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カールフィッシャー滴定ガイド-水分測定(容量法と電量法)

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カールフィッシャーの化学反応と2つの主な測定技術である容量法と電量法についてご紹介

水分測定のためのカールフィッシャー法は、最も頻繁に使用される滴定法です。ドイツの石油化学者カールフィッシャーが1935年に発明し、応用の幅広さとサンプルの適応性の幅広さが理由で有名になりました。

カールフィッシャー法による水分測定は、今日では二つの異なる技術で実現されています。
①容量カールフィッシャー滴定:電動ピストンビュレットでヨウ素を溶液に加える。
②電量カールフィッシャー分析:セルの電気化学酸化によってヨウ素が集まる。

サンプルの中の水分の予測に基づいて、適切な滴定技術を選択します。
容量カールフィッシャー滴定は滴定中にビュレットでヨウ素を加える水が主な成分のサンプルに適しています;100ppm - 100%
電量カールフィッシャー分析は滴定中の電気化学によってヨウ素が集まる水が微量しか存在しないサンプルに適しています;1ppm - 5%

1ppmから100%の湿度と水分測定の詳細をガイドからご確認いただけます。

このカタログについて

ドキュメント名 カールフィッシャー滴定ガイド-水分測定(容量法と電量法)
ドキュメント種別 その他
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取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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KFガイド1 測定手法 自然科学の法容則量の「法実と」電体量験法 – カールフィッシ容ャ易ーに滴学定習 Karl Fische学r 学Ti学tr学at学io学n
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Editorial 読者のみなさまへ 水分含有量測定のためのカールフィッシャー法は、最も頻繁に使 用される滴定法です。ドイツの石油化学者カールフィッシャーが 1935年に発明し、応用の幅広さとサンプルの適応性の幅広さが理 由で有名になりました。 このガイドでは、カールフィッシャー法の発展の歴史を簡潔に紹介 します。容量分析と電量分析の2つの主な測定技術と化学反応につ いても解説します。 メトラー・トレドの1ppmから100%に及ぶ水分含有量測定について の幅広い知識を学習にお役立てください。 3
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目次 4 1. カールフィッシャー滴定 5 1.1. カールフィッシャー滴定法の歴史 5 1.2. カールフィッシャー化学反応 7 1.3. 実際のアプリケーションに及ぼす影響 9 2. 容量法と電量法カールフィッシャー分析 11 2.1. 容量法KF分析 12 2.1.1 一液型KF試薬 12 2.1.2 二液型KF試薬 12 2.1.3 ピリジンを含んでいる試薬 13 2.1.4 アルデヒドとケトンに適合した特殊試薬 13 2.1.5 エタノールを含むカールフィッシャー試薬 13 2.2 電量法KF分析 14 2.2.1 KF電量分析 14 2.2.2 電量法KF反応の化学量論 16 2.2.3 ヨウ素の生成 16 2.2.4 隔膜なしの電解セル 17 2.2.5 隔膜なしのセルを使用する場合の制限 18 3. 詳細情報 19 4 Historic o verview
