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【技術資料】自動車のブレーキ油の品質テスト 沸点と水分量の測定

事例紹介

自動車の走行に重要なブレーキ油の品質管理に利用できます!

ブレーキ油の水分含有量が増えると沸点が下がり、沸点の低下により故障が発生したり、システムの故障を引き起こす可能性があります。
ブレーキ油の品質テストの一例として沸点と水分量の測定について、カールフィッシャー水分計と自動沸点測定装置を利用した事例を紹介します。

このカタログについて

ドキュメント名 【技術資料】自動車のブレーキ油の品質テスト 沸点と水分量の測定
ドキュメント種別 事例紹介
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このカタログの内容

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油圧ブレーキ油テストでの沸点と 水分量の測定 自動車業界では、ブレーキ油(油圧制動システムを通じて車体の動きを減速するために使 用)は非常に重要です。このシステムでは、摩擦を利用し運動エネルギーを熱に変えて車両 の速度を落とすので、ブレーキ油は相転移を経ずに高温環境に耐える必要があります。この 液体から気体への相転移の測定は、ブレーキ油テストで重要な役割を果たします。 Dr. S. Giani 1.5%に及ぶ水分を毎年吸収しま す。ブレーキ油の水分含有量が増 えると、沸点が下がります。沸点の 低下により「蒸気ロック」と呼ばれる 故障が発生し、ペダルに加えた力 がブレーキシリンダに伝わらず、制 動システムの故障を引き起こす可 能性があります。 この現象は図1に示されています。 a) 新品のブレーキ油: 水分が含ま れていない状態 b)許容範囲内の水分: 吸収した水 分により融点が低下 c) 過剰な水分: 過多の水分吸収に はじめに 点を超えると蒸気気泡が形成され より交換が必要な状態 ブレーキ油は、油圧制動システム ます。 d)蒸発した水分: 水分が蒸発する を効果的に動作させるために、重 と蒸気ロックを生じる原因にな 要なコンポーネントの1つです。そ 液体とは異なり蒸気は圧縮され、 り、ブレーキシリンダの油圧機 の機能は、ブレーキペダルを通じ それが制動システムの性能に影響 能が危険水準に低減する。 てマスターシリンダに適用された を及ぼします。このため、ブレーキ 圧力をホイールブレーキシリンダ 油を沸点より低く保つことが重要 制動システムの機能と動作に直接 に伝えることです。 になり、特にブレーキにより生じる 影響するので、ブレーキ油の沸点 高温に触れる際にはその重要性 は自動車の安全性を考慮する上 ブレーキ油のこの機能は、圧縮さ が増します。 で欠かせない品質項目になります。 れない物性により可能になります。 ブレーキ油には多くのタイプがあ ブレーキ作動時に、摩擦により生じ SAE(The Society of Automotive り、化成品ベースにより分類されて た熱はブレーキシリンダを加熱す Engineers)と米国運輸省(DOT)[1] います。グリコールベースのDOT 3、 る原因になり、ブレーキ油の温度 は、ブレーキ油(いわゆるDOTブ DOT 4、DOT 5.1タイプ、シリコンベー を上昇させます。ブレーキ油の沸 レーキ油)が厳格な標準と仕様に スのDOT 5タイプ、鉱油LHMがありま 順ずることを求めています。これら す。DOTフルードを各種のクラスに図1: 異なる水分含有量 の標準は、所定の温度範囲内での 分ける主な違いの1つに、融点があ でのブレーキシリ ブレーキ油性能の維持を中心に ります(表1を参照)。 ンダ(a~d) 策定されており、標準に規定され 青 : ブレーキ油、 た最小沸点はメーカーが準拠しな 測定手順 白 : 水分および ベーパーロック ければなりません。 ブレーキ油は、油圧液メーカーや、 路上走行自動車メーカーなどの DOTブレーキ油は吸湿性があり、 量産メーカーにより、品質管理と 環境から水分を吸収する傾向が 研究の両方の目的でテストされ あります。この吸収は避けられませ ます。ブレーキ油が毎日の自動車 ん。平均で、車両内のブレーキ油は 利用の中で水分に露出されること 10 METTLER TOLEDO UserCom 22 Applications
