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ファインケミカルの研究開発やスケールアップ検討における安全な無人試薬添加

ホワイトペーパー

自動試薬添加と大きな発熱を伴う反応の無人実行

化成品開発やスケールアップ検討において発熱を伴う反応は本質的に危険性が高いとみなされ、絶え間ない観察あるいは自動で安全な試薬添加制御が必要であるとされてきました。

このケーススタディでは、大手製薬会社であるGrünenthal社のプロセス研究開発部門が、どのようにしてスケールアップ検討を研究者による介入なしで安全に行い、人件費を増加せずに生産性を向上させたかについてご説明します。 現在、Grünenthal社のプロセス研究開発部門では、大容量のジャケット付きラボリアクタへのセミバッチ試薬添加を自動化し、大きな発熱を伴う反応を、安全性を損なわずに無人で行っています。

このカタログについて

ドキュメント名 ファインケミカルの研究開発やスケールアップ検討における安全な無人試薬添加
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 2.8Mb
取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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安全な無人試薬添加操作の確立 化合物の開発からスケールアップまで Based on work by Dr. Carsten Griebel, Labhead Chemical Development, Grunenthal ファインケミカルや製薬業界で扱う合成操作はほとんどが発熱を伴います。これら の反応は本質的に安全性に問題が有るか大きな発熱を伴う為100mlスケールで合成 を行い反応熱量測定による検討が行われます。また、研究者はセミバッチでの試薬 添加操作で未反応物の蓄積量を避けるように制御された操作を行う事でリスクを回 避します。次に、初めてスケールアップを行い大容量のジャケット式ガラスリアク タを使用する際に相対的な伝熱面積の減少に伴い冷却能力の制限に直面します。さ らに、計算を誤った試薬添加速度や冷却能力の見込み、そして機器の不良による冷 却不能状態も初めてのスケールアップ操作では発生しうります。このような場合研 究者が立会って監視を絶えず行うか、安全な自動試薬添加機構が必要になります。 ドイツのGrünenthal社のプロセスR&D部門では実験を研究者の監視を必要とせず に安全に行う事を重要と考え、また人件費を増やさずに生産性の向上も行っていま す。任意に設定できる制御装置(PLC)の使用は開発期間の短いプロジェクトでは実 用的ではなく、 Grünenthal社では他の方法で試薬添加操作を無人で安全に行う事 を模索しました。その結果、プラグアンドプレイ型のリアクタ制御システムRX-10 を解決方法としてプロセスR&D部門で採用しました。このRX-10は自動試薬添加操 作が可能で大きな発熱を伴う反応で有っても安全性を損なわずに無人化が可能で す。 図1. Grünenthalの研究室で研究者がRX-10のタッチスクリーンを用いて実験を制御 Case Study
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初めに 今回の技術資料ではRX-10がどのように無人で安 全な試薬添加操作を提供しているかを説明して います。 Grünenthal社はドイツのアーヘンに本社を構え る国際的な製薬会社で、疼痛治療で長い実績を もち患者へ最先端技術を提供する完全に統合さ れた研究開発を行っています。 また、 Grünenthal社の関連会社は32ヶ国に及 び、155ヶ国を超える国と地域で販売を行って おり、社員数はおよそ5,300人です。 原薬(API)の製造プロセス最適化にはスケールダ ウンして100mlスケールで最適化作業を行いま すが、その後のスケールアップや製造プロセス へ移行する際には新たなリスクや注意すべき問 図2. Grünenthal社の研究室内にある2Lガラスリアク 題が発生します。 タとIKA社製撹拌モーター 使用機器 データ処理 現状スケールアップには、ジャケット式の2Lリ プロセスに重要なパラメーターである試薬添加 アクタをJulabo社の循環恒温槽に接続し撹拌は した際に発生する未反応物の蓄積量を知る事は IKA社の撹拌モーターを用いて検討しています 反応を正しく理解するために重要です。