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1. カールフィッシャー滴定 1.1. カールフィッ 1935年 カ ー ルフィッシャー による「 N e u e s Ve r f a h r e n z u r シャー滴定法の歴史 massanalytischen Bestimmung des Wassergehaltes von Flüssigkeiten und festen Körpern」の出版。 1943年 G . WernimontとF.J.Hopkinsonによる「デッドストップ終点 法」の出版。 1950年 ピリジン含有二液型試薬とデッドストップ滴定装置が市販 で提供される。 1952年 E. Eberiusの書著の効果でカールフィッシャー法の利用が 広がる。 1955年 一液型カールフィッシャー安定試薬に関するE. D. Peters/ J. L. Jungnickel共著の書籍が刊行。 1956年 カールフィッシャー法滴定に対する初のドイツDIN標準 (DIN 51777、1956年4月、「鉱油炭化水素と溶媒の試験: カールフィッシャー直接法による水分含有量の測定」)。 1959年 A . S. Meyer/C. M.Boydによる「電量法カールフィッシャー滴 定」の出版。 1960年 電動ピストン付きビュレットを使用したKF滴定装置。 KF滴定の利用が広範に普及。 1970年 最初の電量法KF滴定装置が市販される。 1980年 ピリジンを含まないKF試薬が市販される。 1984年 自動ドリフト補正と溶媒分注/除去をともなう初のマイクロ プロセッサ制御式KF滴定装置(METTLER DL18)。 1985年 ラボ用ロボットをともなう初の全自動KF滴定(METTLER DL18とZYMARK)、DL18カールフィッシャー容量法滴定用 DO185乾燥オーブン。 1989年 電量法KF滴定用の初の隔膜のないセル。 1990年 メトラー・トレドのDL37 KF電量計。 1995年 DIN 50049-2.3準拠の試験証明書付き水分標準(10.0、 1.0、0.1mg/g) カールフィッシャー滴定のオンライン曲線E = f(t)とV = f(t) をともなう初の滴定装置(METTLER TOLEDO DL55)。 5
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1997年 M ETTLER TOLEDO DL53/55/58、DL67/70ES/77滴定装置 用の超低ドリフト値(2µg/分未満)の新しいDV705 KF滴定 スタンド。 1998年 専 用ファジ ー ロジック制 御 、滴 定 液 固 有 の 標 準 パラ メータ、LEARN滴定によるMETTLER TOLEDO DL31/DL38 KF滴定装置が、DL18/35 KF容量法滴定装置の後継装置と して登場。 エタノールを使用した低毒性KF試薬が登場。 2000年 自動KF容量法測定用のMETTLER TOLEDO RONDOサンプ ルチェンジャ。 2001年 METTLER TOLEDO DO307 KFマニュアル気化装置を機能 強化。 固体KFオーブン標準品、水分含有量それぞれ5.5%と1%。 2002年 METTLER TOLEDO DL32/39 KF電量法が登場(隔膜あり/な しの電解セル)。 M ETTLER TOLEDO STROMBOLI KF水分気化装置オートサン プラーが登場。 2008年 M ETTLER TOLEDO V20/V30とC20/C30シリーズの小型 カールフィッシャー滴定装置が登場。 6 Karl Fischer chemical reaction
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1.2 カールフィッ 水分含有量の測定は、R. W. Bunsenが表した反応に基づいてい シャー法の化学反応 ます。 I2 + SO2 + 2 H2O → 2 HI + H2SO4 Karl Fischer氏は、過多の二酸化硫黄を含む非水系システムにお ける水分量の測定に、この反応を使用できることを発見しました。 メタノールが溶媒として適することが実証されたのです。右への平 衡移動を達成するために、反応時に形成される酸を中和する必要が あります(HIとH2SO4)。Karl Fischer氏はこのためにピリジンを使用 しました。Smith、Bryanz、Mitchellの各氏は、2段階の反応を定式化し ました。 1. I2 + SO2 + 3 Py + H2O → 2 Py-H+I – + Py•SO3 2. Py•SO3 + CH3OH → PyH-CH3SO4 これらの式に従うと、メタノールは溶媒として作用するだけでなく反 応自体に直接関与します。アルコール溶液中では、ヨウ素と水の反 応が1:1の化学量論比で発生し、アルコールを含まない溶液では、 ヨウ素と水の反応は1:2の化学量論比で発生します。 1.I2 + SO2 + 3 Py + H2O → 2 Py-H+I – + Py•SO3 2.Py•SO3 + H2O → Py-H+HSO –4 さらにJ. C. Verhoef氏とE. Barenrecht氏により実施されたカール フィッシャー反応についての詳しい調査では、下記が明らかにされ ました。 • ピ リジンは反応に直接的には関与せず緩衝剤として作用するの で、他の塩基に置き換えることができる。 • 速 度定数kで表現されるカールフィッシャー反応の速度は、媒体の pH値に応じて異なる(P8のグラフを参照)。 7
