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発熱を伴うグリニャール反応、およびスケールアップを制御するための4つのステップ

ホワイトペーパー

グリニャール反応のスケールアップ

発熱反応は、特にスケールアップ時にリスクを伴います。化学/製薬業界のトップ企業が報告した研究内容から、次の4つの主要なステップによって、ベンチスケールから実機製造まで、発熱を伴うグリニャール反応を安全にスケールアップできることがわかりました。

このホワイトペーパーでは、バッチ反応と連続フロー反応、双方の収率を上げながら、強い発熱を伴うグリニャール反応のリスクを回避する方法を紹介します。前述のステップをリアルタイムの解析法とあわせて適用することにより、収率の高い安全なプロセスが開発され、スケールアップも成功しました。
1.反応開始の遅延を検出する
2.反応速度低下時のハロゲン化アルキルの蓄積を回避する
3.正しい反応終点を確認する
4.グリニャール反応を連続フロー反応で実施し、反応解析を行う

このカタログについて

ドキュメント名 発熱を伴うグリニャール反応、およびスケールアップを制御するための4つのステップ
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 1.3Mb
取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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発熱を伴うグリニャール試薬調整反応 制御・スケールアップのための4つのステップ 著者:Brian Wittkamp、 Paul Schol(l メトラー・トレド) 発熱を伴う反応は、特にスケールアップ時にリスクが高まります。リスクとしては圧力超過、内 容物の噴出、爆発などの安全面だけでなく、急激な温度上昇に起因する化合物の収率および 純度の低下も含まれます。中でも有機ハロゲン化物とマグネシウムによるグリニャール試薬 の調整は、そのようなリスクのある合成工程の例としてよく知られています。グリニャール試 薬の安全上の問題点は、有機ハロゲン化物の蓄積であり、それを検知せずに放置すると、暴 走反応につながる可能性があります。 グリニャール試薬の調整は昇温下で行われ、水分に敏感な上、危険な有機ハロゲン化物の 濃度を連続的に監視する必要があるため、オフライン分析での反応追跡は困難です。大手化 学会社や製薬会社から投稿された論文においては、発熱するグリニャール試薬の調整をラ ボスケールから製造へと安全にスケールアップするための方策として、以下の 4ステップが 示されています。それぞれ in situリアルタイム FTIR ReactIRによる反応モニタリングを利用 したものであり、(1)反応開始を検出( 2)反応停滞時における有機ハロゲン化物蓄積の回避 (3)最適な反応終点の確認、の三つがまず挙げられます。これらのステップをリアルタイム 分析法で実現することにより、収率が高くより安全なプロセスを構築しスケールアップしてい ます。 そして発熱反応のリスクを減らすための代替え案として登場したのが第4のステップ、反応 分析制御を用いた連続フロー反応の適用です。時間当たりに処理される反応物の量が少な いフロー反応は、従来のバッチ反応に比べ、安全性においてずばぬけたメリットを有してい ます。とはいえ連続フロー反応のグリニャール試薬調整を検討する時、反応転化率と副生成 物の生成を制御するために試薬の流速の最適化が必要となります。この技術資料では、大き な発熱を伴うグリニャール試薬調整のリスクをどのように克服し同時に収率を向上したかを 示す研究例を、バッチ式および連続フロー式の両面からご紹介します。 White Paper
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もくじ 1. はじめに 2. in situ FTIRと反応熱量測定による安全なスケールアップ 3. in situ FTIRモニタリングによるアリールマグネシウム試薬の連続フロー合成 4. まとめ 5. 装置概要 6. 参考文献 1 はじめに プローブタイプのプロセス分析技術(PAT:Process Analytical Technologies)は、主要な品質特性を左右する重要性の高い 工程内データを、リアルタイムに測定するために用いられます。プラント用 PAT装置がプロセスのモニターと制御を可能と するのに対し、ラボ用 PAT装置はプロセス設計や反応条件最適化をするために使用されます。