この情 が、各機器はデータ通信などを行わず独立して 報により研究者は反応が予期せぬ状態になった 運転されています。これでは安全性を保つこと 際の対応を事前に行う事ができます。さらに、 ができず、例えば循環恒温槽が停止してしまっ 反応誘導期を無くす条件を模索する事で、ス た場合(冷却が行われない)でも試薬添加操作は独 ケールアップ後の危険性も回避する事ができま 立しており自動的に停止させることができませ す。Grünenthal社では50~400mlの小スケール ん。安全性を確保するためには、試薬添加操作 のパーソナル有機合成装置EasyMaxの測定デー を無人では行わずに研究者が絶えず監視する必 タを容量の大きなジャケット式リアクターに 要があります。 データを適応し利用しています。 大きな発熱を伴う試薬添加時間の長い反応 研究者に対して スケールアップ検討の反応の中にグリニャール Grünenthal社の研究者は反応条件検討とスケー 反応がありました。これは反応熱が大きい為製 ルアップ検討に注力するために、極力シンプル 造設備の冷却能力が足りなくなる為に試薬添加 な反応容器で準備に時間をかけない事としてい に掛ける時間を8~16時間にする必要がありま ます。このため自動化された機器には、数分で す。これほどの長い時間で添加操作を行うと研 準備ができ、データ解析が容易で、取扱い説明 究者の労働時間のほとんどを割く事になってし が不要なほど簡単な機器を使用しています。 まいます。解決方法として試薬添加操作を無人 化し、社内の安全ガイドラインに沿った形で、 夜中も無人運転を行う事です。 2 Case Study
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操作方法 グリニャール反応のように RX-10本体とタッチスクリーン RX-10の接続 (循環恒温槽、撹拌モーター、 非常に大きな発熱を伴う反 試薬添加ユニットと接続) 応の場合、Grünenthal社で はジャケット式の2Lリアク タへの試薬添加を安全に正 IKA社製撹拌モーター しく理解するためにこれら の手法を取っています。 1. メトラー・トレド社製RX-10 試薬添加 リアクタコントロールユニッ ユニット トに、Julabo社製循環恒温槽 とIKA社製撹拌モーターを RS232ケーブルで接続し、試 Julabo社製循環恒温槽 薬添加にはメトラー・トレド 社製のDU SP-50シリンジポ ンプをCANケーブルで接続し 2 安全性の設定(RX-10タッチスクリーン上に表示) ました。 2. 予期せぬ状態になっても安全 に実験を行うためにこれらの 設定を行いました。 a. RX-10には安全機能が搭載 されており、接続された 機器の不調(例:循環恒温槽 に問題が発生し冷却が行 われなくなる)や、各項目 に設定したリミットを超 T safe: Tr最大値を Tdif最大値:リアクタ えてしまった場合には、 Tr: リアクタ内温度 超えた場合、事前 内温とジャケット温度 これらの安全プログラム Tj: ジャケット温度 に設定した温度に の最大許容温度差制御されます。 が自動的に実行されます。 i. 事前に設定した安全温度 3 プログラムタスクの作成(RX-10タッチスクリーン画面) (T Safe)に制御します。 ii.試薬添加操作を全て止め ます。 iii.撹拌は継続して行います。 3. タッチスクリーン上で簡単に 温調、熟成、試薬添加のシー ケンスを組めます。図3は大 きな発熱を伴うクエンチ操作 例を示しています。 6ステップまでのタスクシーケンスを構築し無人運 転が可能。温調、試薬添加、撹拌、自動サンプリン グを設定可能 図3. RX-10が無人試薬添加を含む5ステップの操作を実行 (次項につづく) 3 Case Study
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4. 試薬添加操作ではしきい値を 4 試薬添加条件にリアクタ内温のしきい値を設定可能 設定可能で、発熱により反応 温度が上昇しこれを超えた際 には試薬添加を一時停止しま す。温度がしきい値を下回れ ば試薬添加が再開されます。 5. 実験が終了すると、全ての 測定データをRX-10から直接 USBメモリーを介してMS- Excel形式でエクスポートで きます。また、測定データ や操作内容をまとめた形式 で電子ラボノート(ELN)に追 設定したしきい値を超えた場合、試薬添加が一時停止されます。 加されます。 