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log k -d[I2]/dt = k • [I2] • [SO2] • [H2O] pH pHが反応速度に影響する理由の一つとして、水の影響下でヨウ素に より酸化されるのは二酸化硫黄自体ではなく亜硫酸メチルイオン であると考えられています。これは下記の式に従い二酸化硫黄とメ タノールから形成されます。 2 CH3OH + SO2 → CH OH +3 2 + CH - 3OSO2 溶液のpHが高いほど陽子の捕捉によって形成される亜硫酸メチル が増え、カールフィッシャー反応速度が上がります。 pHレンジ5.5~8では、すべての二酸化硫黄は亜硫酸メチルとして 存在し最大反応速度に達します。8.5超のpH値では、反応速度はヨ ウ素と水酸化物イオンまたはメチラートイオンとの副反応により促 進します。KF滴定では、不明確な終点とヨウ素消費の増加につなが ります。 8 Karl Fischer chemical reaction
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この知見に基づき、E. Scholz氏は、イミダゾールを塩基としてピリ ジンなしのカールフィッシャー試薬を開発しました。この試薬は有毒 で刺激性のあるピリジンに置き換わるだけでなく、より迅速で正確 な滴定をもたらしました。その理由は、イミダゾールはピリジンに比 べて好ましいpHレンジで緩衝剤として作用するからです。 E. Scholz氏による研究は以下の反応スキームに結実し、カール フィッシャー反応に提唱されました。 1. ROH + SO2 + RN → (RNH) · SO3 R 2. (RNH) · SO3 R + 2 RN + I2 + H2O → (RNH) · SO4 R + 2 (RNH)I これは以下の一般的な化学反応式となりました。 ROH + SO2 + 3 RN + I2 + H2O → (RNH)•SO4 R + 2 (RNH)I E. Scholz氏は、滴定の最中にメタノール/SO2/I2溶液における 基礎的な亜硫酸メチルの存在も確認しました。1988年には、 A. Seubert氏は赤外分光法を駆使してKF溶液における硫酸メチルを 特定し、KF反応の二次生成物として亜硫酸メチルを分離、特定しま した。 反応の化学量論についての実験では、実際にはメタノールを他 のアルコールと置き換えられることが示されました(エタノール、 2-プロパノール、メトシキエタノール、ジエチレングリコールモノエ チルエーテルなど)。これにより力価の安定性が向上します。 1.3 実際のアプリ • カ ールフィッシャー反応に対するpHの影響 ケーションに及ぼす カールフィッシャー滴定の速度はpHレンジ5.5~8で最大に達 影響 するので、4未満、8超のpH値は実際には避ける必要があります。 酸性または塩基性サンプルでは、緩衝剤を添加しpH値を適切な 範囲に調整する必要があります(酸性の場合:イミダゾール、塩基 性の場合:サリチル酸)。 • カールフィッシャー反応に対する溶媒の影響 化学量論(H2O:I2のモル比)は溶媒の種類に応じて異なります。 アルコール溶媒 H2O:I2 = 1:1 ( メ タ ノ ー ル な ど ) 非アルコール溶媒 H2O:I2 = 2:1 (ジメチルホルムアミド) 9
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Eberius氏の研究では、溶媒中のメタノールの割合が20%以上の 場合、ヨウ素と水は1:1の比で反応することが示されました。この ため、メタノールは最小の必要量で常に存在する必要があります。 メタノールなしの滴定液を使う必要がある場合(ケトンまたはア ルデヒド中での測定など)、例えばエチレングリコールモノメチル エーテルなど、他のアルコールを使用できます。 • カールフィッシャー反応に対するサンプルの水分含有量の影響 サンプル の 水 分 含 有 量も、H 2O : I 2の モ ル 比 に 影 響します。 J.C. Verhoef氏とE. Barendrecht氏は、滴定液の力価が水分含有量 1mol/L以上で増えることを観察しました。ただしこれは深刻な制 限ではありません。というのも滴定液の水分は、通常これより大幅 に少ないからです。 10 Karl Fischer analyses