特に in situ型の分光光度計 による化学反応解析では、反応中の原料、中間体、生成物などのリアルタイム測定が行われています。反応の開始・進行・転 化・中間体の生成、そして終点を逐次測定することで、プロセス設計・安全性・品質を最適化できます。in situ型の反応解析 から得られる豊富な工程内データが、バッチ式または連続式フロー反応の開発を支え、スケールアップに役立っています。 現在利用可能な in situ型の分光光度計には、ラマン・近赤外(NIR)・中赤外(Mid-IR)・UV-VISがあります。 グリニャール反応は増炭反応として炭素 - 炭素結合の形成を目的に産業界で広く使われています。グリニャール 試薬調整のリアルタイム測定に適した PAT装置としては、以下の要件を満たさなければなりません。 • 固体マグネシウム片から影響を受けない • 溶液中の水分を検出できる • 還流条件下で正常に動作する • すべての重要な化学種を感度良く検出できる これら要件を満たし、選択性と感度に優れているのは、全反射測定(ATR)センサーを装備した in situ FTIRと言え ます(詳しくは5.装置概要を参照)。 この技術資料では、発熱するグリニャール試薬の調整を安全にスケールアップするために in situ FTIRを利用し た研究、次にグリニャール試薬の調整を連続フロー反応で行い、in situ FTIRで最適化した研究をご紹介します。 本技術資料は、詳細な研究内容を説明するものではありませんので、詳しい内容がお知りになりたい場合は元の 論文を参照されることをお勧めいたします。 2 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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もくじ 2 in situ FTIRと反応熱量測定による安全なスケールアップ 1. はじめに 2. in situ FTIRと反応熱量測定による安全なスケールアップ 事例1 Am Ende, D. J., Clifford, P. J., DeAntonis, D. M., SantaMaria, C. and Brenek, S. J. Preparation of Grignard 3. in situ FTIRモニタリングによるアリールマグネシウム試薬の連続フロー合成 Reagents. Org. Process Res. Dev. 3, 319–329 (1999). 4. まとめ グリニャール試薬調整の初期段階を in situでモニタリングし、その後のバッチ反応も測定した事例をご紹介 5. 装置概要 します。Am EndeらによるDroloxifeneと呼ばれる骨粗鬆症用の原薬製造における、商業規模で行われているグリ 6. 参考文献 ニャール試薬調整反応の報告です。ポイントはグリニャール試薬調整に関わる安全上の課題に対処することに置か れています。グリニャール試薬の調整反応では、有機ハロゲン化物添加中の不純物が反応を停滞させることがありま す。また反応が再開した段階で、停滞中に蓄積した有機ハロゲン化物により暴走反応が起こる可能性があるという 報告があります3。よって著者らは in situで反応をリアルタイム追跡し、有機ハロゲン化物の蓄積が無いことを確認 することで安全性の問題を軽減し、容易かつ安全にグリニャール試薬を合成する方法を示しました。 グリニャール反応は通常、マグネシウムとTHFを入れた反応器に、有機ハロゲン化物(R-X)を全量のうち10%以下の 量添加し、還流下で昇温の上、反応の開始を待ち(発熱による温度上昇で反応開始を検出)、残りの有機ハロゲン化 物を追加するという方法で行われます。しかし大スケールの還流下では発熱を検出することが困難なケースがありま す。よって著者らは反応開始とその後の進行を in situ FTIR(ReactIRTM)でリアルタイム測定することとし、有機ハロ ゲン化物とグリニャール試薬の生成を監視しました。 Br MgBr THF + Mg スキーム1に、この反応の第一ス O O O O テップを示しました。図1に溶媒と ハロゲン化アリールおよびグリニャ ール試薬を測定した in situ FTIRス THP-エーテル グリニャール試薬 ペクトルを示しました。各化合物に 1 2 とってユニークな、ピークを確認しま した。 スキーム1 Droloxifene合成の第一ステップ 図 2に各ピークの時間変化を反応リ 1069 cm-1 O Br アクター内部重量の時間変化と共に C - O 示しました。反応が始まりグリニャ 0.12 O O ール試薬(1556 cm-1)が生成し始 913 cm-1 めたのは、0.24時間後であること C = C がはっきりわかります。 