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【技術資料】熱分析の実践~ヒントとコツ 測定手法、メソッドパラメータからサンプル調製まで

製品カタログ

DSC、TGA、TMA、DMA を使用した熱分析で再現性と信頼性の高い結果を得るために役立つヒントとコツをご紹介。

分析に関連する主要なすべてのトピックを取り上げており、最初に適切な測定の手法を選択するための一般情報を提供し、その後の項で実験の設計方法と測定精度の概要を説明します。
これらのトピックにはサンプル、実験パラメータ、評価、校正、調整、その他のいくつかのポイントが含まれます。

このカタログについて

ドキュメント名 【技術資料】熱分析の実践~ヒントとコツ 測定手法、メソッドパラメータからサンプル調製まで
ドキュメント種別 製品カタログ
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取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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熱分析 ハンドブック Volume 2 熱分析の実践 ヒントとコツ Thermal Analysis
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Introductory Handbook 熱分析の実践 ヒントとコツ Disclaimer このハンドブックでは、厳選されたアプリケーション例をご紹介します。 実験は各アプリケーションの説明に記載した機器を使用し、細心の注意を払い行いました。結果の分析は、 弊社に蓄積されている最新の知識に基づいています。 だたし、これらの例がお客様のメソッド、機器、目的にふさわしいかどうかについては、お客様ご自身でご確認 ください。アプリケーションの譲渡および使用に関しては弊社の管轄外であり、弊社は一切の責任を負うこと ができません。 化学薬品、溶剤、ガスをご使用になる場合は、一般的な安全規則に加えメーカーまたはサプライヤーの指 示に従ってください。 ® TM すべての商品名は特に明示されていない場合でも、登録商標である可能性があります。 METTLER TOLEDO Tips and Hints 3
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はじめに 熱分析は最も古い分析手法の 1 つです。歴史を振り返ると、人は物質が本物か偽物かを単純な温度 試験により判断していました。 熱分析が現在のような形になったのは、1887 年だとされています。この年に、フランスの有名な化 学者である Henri Le Chatelier が最初の熱測定を粘土上で行いました。 その数年後の 1899 年には、英国の化学者 Roberts-Austen が最初の示差熱測定を行い、それが DTA の発明へとつながったのです。 ただし、業務用機器が登場するのは 1960 年代に入ってからです。それから現在に至る 50 年の間に、 熱分析は猛烈な勢いで発展を遂げました。 その結果、熱分析は数多くの新しい研究やさまざまな業界の応用分野で使用されるようになりまし た。多くの場合、新しい材料の分析に使用する熱分析手法には、特定のアクセサリや測定パラメー タに加えて特殊なサンプル調製が必要です。 この新しいハンドブックは、さまざまな測定手法、メソッドパラメータ、サンプル調製手順を理解 するうえで役立つように作成されています。その目的は、測定で最高の結果を得るための有用なヒ ントとコツを提供することです。 このハンドブックは、メトラー・トレド熱分析アプリケーションチームからの実践的な情報と専門 知識をまとめたものです。これは、長年の多岐にわたるサンプル分析を通じて得られたものです。 ここで紹介するヒントとコツの詳細は、年に 2 回発行されるお客様向けの技術雑誌、UserCom のこ れまでの版に掲載されています。 このハンドブックのヒントとコツが、メトラー・トレドの熱分析装置を最大限に活用していただく ためのお手伝いとなれば幸いです。 Dr. Melanie Nijman およびメトラー・トレド Materials Characterization グループの編集チーム(以下) Nicolas Fedelich Dr. Angela Hammer Dr. Elke Hempel Ni Jing Dr. Rudolf Riesen Dr. Jürgen Schawe Dr. Markus Schubnell Dr. Claus Wrana METTLER TOLEDO Tips and Hints 5
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目次 1 はじめに 8 1.1 このハンドブックの使用方法 8 1.2 熱分析手法の選択 8 1.3 実験の設計方法 9 1.4 精度、正確さ、真度 9 1.5 測定の不確かさ 10 1.6 メソッドバリデーション 11 2 サンプル 12 2.1 サンプルの一般的な要件 12 2.2 サンプリング 13 2.3 DSC サンプル 13 2.3.1 サンプルサイズ 13 2.3.2 サンプルパンの充填方法 14 2.4 TGA サンプル 15 2.4.1 サンプルサイズ 15 2.4.2 サンプルパンの充填方法 15 2.5 TMA サンプル 16 2.6 DMA サンプル 16 2.7 サンプルパン 16 2.8 クランプアセンブリ 18 3 実験 21 3.1 メソッドのパラメータ 21 3.1.1 設定温度範囲 21 3.1.2 昇温速度と冷却速度 21 3.1.3 雰囲気 23 3.1.4 その他のパラメータ 24 6 METTLER TOLEDO Tips and Hints
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3.2 測定 24 3.2.1 ブランク / リファレンス曲線 24 3.2.2 加熱 - 冷却 - 加熱 25 3.2.3 解像度と測定感度 26 3.2.4 オーバーラップする効果 27 3.3 特殊な分析 28 3.3.1 温度変調 DSC 28 3.3.2 高速走査熱量測定(FDSC) 28 3.3.3 比熱容量 29 3.3.4 反応速度論 30 3.3.5 発生ガス分析 32 3.3.6 その他の分析 32 4 評価 33 4.1 曲線の作成 33 4.2 DSC 効果の積分のベースライン 34 4.3 さまざまな効果の温度の評価 36 4.3.1 ガラス転移温度の決定 37 4.4 曲線の解釈 38 5 校正と調整 39 5.1 概要 39 5.1.1 校正用物質 41 5.2 特定の機器の特別な調整 42 5.2.1 キュリー点を使用した TGA の調整 42 5.2.2 TMA および DMA に固有の校正と調整 42 6 詳細情報 44 索引 45–46 METTLER TOLEDO Tips and Hints 7
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1. Introduction 、1.1 How to use this handbook、1.2 Choosing the thermal analysis technique