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2. 容量法と電量法カールフィッ シャー分析 カールフィッシャー法での水分測定は、現在2つの方法で実施され ています。 – 容量法カールフィッシャー滴定。ヨウ素を含む溶液が電動ピストン ビュレットで添加されます。 – 電量法カールフィッシャー分析。電解セルにおける電気化学的酸 化によってヨウ素が生成されます。 サンプルに適した測定法は、予測されるサンプルの水分量で決まり ます。 容量法カールフィッシャー滴定 滴定中にビュレットでヨウ素を添加します。 水が主な成分のサンプルに適しています。 100ppm - 100% 電量法カールフィッシャー分析 滴定中にヨウ素が電気化学的に生成されます。 微量水分を含むサンプルに適しています。 1ppm - 5% 11
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2.1 容量法 2.1.1 一液型KF試薬 KF試薬 滴定液は、適切なアルコールに溶けているヨウ素、二酸化硫黄、イミ ダゾールを含んでいます。溶媒はメタノールです。また溶媒としてサ ンプルに適合したメタノール溶媒混合液を使用できます。 試薬は約2年間保管できます。力価の低下(濃度の減少)は、密封ボ トルで年間約0.5mg/mLです。試薬には3種類の濃度があります。 5mg/mLは、水分含有量が1000ppm~100%のサンプル用、 2mg/mLは、水分含有量が1000ppm未満のサンプル用、 1mg/mLは、水分含有量が200ppm未満のサンプル用です。 2.1.2 二液型KF試薬 滴定液にはヨウ素とメタノールが含まれています。溶媒には、二酸化 硫黄、イミダゾール、メタノールが含まれています。 二液型試薬では、2~3倍高速な滴定速度を達成できます。両成分 は、非常に安定して保管が出来ます。ボトルが確実に密封されてい れば、滴定液の力価は安定しています。滴定液には2種類の濃度が あります。 • 5mg/mLは、水分含有量が1000ppm~100%のサンプル用、 • 2mg/mLは、水分含有量が1000ppm未満のサンプル用です。 試薬 + - 一液型 扱いが簡単、求めやす 力価の安定性は低い、 い価格。 滴定速度は遅い。 二液型 滴定速度が速く、安定し 溶媒の使用頻度に制 た力価。 限あり。 2.1.3 ピリジンを含んでいる試薬 迅速で正確なカールフィッシャー滴定を可能にするピリジンなしの 試薬が存在しているにも関わらず、ピリジンを含んでいる試薬は安 価な上に自己調整できることから今も使用されています。 一液型試薬: 滴定液は、メタノールに溶けているヨウ素、二酸化硫黄、ピリジンを 含んでいます。溶媒はメタノールまたはメタノール混合液を含んで いる場合があります。メーカーによっては、滴定速度を高めるため に滴定液のピリジン含有量を多少増やしています。このタイプの試 薬は「ラピッド」と称されています。安定性を向上させるために、メー 12 Volumetric KF analysis
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カーによっては溶液A(二酸化硫黄、ピリジン、メタノール)とB(ヨウ 素、メタノール)に分かれた滴定液を販売しています。これを使用直 前に1:1で混合し、一液型の滴定液として使用します。 二液型試薬: 滴定液にはメタノールなどのアルコールに溶けているヨウ素が含ま れている一方、溶媒にはアルコール(通常はメタノール)またはアル コール混合液に溶けている二酸化硫黄とイミダゾールなどの塩基 が含まれています。滴定液と溶媒に分かれていることでKF試薬の安 定性が向上し、それらの寿命も延び、結果的により速い滴定につな がります。 2.1.4 アルデヒドとケトンに対応する特殊試薬 アルデヒド(R-CHO)とケトン(R-CO-R)は、標準品のメタノール含 有試薬で滴定するとアセタールとケタールを形成します。