1475 cm-10.08 R-X(1590 cm-1)の時間変化は、 1590 cm-1 0時間での5wt%のハロゲン化ア リールの添加に対応して上昇して 0.04 います。 0.00 1600 1400 1200 1000 800 Wavenumber (cm-1) R-X, THF 図1 R-X(THP-エーテル)および THFの IRスペクトル。R-Xの芳香環は1590 cm-1と1475 cm-1 にC= C伸縮の特徴的なピークを持つ。 THFは1069 cm-1と913 cm-1に、それぞれ非対称およ び対称の CO伸縮振動を持つ。R-Xスペクトルは THFのスペクトルと比較のためオートスケール されている。 White Paper 3 METTLER TOLEDO Absorbance
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0.32 0.04 R-X 5wt %添加 反応開始 0.31 0.03 0.30 蓄積 0.02 0.29 0.01 0.28 0.00 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 Time (hr) 反応リアクター内部重量変化(Kg) R-X (1590 cm-1), R-Mg-X (1556 cm-1) 図2 反応の初期段階の IRモニタリング結果。左軸は反応リアクターへの添加にともなう内部重量変化。R-X溶液(5wt%)を3分間で添加して おり、その後 IRで蓄積と反応の開始が観測された。右軸は IRの吸光度である。 次に著者らは反応熱量計 RC1による反応熱データと比較しました。図 3にハロゲン化アリールを 5wt% 添加する初期段階の発熱データを示しました。この時点で二回の発熱が見られます(0hと0.25hにあるス パイク状の二本の短いピーク)。IRデータと照らし合わせると(図4)、最初の発熱ピークは反応の開始では なくR-X添加による発熱であり、二回目の発熱が反応開始によるものであることがわかります。すなわち発 熱のみ測定しても、この反応を監視しスケールアップすることは難しいと考えられます。 これを踏まえ著者らは in situ IRモニタリングを採用し、このプロセスの監視・制御を行うこととしました。 図 4の後半は残りのハロゲン化アリール試薬を滴下し、グリニャール試薬を合成する段階での FTIRによ る反応追跡結果です。反応が着実に進行していることが確認できるとともに、ハロゲン化アリールの蓄積 量を監視できることがわかります。 残りのR-X滴下開始 100 100 0.8 0.8 80 80 60 0.6 60 0.6 40 40 0.4 0.4 20 20 0 0.2 0 0.2 0 1 2 3 0 1 2 3 時間 (hr) 時間 (hr) 反応リアクター内部重量変化(kg), 温度, ヒートフロー ヒートフロー R-X (1590 cm-1), R-Mg-X (1556 cm-1) 図3 グリニャール試薬調整に伴う発熱(ヒートフロー:オレンジ)と、ハロゲン 図4 グリニャール試薬調整に伴う発熱(ヒートフロー:オレンジ)にIRデータ 化アリール添加に伴う反応リアクター内部重量の時間変化。左軸はヒートフロー R-Mg-X(水色) R-X(緑)加えた。左軸はヒートフロー(W)、右軸はIR吸光度。 (W)、右軸は重量変化(kg)。 4 White Paper METTLER TOLEDO ヒートフロー(W); 温度 (℃) White Paper 反応リアクター内部重量変化(Kg) 反応リアクター内部重量変化(kg) ヒートフロー(W) Absorbance Absorbance
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また、著者らは ReactIRの付加用 途に気づきました。グリニャール 試薬調整反応は溶媒中に含まれ 0.03 る水分によって影響されます。 ほんのわずかな水分でも反応開 始に劇的に影響し、反応が完全 0.02 に阻害されたり、途中で停滞する こともあります。製造工程から混 入する水分量はばらつく可能性 0.01 があり、著者らは工程を守るため の手法を構築しました。使用する 0.00 溶媒(THF)中の水分量を試料採 取の上、カールフィッシャー滴定 法でオフライン分析するのでは 3800 3600 3400 3200 なく、ReactIRによって確認するこ Wavenumber (cm-1) とにしたのです(図5)。