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連続プロセスの開発およびコントロールの改善

ホワイトペーパー

連続フロー反応の迅速な分析および最適化

フローケミストリーの発展により今まで困難であったプロセス条件(温度、圧力など)が適応でき、合成化学者が対応可能な化学反応の適応範囲が大幅に拡大しました。このことは、ここ数年間に出されているフローケミストリーに関する論文の量が劇的に増えていることからも伺えまが、適切なインライン分析技術がこの現状に追い付いていませんでした。FlowIR™ を用いることで、反応機構の解析や反応条件の最適化を迅速に行う事ができます。

通常、連続フロー反応の最適化には、最適な条件が得られるまでに、膨大な量の繰り返し実験が必要なことがありました。全て自動化した連続フロー制御機構を構築することで、反応の最適化に費やす時間と、繰り返し実験の回数を削減できます。

フローケミストリーは、反応を理想的な条件で実行できる新たな合成技術です。たとえば、ソフトウェアで制御可能なVapourtec社製Flow Commander™を連続フロー、非連続フローに関わらず動作させながら、反応に関連する重要なデータを FlowIR™で測定することができます。さらに、FlowIR™ 以外に、オフラインでのサンプル分析が必要無い場合、フロー反応の最適化に必要な時間を劇的に短縮することができます。

Vapourtec社と METTLER TOLEDO社の間で、共同開発を進めており、現在Vapourtec社製 R-Series™ とMETTLER TOLEDO社製 FlowIR™ の両機器を統合して使用することができます。FlowIR™ で測定したトレンドデータ上にVapourtec社製Flow Commander™ のソフトウェアからのデータを統合して、反応の状態および濃度変化を同時に表示でき、ユーザーは、一つのトレンド画面で化学反応のトレンドと合わせて確認できます。また、FlowIR™は反応生成物に由来する吸収ピークも同時に測定可能で、これらの値を用いて自動的に反応を最適化することができます。

このホワイトペーパーでは、FlowIR™ を使用してインラインで反応を最適化した実験例を2つ紹介します。今回選択した実験例はオフラインで通常用いられている分析手法では難しいとされるものを選びました。ご紹介する、測定結果はVapourtec社製 Flow Commander™のソフトウェアで取得したデータを、FlowIR™ のソフトウェアに転送し、FlowIR™で測定される反応モニタリングのデータと統合して表示しています。

このカタログについて

ドキュメント名 連続プロセスの開発およびコントロールの改善
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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連続プロセスの開発および コントロールの改善 使用機器 Vapourtec社製 R-Series™、 METTLER TOLEDO社製 FlowIR™ 連続フロー反応の 迅速な分析および最適化 Jon G. Goode, METTLER TOLEDO; Andrew Mansfield, Flow Chemistry Solutions; and Chris Butters, Vapourtec Ltd フローケミストリーの発展によ フローケミストリーは、反応を理 の状態および濃度変化を同時に り今まで困難であったプロセス 想的な条件で実行できる新たな 表示でき、ユーザーは、一つのト 条件(温度、圧力など)が適応で 合成技術です。たとえば、ソフト レンド画面で化学反応のトレン き、合成化学者が対応可能な化学 ウェアで制御可能なVapourtec社製 ドと合わせて確認できます。ま 反応の適応範囲が大幅に拡大し Flow Commander™を連続フロー、 た、FlowIR™は反応生成物に由来 ました。このことは、ここ数年間 非連続フローに関わらず動作さ する吸収ピークも同時に測定可 に出されているフローケミストリ せながら、反応に関連する重要な 能で、これらの値を用いて自動的 ーに関する論文の量が劇的に増 データを FlowIR™で測定すること に反応を最適化することができ えていることからも伺えまが、適 ができます。さらに、FlowIR™ 以 ます。 