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【技術資料】滴定の基礎 - 理論と実践 滴定の化学反応から原理、滴定のタイプまで

その他

一般的な滴定とカールフィッシャー滴定の理論と実践の入門ガイドとして使用していただくことを目的としています。

滴定を理解するために必要な基本情報となる、滴定のさまざまな化学反応、終点検出法の原理、滴定の種類の紹介、そして手動滴定を自動滴定と比較します。また、一般的な滴定とカールフィッシャー滴定の実践的なヒントとコツをいくつか紹介します。

滴定は、化学業界、食品・飲料、電子業界などのさまざまな分野で広く使用されている分析手法です。滴定は、発生する化学反応と、反応のモニタリングに使用する指示の原理によって分類されます。滴定モードEP/EQPと使用する計算方法が、分析全体で重要な役割を果たします。
滴定の理論と基礎を学ぶことにより知識を深めてください。

このカタログについて

ドキュメント名 【技術資料】滴定の基礎 - 理論と実践 滴定の化学反応から原理、滴定のタイプまで
ドキュメント種別 その他
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このカタログの内容

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滴定の理論 滴定ABCガイド 理論と実践 ABC of Titration
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目次 1 滴定の定義 5 2 進化の歴史 6 3 利用分野 7 4 滴定の利点 8 5 滴定の理論 9 5.1 化学反応の種類 9 5.2 終点検出法の原理 10 5.2.1 手動滴定 10 5.2.2 半自動または全自動滴定 11 5.3 滴定モード – 終点 / 当量点 13 5.3.1 終点滴定(EP) 13 5.3.2 当量点滴定(EQP) 14 5.4 滴定の種類 15 5.4.1 直接滴定 15 5.4.2 ブランク補正滴定 15 5.4.3 逆滴定 16 6 滴定の制御 18 6.1 手動滴定 18 6.2 自動滴定 18 6.2.1 滴定液の添加 19 6.2.2 測定値の取得 19 7 計算 20 7.1 化学量と当量数 20 7.2 結果の計算 21 2 ABC of Titration
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8 滴定で使用する器具や試薬 23 8.1 滴定液 23 8.1.1 滴定液濃度の決定 23 8.2 センサ 24 8.2.1 pH センサと測定(酸 / 塩基滴定) 24 8.2.1.1 pH センサと温度 25 8.3 ビュレット 26 8.4 サンプル 26 9 滴定の性能検証 27 10 カールフィッシャー 28 10.1 滴定の原理 29 10.2 カールフィッシャー滴定の終点検出法 29 10.3 容量法カールフィッシャー滴定の必須条件 29 10.4 ドリフト 30 10.5 容量法カールフィッシャー試薬 30 10.5.1 一液型 KF 試薬 30 10.5.2 二液型 KF 試薬 30 10.6 濃度の測定 31 10.7 サンプルの取り扱い 32 10.7.1 固体サンプル 33 10.7.2 液体サンプル 33 10.7.3 サンプルの溶解度 34 10.8 容量法カールフィッシャー滴定の実行 35 10.9 容量法カールフィッシャー滴定の干渉 35 10.9.1 pH の影響 35 10.9.2 副反応 36 11 用語解説 37 3
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滴定入門 はじめに 本書は一般的な滴定およびカールフィッシャー滴定の理論と実践の 入門書として利用されることを目的としています。本書では、滴定 を理解するために必要な基本的知識を提供しています。一般的な 滴定のさまざまな種類の化学反応、終点検出の原則および滴定の 種類について説明し、手動滴定と自動滴定を比較します。 水分を検出する特殊な滴定法、カールフィッシャーについては、別 の章で説明します。 最後に、一般的な滴定とカールフィッシャー滴定のための実践的な コツとヒントをいくつかご紹介します。 4 ABC of Titration
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1 滴定の定義 滴定では、既知濃度の試薬(滴定液)を添加し、定量目的成分と 試薬の完全な化学反応に基づいてサンプルに含まれる成分を定量化 します。滴定液は反応が完了するまで添加されます。滴定の終点を 得るためには、化学反応を適切な方法でモニターする必要がありま す。正確な添加した滴定液量と化学反応の化学量より目的成分の 量が計算できます。 滴定液と検出成分の化学反応は迅速、完全、明確であり、監視が 可能である必要があります。 代表例として、下記の平衝で示される水酸化ナトリウム(NaOH)に よる酢に含まれる酢酸(CH3 COOH)の滴定があります。 CH3COOH + NaOH  CH3COONa + H2O (検出成分) (滴定液) (反応生成物) 滴定反応の従来の監視方法は、化学反応が完了する(滴定の終了) と色が変わる適切な指示薬を使用します。現在では、電気化学セ ンサを使用して、反応と終点を監視することができます。 5