水分濃度 が既知の溶液を用いて IR吸光度 の単純なキャリブレーションモデ 2 % Water, 1 % Water, 0.5 % Water, 0.05 % Water, 0 % Water ルを作成することで、溶媒中の水 図5 IRによる THF中の水分濃度の測定。水のピークは波長1648cm-1および3500 cm-1で 分の存在を検知するだけでなく、 THFと区別できる。ベースライン一点からのピーク高さにより、直線の検量線が得られた。この 微量な水分の絶対濃度を測定す 方法で絶対誤差は 0.015%であった。 ることができました。図6では水 分量による反応開始時間への影 1500 響をまとめました。 著者らはグリニャール試薬調整のリ スク軽減を目的として、FTIR分光光 1000 度計を実験室とパイロットプラント に導入しました。in situリアルタイ ム モニタリングにより、反応開始の 確認、および反応停滞時の有機ハ 500 ロゲン化物蓄積の検知が担保され ました。このインライン法によるモ ニタリングにより、十分な感度が 得られ、かつオペレーターが危険な 0 サンプルに暴露されることを防ぎ、 0.03 0.10 0.12 0.15水分量(%) 反応が正しく進行していることを連 続的に検証することができます。 図6 溶媒中の水分量が及ぼす反応開始時間への影響 White Paper 5 METTLER TOLEDO 反応開始までに要する時間(分) Absorbance
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3 in situ FTIRモニタリングによるアリールマグネシウム試薬の連続 フロー合成 事例2 Broadmann, T., Koos, P., Metzger, A., Knochel, P. and Ley, S.V., Org. Process Res. Dev. 2012. グリニャール反応を連続フロー合成で行うことで、バッチ反応における安全上の問題を解決できるだけでなく、転化 率・収率・純度を短時間で最適化できる可能性が浮上しています。連続フロー反応は、プロセスの性能と製品の品質 が向上するよう試薬の添加速度・反応温度・圧力・滞留時間をリアルタイムに調整できます。Leyらは、グリニャール 試薬の連続フロー合成法に対する in situ FTIR(ReactIR)の適用について報告しました。連続フロー反応において従 来の滴定法や GC、NMRなどでグリニャール試薬の合成をモニタリングすることは容易ではありません。連続フ ロー反応用に設計された ReactIRでは、反応条件下で連続的にin situ測定できる点が、それら従来法にはない優位 点です。 また、連続式プロセスのスケールアップに際しては、in situ FTIRでフロー反応をモニタリングすることにより、プロセ スの異変を即座に検知できます。連続プロセスは理想的には定常状態のはずです。しかし異変があった時に(ポン プの不調や触媒の失活など)、FTIRでリアルタイムに変化を検知できれば、理想的な状態に戻すようパラメータの調 整が行えます。このようなフロー合成によるグリニャール試薬調整反応に対して、in situ FTIRを適用した論文は本論 文が初めてです。 本研究の焦点の一つは、m -methylphenylmagnesium I Mg 2.5 eq. chlorideの合成です。当初この反応はバッチ式で行われ MgCl.LiClLiCl 1.25 eq. ており、塩化リチウム存在下でm -ヨードトルエンとマグ THF (10 mL) ネシウム片を使用していました(スキーム2)。 5 mmol r.t., 1 h まず in situ分光光度計 ReactIRによりTHFとm -メチル フェニルマグネシウムクロリド溶液を測定しました スキーム2 アリールマグネシウムクロリドの合成 (図7)。1,043 cm-1と894 cm-1のピークはグリニャー ル試薬にある THFとマグネシウムの配位結合を示して います(スキーム3)。グリニャール試薬のスペクトルから O 単体の THFを差し引くと反応成分のピークが見やすくな ります(図7)。これはグリニャール溶液の絶対濃度を求 MgCl.LiCl める上で重要です。 スキーム3 アリールグリニャール - THF錯体 1.8 1.5 1.2 0.9 0.6 0.3 0.0 1602 1527 1453 1378 1304 1229 1155 1080 1006 931 857 782 708 Wavelength (cm-1) THF, ArMgX + THF, ArMgX(THFとの差分) 図7 THFおよびグリニャール試薬の IRスペクトル 6 White Paper METTLER TOLEDO White Paper ピーク高さ(A.U.)
