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化合物の革新的な合成手法

ホワイトペーパー

有機化学分野の研究開発に関するケーススタディ

化学者や技術者は、さまざまな実験条件の検討を行う時に研究室を離れることはありません。従来の実験手法にはどうしても問題があるため、新しい合成経路を正しく見つけるには限界があります。反応温度の最適化は非常に重要なパラメータですが、開発には時間的な制約があるため、最適化されない場合があります。さらに添加速度、撹拌、pHなど、他の重要なプロセスパラメータも最適化を求めると、従来の合成手法では制御能力の限界や開発速度の遅れという問題があります。さらに、制御ログを規制に準拠した形式で重要なプロセスデータとして電子的に記録し、他の分析測定結果と同期する必要がある場合、そのことを負担に感じる研究者もいるでしょう。単独で使用する添加機器や撹拌モーターと組み合わせたマントルヒーター、アイスバス、循環恒温槽付きリアクタなど、化学反応をサポートする従来の装置では、設定温度範囲の制限や制御能力の不足、煩雑な手作業の必要性、合成の進行に合わせたリアルタイムなデータの取得とレポートの難しさといった欠点があります。

現在では、新しい化合物合成の条件最適化検討を展開するために効果的な手法を利用することができます。このホワイトペーパーでは、重要なプロセス条件の制御、最適化の新たな方法について紹介します。大手製薬会社が合成ラボの業績向上に成功した方法について、4つのケーススタディを紹介しています。
・トリフレーション反応を成功させる最適な反応条件の検討
・グアニジン反応における、不純物生成を防ぐためのパラメータ制御
・グアニジン反応スケールアップのための実験計画法(DoE)
・水素化ホウ素リチウムによる2段階の還元をモニターするインラインの反応解析

このカタログについて

ドキュメント名 化合物の革新的な合成手法
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 1.6Mb
取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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革新的な自動合成機 ブレークスルーとなる化合物を合成するには Author: Francis Van der Eycken, METTLER TOLEDO 多くの実験条件を幅広く検証する場合、研究者は実験台に釘づけとなりがちです。それ でも丸底フラスコやオイルバスを使っている限り、新しい合成経路を迅速に見いだすこ とは非常に困難です。たとえば、重要な条件である反応温度を最適化するにしても、オ イルバスで正確に検証することは難しく、開発にかかる時間的プレッシャーに押されて、 たいていは最適化しきれずに終わります。検討項目を他の重要なパラメーター、すなわ ち試薬添加速度、撹拌、pHなどに広げる場合も、従来の合成用器具では制御性に乏し く、開発速度を上げる事は容易ではありません。さらに測定されるデータの記録や規制 に対応するため、実験の経過と結果を電子的に記録するとともに、他の分析結果とつ きあわせる作業は、実験者の大きな負担です。マントルヒーター、アイスバス、循環恒温 槽、滴下ロート、撹拌モーターなどの従来型合成用器具を使用してしまうと、温度範囲 は限定され、制御は困難であり、人間の手作業が多く、また進行中のリアルタイムデー タを容易に(または自動的・電子的に)測定し保存することはできません。 弊社から現在、革新的な化合物創 生とプロセス条件最適化の研究 開発を成し遂げるための、効果的 かつ有用な新技術がすでに活用 されているのです1。それが自動 合成機であり、制御・最適化・重 要な実験条件の記録に新しい可 能性を開きました。このホワイト ペーパーでは4つの事例をご紹介 し、医薬品製造のリーディングカ ンパニーがこのような自動合成機 をどのように利用し、合成実験の 効率を高めているかにスポットを 当てます。 White Paper
