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化学装置 2017年12月号 掲載
このカタログについて
ドキュメント名 | 「乾燥の基礎と実際」攪拌型凍結乾燥機 アクティブフリーズドライヤ |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | ホソカワミクロン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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乾燥の基礎と実際 に内部を減圧した状態で,スクリュによる撹拌運転ができる構造となっ
撹拌型凍結乾燥機 ている。
ホソカワ/ミクロン
3.原理
アクティブフリーズドライヤ
凍結の原理および凍結乾燥の原理
落合 敬之* を理解するために水の状態図を図 2
に示した。水蒸気,水,氷の三態が
凍結乾燥のプロセスは,医薬品, といった弱点があった。これに対し, 同時に存在する三重点の圧力(約
食品,有機原料等の製造工程で用い 撹拌型のアクティブフリーズドライ 610Pa)あるいは温度(0.01℃)以
られてきた百年来の技術である。こ ヤ(AFD)は,これら棚型の弱点を克 下においては,水は液体で存在する
れらに採用されてきた凍結乾燥機の 服する機構を取り入れた全く新しい ことができず,固体である氷と気体
ほとんどは,棚型構造であり,棚に 凍結乾燥機である。当装置は,溶液 である水蒸気として存在する。した
冷媒を流す事で原料を凍結し,その や懸濁液,ペースト,湿分を含んだ がって三重点以下の圧力・温度条件
後高真空にすることで昇華・乾燥を 固体状のさまざまな原料を単一の工 に保持された原料は,加熱により氷
行っている。当社が新しく開発した 程によって,細かく,かつ凝集性の から水になることなく直接水蒸気に
撹拌型凍結乾燥機「アクティブフリ 低い粉体に加工することが可能であ 相変化,すなわち昇華する。この原
ーズドライヤ」はそれらと大きく構 り,乾燥時間も従来の装置の 1/2~ 理を利用して原料の乾燥を行うのが
造が異なり,乾燥プロセスに大きな 1/3 程度と,非常に短くなっている。 凍結乾燥である。
違いがある。本稿では,当装置が持 また,人の手を介せずに粉末まで 一般的な棚型凍結乾燥機は最初に
つ独創的な乾燥機構と特長について 加工できることから無菌操作に対応 冷却し,凍結させる。その後,三重
紹介する。 しており,工程の省力化と高度な製 点以下まで減圧して昇華・乾燥させ
品品質を得ることができる。この長 る。
1.装置概要
所を活かした代表的な用途としては, AFDでは撹拌しながら三重点以
従来から用いられてきた棚型凍結 抗生物質や原薬などの医薬品や食品 下まで減圧することで凍結させる。
乾燥機は,装置が大がかりで,原料 やハーブ抽出物などの食品添加物な 撹拌により,凍結の過程で過冷却に
や乾燥製品の入替等に人手を要する どがあげられる。さらに,この新技 よる氷晶は形成されない。全体的に
工程が多い上,乾燥に時間を要する 術は,ポリマーやセラミック,顔料, 流動性の高い均一な顆粒状の結晶が
金属酸化物などの無機物の凍結乾燥 形成される。減圧を継続しつつ,ジ
* にも適している。 ャケット温度を少しずつ上げることTakashi OCHIAI:ホソカワミクロン㈱ 技
術統括部東京技術部 技術第 3課 課長 で,効率的な昇華状態が保たれ,乾2.装置の構造
〒277-0873 燥が進行する。そして,水分がなく
千葉県柏市中十余二407-2 当装置の本体には,混合乾燥機と なると,品温は容器温度まで上昇し
TEL:04-7131-3165 して数多くの実績を持つナウタミキ 始め,乾燥操作が完了する。この時,
FAX:04-7137-3166 サ(図 1)を改良したものを用い, 撹拌しながら乾燥が進行するため,
E-mail:tochiai@hmc.hosokawa.com 容器ジャケット部を冷却するととも 多孔質で流動性の高い製品を得るこ
とができる。
4.乾燥例
液体(水)
図 3に山芋での乾燥チャートを示
1013hPa(大気圧) 常圧での乾燥 す。棚型では 500g,AFDでは 2 kg
真空(減圧) の原料を用いた。
圧 乾燥領域
力 固体(氷) 結果,乾燥にかかった時間は棚型
では約 48 時間,AFD では約 20 時
600Pa 間であった。また,乾燥品の写真を
凍結乾燥領域 三重点 気体(水蒸気) それぞれ図 4,図 5に示す。
昇華 棚型凍結乾燥機の乾燥品は不定型
0℃ 100℃ な塊で,人手を介さなければ回収で
温度 きない。一方,AFD乾燥品は顆粒
図 2 水の状態図 若しくは粉末となるため,下部に容
図 アクティブフリーズドライヤの構造図 器を直接接続することで容易に回収1
でき,コンタミネーションフリーを
50 化 学 装 置
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図 4 AFD乾燥品 図 5 棚型乾燥品 図 6 AFD乾燥品 図 7 棚型乾燥品
100000
投入量 温度設定 AFD品:20h
40
AFD AFD
℃→ 回収品水分値2000g 0 30℃
90000 3.39%W.B. 30
棚乾品:46h
80000 回収品水分値
20 3.21%W.B.