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2 進化の歴史 手動滴定から自動滴定へ 昔ながらの滴定法では、滴下した量が分かる目盛付きガラスビュ レットを使用します。ビュレット先端のコックにて、滴定液の添加量 を手動で制御します。色の変化により、滴定反応の終わり(終点)が 確認できます。 当初は、終点到達時に著しい色の変化を示す滴定だけが行われてい ました。現在では、指示薬を添加する事により様々な終点を検出で きます。精度は主に化学者のスキル、特に色の違いに気づく能力に依 存しています。 滴定は大きく発展してきました。手動滴定から始まり、その後モータ ー駆動のピストンビュレットにより、正確で再現性の高い滴定液の 添加が可能になりました。指示薬の代わりに電気化学センサが使わ れるようになり、これにより、結果の正確性と精度がさらに向上しま した。センサ電位と滴定液滴下量を表示した滴定曲線により化学反 応のデーター解析ができるようになり、指示薬の色の変化を見るよ り正確な測定が可能になりました。マイクロプロセッサにより、滴定 を自動的に管理し、評価することができます。これは、自動化に向け た重要なステップを示しています。 6 ABC of Titration
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3 利用分野 滴定はさまざまな分野に幅広く適用されている分析技術です。 いくつかの例を下に挙げます。 • 化学薬品産業 • 食品と飲料 • 電子機器産業 • 大学 / 学校 • その他のセグメント 7
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4 滴定の利点 滴定が世界中のラボで使用されているのには、いくつかの理由があ ります。手動滴定と自動滴定の比較を下に示します。 手動滴定 自動滴定 • 定評のある分析技法 • 定評のある分析技法 • 迅速 • 迅速 • 正確で高精度 • 手動滴定に比べて高い正確性、 • 高度な技法と比較して、優れ 繰り返し性および精度 たコストパフォーマンス • その他高度な技法と比較して、 優れたコストパフォーマンス • オペレータに左右されない • 時間の節約 • 覚えやすい簡単な操作 • 熟練していないオペレータで も使用可能 8 ABC of Titration
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5 滴定の理論 滴定は、化学反応の種類と終点検出方法により分類することがで きます。 5.1 化学反応の種類 滴定では、主に 3 種類の化学反応が使用されます。 これらの反応を以下に例およびいくつかの典型的な用途と共に示し ます。 酸 / 塩基反応 : HCl + NaOH  NaCl + H2O 用途 : ジュース、牛乳およびワインの酸含有量 酢、ケチャップの酸含有量 水の p 値および m 値 酸度 / アルカリ度 メトラー・トレドの Titration EasyPlus™ Easy pH には、酸 / 塩基滴 定を適切に実施するのに必要なアクセサリがすべて含まれています。 沈殿反応 : NaCl + AgNO3  AgCl + NaNO3 用途 : 食品の塩化物(塩分)含有量 銀含量測定 メトラー・トレドの Titration EasyPlus ™ Easy Cl には、適切な塩 化物含有量測定に必要なアクセサリがすべて含まれています。 9
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酸化還元反応 : 2 Cu2+ + 2I-  2 Cu+ + I2 SO2 + I2 + 2 H2O  H2SO4 + 2 HI 用途 : ジュースの還元糖 ジュースのビタミン C ワインの SO2 含有量 食用油の過酸化物価 メトラー・トレドの Titration EasyPlus ™ Easy Ox には、酸化還元 滴定に必要なアクセサリが全て含まれています。 メトラー・トレドの Titration EasyPlus™ Easy Pro は、酸塩基、沈殿、 酸化還元滴定をすべて行えるモデルです。 水分の測定、カールフィッシャー滴定については、 第 10 章を参照してください。 5.2 終点検出法の原理 5.2.1 手動滴定 手動滴定では、指示薬を使用し色の変化により化学反応を監視し ます。反応が完了すると、指示薬の色が変わり、滴定の終了(終点) が確認できます。 10 ABC of Titration