5 データ RX-10はPCに直接接続も可能 測定 で、アプリケーションソフト ウェアiControlから機器制御の LANかUSBメモリを 拡張やトレンドを使用したデー 介してデータ転送 タ解析、そして自動レポート作 成機能が使えます。 図3. (前項からのつづき)RX-10が無人試薬添加を含む5ステップの操作を 実行 結果 1. グリニャール反応の結果。リアクタ内温度(Tr)にしきい値を設けクエンチ試薬の添加を自動的に 一時停止させ、反応温度を制御する事ができた。(図 4) 100 50 75 40 反応温度20℃を保つために試薬添加 50 30 が一時停止された。 Safety Limit 25 20 0 10 01:20 01:25 01:30 時間(時) 図4. 設定したセーフティーリミット(20℃)を考慮した自動試薬添加のトレンド 4 Case Study Tr (°C) 試薬添加量(ml)
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30 150 2. リアクタ内温(Tr)とジャ 20 ケット温度(Tj)の温度差 Tr-Tjのトレンドです。 10 100 (図 5) Tr-Tjトレンドは 合成が進み化学的変化 0 や物性変化が起こって -10 いる事を示していま 50 Tr-Tjトレンドを物性変化や化学変化 す。この発熱のトレン -20 の指標とする事ができます。 ド変化から反応の開始 例:反応開始 と終点の情報や、分析 -30 0 の為のサンプリングを 01:00 01:10 01:20 01:30 01:40 いつ行うべきなのか、 Time (hr) また次の操作を行うタ 図5. Tr-Tjのトレンドが反応の開始と終点を示す イミングなどをリアル タイムで得る事ができ ます。 3. 一度実験を行いデータを取得してしまえば、同じ条件での再実験や条件変更した反応などと の比較をiControlのトレンド表示で簡単に重ね書きでき、バッチ間の差異を明らかにする事が できます。(図 6) 100 Batch 1 50 Batch 2 75 40 50 30 25 10 0 01:20 01:25 01:30 01:35 時間 (時) 図6. 2実験の温度と試薬添加のトレンドを重ね書きして比較 5 Case Study Tr (°C) Tr-Tj (K) 試薬添加量(ml) 試薬添加量(ml)
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4. プロセス開発や試運転、そしてスケールアップに於いて自動化された機器に起因 する問題(ヒューマンエラーもしくは設備の限界も含めて)を回避するには、できる だけ操作を簡単にし、機器を安定動作させる事です。 Grünenthal社のCaraten Grieble氏は「RX-10はスケールアップ操作の最適化を行うの に最適な機器で、社内のパーソナル有機合成装置EasyMax、OptiMaxから数リッター スケールのジャケット式リアクタへのギャップを埋め、同様の操作環境で研究者が操 作できる。また、レポート作成がスケールアップ検討の段階で有っても同様のレポー トを得る事ができます。」 まとめ Grünenthal社ではRX-10が実験の効率を上げ、研究者の煩雑な操作を削減し安全性も 向上しました。また、プロセス検討グループの所持していた2~20Lスケールの反応容 器に後付けで設置できました。試薬添加の自動化操作に於いては安全に無人化を実現 できるだけではなく、生産性向上と1回の実験からより多くの情報を得る事ができ、 反応の理解を深める事ができました。また、すべてのデータを記録し、レポート作成 機能が備わっているので正しい情報に基づいたスケールアップが可能で、EasyMaxや OptiMaxなどの小量リアクタからジャケット式の大型リアクタまで一貫性のあるデー タを得る事ができ、50mLから20Lまでの全ての容量に於いて迅速な判断とプロセス開 発のスピードアップを可能にします。 メトラー・トレドのパーソナル自動合成装置と ジャケット式リアクタの制御 EasyMax 102 0.5 mL から 100 mL EasyMax 402 30 mL から 400 mL OptiMax 1001 50 mL から 1 L RX-10 1 L 以上 メトラー・トレド株式会社 www.mt.com/RX-10 オートケム事業部 For more information Tel:03-5815-5515 Fax:03-5815-5525 ©06/2016 Mettler-Toledo K.K. Case Study