70000 AFD真空度
10
AFD乾真空度
60000 棚乾温度設定 AFDジャケット
0℃→10℃→20℃→30℃ 0 IN
50000 AFDジャケット
OUT
-10 AFD品温
40000 棚乾棚液温度
-20 棚乾品温
30000 棚乾
凍結条件 原料:山芋
20000 0℃,6h 水分値:71.35% -30
備考:いずれも投入前にペー
スト状になるまでミキ
10000 棚乾投入量 サーで処理済み -40
500g
0 -50
00:00:00 06:00:00 12:00:00 18:00:00 24:00:00 30:00:00 36:00:00 42:00:00 48:00:00
図 3 山芋での乾燥チャート(AFDと棚型凍結乾燥機との比較)
実現できる。 かる通り,AFD乾燥品はマクロに ノマテリアルなど
見ても多孔質な粒子になっているこ
5.特徴 7.結論
とがわかる。
⑴ 効率的かつコンタミネー ⑶ 省スペース AFDは上述のように棚型凍結乾
ションフリー 水平型容器や冷凍設備,乾燥棚の 燥と同等の熱履歴でありながら乾燥
乾燥時間が短く,省力化が図れる。 ハンドリング装置で構成される棚型 時間を大幅に短縮し,なおかつ人の
当装置を用いることで,単一工程で 凍結乾燥機と比較し,AFDは設置 手を介在させることなく粉体で回収
凝集塊がなく,流動性の高い粉体を に必要な床面積が小さく,少スペー できる画期的な乾燥機である。
製造することができる。そのため, スで設置できるコンパクトな装置で 食品の大量生産化・無菌製剤のイ
工程がシンプルで大幅な製造時間の ある。 ニシャルコスト低減・新素材開発と
短縮が図れる。また,装置の構造と いった大きな課題に応えられる新型
6.用途
操作工程からコンタミネーションの 乾燥機である。
ない環境(無菌)が得られる。 ◆医薬品(抗生物質,タンパク質,
⑵ 製品特性 コラーゲン,原薬など) 〈参 考 資 料〉
AFD乾燥品は,棚型凍結乾燥機 ◆食品および食品添加剤(ハーブ 1)化学機械の理論と計算
の乾燥品と粒子の構造が異なる。 抽出物,ミルク,誘導体,酵素,野 2)粉砕 No.58
AFD乾燥品は,再分散性と流動性 菜,脂質,香味料,繊維物質,タン 3)改訂 乾燥 No.2 工場操作シリーズ
に優れた特性を持ち,多孔質で顆粒 パク質,スープなど) 4) 製剤機械技術学会誌,Vol.24 No.2
状の均一な形状のものが得られる。 ◆無機材料(セラミック,顔料, (2015)
図 6,図 7に AFD乾燥品と棚型品 金属酸化物など) 5)凍結乾燥 Freeze–drying
の電子顕微鏡写真を示す。図からわ ◆ポリマー,生分解性高分子,ナ
2017 年 12 月号 51