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電子天びんメンテナンス 【GWP計量ガイド】

ホワイトペーパー

最適な天びん・はかり・分銅の推奨および、点検用 標準作業手順書(SOP)のガイド

設置場所及び天びんの正しい取り扱いについてや、周囲環境に起因する障害となる影響について、正確な計量結果を得るために注意すべき事柄等を紹介。

天びんの仕様を正しく解釈することが計量結果を正しく判定するうえで非常に重要なことであるため、良く使われる専門用語についても解説しています。

【掲載内容】
■天びんの設置場所
■天びんの取り扱いと操作
■物理的影響
■専門用語
■GWP–Good Weighing Practice 他

このカタログについて

ドキュメント名 電子天びんメンテナンス 【GWP計量ガイド】
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 4.6Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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経験 優れた計量 正しい条件 正確な計量結果 計量ガイド 電子天びんを使って 正しく計量するために Weighing the Right Way
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メトラー・トレド計量ガイド 電子天びんを使って 正しく計量するために 始めに 5 天びんの設置場所 6 天びんの取り扱いと操作 8 物理的影響 12 専門用語 20 GWP® – Good Weighing Practice™ 30 3
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メトラー・トレド計量ガイド 始めに 計量作業はラボで最も頻繁に行う作業です。現在では最新 型のミクロ、セミミクロ 、分析、精密の各天びんは特殊な計量 専用室でなくても完璧な計量作業を実行できるほどになってい ます。 エレクトロニクス・テクノロジーの進化により、取り扱い が非常に簡単になり、計量時間が大幅に短縮され、天びんを直 接生産ラインに組み込むことが出来るほど、その適応性が向上 しています。 一方この進化により、周囲環境が及ぼす望ましくない影響 に対する注意がややもするとおろそかになりがちです。 ほとん どは物理的な影響であり、ミクロ、セミミクロ、分析天びんが 感知でき、無視できないものです。これは実質的な重量変化で あり(例、緩慢な蒸発、吸湿)、または被計量物や計量皿に作 用する外力(例、磁力、帯電)であるため、天びんが重量変化 として感知するものです。 以下に述べた様々なインフォメーションにより、ミクロ、 セミミクロ、分析の各天びんを使った計量作業に際して、精度 の高い正確な計量結果を得るために注意すべき重要な事柄につ いて明らかにしてあります。 先ず、設置場所及び天びんの正しい取り扱いについて簡単 に述べたあと、周囲環境に起因する障害となる影響についてそ れぞれ検討してあります。ほとんどの悪影響はゆっくりした重 量変化(ドリフト)により分かります。 さらに、天びんの仕様を正しく解釈することが計量結果を 正しく判定するうえで非常に重要なことであるため、良く使わ れる専門用語についても解説してあります。 5
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天びんの設置場所 正確な計量結果や繰り返し性は天びんの設置場所と密接な関係 があります。お手許の天びんが最良の条件下で作動するよう、 以下に述べてある事柄に充分ご注意ください。 計量台  安定性(実験デスク、実験台、石製台) 計量台トップとして堅牢で平坦、作業時にゆがまず出来るだ け振動しないものを選んでください。  耐磁性(スチールプレートは不可)  帯電防止対策(プラスチック製、ガラス製は不可)  単一の固定方法 計量台は床または壁面のどちらか一方だけに固定するように します。両方同時に固定すると。壁面及び床面の振動が伝達 することになります。  天びん専用としてください。 天びん設置場所及び計量台は、人が計量場所に接近した時や計 量台に接触、あるいは力をかけた場合に、天びんディスプレイ の表示が変化することが無いような、安定したものであること が必要です。ボールペン筆記用の柔らかな下敷きなどを使用す ることは避けてください。天びんの設置位置としては、デスク やテーブルの脚や支柱などの支持部分直上が振動の発生が一番 少ないため最適です。 計量作業室  振動の無いこと  通風の無いこと 計量作業を行う部屋の隅に計量台を置きます。なぜなら通常の 場合部屋の隅が建物の振動が一番少ない場所だからです。部屋 の出入り口ドアとしては、ドアの開閉動作の影響を抑えるため に、スムーズに動作する引き戸が理想的です。 6
