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【技術資料】製油所における腐食対策のためのpH測定

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研究や学会、論文などで常に取り上げられる製油所での腐食問題です。インラインのpH測定の有用性についてご紹介

NACEインターナショナルによる分析レポートでは、製油所の腐食問題による年間の損失は米国だけで120億ドルにのぼると言われています。
腐食の主な要因のひとつはプロセス水のpH由来の問題。
プロセスに適切なpH測定システムの採用により、工場全体の腐食を抑え、pH制御剤や腐食抑制剤など化学薬品の使用量の削減に優れた効果を発揮しています。

このカタログについて

ドキュメント名 【技術資料】製油所における腐食対策のためのpH測定
ドキュメント種別 製品カタログ
ファイルサイズ 537Kb
取り扱い企業 メトラー・トレド株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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INGOLD Leading Process Analytics 製油所における腐食との戦い インライン分析の威力 製油所での腐食問題は、以前から現在に至るま で数多くの研究や論文、講習、ウェブフォーラム の議題となってきました。これまでに記された情 報の多くによると、腐食問題を理解する上で大 きな進展があったものの、問題は引き続き残り、 おそらく悪化することになると言われています。 製油所の腐食問題による世界全体のコストは、 米ドルで年間 150 億台になると見積もられてい ます。製油所は腐食の問題の程度を公開しない ため、より正確な数値を得ることは不可能です。 これは、これらの製油所が直面する環境規制が ますます厳しくなりつつあることを考えれば理解 できます。参考までに、これらのコストには損失 や稼働時間の低下は含まれていません。NACE イ ンターナショナルによる分析レポートでは、製油 所の腐食問題による年間の損失は米国だけ で 120 億ドルにのぼると言われています。 多大な研究と文献の数にも関わらず、腐食のメカ ニズムの多くは完全には解明されていません。 精油の問題は、腐食の元が一ヵ所だけでなく複数 あることです。その上さらに、腐食物の一部は相互 に働きかけて、互いの腐食性を高めたり、阻害する ことがあります。また、物理的なプロセス条件が影 響します。温度やフロー、レイノルズ数も考慮に入 White Paper
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れる必要があります。同じく重要なことは、製油所の 石鹸は油脂と水の混合物を安定させ、分離プロセス インフラストラクチャ自体です。パイプや容器、溶接、 の障害となることがあります。また、原油と水を激し 機器なども重要な要素です。変数の数を考えると、 く混合すると、分解が非常に困難な乳濁液となるこ 腐食は複雑な問題であることが明確になります。 とがあります。石油貯留層からの石油採取を最大に する目的で使用される水の存在や、貯留層で水が自 硫黄 然に発生したために、製油所に原油が乳濁液として 事態がすぐに好転しそうにない理由のひとつは、 届けられることがよくあります。このような乳濁液は 質の悪いサワー原油を処理することが多くなってい 化学分解できないということもあります。この場合、 るからです。サワー原油は、(硫黄成分の低いスイート 含有物が下流プロセスに入り込み、深刻な結果を招 原油とは対照的に) 硫黄成分の高い原油です。サワー くことがあります。 原油は供給原料コストが低いため、経済的な理由で 製油所に好まれています。さらに、スイート原油は供 酸の中和と抗乳化で重要な役割を果たす 1 つのプ 給の大半が枯渇して入手しにくくなってきています。 ロセスパラメータが、プロセス pH です。脱塩洗水 サワー原油の硫黄は、メルカプタン、H2S、硫化塩、 の排水の pH を注意深く監視することで、苛性ソー 元素状硫黄などの形で存在します。これらの物質の ダや酸の効率的な投与が可能になり、大幅なコス 多くは反応性であるため、精油プロセスの間に硫化 ト削減を実現することもできます。油 / 水の乳濁液 性負荷によるひび割れや硫酸の腐食が発生します。 の安定性は、pH に依存する部分があります。混合 物の pH を特定の範囲に維持することで、水滴に直 酸度 接作用し乳化破壊剤の化学薬品が乳濁液を分解し 硫黄のほかに、原油には石油の全酸価 (TAN) によっ やすくします。こうすることで、分離プロセスの速度 て数値化される数多くの成分が含まれています。この と品質を向上することができ、水の残留を少なくし 数値は特定の酸に固有のものではなく、原油に含ま て、下流プロセスでの腐食と汚染を大幅に抑えるこ れるすべての酸性含有物を基準とします。石油 1 グ とができます。 ラム中の酸を中和させるのに必要な水酸化カリウム の量によって定義されます。一般的に見られるのはナ 蒸留 フテン酸で、これは有機物ですが、鉱酸や H2S、 脱塩処理を十分に行った場合でも、下流プロセス HCN、CO2 なども存在することがあります。