切なインライン分析技術がこの 外に、オフラインでのサンプル分 現状に追い付いていませんでし 析が必要無い場合、フロー反応の こ の ホ ワ イト ペ ー パ ーで は 、 た。FlowIR™ を用いることで、反 最適化に必要な時間を劇的に短 FlowIR™ を使用してインラインで反 応機構の解析や反応条件の最適 縮することができます。 応を最適化した実験例を2つ紹介 化を迅速に行う事ができます。 します。今回選択した実験例はオ Vapourtec社と METTLER TOLEDO社 フラインで通常用いられている分 通常、連続フロー反応の最適化 の間で、共同開発を進めており、 析手法では難しいとされるものを には、最適な条件が得られるまで 現在Vapourtec社製 R-Series™ と 選びました。ご紹介する、測定結果 に、膨大な量の繰り返し実験が必 METTLER TOLEDO社製 FlowIR™ の はVapourtec社製 Flow Commander™ 要なことがありました。全て自動 両機器を統合して使用することが のソフトウェアで取得したデータ 化した連続フロー制御機構を構 できます。FlowIR™ で測定したト を、FlowIR™ のソフトウェアに転送 築することで、反応の最適化に費 レンドデータ上にVapour tec社製 し、FlowIR™で測定される反応モ やす時間と、繰り返し実験の回数 Flow Commander™ のソフトウェア ニタリングのデータと統合して表 を削減できます。 からのデータを統合して、反応 示しています。
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Doebner法を用いた Knoevenagel 縮合反応 OH O O O HO O + Pyridine OH [A] [B] まずご紹介する反応は、フローリアクターで実行する事に適した反応で す。ベンズアルデヒド(A) にマロン酸(B)を添加する反応ですが、通常のリ アクターを用いたバッチでの反応の場合、スケールによっては添加を少 量ずつ階段状に添加する必要があります。通常のリアクターの場合、リ アクター内温度が70°C まで徐々に上昇し、二酸化炭素が同時に発生し、 反応終了までに6時間から9時間が必要になります。この反応をフローケ ミストリーで行なう利点は、スケールアップが簡単に行える事と、ガス発 生を制御可能であることです。 また、LCを用いた分析が難しいた Pyridine Benzaldehyde 0-5M in Pyridine Trans Cinnamic Acid 0-25M in Pyridine v2 Malonic Acid 1M in Pyridine め、FTIR分光器を用いた測定が特 に適しています。 反応終了後に溶 液からピリジンを分離するには数 2.0 Trans Cinnamic Acid -1 段階の作業が必要になります。今 (772cm ) 回ご紹介する2つの反応の最適化 Malonic Acid として、反応温度の最適化、滞留 1.5 (1729cm-1) Benzaldehyde 時間の最適化、および最適な反 (828cm-1) 応濃度を得ることです。 1.0 測定手順 まず、反応を開始する前に今回 0.5 反応で得られる生成物のIRピー クを 確 認 する 作 業 を行な いま した。この 作 業により、反 応中 0.0 に目的とする生成物のIRピーク を特定しやすくなります。次に、 1800 1700 1600 1500 1400 1300 1200 1100 1000 900 800 700 使 用する試 薬や 溶 媒 の I Rピー Wavenumber (cm-1) クも同時に測定し、より反応を 理解しやすくします。この操作は多くのIR測定で行なわれています。 図1 のDoebner法を用いたKnoevenagel この操作を行うために、FlowIR™のサンプルヘッドにサンプルを注入 縮合反応に用いられる各化合物のスペ しIRピークの測定を行いました。(この際、反応に用いるサンプル濃 クトルを重ね書きしました。 今回使用 度と同じ濃度で測定を行いました。)測定の結果を図1に示します。 される3種類の化合物にそれぞれ特異的なピークがある事が分かります。 iC IR™ アプリケーションソフトウェアのスペクトラムライブラリで各化合 物の特異的なIRピークを重ね書きして確認できます。 2 Peak Height (A.U.)