1 はじめに 1.1 このハンドブックの使用方法 DSC、TGA、TMA、DMA を使用した熱分析で再現性と信頼性の高い結果を得るために役立つヒント とコツをこのハンドブックにまとめました。これらの手法のすべてをこの小さいハンドブックにま とめることはもちろん不可能です。詳細情報や背景情報は、さまざまなトピックで紹介する多くの 参考資料に記載されています。 このハンドブックでは、分析に関連する主要なすべてのトピックを取り上げます。最初に適切な測 定の手法を選択するための一般情報を提供し、その後の項で実験の設計方法と測定精度の概要を説 明します。これらのトピックにはサンプル、実験パラメータ、評価、校正、調整、その他のいくつ かのポイントが含まれます。 メトラー・トレドは、さまざまなスペシャリストハンドブック、お客様向けの雑誌である UserCom、 アプリケーションノート、ウェビナー、e- ラーニングコース、ビデオなど、熱分析を詳細に学習す るための多くの異なる方法を用意しています。このすべての詳細については、www.mt.com を参照 してください。 このテキストでは、異なる手法を異なる色で示しています。これにより関心をお持ちの測定手法の ヒントをすばやく見つけることができます。使用している色は、DSC、TGA、TMA、DMA です。 UserCom の参照箇所も色分けして示しています[UC xx/xx]。他のソースのヒントを使用する場合は 参照先を示します。 熱分析の詳細な一般情報については、メトラー・トレドのハンドブック「熱分析の実践」を参照し てください。 1.2 熱分析手法の選択 特定の特性を測定するために使用できる熱分析の手法は、測定対象の効果または特性によって異な ります。次の表に最適な手法( )と代替手法( )の概要を示します。 DSC TGA TMA DMA 物理特性 比熱容量 − − 膨張率 − − ヤング率 − − 物理的転移 融解 / 結晶化 − 蒸発、昇華、乾燥 − − ガラス転移、軟化 − 多形性(固体 - 固体転移) − − 液晶 − − − 純度分析 − − 化学特性 分解、変質、熱分解、酸化、安定性 − − 組成、含有量(水分、充填剤、灰) − − 反応速度論、反応エンタルピー 架橋、加硫(プロセスパラメータ) − 8 METTLER TOLEDO Tips and Hints
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1.3 How to design an experiment 、1.4 Precision, accuracy, trueness

1.3 実験の設計方法 次の図に実験の設計方法の概要を示します。プロセスの各ステップは互いに関連があります。 たとえば、測定結果を評価した後にサンプル調製を再度確認しなければならないこともあります [UC 21/1]。 t 分 析開始前の最も重要なポイントは、測定対象の特性と目的とする結果を明確にすることです。 測定手法の選択 (1.2): t こ れらのプロセスに関連するステップの詳細 DSC な説明を、このハンドブックの別の章と項で TGA 説明します。関連する章と項の番号をステッ TMA DMA プの名前の後に括弧で囲んで示します。 サンプル調製 (2) サンプルパンの選択 (2.7) 温度プログラムの選択 (3.1.1) 雰囲気の選択 (3.1.3) 測定後 (2.1) 評価 (4) バリデーション (1.6) バリデーション済みのメソッド 1.4 精度、正確さ、真度 t メソッドバリデーション、正確さ、繰り返し性、測定エラー、またデータ品質に関連するその他 の問題について詳しくは、メトラー・トレドのハンドブック「熱分析バリデーション」を参照し てください [www.mt.com/ta-handbooks]。このハンドブックには、使用する用語の詳細な説明と、 DSC、TGA、TMA、および DMA 分析の数多くの例の説明が含まれます。 t[ UC 29/1]には「精度、正確さ、真度」というタイトルで簡単なまとめを掲載しています。 正確さ : 試験結果と許容される リファレンス値の近さ。 真度 : 数多くの試験結果から得 Precision られる平均値と許容リファレン (standard deviation) ス値、つまり「真の」値の近さ。 精度 : 平均値の周りのデータの 広がり。 True value Mean Trueness Accuracy of the value x METTLER TOLEDO Tips and Hints 9
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1.5 Uncertainty of measurement