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0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 -0.1 1199 1125 1032 939 846 752 659 Wavelength (cm-1) 0.5 M, 0.4 M, 0.3 M, 0.2 M, 0.1 M 図8 濃度の異なるグリニャール試薬の FTIRによるピーク強度。 ATRセンサーDiCompTM(ダイヤモンド製)に直接試料を接触させて測定。 全ての分光分析法と同様、中赤外分光分析も一次的な 0.5 分析法ではありません。つまり定量を行うにはその化合 物に対するキャリブレーションが必要です。この実験例 0.4 では、キャリブレーションを一度行えば、グリニャール溶 液の濃度をリアルタイムに測定することが可能となりま 0.3 した。m -メチルフェニルマグネシウムクロリド濃度の異 なる THF溶媒を調整し、それぞれの中赤外分光スペク 0.2 トルを採取しました(図8)。1043 cm-1と762 cm-1の 0.1 ピーク高さ(吸光度)を既知の濃度に対してプロットす ると、検量線はほぼ直線となりました(図9)。 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 この検量線を用いて、著者らはフロー反応における 濃度(mol/L) THF溶媒中反応性グリニャール試薬の濃度を求めま した。フロー反応器は特に、m -ヨードトルエンを対応す 762 cm-1, 1043 cm-1 る有機マグネシウム試薬に転化するために作成したも 図9 FTIRによるグリニャール試薬の検量線 のであり、in situ中赤外分光光度計で連続的に監視を 行いました(図10)。フロー反応器の構成ですが、ハロ ゲン化アリールと iPrMgCl・LiCl溶液の各1mlサンプ ルループを T字型ミキサーにつなぎ、その後に10mlの I 1 mL 0.2 mL/min 反応コイルを設置しています。各添加溶液の流速は Time 0.2ml /m inで、装置は室温で操作し、バックプレッ (0.7 M in THF) シャーを一定圧(75psi =約 5.17barr)に保ちました。 Mid-IR 75 PSI in situ FTIRセンサーは反応コイルの直後に設置し、排 iPrMgCl• LiCl 10 mL ReactIR (0.8 M in THF) r.t. DiComp 出液はアンモニアの飽和水溶液の入ったフラスコに導 0.2 mL/min 1 mL 入し、グリニャール試薬をクエンチ後、分析しました。 図10 フロー反応器の概略図 White Paper 7 METTLER TOLEDO ピーク高さ(A.U.) ピーク高さ(A.U.) Peak Height
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転化率を算出するため、また、より重 0.35 要な目的であるアリールグリニャー ル試薬濃度のリアルタイム測定の 0.30 ため、ピーク強度の時間変化をグラ フ化しました。ピークは、事前に検量 0.25 線を作成したピーク1043 cm-1と 762 cm-1です(図11)。このグラフと 0.20 検量線(図9)から、配管内を流れる アリールグリニャール試薬の濃度を 0.15 求めました。 図11において試料注入前後に低い 0.10 濃度の部分があるのは流路内にお ける混合液の拡散によるもので、小 0.00 スケールのフロー反応の特徴です。 30 35 40 45 50 55 60 65 複数のステップを踏む反応では、こ 時間 (min) れら濃度測定をフィードフォワード 制御のために利用可能、すなわちリ ピーク 767 cm-1, ピーク 1043 cm-1 アルタイムなグリニャール試薬濃度 の時間変化に基づいて、その後の反 図11 FTIRによるグリニャール試薬由来ピークのリアルタイム強度変化 応ステップにおける試薬の添加速 度を自動調整することができます。 0.4 図12は、バッチ反応で合成した 0.4Mの ArMgClと、フロー反応にお ける45min時点でのArMgClのスペ 0.3 クトルを比較したものです。 理論的にはどちらの合成法でも同じ 0.2 濃度を示します。今回のケースでは THF中のアリールグリニャールの濃 0.1 度が0.35Mとなるはずです。 今回、FTIRによるフロー反応の定量 結果は、0.33Mでありズレはあるも 0.0 のの良好な結果を示しました。この 良好な結果により、フロー反応器と -0.1 in situ FTIRを使用すれば、反応物の 1600 1400 1200 1000 800 濃度をリアルタイムに精度よく調整 Wavelength (cm-1) し、制御できることが示されました。 フロー反応(45分時点), バッチ反応(0.4 M ArMgX) 図12 0.4 M ArMgC(l バッチ式)と ArMgC(l フロー式)の FTIRスペクトル 8 White Paper METTLER TOLEDO White Paper ピーク高さ(A.U.) ピーク高さ(A.U.)