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今回使用するフローリアクターのセットアップを図2に示しました。R2 ポ ンプモジュールと R4 リアクターモジュールを組み合わせて使用します。 PFA製の5ml チューブリアクターを用い、100psi 背圧弁 (BPR) を反応装置の 出口側とコレクションバルブの間に設置して、バックプレッシャーをか けています。今回使用している機器はポンプから直接化合物を注入でき るようになっています。FlowIR™ は背圧弁とコレクションバルブの間に インラインで接続しています。試薬 A (ピリジン溶媒中のベンズアルデ ヒド1.0M ) 、試薬 B (1.0M マロン酸にピぺリジン(0.1eq)添加) を機器に接 続し、反応条件などの制御をFlow Commander™ ソフトウェアで行ないま した。反応条件を図3に示しました。滞留時間を10分間に固定し、反応 温度を4種類設定しました。 (80°C、100°C、120°C、150°C) 続いて滞留時 間を20分に変更し反応温度100°C、120°Cで制御します。最後に滞留時間 30分間で反応温度100°Cとしました。 図2 今回の使用機器。METTLER TOLEDO社製 FlowIR™、Vapourtec社製R2 ポンプモジュールお よび R4 リアクターモジュール。 図3 Flow Commander™ ソフトウェアの スクリーンショット。Doebner法を用いた Knoevenagel縮合反応の際の機器セット アップと反応条件の設定内容表示。 結果と考察 フローリアクターのサンプル出口でFTIRを測定し、その測定データは METTLER TOLEDO社製の iC IR™ アプリケーションソフトウェアを使用し て、15秒間隔でのリアルタイム測定を行いました。図1で確認した各化合 物のIRの特異的なピーク位置から、ピークの高さ(化合物濃度に依存)を 連続的にモニタリングしました。結果、ベンズアルデヒド、マロン酸、ト ランス桂皮酸の相対濃度の変化が図4で示すように、リアルタイムで自 動的に測定できます。測定したトレンドデータは、図5で示したように、 Flow Commander™に自動的にデータ転送され表示されます。 図4に反応のトレンドデータを示しました。反応温度の影響と滞留時 間の影響を容易に確認できるように簡素化した表示をしています。 始めの実験条件として滞留時間10分間、反応温度80°Cとしました。 トレンドグラフで表示した生成物のトレンド(ライトブルー)から、反応が 進んでいない事が確認できました。 3
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Benzaldehyde Malonic Acid Trans Cinnamic Acid 80°C 100°C 120°C 150°C 100°C 120°C 100°C 10min 10min 10min 10min 20min 20min 30min 0.15 0.13 0.10 0.08 0.05 0.03 0.0 00:20 00:40 01:00 01:20 01:40 02:00 02:20 02:40 03:00 03:20 03:40 04:00 04:20 04:40 Relative Time (hh:mm) 図4 図1で示した3つの化合物の特異的 なピークのピークハイトトレンドグラフ 表示。滞留時間の違いと、反応温度の 違いによる相対濃度変化トレンド。反応 のモル比は1対1.1(ベンズアルデヒド対 マロン酸)で固定。 まず、滞留時間を10分間に固定し、反応温度を徐々 に上げて行きました。生成物濃度は予想どおり上昇 しましたが、120°Cでは生成物の濃度が減少する事が 確認されました。次に、滞留時間を20分間に増やし て、反応温度を100°Cにしたところ、生成物の相対濃 度が再び上昇しました。 図5で示したように、Flow Commander™ ソフトウェア にI Rのトレンドデータを転 送する事の利点は、 FlowIR™で取得した分散状態の分析結果と、計算で 算出した分散状態を簡単に比較検討できる事です。 今回の反応条件では、非常に良い関連性が確認さ れましたが、複数ステップの反応の場合や、吸着カ ラムを使用した場合には、同じような結果を得るこ とができない事があります。今回の様な反応におい ては、 FlowIR™ で測定されるIRトレンドデータを利 用して、Vapourtec社製 Flow Commander™ ソフトウェア から、 HPLC分析用のサンプリングに最適な位置でト リガーをかけ自動的にサンプリングさせる事ができ ます。 図5 Vapourtec社製 Flow Commander™ ソフ トウェアに、計算から算出した分散状態と FlowIR™ で測定されるIRデータから、特定のピークの ともに、FlowIR™ からインポートしたトレン 高さ情報を単純にトレンドグラフとして表示していま ドデータを合わせて表示可能。 すが、特定の波長が吸収したIR強度が濃度に比例し ているため(ビアの法則で定義のとおり)、相対濃度 トレンドを得ることができます。また、このデータか ら定量分析を行なう事も可能で、複数点の既知の濃 度サンプルを用いて検量線モデルの作成を行なう事 で可能になります。ここでは5種類の標準液を用いて 3b. hydrated form of carbamazepine 検量線を作成しました。溶液濃度は実験中に得られ 4 Peak Height (A.U.)