この用語を使用すると、結果を次のように分類できます。 Increasing accuracy a 高 い精度、高い真度、高い正確さ b 高い精度、低い真度、低い正確さ c 低い精度、高い真度、低い正確さ d 低い精度、低い真度、低い正確さ Precision 1.5 測定の不確かさ 測定の総合的な不確かさは、分析の各ステップに関連する考えられるすべてのエラーで構成されて います。たとえば、次の因果関係図(特性要因図)に示す影響因子が DSC による融解エンタルピー の測定で重要な役割を果たします。 Sample preparation Instrument Weighing in (sample mass) Calibration Cutting the sample Thermal contact with crucible Enthalpy of fusion Gas Integration limits Heating rate Baseline type Flow rate Method Evaluation 10 METTLER TOLEDO Tips and Hints Trueness
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1.6 Method validation

この例の各原因が不確かさにどの程度寄与しているのか、その概算値を次の表に示します。 原因 測定の不確かさ 試験片の質量 ± 20µg(天びんの再現性 : 質量が 10mg の場合、これは± 0.2% に相当する) サンプルパンへの物質の投入 無視できる サンプルパンとの熱的接触 ± 0.5%(概算値) 昇温速度 無視できる ガスとガス流量 機器が測定と同じ条件で調整されている場合は無視できる 調整 ± 1.5%(校正用の材料の不確かさ) 積分限界とベースラインのタイプ ± 3%(繰り返しの評価の統計) これで、不確かさの伝播則に従って原因による寄与分を加算し、不確かさの合計値を得ることがで きます。 ± (0.2%)2 + (0.5%)2 + (1.5%)2 + (3%)2 = ± 3.4% (pc = 68%) t 測定の不確かさについて詳しくは、[UC 30/1]を参照してください。 t TGA 測定で非常に小さいサンプル質量または残留物を測定する場合は、USP に従った最小サンプ ル重量に注意することが重要です。特に TGA での天びんの最小計量値の影響について詳しくは、 [UC 41/14]を参照してください。 1.6 メソッドバリデーション バリデーション済みの分析メソッドを開発するには 3 つの方法があります。詳細を次の表にまとめ ます。メソッドバリデーションについて詳しくは、ハンドブック「熱分析バリデーション」を参照 してください。 分析メソッドバリデーション 研究室間試験 国際標準 • メソッドはユーザーが最初から設計 • 参加するすべての研究室が複数の試 • 公開されているメソッドをその説明の し、関連する変数(オペレーター、 験片を使用して特定の分析メソッド とおりに使用できます。期待される正 サンプル調製、機器、環境、正確さ、 の試験を行います。その結果を、デー 確さと精度は標準の文書に記載されて 繰り返し性)の試験を行います。メ タを評価し、メソッドの期待される います。 ソッドパラメータを最適化するため 正確さに関する勧告を発行する中心 • これは、バリデーション済みのメソッ に何回か試験を繰り返さなければな 的な組織機関に提出します。 ドを得るための最も容易な方法です。 らないこともあります。 • 大量のデータを比較的すばやく取得 • メソッドが完全には要件を満たしてい • このメソッドは厳密にユーザーが必 できます。 ない場合や特定の試験が含まれないこ 要とするものになります。 • 再現性(異なる研究室間の繰り返し とがあります。 • メソッドのバリデーションには長い 性)も試験できます。 • ISO、ASTM など、多くの国際標準が 時間がかかることがあります。 あります。熱分析に関連する標準の一 覧は、ハンドブック「熱分析の実践」 の第 20 章を参照してください。 METTLER TOLEDO Tips and Hints 11
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2 Samples、2.1 General requirements for samples