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メトラー・トレド計量ガイド 温 度 最高 + 30° C  温度変化は計量結果に影響を与えるので、室温はできるだけ一定 に保つようにします(代表的ドリフト : 1 〜 2 ppm/℃)。 適 正  暖房設備の近くや窓際での計量作業は避けて下さい。 最低 - 5° C "FACT"(全自動自己調整機能)を備えたメトラー・トレド天び んは、わずかな温度変化が発生してこれによる影響を補正する ことができます。従って“FACT”のスイッチを常にオンに設定し ておきます。 囲 20 ~ 大気湿度 範 80最大 %  相対湿度 (% rH) は 45 〜 60 % の範囲にあることが理想的です。 下限 20 %、上限 80 % はいかなる場合にも超過しないようご注 意下さい。 ミクロ天びんでは常に湿度に注意するようお勧めします。湿度 変化がある場合は、出来るだけこれを是正するようにします。 光  天びんを出来るだけ窓の開口部が無い壁際に置いて下さい。直 射日光(加熱)は計量結果に影響を与えます。  天びんは照明器具から充分な距離を取って置き、その熱が伝わ らないよう注意します。これは白熱灯の場合特に当てはまります ので、蛍光灯をご使用ください。 大 気  天びんを空調設備、或いはコンピュータや大型ラボ機器の換気フ ァンによる通風にさらすことは必ず避けて下さい。  天びんは暖房機器から充分な距離を取って置くようにして下さ い。暖房機器の近くでは、温度ドリフト以外に、空気の強い対流が 発生して障害となる恐れがあります。  天びんはドアに近くに置かないで下さい。  人の出入り、往来が頻繁な場所は避けて下さい。人の行き来は計 量場所での通風の原因になります。 7
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天びんの取り扱いと操作 ケ S イte リv ョウ ミクロ、セミミクロ、分析、精密の各天びんは高精度な精密計e Miller 測機器です。以下に述べてある事柄を守れば、信頼のおける正 サイ G シ 確な計量結果を得ることができます。 ro ョss ウケフ イウ リタ ョウイ Int. 天びんのスイッチを入れる  天びんを電源網から切り離さず、常にスイッチを入れた状態にし ておきます。これで天びんには熱均衡状態が保たれ ます。  天びんのスイッチを切るには、ディスプレイキーを利用してくだ さい(旧型機種では風袋引きキー)。天びんはスタンバイ・モード になります。電子部には通電されている状態ですので、ウォーミ ングアップが不要となります。 ! ヒント : 初めて電源網に接続する際は、天びんの種類に応じて異なるウォーミングアップ時間を取るようお勧めします。• ミクロ天びんでは最高 12 時間• セミミクロ天びん及び分析天びんでは約 6 時間 • 精密天びんでは約 3 時間 上記の目安とは別に、最終的にはそれぞれの天びん取扱説明書に記され ている最小ウォーミングアップ時間を取るようにします。 水平調整  天びんを水平状態にします。 このためには、先ず水準器の気泡が真ん中に位置しているか どうか確かめてください。水平調整脚を利用して気泡の位置 を調整することができます。水平調整が完了した後、天びん の感度を調整する必要があります。その手順は該当天びんの 取扱説明書に述べてあります。 ! ヒント : GxP 1) の要求を満たすために、天びんの水平調整が常に正確に 実行し、さらにこの調整実行過程を記録したい場合は、自動水平調整機 能 "LevelControl" が搭載されている Excellence Plus 天びんシリーズをお 勧めします。 1) GxP とは Good Laboratory Practice (GLP) 又は Good Manufacturing Practice 8 (GMP) の意味です。