これらは で多量の腐食物が見られることがあります。この良 すべて装置の腐食に大きく影響する可能性がありま い例が、原油蒸留で発生するサワー水による腐食 す。サワー工程に適した材料であっても、このように強 です。プロセス運転中に多量の酸性ガスが発生し 力な化合物にさらされては損傷は免れません。しか ます。特に問題となるのが硫化水素です。分別を促 しながら前述のとおり、コスト上の理由でより高い 進するために蒸留塔に注入される蒸気が、塔の上 TAN の原油が好まれる傾向が見られます。 部で凝結します。硫化水素が凝縮物中で溶解して 弱酸が形成されます。これが、塔上部およびその上 脱塩 にある濃縮装置で負荷による腐食性のひび割れの 原油の脱塩は、腐食と汚染に直接影響する精油プロ 原因となることが知られています。これによって、 セスの第一段階です。水と原油を混合して洗浄する コンデンサーの修理頻度が高くなり、蒸留塔上部 ことにより、塩分と固形物は水相へと推移してタンク の総交換になることもあります。 内で沈殿します。電界を応用して油と水の分離を加 速化します。この方法では、汚染や加水分解の原因と この腐食の原因は製油業者の間でよく知られてはい なり、腐食性の酸を形成する無機塩がほとんど除去 ますが、常に対策がとられているとは限りません。 されます。多くの場合、油/水の乳濁液を分解するた 通常は、サワー水の pH を上げるために、腐食抑制 めに乳化破壊剤として化学物質が追加されます。 剤と苛性ソーダやアンモニアなどの大量の中和剤が また、酸性含有物を中和するために苛性ソーダなど 注入されます。これは有効な対策ですが、それが裏 の化学物質が投入されます。ただし、苛性ソーダを 目に出ることもあります。さまざまな酸性ガスとア 管理しないで投入すると有害な影響を及ぼす可能性 ンモニアが固形塩の蓄積につながり、それから発生 があります。苛性ソーダを過剰に投入すると、たとえ するアンモニウム二硫化物がアルカリ性サワー水に ば脂肪酸によって石鹸が生じることがあります。 よる腐食の主な原因となります。pH レベルが 7.6 を デジタル pH 電極 InPro 4260 i 2 METTLER TOLEDO White Paper
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超えると、アンモニウム二硫化物による腐食が急激 に悪化します。苛性ソーダを過剰に投与すると、簡単 にこのレベルに達します。このため、脱塩プロセスで 腐食を抑える秘訣は正確な pH 管理です。蒸留塔の 頭頂部コンデンサーブートの水質 pH 測定によって正 しく中和剤を投与すれば、腐食を抑えられるだけで 位を変えます。これによって、pH 測定のドリフトが発 なく化学薬品の消費量も減らすことができます。腐 生します。油脂を含む物質および固形の含有物が液 食抑制剤の使用を 15 % 以上も削減したという報告 絡部を覆ったり詰まらせた場合、センサの性能は明 があります。 らかに悪影響を受けます。こうした問題を解決する ために、センサのメーカーは液絡部を設計する際に 蒸留プロセスのほかにも数多くの下流作業にサワー 非常に工夫をしてきました。現在ではセラミックやプ 水が関係し、腐食の問題に悩まされています。 ラスチック、ゴム、さらに木製の液絡部を持つ pH 電 極を見つけることも可能です。メーカーが共通して 影響を受けやすい作業には次のものがあります: 抱える問題は、サワー水のアプリケーションでは性 n 真空蒸留 能が影響を受けやすく (場合によってはすぐに故障 n 流動触媒クラッキング します)、メンテナンスの必要性が高くなって寿命も n ハイドロクラッキング 短いということです。 n 水素処理 n コークス化 長年にわたり、電解質ジャンクションを持つ pH 電極 n サワー水の除去 は優れた結果を生み出してきました。ジャンクション からの電解質は、電極内部を加圧することで流出し これらの工程では pH 管理を適切に取り入れるエンジ ます。加圧すると、液体電解質が液絡部を通してプ ニアはあまり多くいませんが、数多くの設備で、ある ロセスへと入り込みます。電解質がこのように外に流 段階では pH 管理ループが備わっており、現在でもそ れ出すと、センサの比較電極への汚染物質の流入が うなっています。しかし、信頼性の面では、ほとんど 遅くなる上、液絡部の汚染と詰まりが抑えられます。 の pH 分析装置が製油所のサワー水環境において十 メトラー・トレドの InPro 2000 i は上記の性質を備え 分な実績を持っていません。精油アプリケーション向 持ち、石油精製アプリケーションで成果を発揮しま けに設計されていないため、ほとんどの pH 電極は高 す。ただし、上記の電極は電解液を充填する必要が レベルの硫黄および多量の炭化水素があると性能を あり、メンテナンス性を優先させたい場合には 発揮できません。メンテナンス要員やメーカーではこ InPro 4260 i pH電極を推奨致します。InPro 4260 i に うした問題をほとんど解決できないため、これらの標 は開いたジャンクションが備わっています。これは固 準的でないアプリケーションにおける pH 分析装置の 体の電解質をプロセス媒体に直接触れさせるための 多くはオペレーターによって無視されています。 穴です。