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もくじ 1 はじめに:実験温度最適化手法 2 高精度な反応条件制御で得られる高い再現性 3 信頼性の高い実験計画法(DoE)を行う 4 反応レートメーターとしてのリアルタイムな情報 5 まとめ 6  参考文献 7 参考文献補足 1 はじめに:実験温度最適化手法 合成温度を最適化すると言う事は、収率・純度・反応速度のバランスが最適である温度を見つけるという ことでしょう。合成の設定温度は、伝統的に室温以下の場合三つの操作温度、すなわち0℃、-10℃、 -78℃に限られてきました。実際には多くの反応がこの三つの条件ではないところに、最適な操作温度 があるのです。最適な条件を見つける操作を手作業で行うと、設定温度変更と再実験に長い時間を要し ます。一方自動合成機を利用すれば、設定した温度で制御した実験が行えることからだけでも、最適な反 応条件の探索に踏み込めるのです。 EasyMaxTMは容量0.5ml~400mlのパラレル合成に対応した定評ある自動合成機です。化学業界、医薬品 業界に多く採用され、夜間無人運転可能かつ全ての反応条件を自動制御可能なので、生産性を向上しま す。 図1 トリフラート化反応 予備試験の一連の検討から、上にあげたトリフラート化反応は、-20℃での合成が最適であることがわか りました。0℃での合成では反応速度が速すぎて副生成物が形成され、後で分離するのが困難でした。 -78℃の合成では、反応速度がきわめて遅く、反応が完了しないばかりか、製造に移した場合、未反応物質 を取り除くのに多額のコストが発生するところでした。室温以下で自由に温度設定が可能であるというこ とは、この検討を成功させるために必要だったのです。 2 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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2 高精度な反応条件制御で得られる高い再現性 様々な反応温度を検討すること同時に大切なことは、反応温度を高精度に制御し一定の変動幅以内にき ちんと維持することです。結果として実験の再現性が向上し、少ない再実験回数で実験間の比較が可能と なり、スケールアップでの成功を導きます。 1 2 3 4 5 6 図2 シアナミドとアミンによるグアニジンの合成 上に示した反応はシアナミド[1]活性化から始まり、60℃で塩酸を加えることでシアナミド塩が形成され ます。この過程で温度を60℃に保つことが重要であり、それ以上でも以下でも不純物が生成し、この場合 はシアナミドとシアナミド塩[3]または尿素[4]との反応が起き、避けなければなりません。 図3は丸底フラスコを使用した手作業で操作する 装置と、自動合成機(EasyMax)の温度変化を比較 したものです。手作業で操作する装置の反応中の 温度変化(図3の赤い線)は、60℃を付近で安定 していません。これは断続的に行われた手作業で の温度制御と、手作業での塩酸添加に起因してい ます。制御が十分に行われない手作業での合成操 作は、不安定な副生成物が生成されえる危険温度 (65℃)に到達しそうになっています。また実験間 の比較をすることも困難です。 EasyMaxは塩酸添加中においても、極めて安定し Round bottom flask た温度制御で60℃を保っており(図3緑の線)不 EasyMax 純物濃度が大きく改善しました。さらに温度が安定 図3 丸底フラスコとEasyMaxの比較 することによって、精度と再現性が向上し、再実験 を省くことができ、実験間の比較が容易になりまし た。精度の高い結果を得ることで、結晶化による発 熱なども簡単に検知できます。もし丸底フラスコ (赤線)で発熱を伴う結晶化が発生しても、温度制 御のばらつきに埋もれて検知は難しいでしょう。 自動合成機の大きな利点は、アイスバス・オイルバス・マントルヒーター・循環恒温槽などを介さずに温度 制御が行えることであり、結果として、より多くの実験条件を検討でき、迅速に最適な条件を得られるとと もに、適さない条件を排除できます。 3 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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3 信頼性の高い実験計画法(DoE)を行う 前に述べた事例での実験結果(図4)に基づいて、中央複合計画(DoE)を用いた3つのパラメーターすな わちNC-NH2の当量、反応温度、試薬添加時間を検討しました。反応の結果としてグアニジンと不純物の濃 度%を測定しています。図5と図6はこの検討で実験した条件の概要です。 図4 グアニジンの合成 図5 パラメーターの領域 図6 プロセスパラメーターと測定結果 強調部分が中心点の条件 この検討では、中心点の条件を4回繰り返し実験 し、実験機器およびプロセスパラメーター制御の 再現性を検証するとともに、分析結果の再現性も 確認しました。