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メトラー・トレド計量ガイド 調 整 1.00005 mg  以下に述べた場合は、天びんの感度を定期的に調整してくださ 1.00000 mg い。 • 初めて天びん使用を開始する時 • 設置場所を変えた時 • 水平調整を実行した時 • 大きな温度変化、湿度変化、又は気圧変化があった時 ! ヒント : 温度変化があった時に全自動で調整したい場合は、"FACT" 機能を備えた天びんを購入する価値があります。この機種では自動的に自己調整を実行します。これにより、定期的にチェックするルーチンワークが不要となります。 読取り  各計量作業の前に正確なゼロ点表示を確認してください。ゼロ S ケte イv リe ョウ 点のエラーを避けるため、必要に応じてゼロ点を設定し直しま Miller す。 サG イro シフ ョウウ ssタ ケイリ  天びんディスプレイの左上に表示される小さな円形が消去され イ ョウ Int てから計量結果を読み取って下さい。この安定検出装置を.介し て計量結果がリリースされます。 ! ヒント : Excellence Plus シリーズはさらに優れた性能をもつ安定検出装 S ケイリ置を搭載しています。この天びんは不安定な計量値をブルーで表示しま teve ョ M ウilす。安定状態になると、ディスプレイは直ちに黒字表示に変わり、左上 lerサに表示される円形は消去されます。こうして信頼できる計量結果である G イ フ ro シ ss ョウケ 安定値を確実、迅速に得ることができます。 ウタイ イリョウ Int. 計量皿  計量皿の真ん中に被計量物をのせて下さい。これにより偏置荷 重誤差を避けることができます。  長い休止時間後(30 分を超えた後)、初回計量現象と呼ばれる現 象が発生するのを避けるため、ミクロ天びん、セミミクロ天びん では計量皿に一旦荷重をかけます。 9
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計量容器  出来るだけ小さな計量容器を使用してください。  大気の相対湿度が 30 〜 40 % の場合は、プラスチック製の計量 容器を使用することは避けて下さい。この条件下では帯電の恐れ が大きくなります。 ガラスやプラスチックのような非電導体は帯電します。その 結果、大幅に誤った計量結果が出ますので、適切な対策を講 じます(さらに詳しくは 14 ページの静電気の項をご覧くだ さい)。  計量容器及び被計量物は周囲環境と同じ温度に保ちます。温度差 は空気対流の原因となり、誤った計量結果が導かれる恐れがあり ます(7ページの温度の項をご覧ください)。乾燥オーブン又は自動 洗浄機から計量容器を取り出した場合、天びんにのせる前に予め 充分にさまして下さい。  計量室及び計量容器の温度及び湿度の変化を避けるために、計 量容器を手で持って天びん計量室にセットすることは出来るだけ 計量容器ホルダー "エルゴクリ ップ・バスケット" 避けて下さい。この変化は計量過程に不利な影響を与える恐れ があります。 ! ヒント : 様々な計量容器ホルダーは、障害の無い、確実な量り込みを実現するための最適な前提条件となります(左図参照)。 風 防  風防ドアを必要分だけ開きます。これにより天びん計量室内の状 態が一定に保たれ、計量結果に悪影響が及びません。  Excellence Plus シリーズの天びんのように、自動風防ドアを備 え、その作動モードを構成できる天びんでは、風防の開きが最小 となるよう構成、設定してください。 特殊風袋容器ホルダー "エルゴ クリップ・フラスコ" にのせた フラスコと "最小計量ドア" 10
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メトラー・トレド計量ガイド ヒント : 難しい条件下で非常に簡単かつ正確に測定したい場合、 Excellence 及び Excellence Plus 天びんシリーズ専用のアクセサリーを使 用するようお勧めします。量り込み量が微小で、その公差が小さく、周 囲環境条件が不利な場合でも、最良の計量結果を得ることができます。 メトラー・トレドの特殊風防ドア "最小計量ドア" は計量ブースでの使 用を想定した完璧な好例と言えます。一方 "通常" の計量条件でも利点 をもたらします。正味表示値の繰り返し性はこれにより2ステップほど 向上します。 ラミネート加工されたグリッドが特徴である計量皿 "スマートグリッド" を使 用すると、4桁の分析天びんにおいて、その風防ドアを計量作業中原則とし て開いたままにしておけるほど、計量が安定します。 天びんの手入れ  風防内部の計量室及び計量皿は清浄に保っ てください。  計量作業には清浄な計量容器だけを使用し てください。  手入れには通常の窓ガラスクリーニング剤で 充分です。  クリーニングには毛羽立ちの無い柔らかな布 を使用してください。  ブラシを使用する際、汚れを開口部に掃き入 れないよう、充分ご注意ください。 S ケt イev リe ョ M ウ  クリーニング前に、先ず計量皿のような取り外 illerサG イr フ o シ ss ョウウ ケタ イイ リョウ し可能な全ての部品を取り除きます。 Int. ! ヒント : Excellence 及び Excellence Plus 分析天びんが備える風防ガラスは、全て個別に取り外して自動洗浄機でクリーニングすることができます。 11