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下の表は、pH 滴定に使用される代表的な指示薬、色の変化およ びその pH 範囲、用途例を示しています。 指示薬 色の変化 pH 範囲 用途例 メチルオレンジ 赤 – 黄 3.1 - 4.4 塩基含有量 m 値 フェノールフタレイン 無色 – ピンク 8.3 ~ 10.0 酸含有量 p 値 混合指示薬 紫 – 緑 4.4 - 6.2 ケルダール窒素 (例 Merck5、Tashiro) 5.2.2 半自動または自動滴定 電位差滴定の原理は、自動滴定または半自動滴定(センサとメータ を使った手動滴定)に最もよく使用されます。測定溶液の濃度依存 電位(mV)は基準電位が差し引かれて測定されます。 例として、pH 測定、酸化還元測定および銀イオン測定などがあり ます。通常、比較電極が内蔵された複合センサ(電極)が使用され ます。 用途例と必要なセンサのリストを下に示します。 酸 / 塩基(含水) 複合 pH ガラス電極 用途例 : ワイン、牛乳およびジュースの酸含有量 水の p 値および m 値 メトラー・トレドの EasyPlus™ 滴定用センサ : EG11-BNC 酸 / 塩基(非水) 複合 pH ガラス電極 用途例 : 食用油の遊離脂肪酸含有量 全酸 / 塩基価 メトラー・トレドの EasyPlus™ 滴定用センサ : EG13-BNC 11
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沈殿 複合銀センサ 用途例 : 水溶液の銀滴定 食品の塩化物含有量 銀含量測定 メトラー・トレドの EasyPlus™ 滴定用センサ : EM45-BNC 酸化還元 複合プラチナセンサ (含水 / 非水 ) 用途例 : 食用油の過酸化物価 ジュースの還元糖 メトラー・トレドの EasyPlus™ 滴定用センサ : EM40-BNC 一部の酸化還元滴定の場合、ダブルプラチナピンセンサに一定の 分極電流を流し、濃度依存の電位を測定するボルタンメトリー法が より適しています。 酸化還元(Ipol) ダブルプラチナピンセンサ 用途例 : ワインの二酸化硫黄 飲料のビタミン C メトラー・トレドの EasyPlus™ 滴定用センサ : EM43-BNC この終点指示の原則はカールフィッシャー滴定(含水 量測定)でも使用されます。第 10.2 章を参照してください。 12 ABC of Titration
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5.3 滴定モード – 終点 / 当量点 滴定モードは基本的に、終点滴定(EP)と当量点滴定(EQP)の 2 種類に区別することができます。 5.3.1 終点滴定(EP) 終点モードは、従来の手動滴定法で使われます。指示薬の色の変 化により、反応の終点を確認できるまで滴定液を添加します。電位 差滴定では、設定した測定値(pH = 8.2 または E = 100 mV など) に達するまで滴定液が添加されます。 図 1 は、標準的な終点滴定曲線を示しています。 図 1 終点滴定曲線 指示薬の色の変化は、特定の pH 範囲で起こります。このため、こ のモードは通常、酸 / 塩基滴定に使用されます。 実際の終点 /pH 値は多くの場合、指示薬が変色する値に基づいて います。 13
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正確な pH 終点滴定のためには、滴定の前に適切なセンサの校正 を行うことが必須です。pH の測定値が正しくないと、滴定液の添 加誤差、さらには誤った結果につながります。 さらに、サンプルの pH は温度に左右されます。このため、サンプ ル測定 / 滴定はセンサ校正と同じ温度で実行するか、温度を補正 するための温度センサを使用する必要があります。 5.3.2 当量点滴定(EQP) 当量点とは、定量成分と試薬(滴定液)が完全に同じ(当量)濃度に なるポイントです。多くの場合、酸 / 塩基滴定から得られる滴定曲線 などの変曲点と実質的に同じになります。 滴定曲線の変曲点は、微分が最大になる pH または電位(mV)と滴 定液の消費量(mL)によって定義されます。 図 2 は、標準的な当量点滴定曲線を示しています。 図 2 当量点滴定曲線 14 ABC of Titration
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5.4 滴定の種類 次の 3 種類の滴定方法があります。 • 直接滴定 • ブランク補正滴定 • 逆滴定 5.4.1 直接滴定 直接滴定では、滴定液が直接定量成分と反応します。滴定液の消 費量は、直接、定量成分の含有量に等しくなり、計算に使用されます。 直接滴定の例としては、酢の酸含有量の測定があります。一定量の サンプルを希釈し、水酸化ナトリウムで直接滴定します。 5.4.2 ブランク補正滴定 サンプルを溶剤に溶かす場合、溶剤も滴定液に反応し、一定の消 費につながります。このため、溶剤のブランク値を調べる必要があ ります。合計消費量から溶剤の消費量(ブランク値)を引いたもの がサンプルの定量成分の計算に使われます。 15