ひとつの反応での再現性を証明する ことにより、自動合成機とサンプリング手法および 分析手法の信頼性を確認しています。いったん信頼 性が確立されれば、プロセスパラメーターの中央複 合計画DoE中の実験結果を確認するための追加実 験や再実験は不要となります。 図7 中心点の条件を4回繰り返して実験 すべての実験およびパラメーターは、EasyMax自動合成機でプログラムし、制御しました。実験の安全性 確保とともに、試薬添加速度・温度制御・撹拌条件が再現性良く制御されました。タッチスクリーンでの設 定で、無人で24時間運転でき、実験の生産性が向上しました。バッチごとにすべての実験データが測定さ れ自動的に情報共有でき、ソフト上でそれぞれのバッチの結果を重ね合わせて、高度なデータ分析と報告 書作成が行えました。 4 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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塩酸4時間添加 グアニジン Y.a/a 安全性 スケールア コスト最適化 ップ範囲 アニリン残留 図8 4時間の塩酸添加でのDoE結果による温度(Y軸)・NC-NH2当量(X軸)、収率(囲み線) DoE検討の結果に基づき、NC-NH2を1.75当量とし塩酸を4時間添加する条件でスケールアップすることに 決まりました。プロセスの堅牢性と収率・純度・経済的な回収効率とのバランスが良好なのがこの条件で す。塩酸の添加を速くすることは未反応物蓄積のリスクを考え避けました。また反応温度60℃を選択し たのは、より高温にすると安全性が侵されることと、より低い温度ではアニリンが残留するためです。結果 としてこのプロセスは無事スケールアップされ、トン単位の製造ラインが完成しました。 オンデマンドウェビナー ロンザ社のペプチド検討における、実験計画法(DoE)の適用 方法をご紹介します。進行役は同社ベルギーのDidier Mnnaie 博士です。 www.mt.com/DOE-peptide 5 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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4 反応レートメーターとしてのリアルタイムな情報 合成とそれに関わる反応条件をより良く理解するためには、物理的・化学的データが不可欠です。一般に はHPLC、GC、NMRなどのオフライン分析が行われ、FTIRやラマンによるin-situ反応追跡も限られた時点 でのみの使用となっています。しかし反応の開始と反応の進行状況、そして反応終点を得るには、反応容 器に容易に組み込める連続リアルタイム測定が最も効果的です。この例では、LiBH4を還元剤として用い エステルを還元し、第一級アルコールとする二段階反応について説明します。 図9 二段階の水酸化ホウ素リチウムによる還元反応 反応温度(青い線)は設定温度20℃で各反応段階とも、一定に制御されています。前章で述べたとおり、 正確な温度制御は反応終了時に再現性のある結果を得る為に非常に重要です。 反応温度 (°C) 添加量 (mL) 温度差 (K) 図10 二段階還元反応の反応開始点・終点をリアルタイムに検出(赤い線) 赤い線はリアクタ内温度(Tr)とジャケット温度(Tj)の差です。まず反応の開始(LiBH4の添加開始と同時) と、リチウム塩形成(第一段階の反応)の完了がわかります。Tr-Tj曲線は実験中に反応器内で発生している 合成や変化の指標であり、物理的または化学的変化に依存します。またその変化がエネルギーを出してい るのか、吸収しているのかにより、発熱(プラス)か吸熱(マイナス)かを示します。Tr-Tjを利用するには厳 密に温度制御されていることが必須となります。 塩の形成が終了後、二段階目としてIPAを添加します。添加とほぼ同時に還元反応が始まり、半量を添加し た時点で反応が最大に達しています。IPAの添加が終了しても、反応は完全には終了せず、緩やかな反応が 残っています。正確に温度制御しているからこそ、IPAの添加が終了しても反応がゆっくりと進行しているこ とを明らかにすることができました。Tr-Tjをリアルタイム反応速度指標として採用することで、いつサンプ リングを行うべきか、いつ次の段階に入るのか、いつ反応が終わったのかなどの迅速な判断をデータに基 づいて行うことができます。これは非常に有用なツールです。 