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物理的影響 表示値が安定状態にならない場合、計量結果はゆっくりとある 方向にドリフトし、単に誤った値が表示されます。この場合望 ましくない物理的影響がその原因です。よくある原因として以 下の事柄を挙げることができます。  被計量物の影響  天びん設置場所の周囲環境条件の影響  被計量物の含水量の変化  被計量物または計量容器の帯電  磁性の被計量物または計量容器 以下の章でこれらの影響について詳しく検討して、その原因に ついて説明し、役立つ対策について述べます。 温 度 問題点 ある被計量物の重量値がある方向にドリフトする。 考えられる原因 天びんに電源を接続してから充分な時間が経過していない。 被計量物と周囲環境の温度差により計量容器周囲に空気対流が 発生する。容器に沿った対流により上向き又は下向きの力が発 生する。このため計量結果は正しい値からずれる。この影響は 動浮力と呼ばれます。温度が同じになり熱均衡が保たれるとこ の影響はなくなります。従って次の事が言えます。温度の低い 被計量物は実際よりも重く、温度が高い被計量物は実際よりも 軽く測定されます。この影響は、セミミクロ、ミクロ、ウルト ラミクロ天びんによるサンプル処理後質量差測定を実行する際 に、問題が発生する原因となります。 例 以下の実験で動的浮力を実際に試して見ることができます。 12
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メトラー・トレド計量ガイド 三角フラスコか類似の容器を計量し、その重量値をメモします。 容器を約1分間ほど手で握り続け、その後再び計量します。容器 自体の温度が高くなっており、温度差が発生しているので、容器 の重量は以前よりも軽く表示されます。(手からの発汗は問題に なりません。サンプルはむしろ重くなるはずです)。 対策  乾燥器又は冷蔵庫から取り出したばかりのサンプルを計量しな い。  ラボまたは計量室の温度にサンプルを馴らす。  トングを使ってサンプル容器を持つ。  計量室へのサンプルの出し入れを直接手で行わない。  容器の開口部が小さなものを選ぶ。 水分吸収 / 蒸発 問題点 被計量物の重量表示値が常に一方へドリフトする。 考えられる原因 被計量物が、重量が減少する揮発性物質(例、液体蒸発)である か、又は重量が増加する吸湿性物質(大気からの吸湿)である。 例 アルコールまたはシリカゲルを用いてこの現象を再現出来ます。 対策 清浄で乾燥した計量容器を使用し、計量プラットフォームには 汚れや水滴などの付着が無いように保ちます。開口部の小さい 大きな開口部を持つ計量容器で 容器を使用することは、容器にフタをすることと同様に役立つ は蒸発または凝縮による計量誤 差が発生する恐れがあります。 対策です。丸形フラスコにコルク又はダンボール材の下敷きを 用いることは避けます。この下敷きは水分を大幅に吸収する か、又は逆に水分を蒸発発散させます。金属製フラスコホルダ ー、又は Excellence あるいはExcellence Plus 型天びんシリーズ 用の "エルゴクリップ" を使用すれば、この現象を避けることが できます。 13
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S ケt イev リe ョ M ウiller サ G イro シss ョフ ウウ ケタ イイ リョウ Int. 静電気 問題点 計量のたびに異なる結果がでる。重量表示値はドリフトし、繰 り返し性がまったく無い。 考えられる原因 計量容器又はサンプルが帯電している。ガラス、プラスチッ ク、粉末、顆粒など電導性の低い素材やサンプルは静電気を放 電しないか、または非常にゆっくり(数時間かけて)放電しま す。帯電は先ず容器またはサンプルの運搬中の接触或いは摩擦 により発生します。相対湿度 40 % の乾燥した大気により帯電 の恐れが高まります。 計量エラーは、被計量物と周囲環境間の静電作用力が原因で発 生します。これは特にミクロ、セミミクロ、分析の各天びんに よる計量で発生しやすくなります。 例 清浄なガラス容器又はプラスチック容器をコットン製の布で軽 くこすると、この現象が実にはっきり分かります。 14