2 サンプル この章ではサンプルに固有の問題について説明します。最初に、DSC、TGA、TMA、DMA に適用さ れるサンプル調製の一般的な要件について説明します。その後に個別の機器のサンプル要件に注目 します。最後にサンプル容器とサンプルホルダについて(DSC と TGA ではサンプルパンについて、 TMA と DMA ではクランプアセンブリについて)説明します。 2.1 サンプルの一般的な要件 DSC、TGA、TMA、DMA に共通のサンプルおよびサンプル調製の要件。 測定前 測定後 サンプルはバルク材料を代表す 測定前後にサンプルを計量し、揮 るものでなければなりません。 発性物質の損失や分解の有無を確 [UC 29/1] 認します。(“オフライン TGA”) サンプルは熱的または機械的に 測定中 サンプルの目視確認 : 変化していてはなりません。 • 融解サンプル : 曲線で融解を確 認できるか? サンプルの組成に変化があって 適切な雰囲気を使用 : • 退色サンプル : 分解を目視確認 はなりません(水分、不純物、 • 不 活 性 ガ ス : 窒 素、 ヘ リ ウ ム、 できるか? 酸化)。 アルゴンなど • 気泡 : 分解によるものか? • 反応性ガス : 空気、酸素など • サンプルパン底部の変形 : 膨脹 サンプルは調製中に反応しては • ガスとサンプルの間の良好な相 か?爆発か? なりません(光によって誘発さ 互作用。 れる保管中の硬化など)。 • サンプルとの間のガス交換なし。 結果を再評価し、別のパラメータ • 相互作用の制限 : 自動的に生成さ を使用して 2 回目の測定を準備し れる雰囲気 ます。 サンプル内の温度勾配の可能性に注 意してください。 サンプルとサンプルホルダの間に良 好な熱的接触を確保します(平坦な サンプル、平坦なサンプルホルダ)。 ア ー チ フ ァ ク ト が 発 生 す る た め、 測定中にサンプルが動いてはなりま せん。 詳しくは[UC 3/1]、[UC29/1]を参照してください。 t 測 定サンプルの温度勾配を確認するには、サンプルの上下にインジウム片を置き、2 つのオンセッ トにより温度差を測定します(DSC、TGA、TMA、DMA)。 t ロボットテーブルでの待機時間内にサンプルに水分が入らないように、蓋貫通アクセサリを使用 します(DSC、TGA)[UC 20/17]。 12 METTLER TOLEDO Tips and Hints
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2.2 Sampling、2.3 DSC Samples、2.3.1 Sample size

2.2 サンプリング サンプリングプロセスではいくつかの重要なポイントを考慮しなければなりません。以下に例を挙 げます。 • 検査対象の製造ロットはどれか ? • 製造ロットのどの段階で、または製造ロットのどの部分を検査対象のサンプルにするのか ? • 不均等性を考慮したときに、サンプリングポイントとサンプルサイズが製造ロットを代表するも のとなっているか。選択したサンプルでバルクサンプルに関する結果を導き出せるか ? • 体積と項目数の点からサンプルサイズはどの程度の大きさにすべきか ? • どの頻度で材料の特性を測定し、何個のサンプルを測定すべきか ? • サンプルは、異なる複数のポイントで採取し、再度混合して複合サンプルにしたものか(集合サ ンプル)、または試験サンプルとして個別に処理されたものか ? • サンプルは、採取元のバルク材料を常に代表するものであるか( DSC、TGA、TMA、DMA)? 次の図に、一般的なサンプリング手順の例を示します[UC 29/1]。 Lot Primary sample Composite sample Secondary sample Laboratory sample Test Grinding and/ sample or reduction Test portion 2.3 DSC サンプル 2.3.1 サンプルサイズ DSC 測定の推奨サンプル量は次のとおりです。 これよりも多いサンプル量を使用する場合 : 有機物サンプル 2 ~ 10mg • 弱い効果を検出する場合 • 充填または希釈サンプルを測定する場合 無機物サンプル 5 ~ 50mg • 低い昇温速度で測定する場合 強い発熱効果があるサンプル 0.5 ~ 1mg これよりも少ないサンプル量を使用する場合 : • 高い昇温速度で測定する場合 未知サンプル 0.5 ~ 1mg METTLER TOLEDO Tips and Hints 13
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2.3.2 How to fill a crucible