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2.5 0.10 Actual: Trans Cinnamic Acid Trans Cinnamic Acid Regression Fit (772cm-1) 0.08 2.0 1.5 0.05 1.0 0.03 0.5 0.0 0.00 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 Wavenumber (cm-1) Trans Cinnamic Acid (M) 図6 5点の既知濃度サンプル (0.1-0.5M) を測定しました。また、それぞれのピー クハイトを得るために、2点間のベース る濃度を基準とし (0.1~0.5M)、FlowIR™センサ内にシ ラインポイント(781と 765cm-1)を採用 リンジを用いて直接注入し、スペクトラムを測定しま し、772cm-1 のピークハイトを測定して した。検量線モデル作成ソフトウェアiC Quant™ を使 算出したトランス桂皮酸濃度比較 用して簡単な検量線モデルを作成しましたが、図6の ように、既知のトランス桂皮酸濃度変化と 772cm-1 の ピークハイトの間で優れた関連性を得ることができ ました。次に、作成した検量線モデルを使用して、図 7のように、行なった操作それぞれのトランス桂皮酸 濃度変化を予測しました。 Trans Cinnamic Acid 今回行なった、滞留時間の最適化と反応温度の最 適化の情報を元に、さらに反応条件を最適化して 80°C 100°C 120°C 150°C 100°C 120°C 100°C いきます。その前に、これまでに得られた条件から、 10min 10min 10min 10min 20min 20min 30min 基本的な反応条件を決めました。3番目の反応条件 0.40 として使用試薬のモル比の変化による影響を確か め最適化を行いました。使用機器と使用する試薬 0.35 などは全て同じとし、滞留時間を20分間、反応温度 に100°Cを採用しモル比を4種類変更して、最適なモ 0.30 ル比を求めていきます。また、この検討は定常状態 で行ないました。図8に、モル比をそれぞれ変えて測 0.25 定した、相対濃度変化のトレンドデータを示しまし 0.20 た。 生成物であるトランス桂皮酸の相対濃度が、マ ロン酸を1当量から1.2当量に変更するだけでトランス 0.15 桂皮酸の相対濃度が約4%も改善されました。さら に、当量を増やしても、相対濃度はそれ以上改善さ 0.10 れることはなく、実際にその他の条件でも、相対濃 00:00 00:30 01:00 01:30 02:00 02:30 03:00 03:30 04:00 04:30 度が減少する結果となっています。残念ながら、相対 Relative Time (hh:mm) 濃度減少の原因は特定できていません。副生物や不 純物の有無などを FlowIR™で検出できなかったため 図7 縦軸を濃度とし、7種類の反応条 です。しかし、生成物だけではなく、反応液中の複数 件それぞれのトランス桂皮酸濃度変化 の化合物を同時に測定できる点も有用で、マロン酸 予測 の相対濃度が上昇すると事前に設定していた流速が 変化してしまう事も確認できました。 5 Peak Height (A.U.) [M] Peak at 772cm-1
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連続フローシステムで 最 適化操 作を行なうには フローが安定してから行なう必要があると言われて います。また、今回測定したIRデータからもこの事が Benzaldehyde Malonic Acid Trans Cinnamic Acid 明らかに分かります。ベンズアルデヒドの相対濃度 1:1 1:1.2 1:1.5 1:2 1:2 変化を示したトレンドを見ると、フローの最初と最後 100°C 100°C 100°C 100°C 100°C 20min 20min 20min 20min 20min の安定化が難しい領域では、安定化した状態よりも ベンズアルデヒドの相対濃度が高くなると言う現象 0.100 が現れます。この原因として、本体にプラグを接続し 0.090 た箇所で使用している溶媒の影響で希釈され、反応 0.080 の最初と最後での安定化が難しくなっているからで 0.070 す。その結果、今回の反応試薬が低濃度になり反応 0.060 率が低下し、ベンズアルデヒドのトレンドが上下する 0.050 現象が現れました。この効果は分散が大きいほど顕 0.040 著となり、この効果自体は問題ではないものの、滞 0.030 留時間が分散により長引くことになり、オフライン分 0.020 析が必要になった際に、どのタイミングで分析用の 0.010 サンプリングを行なったら良いのか具体的に確認す 0.000 る必要があります。 -0.010 03:00 04:00 05:00 06:00 この反応では二酸化炭素のガスが発生しますが、こ Relative Time (hh:mm) のガスがリアクターからFlowIR™の検出器に流れ込 む事が確認できます(図9)。ですが今回は、このガ 図8 図1で示した3つの化合物のピーク スの影響を受ける事無く連続的にデータを測定する ハイトのトレンドを表示。反応温度を 事ができました。これは ATR センサは液相のみから 100°C、滞留時間を20分間とし、試薬の データを測定したためで、ATR センサはその表面から 当量をそれぞれ変化させ、合わせて生成 物のピークハイトトレンドで相対濃度変 1~2ミクロンの距離にあるIR吸収を測定しているか 化を表示。 らです。 図9 二酸化炭素ガス(マーク部分) が FlowIR™のセンサ部分に流れこむ事が 確認できます。しかし今回の測定では このガスの影響を受ける事無く測定す ることができました。 6 Peak Height (A.U.)