これによ り、新たな水分が同時に生成、滴定され、より高い水分含有量と消 失終点につながります。特殊なメタノールなしのKF一液型試薬、 例えばHYDRANAL®(Sigma-Aldrich社のComposite 5KとWorking Medium K)やapura®(VWR/MERCK社のCombiSolvent Ketoをともな うCombiTitrant 5 Keto)などが市販されており、この問題を回避でき ます。 一液型試薬: 滴定液にはヨウ素、イミダゾール、二酸化硫黄、2-メトキシエタ ノールが含まれており、一方で溶媒には2-クロロエタノールとトリ クロロメタンが含まれています。滴定時間は標準品のKF試薬に比べ て多少長くなります。場合によっては滴定メソッドの終点値をこれら の試薬に合わせる必要があります。この特殊試薬は、メタノールと反 応する物質、例えばアミンなどにも適しています。 2.1.5 エタノールを含むカールフィッシャー試薬 エタノールはメタノールよりも毒性が低いので、二液型試薬、エタ ノールベース試薬が1998年に登場しました。これらの試薬では、 ケタールを形成する複数のケトンの滴定がメタノールの場合と比べ てエタノールで大幅に低速になります。 滴定液にはヨウ素とエタノールが含まれており、一方で溶媒には 二酸化硫黄、イミダゾール、ジエタノールアミン、エタノールが含ま れています。 13
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2.2 電量法 2.2.1 KF電量分析 KF分析 水分の電量法KF測定は、KF反応の標準反応式に基づいています。 ROH + SO2 + 3 RN + I2 + H2O → (RNH)•SO4 R + 2 (RNH)I ただし電量分析では、ヨウ素は電解セルで以下の半反応に従い陽 極酸化によって電気化学的に生成されます。 2 I - → I2 + 2 e- ヨウ素の生成は、ガラス製滴定セルに組み込まれた陽極*(「電解セ ル」または「インナービュレット」とも呼ばれる)で起こります。電解電 極は検出電極*(ダブルピンプラチナ電極)のそばにあり、検出電極 は電量法滴定中にボルタンメトリー手法によってサンプル溶液の電 位をモニタリングします。 従来の電量法セルは、陽極コンパートメントと陰極コンパートメント の2つの部分から構成されます。両方の部位とも液絡部で分離され ています。 検Me出as電ur極ing electrode ((dダouブblルe プplaラtinチumナ ピpinン) ) Gener電ato解r e電le極ctrode C陰at極ho液lyte 陽A極no液lyte Diap隔hra膜gm *「電解電極」と「検出電極」という表現は、電解槽を形成する2つの電極(陽極と陰極)の 配置を意味します。 14 Coulometric KF analysis
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陽極セルは陽極液、つまりKF電解液を含んでおり、この液は電解電 極で電流を与えて酸化によりヨウ素を生成するために必要です。 陽極セルは二酸化硫黄、イミダゾール、ヨウ化物塩から構成されま す。溶媒としてはメタノールまたはエタノールを使用します。アプリ ケーションに応じて、クロロホルム、オクタノール、ヘキサノール、 エチレングリコールなどの他の溶媒が添加されます。 陰極液は全体的な電気化学反応の完了を可能にします。陽極液の 酸化反応は、陰極液での還元反応によって完了します。陰極液は メーカー固有の特殊試薬か、または陽極コンパートメントで使われ るのと同じ試薬です。 陽極反応 陽極では、電気化学的酸化によってヨ ウ化物からヨウ素が生成されます。ヨウ 化物イオンが陽極で電子を放出してヨ ウ素を形成し、さらにそれが水と反応し ます。 陰極反応 陰極では、水素イオンが水素に還元さ れます。これは形成される主な生成物 です。 アンモニウム塩を陰極液に添加して、水素の生成を促します。 2 [RN]H + + 2e -→ H2 + 2 RN さらに、水素と遊離アミンの形成により、アンモニウムイオンが還元 されます。 なお、陽極液に存在するメチルスルホン酸、CH3SO3H、は陰極に到 達し、そこで硫化物化合物(不快な臭い)に還元されます。これは陰 極が黒くなる原因になります。 これを避けるために、陰極液は2週間に1回交換する必要があり ます。 15