2.3.2 サンプルパンの充填方法 DSC サンプルパンにさまざまなタイプのサンプルを入れるための最適な方法を以下に示します。 サンプルタイプ サンプル調製 例 微粉体および液体 サンプルパンの底全体にできる限り均等にサンプルを広 げます。 粉体 : 粉体粒子でサンプルパンの縁が汚れないように、 DSC 機器に付属の容器を使用します。 液体 : スパチュラ、シリンジ、またはニードルを使用して サンプルを移動します(懸濁液の場合はサンプリング前 に振り混ぜる)。 平らな円盤 平らな円盤をサンプルパンの底に置きます。 端に凹凸のあるサン サンプルパンと最もよく接するように、平らな面を下に プル 向けてサンプルを入れます。 フィルム 20µL の軽量アルミニウムサンプルパンの蓋をサンプルの ファイバー 上に置いてサンプルを固定すると、サンプルパン内部の そ の 他 の 柔 ら か い、 軽いサンプルの動きを制限することができます。 または軽いサンプル ファイバー フィルムまたはファイバーを小片に切断し、サンプルパ フィルム ンの底に置きます。 ファイバーをピンセットの周りに巻き付けてできたファ イバーのコイルをアルミニウムホイル片で包み、20µL 軽 量アルミニウムサンプルパンの蓋を使用して、サンプル パンの底にサンプルを押しつけます。 固く、粗いサンプル 乳鉢で粗いサンプルを轢いて微粉体にします。多形転移 など、機械的な力によってサンプルが変化しないように 注意してください。 発熱性サンプル Al2O3 粉末などの不活性物質でサンプルを希釈して自己加 (爆発物など) 速を防ぎ、発熱反応発生時に生じたエネルギーを吸収し ます。 t 150℃を超える温度で測定する場合は、サンプルの蒸発によるサンプルパンの爆発を防ぐために、 サンプルパンの蓋に小さい穴を開けます。 t サンプルパンプレスでサンプルパンを密閉するときに、サンプルパンの底が平らに保たれている ことを確認します(サンプルパンに充填しすぎない)。底が平らになっていると、サンプルパンと センサの間に良好な熱接触を確保でき、最適な信号が得られます。 リファレンスパンには次の重要な条件があります。 • リファレンスパンのタイプはサンプルパンと同一でなければなりません。 • 希釈系を測定している場合は、リファレンスパンに不活性物質を満たしてサンプルマトリック スの熱容量を補正することができます。リファレンスパンに入れる量の不活性物質(酸化アル ミニウムなど)で発生する熱流量は、サンプルマトリックスとほぼ同じでなければなりません [UC 25/21]。例については第 3.2.3 項を参照してください。 14 METTLER TOLEDO Tips and Hints
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2.4 TGA samples、2.4.1 Sample size、2.4.2 How to fill a crucible

2.4 TGA サンプル 2.4.1 サンプルサイズ ほとんどの TGA 測定は 1 ~ 30mg のサンプル量を使用して実施し、10mg を超える場合が非常に頻 繁にあります。もちろん、これ以下またはこれ以上の量を使用することもできます。 t T GA では、混合物の個々の構成成分の質量損失を測定します。これは、最も重要な質量が少量 構成成分の質量であること、つまり測定対象の成分の質量であることを示します。この質量は使 用する天びんの最小計量値よりも大きくなければなりません。