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0.30 0.26 0.22 0.18 0.14 0.10 0.06 0.02 -0.02 1500 1400 1300 1200 1100 1000 900 800 700 Wavelength (cm-1) 0.33 M iPrMgCl, iPrMgCl∙LiCl (0.4 M ArMgX) 図13 iPrMgClと iPrMgCl-LiCl錯体の FTIRスペクトル Leyらは別の実験でも in situ FTIRを使い、LiClの THF I Mg 2.5 eq. MgCl 溶液について特性評価を行いました。図13に、0.33M THF 1.0 eq. の iPrMgClと iPrMgCl-LiClの FTIRスペクトルを示しま Toluene した。LiClを導入すると、ピークの位置と強度が明らかに r.t., 2 h シフトしています。 特に1030cm-1と1045cm-1、882cm-1と890㎝-1に違 スキーム4 トルエン中(THFと同当量)でのグリニャール試薬の合成 いがあります。これはグリニャール種のMg原子に THF が配位結合していることを示しています。溶媒をトルエ ンに変更することで、THFが反応にどのように関わって いるかをより詳しく知ることができました(スキーム4)。 I Grignard MgX H Formation + + Leyらは研究対象をさらに複雑なフロー反応システムに 広げました。有機マグネシウム試薬を扱う中で、副生成 (プロトン化) (ホモカップリング) 物ができる可能性があります。in situ FTIRでそのような 副生成物を検出、評価し、それがプロトン化された物質 スキーム5 グリニャール試薬調整反応から生成する可能性のある物質 か、ウルツ反応によるホモカップリング体かを判別しま した。(スキーム5)。 White Paper 9 METTLER TOLEDO ピーク高さ(A.U.)
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著者らはまた、表1のように様々なヨウ素化アリールの LiCl媒介によるハロゲン/マグネシウム交換反応からグリ ニャール試薬を調整しました。また調整したグリニャール試薬とカルボニル化合物を反応させ多くの場合、バッ チ反応式よりもフロー反応で高い収率が得られることを示しています。 *シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー精製後の単離収率 表1 LiClによるハロゲン/マグネシウム交換反応によるグリニャール試薬調整とグリニャール反応のまとめ 10 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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4 まとめ 4 このま技術と資料めでは、グリニャール試薬調整の in situリアルタイムモニタリングおよび制御に焦点を当てました。二つの事例によりグリニャール試薬がフロー式でもバッチ式でも製造できることを示すとともに、反応種をリアルタイム こにのモホニワタイリントグペしー、発パ熱ー暴で走は反、応グにリつニなャがーる有ル機反ハ応ロのゲinン 化sit物uリのア蓄積ルやタ、イ副ム生モ成ニ物のタ生リ成ンをグ防おげよるびこ制とを御示にし焦ま点し をた当。iてn sまituし中た赤。外二分つ光の光事度例計にを使ようりこグとリにニよっャてー、反ル応試条薬件がをフリロアールタ式イでムもにバ変ッ更チで式きで、反も応製の造制で御きと最る適こ化とがを行示え すまとすと。同も装に置、は反実応験種室をにおリいアてルはタプイロムジにェクモトニのタ遂リ行ンをグ迅速し化、さ発せ熱、パ暴イ走ロ反ッ応トにプラつンなトがやる製有造機プラハンロトゲにンお化い物てはの、 蓄よ積りや効率、的副で生充成実物しのた生情成報をを提防供げするるここととでを、示非し常まに堅し牢たで。安In全 sなituプ 中ロ赤セス外の分維光持光に度貢計献をしま使すう。ことによって、 反応条件をリアルタイムに変更でき、反応の制御と最適化が行えます。同装置は実験室においてはプ 5 ロ装ジェ置ク概トの要遂行を迅速化させ、パイロットプラントや製造プラントにおいては、より効率的で充実 した情報を提供することで、非常に堅牢で安全なプロセスの維持に貢献します。 