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を考慮して、DOT仕様はドライ沸点 表1: Brake fluid Dry BP in °C Wet BP in °C 規制の指定に準じ (未開封容器からの新品ブレー た異なるブレーキ油 キ油の温度)とウェット沸点(一定 DOT 3 205 140 タイプの最低沸点 量の水分を吸収した油の温度)を DOT 4 230 155 ベースにしています。ここでは、異 DOT 5 260 180 なる水分吸収含有量のDOT5サン DOT 5.1 270 190 プルが調査されました。 図2: 異なる水分含有量 のDOT5の沸点(赤 サンプルの水分含有量は、カー 300 い四角のマーク)。 ルフィッシャー(KF)滴定により、 規定ではD O T5フ ルードタイプの InMotion KFオーブン自動サンプ < Dry BP 最低ドライ沸点 250 ラーに接続されたC30Sコンパク 260 °C は260℃。DOT5フ トKF電量法水分計を使用して測 ルードタイプの最 低ウェット沸点は 定します。次に、自動融点測定装 200 180℃。両方とも黒 置MP80で全自動でブレーキ油の < Wet BP 丸のデータポイン 180 °C トで示されており、 沸点を測定します。LabX Thermal 150 「使用しても安全」 Values PCソフトウェアを使用して、 範囲内に該当(緑と黄色のゾーン) 標準に従いドライ沸点とウェット沸 100 点の評価を行います。 0 1 2 3 4 Water Content in (%) 結果 図3: ™ 図2に水分がブレーキ油の沸点に L a b X T h e r m a l Valuesを使用した 与える影響が示されています。水分 PCディスプレイ上 量の増加に従い沸点は下がります。 の結果概要 このケースでは、沸点180℃以上の DOT5フルード(水分含有量2.15% 以下に相当)は、許容される限界値 内にあり自動車で安全に使用でき ると見なされます。 LabX PCソフトウェアでは、ドライ沸 点とウェット沸点の許容範囲を設 定し、自動的に判定を行うことが出 来ます。図3で示すように合格と不 合格のサンプルを色分けする事で うかを判断する必要があります。 析による全データを安全に処理し 安易に識別できます。 て保管できます。 DOT仕様では、2つの測定値の平 まとめ 均値が必要になります。MP80は、 参考文献 ブレーキ油は、自動車の油圧制動 測定を同時に重複して実行するこ [1] 49 CFR Ch. V, §571.116 (aka FM- システムに欠かせない要素です。 とでDOT品質標準に適合するとと VSS No. 116) [2] ISO 4925 水分率の限界を超えると、ブレー もに、分析時間も節約します。LabX [3] JIS K 2233 キペダルに加えた力がその先の との組み合わせにより、DOTガイド システムに伝わらず、制動システム ラインに適合した許容限界の仕様 に不具合が生じます。 とルールに基づいて、結果の効率 www.mt.com/mpdp-application-library 的な統計的評価が可能になりま 制動システム全体の安全な機能 す。InMotion KFオーブン法オートサ を維持するために、自動車の使用 ンプラーに接続されたC30S KF電 中にブレーキ油は沸点を超えては 量法水分計や自動融点測定装置 なりません。水分が吸収されると、 MP80を含む、LabXのマルチパラ 沸点とDOTブレーキ油の性能が下 メータシステムによって、ワークフ がるため、ブレーキ油の沸点を測 ローを最適化できます。同じ機器 定して、ブレーキ油が品質標準に 制御ソフトウェアを使用して、カー 適合しており使用しても安全かど ルフィッシャー水分測定と沸点分 METTLER TOLEDO UserCom 22 11 Boiling Point in °C