USP の最小計量値の例については UserCom[UC 41/14]を、計算の例については[UC 21/1]を、またはハンドブック「熱分析バリデー ション」を参照してください(www.mt.com/ta-handbooks)。 t 一連のサンプルを測定するには、または異なるサンプルを比較するには、できる限り近いサンプ ル質量を使用します。この結果、サイズの違うサンプルによりアーチファクトが発生する可能性 を排除できます。サイズが異なるサンプルを比較するときに[UC 12/17]オンセット温度が重要 な場合は、絶対尺度を使用します( 例については第 4.1 項を参照)。 2.4.2 サンプルパンの充填方法 ほとんどのサンプルを DSC と同様に調製できます(第 2.3.2 項を参照)。次の表に TGA 専用のサンプ ル調製の方法を示します。 サンプルタイプ サンプル調製 例 粉体 サンプルパンの底に均等にサンプルを広げます。充填しすぎないでくだ さい。測定対象の効果を観察できる過不足のない量の材料を使用します。 液体 通常は、液体はサンプル調製の時点ですでに蒸発が始まっています。これ を防ぐには、または考慮するには以下の対策をとります。 • 密閉できるアルミニウム製のサンプルパンと貫通キットを使用して、 測定直前にサンプルパンに穴を開けます。 • アルミニウム製の蓋が付いた酸化アルミニウム製のサンプルパンを使 用し、測定直前に蓋を外すようにロボットをプログラムします(サン プルパンは前述のオプションほど密閉されない)。 • 測定直前にサンプルの質量を測定します。このためには、サンプルパ ンの質量がわかっていなければならず、天びんも平衡状態に達してい なければなりません(サンプルの蒸発が速すぎてはならない)。この場 合は開始時の質量は 100% にはなりません。 フィルムおよ 小片に切断してサンプルパンに置くことができます。 びファイバー フィルムは長い紐状に切断してピンセットの先端に巻き付け、サンプル パンに置くことができます。フィルムは膨らんでサンプルパンの側面か ら外に出ることがあります。 長いファイバーもピンセットに巻き付けてボール状にし、サンプルパン に置くことができます。 発泡性物質 発泡性物質は事前に穴を開けた酸化アルミニウム製の蓋を使用して測定 します。この蓋で泡がサンプルパンの縁からこぼれないようにします。 さらに、センサ上にスペースがある場合は、もう 1 つの大きいサンプル パンを使用して最初のサンプルパンを囲み、こぼれた物質を集めます。 t TGA 曲線で急激な質量増加が観察される場合は、泡が加熱炉の上部に 接触したことを示します。 t 発泡が予測される場合は、小さいバーナーを使用して外部でサンプル を調製して加熱し、プロセスをモニタリングすることで天びんの損傷 を防ぐことができます。 爆発物 センサの反動を最小限に抑え、天びんの損傷を防ぐために、わずかな量 のサンプルを使用します。 サンプルを不活性の酸化アルミニウム粉末で囲むことでサンプルの自動 加速を制限します。 事前に穴を開けた酸化アルミニウム製の蓋を使用して、サンプルのサンプルパンからの飛び出しと TGA センサの汚染を防ぐこともできます。 METTLER TOLEDO Tips and Hints 15
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2.5 TMA samples、2.6 DMA samples、2.7 Crucibles