一般的な pH 電極の液絡部の極めて小さい キャピラリとは対照的に、開いたジャンクションの直 しかし、正しく実行すれば、正しい pH 管理は相当な 径は極めて大きく、詰まりや汚染の影響もあまり受 利益につながります。化学薬品の消費量削減と腐食 けません。また電解質にはポリマー電解質を採用し 防止だけでなく、メンテナンス時の操業停止を減ら ています。Xerolyt® Extra は、炭化水素のある環境で して稼働日数を増やすことも利益の増加に貢献し の使用のために特別に設計され、硫化水素による汚 ます。 染に対して強力で長期にわたる防御となります。 Xerolyt® Extra 自動洗浄と校正 数え切れないほど多くの種類がありますが、ほぼす いかに優れた最高の pH 電極でもメンテナンスは必 べての pH 電極はサワー水アプリケーションでの過 要です。どんな測定機器よりも、pH 電極は最も広い 酷な環境において問題となります。センサ故障の最 測定範囲を極めて高い感度で測定する使命を持って も一般的な原因は、比較電極システムの汚染と故障 います。プロセスアプリケーションでは一定の時間が です。硫化物がプロセス側からセンサへと拡散して、 経過した後、システムが信頼性と精度を維持するた 銀 / 塩化銀の比較電極と反応し、比較電極側の電 めに校正が必要です。前述したサワー水のアプリケ デジタル pH 電極 InPro 2000 i METTLER TOLEDO 3 White Paper
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ーションでの使用は最も過酷です。どんなにセンサ が高性能であっても、たとえばボイラーの給水アプ リケーションの場合よりは、頻繁に洗浄と校正の必 要が出てきます。経験上、ほとんどの場合におい て 2 週間から 4 週間ごとに手作業による洗浄と校 正をすれば十分です。ただし、酸性度の高いサワー 原油を精製したり、上部の炭化水素 / 水分離が最適 でない場合、頻繁にメンテナンスが必要になること これにより、メンテナンスを事前に立案することが可 があります。こうしたアプリケーションの場合、自動 能になります。 洗浄および自動校正システムの導入を推奨します。 まとめ さまざまな“過酷”なアプリケーションで真価を発揮 世界の製油産業で、腐食問題によって年間数十億ド するのが、メトラー・トレドの EasyClean 400 システ ルのコストがかかっています。腐食の主な要因のひと ムです。この装置は危険区域での使用を前提に設計 つはプロセス水の pH ですが、製油業界における されており、最も困難な pH 測定作業を可能にしま pH 測定は、その過酷な環境における測定能力の低さ す。EasyClean 400 は自動的に空気圧によって電極 のために悪評を買っています。しかし、プロセスに適 を着脱し、十分に洗浄してから 2 ポイントの校正を 切な pH 測定システムの採用により、工場全体の腐食 行います。独立型の本装置には洗浄液と標準液が内 を抑え、pH 制御剤や腐食抑制剤など化学薬品の使 蔵されており、計装空気を利用して電極ホルダを動 用量の削減に優れた効果を発揮しています。これは 作させます。追加の洗浄液が必要な場合のために、 大規模なコスト削減につながるだけでなく、プロセス 予備のバルブが 1 つ用意されています。たとえば石 稼働時間の増加によって収益増加にもなります。 油精製アプリケーションでは、通常はナフサを使用 してセンサ表面から有機物の汚れを取り除き、続い センサ技術および測定ポイントのインテリジェント て硝酸を 2 番目の洗浄剤として硫化鉄などの腐食 オートメーションの進歩によって、最も困難な精製サ 物を除去します。EasyClean 400 を使用すれば、セン ワー水環境での pH 測定が可能になりました。精製 サの寿命が大幅に延びて、信頼性を損なわずに実質 稼働日数の増加と大幅なコスト削減によって、新設 的に 100 パーセントの測定可用性を達成できます。 pH ループの投資は短期間で回収可能です。さらに、 メンテナンス作業は、定期的なセンサ交換と洗浄液 複雑な腐食発生の方程式から要因のひとつを取り および標準液の補充に限られます。洗浄 / 校正シー 除くことで、腐食のメカニズムを一段と深く理解する ケンスごとに最小限の液剤しか使用せず、EasyClean ことになります。 400 には 3.5 リットルのキャニスターが備わってい るため、補充の必要はほとんどありません。 一歩進んだセンサ管理 (Intelligent Sensor Management) 最終的には、すべての pH 電極は老巧化して、性能は 要求される信頼性を下回るようになります。ISM 機能 (Intelligent Sensor Management) を持ったメトラー・ トレドの pH 電極は、稼動寿命を測定値や温度、セン サ診断情報とともにデジタル信号で伝えます。実際 のプロセス条件と履歴に基づいて、ライフタイムイン ジケータが動的にセンサの交換時期を予測します。 自動洗浄 / 校正システム EasyClean 400 Mettler-Toledo AG www.mt.com/pro Process Analytics Visit for more information Im Hackacker 15 CH-8902 Urdorf Switzerland White Paper