6 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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5 まとめ 化学者は画期的な化合物を合成するため、また安全かつコストに見合ったプロセス条件を実現するため、 常に革新的な合成法を探索しています。化合物が複雑化し、開発にかけても良い時間が短縮され、事業面 からは信頼性の高いスケールアップが求められる状況でも、より良い合成法を開発し、より良い実験を行う ために新しい手法が不可欠となっています。高い収率・高い安全性・最高の製品品質を求めるのならば、 最適な条件を最小の誤差で迅速に検討できる装置を利用する必要があるのです。EasyMax自動合成機 は、反応条件を24時間、簡単かつ再現性高く制御する実験装置であり、化学者は合成法の検討に注力で きます。自動合成機を使用することで、反応開始点と終点が詳細にわかるだけでなく、実験条件の自動記 録、容易なデータ転送、実験のワンクリックでの再検討、さらに実験データを自動的に共同実験者に送る ことや、将来的な規制の監査のために記録することもできます。 EasyMax™ 102, EasyMax™ 402, and OptiMax™ 1001 EasyMaxとOptiMax:丸底フラスコに取って代わります EasyMaxはアイスバスやオイルバス、マントルヒーターが不要で、温度範囲-40℃~180℃の反応を行えま す。制御できる条件は、温度制御、試薬添加、撹拌速度であり、複数の反応容器それぞれを別々に設定で きます。親しみやすいタッチスクリーンでいつでも条件を変更でき、事前プログラムによる無人稼働も可能 です。アルミブロックおよび反応容器を組み替えることにより、0.5ml~1000mlの容量での合成・最適化・ 反応検討をフレキシブルに行うことができます。新しい反応条件や画期的な合成法を探索するにあたり、 すべての実験データを記録するとともに、データ転送を容易にし、再実験が行えます。ドラフトフードを開 けずにリモートタッチスクリーンですべての実験条件を制御できるので、研究者の安全が確保できます。ま た、フィードバック温度制御により、発熱反応においても顕著な温度上昇を伴わずに実験でき、試薬添加 時にも温度を一定に保つことにより、不安定な副生成物の形成を防ぎます。これまでの丸底フラスコおよ びジャケット付リアクターをEasyMaxやOptiMaxに置き換えれば、新規化合物をより迅速に合成し、価値 のない候補物質を迅速に除外し、反応の最適化を行うことができます。 7 White Paper METTLER TOLEDO White Paper
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6 参考文献 1: Roberge. D. M. Organic Process Research & Development 2004, 8, 1049−1053 2: Melikyan, G.G. et al. Organometallics 2012, 31, 1653−1663. dx.doi.org/10.1021/om2006497 | 3: Hansen, E. C. et al. Organic Process Research & Development, 14(3), 574–578. (2010). oi:10.1021/op100013m 7 参考文献補足 ホワイトペーパー:丸底フラスコを用いない有機合成手法 丸底フラスコから脱却し、研究者達が使用している新しい実験手法をご 紹介します。アイスバスの管理に四苦八苦するかわりに、望みの温度を 設定するだけ、さらに昼夜を問わず反応を制御・監視し、合成を再現性 良く行う手法とは。 www.mt.com/organicsynthesis Mettler-Toledo AutoChem, Inc. www.mt.com/EasyMax 7075 Samuel Morse Drive For more information Columbia, MD 21046 USA Telephone +1 410 910 8500 Fax +1 410 910 8600 Email autochem@mt.com Internet www.mt.com/autochem Subject to technical changes © 11/2015 Mettler-Toledo AutoChem, Inc. White Paper