中赤外分光光度計(FTIR)と全反射(ATR)センサーには他の分析法(他の分光分析技術を含む)に比べ多くの利点が 5 あり装ます置。以概下の要ような利点を活用することにより、合成反応の研究開発において有用です。 中•赤 気外泡分や光固光形度物計のと影全響反を射受け(まAせTRん)のセでン、水サ素ー化に反は応他やの不分均析一法系の(反他応のに分最子適分で光す技術を含む)に比べ多く の•利 水点系がのあ反り応まにすも。適以用下できのまよすう(光な路利長点をを最活適用なす16るミこクとロンに(よ2ミりク、ロ化ン学×合8回成)と研す究るをこ高とで度、化水すのる大こきなと吸が収でが き ま す存在。しても反応物質の測定を阻害しません) • 反応器に直接差し込むことができ、in situ でリアルタイムな反応測定が行えます •• 気サ泡ンプやル固の形抜物出のが影不響要をで受、化け合ま物せをん反の応条で件、下水そ素化反応や不均一反応に最適です • 水系の反応にも適用できます(光路長を最適 のなま1ま6でミ測ク定ロでンきとますすることで、水の大きな吸収が反応物質の • 測非定破を壊分阻析害でしあまりせ、化ん学)反応の完全性を維持します • ランベルト・ベールの法則に即したデータですので、定性分析と定量分析が可能です。 • 反応器に直接差し込むことができ、in situ でリアルタイムな反応測定が行えます • サンプルの抜出が不要で、化合物を反応条件下そのままで測定できますReactIRは in situ測定法ですので、反応に関する瞬間的な情報を得ることができます。in situ測定は、特に不安定な •中間非体破が壊存分在析すでる場あ合り、、反化応学挙反動の応よのり完深全い性洞を察を維得持るしこまとすができる、きわめて有用で重要な特長です。 • ランベルト・ベールの法則に即したデータですので、定性分析と定量分析が可能です。 ReactIRは in situ 測定法ですので、反応に関する瞬間的な情報を得ることができます。In situ 測 定は、特に過渡的な反応種が関与する場合、反応挙動のより深い洞察を得ることができる、きわめて 有用で重要な特長です。 RReaeactcIRtIR 1 155 ReactIR 45m RReeaacctItRIR 4 455PP www.wmwt..cmotm.c/oRmea/RcetIaRctIR White Paper 11 METTLER TOLEDO White Paper 11 METTLER TOLEDO
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6 参考文献 1. Am Ende, D. J., Clifford, P. J., DeAntonis, D. M., SantaMaria, C. and Brenek, S. J. Preparation of Grignard Reagents. Org. Process Res. Dev. 3, 319–329 (1999). 2. Broadmann, T., Koos, P., Metzger, A., Knochel, P. and Ley, S.V., Org. Process Res. Dev. 2012. 3. Yue, Sharkey, Leung, Relief vent-sizing for a Grignard reaction, J. Loss PreV. Process Ind. 1994, 7, 413-418. 技術資料のご紹介:化学反応の in situモニタリング 合成反応の評価・最適化・スケールアップの効率を改善するリアルタイム反応解析 データは、研究開発において重要な役割を果たします。この技術資料では、in situ FTIRによって得られる反応情報の活用法についてご紹介します。 • 反応中に何が起きているかを知ることができます。 • 反応条件(温度、圧力、試薬添加スピード)を変更した際の、反応速度への影響を リアルタイムに可視化し、プロセス開発を迅速化します。 • 反応の情報を増やすことで、スケールアップと製造におけるプロセスの堅牢性を 向上します。 www.mt.com/ac-ra-wp www.mt.com/ReactIR For more information メトラー・トレド株式会社 オートケム事業部 TEL: 03-5815-5515 FAX: 03-5815-5525 製品の使用は予告なく変更することがありますので、あらかじめご了 承ください © 09/2016 Mettler-Toledo AutoChem, Inc Printed in JAPAN White Paper