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2.2.2 電量法KF反応の化学量論 電量法により検出される水分の量は、ヨウ素の生成に使われる電流 の量(クーロン、C単位)で測定されます。これを計算するには、まず 1クーロンの定義を認識する必要があります。1クーロン、Cは、1秒間 に1アンペアの電流によって運ばれる電荷の量です。 1 C = 1 A · 1 s 一方で、1つの電子を必要とする化学物質1モルを生成するに は、96485Cの電流が必要なことが知られています。96845C/molは ファラデー定数といわれます。 カールフィッシャー反応では、2つのヨウ化物イオン、I-、がヨウ素1分 子、I2、に酸化して、陽極で2つの電子を放出します。続いてヨウ素が 水と反応します。 2 I - → I2 → H2O 従って、水1モルには2 x 96485C/molが必要になります。水のモル 質量は18.015g/molなので、この計算は下記のように表すことがで きます。 水1mgは10.712Cの電流の消費に相当する。 電気化学的に最適化されたカールフィッシャーセルでは、ヨウ素生 成の電流変換効率が100%と仮定されます。 電流と時間は正確に測定できるので、電量法KF試薬の標準化は必 要ありません。このような理由から、電量分析は絶対的なメソッドと して指定されています。結果として、電量分析は水分含有量測定の 基準メソッドとして使われています。 しかしながら、電量計は校正書付き水標準品で定期的にチェックす ることが強く推奨されます。 2.2.3. ヨウ素の生成 ヨウ素は、400、300、200、100mAの電流パルスによって生成します。 ヨウ素生成の速度はパルス幅と周波数、およびパルスの高さ(mA単 位)を変えることで調整します。最大のパルス高さは以下の要因に応 じて異なります。 – 陽極液の導電率 – 電解セルの電圧 – 電解電極の表面 16 Coulometric KF analysis
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電解電極と電極表面の電圧は、電量計のタイプに応じて異なります。 さらに、陽極液の導電率は、サンプルやその他の溶媒(クロロホル ム、ヘキサノールなど)によって影響されます。 標準的な導電率の値では、電量計は400mAの電流パルスで作動し ます。この場合のヨウ素生成速度は、最大で2240µgの水分/分に相 当します。 非常に低い導電率では(3~4µS/cm未満)、装置の最大電流は 100mAです。 2.2.4 隔膜なしの電解セル 隔膜あり 隔膜なし KF電量分析用の隔膜なしのセルが初めて市販されたのは1989年 です。隔膜を持つセルと比べた場合、以下のような長所があります。 – 隔膜の汚染または目詰まりがない。 – 洗浄が簡単。 – 低ドリフト。 元来、電解セルは、内部の陰極部分を陽極部から分離する多孔質セ ラミックフリット(隔膜)を使用して作成されました。その目的は、陽 極で生成されたヨウ素分子が水と反応せずに陰極ですぐにヨウ化 物イオンに還元されるのを防ぐことでした。 この同時反応を回避するには、隔膜なしの電解セルに異なる構造 を適用する必要があります。具体的には陰極を小さくする事で、ヨウ 素が陰極に達しない構造を作ります(陰極は小サイズのピン)。さら に、幾分速めの攪拌速度によって、生成したヨウ素分子をより素早く 分散します。これで、ヨウ素分子はより効率的に水と反応します。 17
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なお、陰極で発生する水素ガスはその表面に気泡を生成します。 このため、ヨウ素が陰極に達してヨウ化物に還元するのがほぼ不可 能になります。この効果は、陰極のサイズが小さいことでさらに高ま ります。 ただし、極小量のヨウ素が陰極に達する可能性はまだ残ります。しか し、その相対的な誤差は、多量のサンプルを使用することで最小化 できます。 実際には、水分含有量が非常に少ないサンプル(50µg未満の水分/ サンプル)の測定や、非常に正確な測定の場合、隔膜を持つセルに よってより正確な結果を得られる可能性があります。 2.2.5 隔膜なしのセルを使用する場合の制限 隔膜なしのセルは、還元しやすいサンプルには適しません。陰極に 発生期水素が形成されます。