形波信号が正の半サイクルの際、図12 (a) に示されるように、電極には正電荷キャリアが生成されます。 図12:方形波交流 (AC) 信号(60 V, 1.2 Hz)。 計量サンプルが電荷を帯びていない場合には、クーロンの法則に従って静電力が生成されないため、計量 セルはサンプルの実重量を計量します。 但し、計量サンプルが負の電荷を帯びている場合には、負の電荷を帯びたサンプルと正の電荷を帯びた電 極の間に一時的に引力が発生します。計量セルはこの力のうち、垂直方向への成分の力を感知し、その結 果、(図13に示されるように)計量セルは実質量を超える力の大きさを計量します。 12 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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次の半サイクルで、電極に負電荷キャリアが生成されるため、静電場の正負が変化します。図12 (b)を参照 してください。この時点で、サンプルと電極との間に斥力が作用し、測定結果が(図14に示されるように)実 際の質量より少なく表示されます。 (a) (b) 図13:サンプルと電極との間に作用する引力。この 図14:サンプルと電極との間に作用する斥力。この 力の垂直方向への成分が実際の重量に加わり、表 力の垂直方向への成分が実際の重量に差し引か 示された測定値はそうあるべき値よりも高くなり れ、表示された測定値はそうあるべき値よりも低く ます。 なります。 信号 (a) と(b)の2つの位相間における測定結果の差は、ひとえに静電力(FE ) によって生じます。サンプル が静電気を帯電していない(すなわち、電荷キャリアがない)場合、この差はゼロです。この方法論を使用し て、センサは静電気力が測定結果に影響する量を決定し、したがってサンプルの真の重量を計算できるの です。 もちろん、サンプルが正の電荷を有する場合は同じ理論が適用されます。しかし、単に、信号各フェーズに おける引力と斥力は反対です。この方法は、広い計量範囲に効果的に使用できます。クーロンの法則は、 2つの電荷間の相互の力は、それらがどれだけ離れているかにもよることを明白にしました。故にその力は、 それらの空間的近接度に非常に左右されます。ここで概説した測定テクニックのみが、このギャップをカ バーできます。 ショートビデオでStaticDetect™の機能を詳しくご覧ください。  www.mt.com/lab-static 6.3 代替え方法 本体が帯電しているかどうかを検出する他の方法があります。しかしながらそれらはすべて、帯電がどれく らい計量値に影響を及ぼすかを推定できないという欠点があります。 White Paper 13 METTLER TOLEDO
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7 要約 天びんのユーザーは、計量に関連する帯電の原因と影響を認識する必要があります。計量結果の誤差や遅 延を回避するため、可能な限り静電気の蓄積を緩和もしくは排除するための予防措置を講じる必要があり ます。計量環境で静電気の影響を軽減する方法について、さまざまなヒントと推奨事項を提供します。さら に、計量容器やサンプルの除電のための確立されたソリューションが説明および比較されています。 計量プロセス中に電荷の存在を自動的に検出および除去する機能は、計量技術における重要な前進です。 最新世代XPR分析天びんは、イオナイザーモジュールを使用して検出された静電気を除去し、またはこれ らの静電気が計量結果に及ぼす影響の大きさを識別および記録することができます。これにより、天びん ユーザーにとって、静電気に帯電したサンプルの取り扱いがはるかに簡単で効率的になり、計量結果がより 正確で信頼性が高くなります。 8 参考文献 • 計量ガイド – ラボ用天びんを使って正しく計量するために、メトラー・トレド、Doc. No. 720906、2015 年 1 月、  www.mt.com/weighing-guide • Reichmuth A et al.; 電子分析天びんによって取得された計量データの不確かさ Microchimica Acta 148, 133–141 (2004) DOI 10.1007/s00604-004-0278-3 • Reichmuth A (2001); ラボ用天びんによる計量精度。Proc 4th Biennial Conf. Metrol. Soc. Australia, Broadbeach (QLD, AU), p 38 • Reichmuth A, Mettler Toledo; Einflüsse und deren Vermeidung beim Wägen • Reichmuth A, Mettler Toledo; ラボ用天びんでの少量サンプルの計量 9 共著者について Peter Ryser教授は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のマイ クロエンジニアリング教授です。30年以上にもわたるさまざま な企業や学術団体での研究および教授経験があります。以前 は、Siemens Building Technologies社取締役として、R&D、製 品開発、特許関係を担当していました。ジュネーヴ大学で応用 物理学博士号、実験物理学修士号、MBAを取得。 14 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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