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置換インダゾール のワンステップ合成 Rob C. Wheeler*, Emma Baxter, Ian B. Campbell, and Simon J. F. Macdonald GlaxoSmithKline, Gunnels Wood Research Centre, Gunnels Wood Road, Stevenage, Hertfordshire SG1 2NY, U.K. Org. Process Res.Dev., 2011, 15 (3), pp 565–569.DOI: 10.1021/op100288t O O NH OH OHO 2N N+ N + N+ N + OH HO +H2N NH N + O N + O N N HO NH2 N OF F CH3 Intermediate - hydrazone Minor prod - azine ここでご紹介する反応は、 Wheeler 氏のグループが発表したもので、ベン ズアルデヒドから置換インダゾールの形成を行なった際の反応です。合 わせてシステムの有用性と測定の可能性をご紹介しています。反応条件 として、ヒドラジン存在下での反応が通常行なわれており、バッチでの 反応には長い反応時間 (3~36時間) を要しています。この反応を、フロ ーケミストリーで行なう事は非常に有用です。緩やかな反応条件下にお いては数個の中間体を経て反応が進行して行きますが、これらの中間 体はそれぞれ特異的なIR吸収ピークを有しており、中間体の測定及び、 反応の最適化にうIR測定を用いてモニタリングする事が可能です。彼ら は、今回の反応に用いる溶媒として複数の溶媒を試しましたが、今回の 反応にはDMAが最適な溶媒であると決定しました。また、反応温度を 150°Cとした際に、滞留時間を15分以下に設定しても反応の最適化にほ とんど効果がないことも確認しています。さらに、論文で示された結果 から、反応の最適化を行なえるように、化合物および中間体をFlowIR™ で測定できるように設定しました。 反応条件 まず、今回使用する各試薬と生成物のIRピークを確認し、各化合物の 特異的なIRピークの位置を確認しました。次に機器の構成は、先に行 なった反応例と同様で、背圧弁(BPR)を250psiに変更する事と、高温で の反応が行なえるように、接続チューブの材質をステンレス製に変更 し、容量を10mLに変更しました。同様にポンプを含んだ構成なので、試 薬はこのポンプを通して直接注入することができます。使用試薬は、 DMA溶媒中の0.25M 2-フロロ-5-ニトロベンズアルデヒドと、DMA溶媒中の 0.25M メチルヒドラジンと DIPEA (1.05eq)で、これらの試薬の流量制御には Flow Commander™ ソフトウェアを用いて制御しました。制御内容はまず滞 留時間15分間に固定し温度を4種類振りました (25°C、50°C、100°C、150°C)。 またその際の注入する比率は1対1としました。その後比率を変更し、1対 1.2の条件下で反応温度を100°Cと150°Cとして制御を行ないました。 7
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結果と考察 フローリアクターの出口で測定した IRスペクトルは30秒間隔で測 定し、インダゾール、アジン、中間体の持つ特定の吸収ピークから相対 濃度トレンドを測定しiC IR™ソフトウェアで表示した結果が図10です。 また、先の測定例と同様に、ここで得られた相対濃度トレンドグラフを Flow Commander™ソフトウェアにリアルタイムでエクスポートし同時に表 示しています。最初の実験条件として行なった、滞留時間15分間、反応 温度25°Cでは、中間体の吸収ピークが測定されていますが、生成物のイ ンドゾールのピークが非常に少量しか現れていないことが分かります。 しかし、反応物であるベンズアルデヒドの特異的なIRピークは確認で きず、ベンズアルデヒドから中間体への反応は、反応温度が今回のよう に低い場合でも、かなり高速に進んでいる事がここから分かります。さ らに、反応温度を50°C、100°C、150°Cへと上げていくと、反応中間体を経 て、生成物であるインダゾールの生成量も順番に上がっている事が分 かります。この反応例で興味深いことは、今回の目的物では無いアジン 化合物の相対濃度が反応条件を変えてもほとんど一定で有るが、目的 生成物のインダゾール相対濃度が反応条件に応じて変化している事で す。