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メトラー・トレド計量ガイド 対策  この問題は、冬季の暖房のきいた部屋で発生しがちです。空調の きいている部屋では該当空調設備の設定状態を調整すると効果 があります(湿度 45 〜 60 %)。  静電作用力を遮蔽する 被計量物を金属製容器に入れます。  他の計量容器を使用する。 プラスチック及びガラスは帯電しやすく、計量容器には不適 当です。 金属製容器のほうが適しています。  帯電防止ピストルを利用する。 但し市販製品はあらゆる状況に効果があるとは限りません。  メトラー・トレドの帯電防止キットを利用する。 備考 : 天びん及びこれにのせられた計量皿からは常にアースを 風袋容器ホルダー 取ります。全てのメトラー・トレド天びんは三線式の電源ケー "エルゴクリップ・バスケット" ブルを介して接続されるので、自動的にアースが取られます。 ! ヒント : 風袋容器ホルダー "エルゴクリップ・バスケット" は適正に放電し、チューブや試験管で発生する上に述べた様な問題点を効果的に防止します。 磁 力 問題点 計量皿にのせられた被計量物がその位置により異なる測定値と なる。計量値の繰り返し性が皆無。表示値は安定している。 考えられる原因 被計量物が磁性物質である。磁性物質及び透磁性物質は相互に 吸引し合います。発生作用力は誤って荷重と解釈されます。 鉄(スチール)を素材とした被計量物のほとんどが高い透磁性 (強磁性)を持っています。 MPS 15
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対策 被計量物をミューメタル箔の容器に入れるなどして、できるだ け磁力を遮蔽します。距離が広がるにつれ作用力が弱まるの で、被計量物を非磁性の下敷きなどを介して天びんから離すこ とも効果があります(例、ガラスシャーレ、アルミ製スタン ド)。床下計量でも同じ効果がもたらされます。この床下計量 装置は、メトラー・トレドのミクロ、セミミクロ、分析、精密 Excellence 及び Excellence Plus の各天びんのほとんどに組み込まれています。メトラー・トレ シリーズの天びん用の風袋容 器ホルダー "エルゴクリップ・ ドは最初から磁力による悪影響を防ぐために、非磁性素材を優 フラスコ" 先的に使用しています。 ヒント : 中型、大型の磁石を精密天びんで計量するには、さらに "MPS ! 計量皿" (Magnetic-Protection-System) を併用するようお勧めします。分析天びんには三角ホルダーを利用することをお勧めします。これにより磁石と計量皿の距離が広がります。Excellence 及び Excellence Plus シリーズの天びんには特別 "エルゴクリップ" を取り揃えてあり ます。 静浮力 作用 被計量物の重量は大気中と真空中で異なる。 原因 :「ある物体の重量はその物体が押しのけた媒体の重量と等 しい」(アルキメデスの原理)。この原理により、なぜ船が浮 かび、 風船が浮遊し、被計量物の計量値が大気圧により異なる のか説明できます。 被計量物を取り囲む媒体とは大気のことです。大気の密度は約 1.2 kg/m3 です(気温および気圧によります)。被計量物(固 体)に作用する浮力はその体積 1 立方メートル当たり 1.2 kg と なります。 例 ビーカ中の基準分銅100 g をさおばかりの片方の計量皿にの せ、もう一方の計量皿に同じビーカーをのせ、さおばかりが均 16
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メトラー・トレド計量ガイド 衡を保つまで水を注ぎ入れます。こうして両方の被計量物は大 気中でその重量が計量されたことになります。 続いて天びん全体にガラス製の大型ジャーをかぶせ、中を真空 状態にします。すると天びんは水を入れたビーカ側に傾きま す。その理由は、水の体積の方が大きいため、それだけ多くの 空気を押しのけており、その分大きな浮力を受けていたからで す。真空中ではこの浮力が消滅しています。従って真空中では 右側の水の重量は 100 g 以上あることになります。 基準分銅 水 大気中での重量 100 g 100 g 密度 8000 kg/m3 1000 kg/m3 体積 12.5 cm3 100 cm3 浮力 15 mg 120 mg 真空中での重量 100.015 g 100.120 g 対策 天びんの感度は密度 8.0 g/cm3 の基準分銅を用いて調整されま す。これとは異なる密度を持つ被計量物が計量されると、大気の 浮力によるエラーが発生します。高い相対測定精度が要求される 場合は、これに応じて表示値を補正することが望まれます。 サンプル処理後の質量差測定や重量比較測定などのように測定 日が異なる場合、気圧、大気の相対湿度、気温をチェックし、 以下に示したように大気による浮力を補正します。 被計量物の質量測定手順 1. 大気密度の算出 ρ 大気密度、kg/m3 P 気圧、hPa (=ミリバール() 測候所気圧を適用) h 大気相対湿度、% t 気温、℃ 17