2.5 TMA サンプル バルクサンプルの一般的なサンプル調製 : • それぞれのサンプルの表面が平行になっていなければなりません。 • サンプルの高さは 10mm を超えてはなりません(次の写真(i)に示すように短い台を使用する場 合は 20mm)。 • サンプルの表面はできる限り滑らかでなければなりません。 • 粘性サンプルや分解性のサンプルをプローブとサンプルサポートから分離するためにシリカ製の スペーサディスクを使用します(ii)。 t CTE 測定は、サンプルの圧縮を避けるためにできる限り小さい力を使用して実施しなければなり ません。シリカディスクを使用すると、加える力をサンプルの表面全体に分散させることができ ます(ii)。 t CTE を正確に測定するには約 5mm のサンプルサイズが必要です。 (i) (ii) 2.6 DMA サンプル DMA サンプルでは以下のポイントを考慮する必要があります。 • サンプルの形状を正確に把握しておく必要があります。サンプル寸法が正確でないと弾性率に大 きいエラーが発生します(最大で 2 または 3 の累乗)。滑らかで表面が平行なものだけを使用します。 • サ ン プ ル の 剛 性 は、 ク ラ ン プ や 機 器 の 剛 性 の 1/3 ~ 1/5 で な け れ ば な り ま せ ん。 そ う で な い 場 合 は、 測 定 さ れ る 弾 性 率 の 値 が 低 く な り す ぎ ま す。 サ ン プ ル の 剛 性 の 計 算 は、 www.datacomm.ch/mschubnell を参照してください。 • サンプルをクランプで正しく固定します(十分にしっかりと、しかし過剰な力を加えない)。正し く固定しないと、サンプルの実際の変形ではなく、クランプ内のサンプルの動きが測定されます。 この場合、測定される弾性率は小さすぎる値になります。 • ガラス転移温度よりも高い温度でクランプに固定し、ガラス転移温度以下まで冷却するサンプル は、開始温度で再度クランプに固定する必要があります。 • 熱電対を再現性が得られるように慎重に配置する必要があります。熱電対を厳密に同じ位置に配 置できないと、測定間の温度差が最大で 5K までになります。 • 熱電対はサンプルや加熱炉に接してはなりません。 • 異方性サンプルではクランプの方向に注意してください。 DMA せん断モードでのサンプル調製の手順については、[UC 29/14]および[UC 34/15]を参照し てください。 2.7 サンプルパン サンプルパンの要件 : • サンプルパンの材質は不活性でなければならず、測定する設定温度範囲で何らかの効果が発生し てはなりません。 • サンプルパンの融点は、サンプルで観測する効果よりも高い温度でなければなりません。 • サンプルパンは、次のような触媒反応を望んでいる場合を除き、適用する設定温度範囲内でサン プルとその最終生成物に対して不活性でなければなりません。 – 銅製サンプルパンを使用した酸化測定 – 白金製サンプルパンを使用した化学反応 16 METTLER TOLEDO Tips and Hints
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t 揮発性成分が含まれないサンプルは、通常は穴が開いた蓋付きの 40µL 標準アルミニウム製サンプ ルパンで測定します(640℃までの TGA/DSC 測定でも使用可能)。 t ピン付きのサンプルパンはサンプルロボットでは使用できません。 t 測定の前後に重量を確認します。差が 30µg 未満であれば、サンプルパンは密閉されていました。 t TGA 測定ではサンプルパンの高さと幅の比が拡散に影響を与えます。[UC 9/22]を参照してく ださい。 t サンプルの雰囲気については第 3.1.3 項を参照してください。 サンプルパンの背景情報は[UC 5/3]を参照してください。 次の表に、DSC サンプルパンと TGA サンプルパンのそれぞれの概要を示します (www.mt.com/ta-crucibles も参照)。 サンプルパンのタイプ 備考 写真 標準アルミニウム製サンプルパン • これが最も頻繁に使用するサンプルパンです。 最大温度 : 640℃ • ピンありとなしのいずれでも使用できます。 • 密閉可能で、50µm の穴が開いた蓋を使用できます 40µL(100/160µL も) (第 3.1.3 項も参照)。 (DSC、TGA、TMA、硬化液など) 軽量アルミニウム製サンプルパン • このサンプルパンは時定数が最小です。 最大温度 : 640℃ • 柔らかいサンプル(フィルム、ファイバー、粉体)を圧 縮するために蓋を使用できます。 20µL • 蓋を閉じることで雰囲気が自動的に生成されます。この 最大温度 : 640℃ サンプルパンは密閉構造ではありません。 • 気体と接触しやすくするために蓋に穴を開けることが (DSC、TGA) できます。 銅製サンプルパン • 酸化実験で触媒効果を提供するために使用できます。 最大温度 : 750℃ 蓋は使用できません。 40µL(DSC) 金製サンプルパン • これは非常に不活性のサンプルパンです。 最大温度 : 750℃ t 長期間保管した後は冷間圧接は困難になります。使用 金めっきサンプルパン 前に 500℃まで加熱してください。 最大温度 : 350℃ t 融解金属サンプルは合金を形成し、サンプルパンに穴 40µL(DSC) を開けることがあります。 再利用可能な白金製サンプルパン • これは 640℃を超える温度で高品質の熱流量測定を行う 最大温度 : 1600℃ ために使用します。 • 触媒反応の促進にも使用できます。 30、70、150µL (TGA、DSC) t 1000℃を超える白金 - 白金接点には、溶接や溶融を避 けるためにサファイア製スペーサディスクを使用しま す(TGA/DSC の DTA センサなど)。 t 融 解金属は合金を形成し、サンプルパンに穴を開けるこ とがあります。スズ、鉛、亜鉛、アルミニウム、銀、金、 硫黄、ヒ素、アンチモン、ビスマス、シリコン、ホウ素、 自由炭素および塩、または重金属の酸化物など(高温で の塩から金属への還元)、白金被毒に注意してください。 ステンレス製中圧サンプルパン • サンプルパンの密閉プレスのために特殊なダイ(オス - メス)が必要です。 最大温度 : 250℃ • 自動生成雰囲気中での測定の場合は O リングなしで閉 じることができます。 METTLER TOLEDO Tips and Hints 17
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2.8 Clamping assemblies