ヒドラジンの注入量を1当量から1.2当量に増やすと、インダゾール量 が4%増える事がわかりました(相対濃度変化から)。 今回の測定結果をより判りやすく表示するために、図11に滞留時間を15 分間、当量比を1対1で固定し、各反応温度を横軸に、縦軸に3つの化合 物の相対濃度変化を表しました。図10に示した相対濃度変化のトレン ドデータおよび図11のプロットデータから、反応の最適化には150°C以 上に反応温度を上げた際のデータを取得する必要がある事が分かりま した。 Azine at 820cm-1 Indazol at 787cm-1 Intermediate at 1246cm-1 1:1 1:1 1:1 1:1.2 1:1 1:1.2 1:1.2 25°C 50°C 100°C 100°C 150°C 150°C 150°C 15min 15min 15min 15min 15min 15min 15min 0.0045 0.0040 0.0035 0.0030 0.0025 0.0020 0.0015 0.0010 0.0005 0.0 00:00 00:15 00:30 00:45 01:00 01:15 01:30 01:45 02:00 02:15 02:30 2:45 03:00 03:15 Relative Time (hh:mm) 図10 各化合物のピークハイトを分析し 反応温度と当量の比を変化させた際の 相対濃度変化を示しています。 8 Peak Height (A.U.)
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ここまでの反応条件最適化試験 の結果から、最適と思われる反応 Azine at 820cm-1 Indazol at 787cm-1 Intermediate at 1246cm-1 条件として反応温度は150°C、注 入する試薬の比率は1対1.2である 0.0050 事を得ました。さらに追加の検討 0.0045 として、滞留時間を変化させる事 と、反応温度を200°Cまで上げた 0.0040 際の挙動を得ることで、さらに最 0.0035 適な条件を得ることにしました。 0.0030 この際機器の構成や、使用する試 薬などは一切変更していません。 0.0025 0.0020 図12は、滞留時間と反応温度を それぞれ変更した際に得られた 0.0015 相対濃度変化のトレンドデータで 0.0010 す。ここで、まず始めに滞留時間 0.0005 を5分間に減らし、さらに反応温度 を200°Cまで昇温した際のデータ 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 が示されています。ここでの相対 Temperature (ºC) 濃度変化測定の結果、目的生成 物のインダゾールの相対濃度は反 図11 滞留時間を15分間、注入当量比を 応条件変更が逆効果に働き減少 1対1で固定し、各反応温度を横軸に、縦 している事が分かります。次に、 軸に3つの化合物の相対濃度変化で示 反応温度を150°Cに戻し、滞留時 しました。 間を30分間に変更したデータを示 しています。それでもインダゾール の反応率は最適化されませんでし た。さらに、反応条件の変更によ って分かった事はアジンの相対濃 Azine at 820cm-1 Indazol at 787cm-1 Intermediate at 1246cm-1 度が上昇した事が分かりました。 今回の最適化操作で、滞留時間を 1:1.2 1:1.2 1:1.2 1:1.2150°C 150°C 200°C 200°C 15分間とし、反応温度を200°Cに上 5min 30min 15min 5min げることで、インダゾールの相対 0.0050 濃度を約6%改善できる事が分か 0.0045 りました。 0.0040 0.0035 0.0030 0.0025 0.0020 0.0015 0.0010 0.0005 0.0 00:00 00:10 00:20 00:30 00:40 00:50 01:00 01:10 01:20 01:30 01:40 01:50 Relative Time 図12 化合物のピークハイトトレンドを 表示しています。その際の反応条件と して、滞留時間と反応温度を変化させ 相対濃度変化トレンドとして表してい ます。 9 Peak Height (A.U.) Peak Height (A.U.)