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2. 被計量物の質量測定(大気による浮力を補正) m 質量 a 大気密度、kg/m3 ρ 被計量物の密度 c 通常物体密度 (8000 kg/m3) W 計量値(天びんディスプレイの表示値) 例 天びん表示値 200.0000 g 気圧 1018 hPa 大気相対湿度 70 % 気温 20 ℃ 被計量物密度 2600 kg/m3 重力 作用 標高が異なると、異なった計量結果となります。計量場所の標 高が 10 m 異なると、表示値が変わります(計量場所を建物の 1階から4階に変更した場合)。 原因 ある物体の質量測定で天びんは重力、即ち地球と被計量物間の 引力(重力)を測定することになります。 18
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メトラー・トレド計量ガイド この引力は天びん設置場所の緯度と標高(地球中心点からの距 9.82 N/kg 離)により異なります。 これには次の事があてはまります。 1. ある物体が地球の中心点から遠ざかるほど、その物体に作用 する重力は小さくなります。その減少度合いは距離の二乗に比 9.78 N/kg 例します。 2. 赤道に近づくにつれて、地球の自転により発生する遠心加速 度は強まります。この遠心加速度は引力(重力)に反作用しま す。南北の極地点が赤道から最も離れている地点であり、同時 に地球の中心点に最も近い地点です。ここでは物体に作用する 力が最大となります。 例 1階では正確に 200.00000 g が表示される重量 200 g の分銅 は、4階(10 m 高い)では次の様な重量変化を示します。 対策 設置場所を変更するたびに、天びん使用を開始する前にその水 平調整を実行し、天びんの調整(校正)を実行します。 ! ヒント : 内蔵 "FACT(" 全自動自己調整機能)を搭載した天びんはこの調整を自動的に実行します。メトラー・トレドの Excellence 及び Excellence Plus シリーズ天びんには “ FACT ” が標準装備されています。 19
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専門用語 最小表示 天びんの最小表示とは、ディスプレイ上で読み取れる二つの測 定値間の最小差のこと。ディジタル・ディスプレイでは最小 ディジット・ステップのことであり、分割値とも呼ばれる。 天びん機種に応じた標準最小表示(又は分割値) ウルトラミクロ天びん 1d1) = 0.1µg = 0.0000001 g 7 桁 ミクロ天びん 1d = 1 µg = 0.000001 g 6 桁 セミミクロ天びん 1d = 0.01 mg = 0.00001 g 5 桁 分析天びん 1d = 0.1 mg = 0.0001 g 4 桁 精密天びん 1d = 1 g 〜 1 mg = 1 g bis 0.001 g 0 〜 3 桁 1) 1d = 1 ディジット= 1 表示ステップ ! ヒント : "デルタレンジ" 又は“デュアルレンジ”天びんでは2つの異なる最小表示を備えています。これにより単一計量範囲の天びんに対しコストパフォーマンスの優れたオプションを備えた天びんと言えます。 正確さ(精度) 測定結果の根拠となる値への近似性の程度を表すもので、この 根拠となる値とは、 設定状況または協定方法により真の又は 正しい値、或いは期待値となり得る値である。[DIN1) 55350- 13]。 或いは単に、天びんの表示値が被計量物の実際の重量にどこま で近似しているかを表す。 テスト分銅の 精度等級( 正確さの等級 ) 同じ正確さをもつ異なる分銅の総括的分類のこと。 OIML2) R111に従った分銅等級の推奨により、分銅等級に該当す る公差限界が保持され、素材品質並びに表面品質がこの国際推 1) DIN ドイツ工業規格 2) 20 OIML 国際法定計量機関