これは、特にニトロベンゼンなどのニト ロ化合物にとって非常に効果的な還元剤です。 R-NO2 + 3 H2 → R-NH2 + 2 H2O これ以外に、不飽和脂肪酸などの還元しやすい物質も、水の形成に よって陰極で還元されます。 隔膜なしのセルは、以下のような化合物の水分含有量の測定に適し ています。 – 炭化水素 — 塩素化炭化水素 – アルコール — フェノール(大部分) – エステル — エーテル – ケトン(特殊試薬を使用)— アセトアミド – 精油 — 食用脂 – 石油 以下の場合、隔膜セルが必要になります。 – 水分含有量が非常に少ないサンプル(50µg未満の水分/サン プル) – 非常に正確な測定 – ニトロ化合物 – 不飽和炭化水素、特に還元しやすい場合 18 More information
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3. 詳細情報 3.1 文献 HYDRANAL®-マニュアル、「Eugen Scholz、カールフィッシャー滴定 液」、Sigma-Aldrich Laborchemikalien GmbH、D- 30918 Seelze/ドイツ、 2006年。 SCHOLZ. E.、「カールフィッシャー滴定」、Springer Verlag、ベルリン、 1984年。 WIELAND, G.、「Wasserbestimmung durch Karl-Fischer-Titration – Theorie und Praxis」、GIT Verlag GmbH、ダルムシュタット/ドイツ、 1985年。 3.2 その他のガイド メトラー・トレドはカールフィッシャー滴定用の各種ガイドを提供い たします。これらのガイドでは、基本事項、メソッド、技法について説 明し、日常的な実践のヒントとコツをご紹介します。 1 カールフィッシャー滴定入門 2 カールフィッシャー滴定のサンプル調製 3 カールフィッシャー滴定のサンプル採取 4 メソッド概要 3.3 アプリケーショ カールフィッシャー滴定のその他の詳細情報については、アプリ ンガイド ケーションガイド「Good Titration Practice™ in Karl Fischer Titration (ME 51725145)」を参照してください。 19
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Good Measuring Practice 天びん、滴定装置、ピペット メトラー・トレドの滴定、計量、およびピペッティングを対象にした リスクベースのガイドラインにより、対応が必要なタイミングと箇 所を適切に判断できます。5つのステップによるGood Measuring Practiceは、ご使用の機器のライフサイクル全体をカバーし、優れ た品質管理システムを実現するための実用的なガイダンスを提供 します。 1. 評価 5 Routine 1 最高品質のアプリケーション Operation Evaluation とデータを一貫して維持す るために、プロセスフローと Good それらに関連する品質基準 Measuring を分析します。 4 Calibration / Practices 2 Qualification Selection 2. 選定 固有のプロセスニーズに最 3 も適合する機器と測定技術 Installation / の適切な組み合わせを選び Training ます。 3. 据付とトレーニング 新しい機器を安心して操作できるように、導入当日から専門的なスキル 全般を習得できます。 4. 校正と適格性評価 機器の校正および適格性評価については、メトラー・トレドの熟練した サービスチームがお客様をサポートします。 5. 日常点検 最適な性能を維持するための具体的な管理(検査、校正、およびメン テナンス)方法を提案します。 www.mt.com/gtp www.mt.com/karl-fischer For more information メトラー・トレド株式会社 ラボインスツルメンツ事業部 Tel 03-5815-5515 Fax 03-5815-5525 製品の仕様は予告なく変更することがありますので、 あらかじめご了承ください。 © 10/2014 Mettler-Toledo AG, 30470305 Marketing Titration / MarCom Analytical