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結果 今回の検討では、FlowIR™とVapourtec社のシステムを同時に使用し測定 データを統合できる事を示しました。この結果プロセスを自動化する事 や、データをin situ分析できることが可能で、測定の無人化や最適化の 為に費やす時間を大幅に削減する事ができます。今回紹介した2つの最 適化例は、通常用いられているオフライン分析法での分析が適さない 場合に、インライン分析ツールとしてFlowIR™を用いる事に価値がある だけで無く、オフライン分析によるタイムラグが無く、リアルタイムで最 適化が行なわれ、それが正しく行なわれているかどうかをトレンドデータ として表示し確認しています。 今後フローケミストリーがより高度化され、マルチステップの反応条件が 求められる事や、フローケミストリーで合成した生成物を元にさらに合 成を行なう場合、これらの測定技術や反応を制御する技術がより重要 になってきます。 例えば、反応による不純物の分析が必要になった場 合、正しいタイミングでサンプリングを行なう必要出てきますが、 FlowIR™ を用いると、そのタイミングを非常に簡単に得ることができま す。反対に、今回ご紹介したようなin situ分析システムを使用せずにこの 分析を行うことは非常に困難です。 適応可能な機器: Vapourtec社製 R-Series™ および METTLER TOLEDO社製 FlowIR™ Vapourtec社製 R-Series™ フローシステムはモジュール型のシステムで様々 な反応条件に対応可能で、研究者が求めるフローケミストリーへの 条件を満たします。機器はオートサンプラーを取り付けることや手 動でのオフライン測定用のサンプリングに対応可能で、様々なアプ リケーションに対応することや反応の最適化作業に非常に有用で す。Flow Commander™ コントロールソフトウェアを用いるとVapourtec社製 R-Series™ や付属の機器を完全に自動化して制御可能です。通常わずら わしい機器のセットアップや、設定に必要な計算手順を自動化すること が可能なFlow Commander™を搭載し、さらに複雑で高い再現性を持つ実 験が可能です。主な特長として、軸方向分散のモデリングを反応装置ネ ットワーク全体で行い、設定条件を図形で表示することやレポート作 成、データの履歴解析と保存、検出、オートサンプラーおよびオフライン Vapourtec社製 R-Series™ 分析用のサンプリングや繰り返しタスク実行及び最適化実験を無人で 行う事が可能です。 FlowIR™ は連続フローケミストリー用に設計されたin situ FTIR システム であり、化学者に連続フローシステムのリアルタイム測定を可能にし、化 合物の官能基からの情報を得ることで、幅広いアプリケーションに柔軟 に対応します。また、設置面積が小さく (クナウアーマイクロHPLCポンプ と同じくらい)、設置に制限があるような場所でも問題なく設置可能で、 場所を選びません。さらに、用意されたFlowIR™用センサ (ダイアモンド およびシリコン)は、使用する対象に合わせセンサタイプを簡単に交換 可能で、幅広いアプリケーションニーズに対応できます。サンプリングヘ ッドの容量を50µlまたは10µlから選択可能で、マイクロおよびメソフロー システムに対応可能です。また、本体内部の検出器に液体窒素を充填す る必要がなく、機器を窒素ガスでパージする必要もありません。従来型 のReactIR™ 機器と同レベルの性能を維持しながら、合成化学者にとっ FlowIR™ てより使いやすいシステムとなっています。さらに、直感的に操作できる iC IR™ソフトウェアにより機器の調整や分析を速く、簡単に行なう事が 可能です。 For more information: www.mt.com 製品の仕様は予告なく変更することがありますので、あらかじめご了承くださ い。 ©05/2012 Mettler-Toledo AutoChem, Inc. メトラー・トレド株式会社 オートケム事業部 TEL: 03-5815-5515 FAX: 03-5815-5525