サンプルパンのタイプ 備考 写真 金めっきスチール製高圧サンプ • 安全な測定とオーバーラップする効果(蒸発など)の抑 ルパン最大温度 : 400℃ 制に使用します。 • ダイには特殊なトグル圧が必要です。 25、40µL(DSC) • 約 1 メートルトンの力で蓋をサンプルパンに押しつけ、 シールとバーストディスクの両方の働きをする膜でサン その他のさまざまな高圧サンプ プルパンを密閉します(密閉状態を維持していることを ルパンが用意されています。 確認するために、測定前後にサンプルパンの重量を測定 する)。 酸化アルミニウム製サンプルパ • TGA 測定で最も頻繁に使用されているサンプルパンで、 ン最大温度 : 2000℃ さまざまなサイズがあります。 • 穴が開いたアルミナ製の蓋を使用できます。 3 0 、 7 0 、 1 5 0 、 3 0 0 、 6 0 0 、 • 不安定なサンプルにはアルミニウム製の蓋を使用でき 900µL ます。 • 再利用可能。 (TGA、DSC) • 設定温度範囲全体で使用できますが、非常に高温での相 互作用に注意してください。 サファイア / PCA サンプルパン • 融解金属用(Fe、Ni)。 最大温度 : 2000℃ • 非多孔性。 • 再利用可能。 70µL(TGA、DSC) 酸化用 3 点セラミックサポート • 固体サンプルだけに使用します。 最大温度 : 2000℃ • 加熱炉雰囲気に接する表面積を最大にするために理想的 です(酸化実験など)。 [UC 34/9](TGA) 2.8 クランプアセンブリ TMA および DMA 機器にはサンプルパンを使用しません。サンプルをさまざまなクランプアセンブ リを使用して機器に直接固定します。使用するクランプアセンブリはサンプルの形状と測定する特 性によって異なります。 TMA の場合 : 次の表に、さまざまなタイプの材料の特性を測定するために使用する変形モードを示 します[TMA e- ラーニングコース]。 TMA の測定モード 膨張率測定 貫通 曲げ 引張り 引張り バルクフィルム バルクコー バー フィルム ファイバー 効果 ティング 拡張、収縮 X ガラス転移 溶融 多形性 X X X 分解 X 膨潤 X X X X 粘性流、クリープ 硬化 X X X ヤング率 X 応力 / ひずみ X 可能 X 推奨しない DLTMA 18 METTLER TOLEDO Tips and Hints
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DMA の場合 : 次の表に、さまざまなタイプの材料の特性を測定するために使用する変形モードの詳 細を示します[UC 23/1]。 モード 長所 コメント 用途 測定対象の弾性率 3 点曲げ 固いサンプルでは非 オフセット力が必要 弾性率の変化が小さ ヤング率 常に正確な弾性率値 です。 いサンプル(複合物 (E′および E″) が得られます。 など)。 サンプル調製の条件 広範囲のサンプル寸 が非常に厳しくなり す べ て の ガ ラ ス 状 Force 法を測定できます。 ます(平行で平らな 材料。 表面)。 デュアルカンチレバー 広範囲のサンプル寸 サンプル長は明確に ガラス転移などで軟 ヤング率 法を測定できます。 は定義されません。 化するサンプル。 (E′および E″) サンプルの熱膨張に サーモプラスチック。 よってサンプルホル ダに水平方向の応力 複合物。 が加わります。この 結 果、 測 定 曲 線 に アーチファクトが表 F れます。 シングルカンチレバー F せん断 これはせん断弾性率 一般に、実際の状況 すべてのポリマー。 せん断弾性率 が 得 ら れ る 唯 一 の での材料の真の変形 (G′および G″) モードです。 に対応します。 粉 体( 圧 縮 錠 剤 と して)。 高い周波数を使用で サンプルは摩擦力だ きます。 けで所定位置に維持 ペースト。 されます。 粘性液(アスファル 冷却後にサンプルを ト、蝋、油脂など)。 再度クランプで固定 する必要があります。 張力 最も正確な弾性率値 オフセット力が必要 フィルムおよびファ ヤング率 (ヤング率)が得られ です。 イバー (E′および E″) ます。 適切なサンプル形状 サーモプラスチック。 幾何学的因子の計算 で高い弾性率値が得 が容易です。 られます。 エラストマーも測定 可能です。 F 圧縮 フォームのヤング率 オフセット力が必要 ポリマー材料から形 ヤング率 を測定する唯一の方 です。 成されたフォーム。 (E′および E″) 法です。 固いサンプルには適 エラストマーも測定 幾何学的因子の計算 していません。 可能です。 が容易です。 F METTLER TOLEDO Tips and Hints 19
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等方性材料のわずかな変形では、せん断弾性率とヤング率の関係は次のようになります。 G = ___E____2(1+μ) ここで、µ はポアソン比(0 ~ 0.5)です。これは、通常は E が G の 2 ~ 3 倍であることを意味しま す(等方性材料の場合)。ハンドブック「熱分析の実践」の 194 ページ以降を参照してください。 1,000 Ceramics 一般的な材料の弾性率値 : ダイヤモンド 1,000,000MPa Composites Al2O3 380,000MPa 100 鋼鉄 210,000MPaケブラー 130,000MPa Wood and wood シリコン 128,000MPa products アルミニウム 70,000MPa ガラス 70,000MPa 10 PET 4,000MPa ナイロン 6,6 2,000MPa Porous Metals PTFE 500MPa Ceramics and alloys LDPE 100MPa SBR 10MPa 1 シリコンオイル 1MPa Polymers 0.1 Rubbers Foams 0.01 100 300 1,000 3,000 10,000 30,000 Light 3 Heavy (www-materials.eng.cam.acD.uEkN/SmITpYs i(tkeg/i/nmte)ractive_charts/stiffness-density/NS6Chart.html より) 20 METTLER TOLEDO Tips and Hints Flexible YOUNG'S MODULUS (GPa) Stiff