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ブランク補正滴定の例としては、食用油の酸価または遊離脂肪酸 含有量の測定があります。サンプルは、溶剤の混合液に溶かされ、 エタノール中の水酸化カリウムで滴定されます。溶剤中の酸性不 純物も滴定液に反応します。ブランク値を調べるために、まず溶 剤をサンプルなしで滴定します。2 回目の滴定で溶剤に溶かした サンプルを滴定します。滴定液の消費量は、合計消費量(サンプ ル + 溶剤)からサンプルなしの溶剤の消費量(= ブランク値)を 引いた値になります。 サンプルおよびブランク測定には、常に同じ量の溶剤を使用して ください。 EasyPlus™ 滴定: ブランク値は機器の一般設定に保存されます。 5.4.3 逆滴定 逆滴定では、正確な過剰量の滴定液 / 試薬がサンプルに追加され ます。十分に長い反応時間の後、この過剰量は 2 種類目の滴定液で 逆滴定されます。1 回目の滴定液と 2 回目の滴定液の添加量の差よ り定量成分が求められます。 逆滴定の例としては、還元糖の測定があります。銅(II)溶液の過剰量 がサンプルに追加されます。還元糖は銅(II)と反応して、これを銅(I) に還元します。サンプルによって還元されない銅(II)がチオ硫酸ナト リウムによって滴定されます。従って、サンプルに追加された正確な 16 ABC of Titration
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量の銅(II)を知る、または測定する必要があります。この量は戻り値 と呼ばれます。戻り値から滴定液消費量を引いたもの(サンプルと銅 (II)溶液の反応後)が実際のサンプルの消費量となり、計算に使用 されます。 戻り値、つまりサンプルに添加された滴定液 / 試薬の正確な量を 把握する必要があります。 EasyPlus™ 滴定: 戻り値は、機器の個別のメソッドに保存され ます。 17
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6 滴定の制御 6.1 手動滴定 手動滴定はオペレータが制御する滴定です。滴定液の添加は手動で 制御され、指示薬の反応による終点の検出はほとんど場合、視覚的 に行われます。 6.2 自動滴定 滴定装置では、滴定液の添加、反応の監視(測定値の取得)、終点 の認識、結果の評価と計算など滴定に関わるすべての操作を自動化 できます。 滴定曲線は、添加された滴定液の容量 V [ml] に対して、測定され た信号 E [mV または pH] を示します。この信号は、滴定液の添加 に対する滴定反応の進捗を示します。 18 ABC of Titration
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6.2.1 滴定液の添加 滴定液は、設定された投与速度で連続的に添加されるか、または事 前定義された容量ステップで徐々に添加されるかの 2 つの方法で 添加されます。容量ステップは、一定容量または測定される電位差 に応じて、動的に調整する 2 種類が選べます。 6.2.2 測定値の取得 一定の滴定液の添加後には、センサの電位を取得する必要がありま す。通常、電位が安定した時の値を読み取ります。 EasyPlus™ 滴定: 反応の種類ごとにテストされ、確認された制御設 定が機器にプログラムされています。以下の設定が機器に事前設定 されています。 標準 平均速度で高い精度が得られます。 高速 滴定液を大量に添加する測定では、精度が下がる可 能性があります。 厳密 含量が少量の場合、高い精度が得られます。しかし分 析時間が長くなります。 さらに、ユーザー定義の制御を選択できます。 19
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7 計算 結果の計算は、滴定液の消費量および定量成分と滴定液の化学反 応の化学量に基づきます。 7.1 化学量と当量数 化学量は、化学反応における定量成分と試薬(滴定液)の比率、つま り、特定数の定量成分の分子またはグラム分子量による完全な反応 のためにどれだけの分子またはグラム分子量の試薬が必要かを示 します。 分子量の情報は、常に次のような化学式に含まれます。 H2SO4 + 2 NaOH  2 H2O + Na2SO4 (定量成分) (滴定液) (反応生成物) 滴定では、定量成分と試薬の比率は通常、“z” と略される当量数で 表されます。 上の例では、1 モルの硫酸(H2SO4)を中和するために 2 モルの水 酸化ナトリウム(NaOH)が必要なため、当量数は z=2 になります。 つまり、この当量数は定量成分と反応する滴定液のモル数を示して います。 当量数 z は、定量成分のモル質量と共に計算に使用されます。これ は、滴定液が反応部分のモル溶液として準備されている場合に該当 します。例えば、c(1/2 H2SO4) = 0.1 mol/L または c(1/5 KMnO4) = 0.1 mol/L になります。 次の表は、いくつかの標準的な定量成分と最適な滴定液および該当 する当量数を示しています。 20 ABC of Titration