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Form 2採用事例:競泳 古賀淳也 選手

事例紹介

「頭の中にある理想を、そのまま形にできる機械」競泳選手・古賀 淳也氏がFormlabs で切り拓く『デュアルキャリア』

古賀氏と3Dプリンタの出会いは2018年3月の出来事に遡る。ドーピング検査を受けた際に禁止物質が検出された。
その結果、国際水泳連盟から4年間の資格停止処分を受けた。原因は当時摂取していたサプリメントで、古賀氏は故意に禁止物質を摂取したのではなく、サプリメントに混入していたとしていたとして、スポーツ仲裁裁判所に身の潔白を訴えた。約2年に渡る手続きの結果、意図的な摂取ではないことが認められ、2020年5月14日までの資格停止に短縮された。

資格停止の間、希望が見えずに気持ちの浮き沈みから自暴自棄になりそうな時もあったという。練習が再開できないなかで、古賀氏は「現役復帰しても継続でき、リタイア後も続けられることや、競泳選手としてのキャリアが活かせるもの」を考えるようになった。

このカタログについて

ドキュメント名 Form 2採用事例:競泳 古賀淳也 選手
ドキュメント種別 事例紹介
ファイルサイズ 3.8Mb
取り扱い企業 Formlabs株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

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USER STORY: 「頭の中にある理想を、そのまま形にできる機械」 競泳選手・古賀 淳也氏が Formlabs で切り拓く『デュアルキャリア』 PRODUCT: CUSTOMER: デスクトップ型 3D プリンタ Form 2 B u c e p h a l u s 競泳選手・古賀 淳也氏 古賀 淳也氏は、背泳ぎの男子競泳選手として国際大会で 9 度の優勝経 験を持つトップクラスのアスリートだ。一方で 3D プリンタを活用したプロ ダクト開発に携わるクリエイターの顔も持つ。 伝統工芸を活用したジュエリー製作に加え、泳ぐフォームを矯正するリン グ型パドルの開発に勤しむ古賀氏が手放せないパートナーだと語るのは Formlabs の 3D プリンタ「Form 2」と豊富なレジン群だ。 なぜアスリートである古賀氏が 3D プリンタと出会ったのか。2018 年に起 きた不運と言える出来事から再起を図るまでの歩みを伺った。
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FORMLABS USER STORY : VOL.7 : JUNYA KOGA 古賀氏と3Dプリンタの出会いは2018年3月の出来事に遡 間も含めて、最も効率的に開発できると思い導入しました」 る。ドーピング検査を受けた際に禁止物質が検出された。 2018年12月に古賀氏が自ら購入した「Form 2」をデータ制 その結果、国際水泳連盟から4年間の資格停止処分を受け 作担当のカディンチェに設置し、造形したものを自分自身 た。原因は当時摂取していたサプリメントで、古賀氏は故意 で試すだけでなく、元競泳選手や趣味で泳いでいる一般の に禁止物質を摂取したのではなく、サプリメントに混入して スイマーにも依頼して検証し、その結果をデータに反映す いたとしていたとして、スポーツ仲裁裁判所に身の潔白を るというサイクルを繰り返した。 訴えた。約2年に渡る手続きの結果、意図的な摂取ではない ことが認められ、2020年5月14日までの資格停止に短縮さ 「Formlabsはレジンのバリエーションも豊富にあるので、 れた。 素材面からも検証しています。最初はスタンダード系レジン からスタートし、Grey Pro ResinやTough Resinなどのエン 資格停止の間、希望が見えずに気持ちの浮き沈みから自暴 ジニアリング系のレジンを使っています」 自棄になりそうな時もあったという。練習が再開できない なかで、古賀氏は「現役復帰しても継続でき、リタイア後も 水泳用パドルは製品化に向けて現在も開発中だが、オンラ 続けられることや、競泳選手としてのキャリアが活かせるも インで自分の手に合うサイズで注文できるようにするなど、 の」を考えるようになった。 本格的な事業化に向けた構想も進んでいる。 「日本国内の競泳人口は20万人以上いますが、10%程度 最初に始めたのは泳ぐフォームを矯正するパドルの制作 のシェアを得たいと考えています。資格停止を受けた2年 だった。 間にセカンドキャリアについて考える時間がありました。自 指に装着するリング型のパドルで、ストロークのフォームの 分のアイデアや経験を元に、3Dプリントを依頼している3D 癖を装着したユーザー自ら確認できるようにするためのも Printing Corporationとともに形にすることで、選手の助 のだ。 けになったり、体を動かしてみたい人や、リハビリをする人 たちの助けになったりしたいですね」 「入水後、人差し指側に体重を乗せていれば胸周りの筋肉 を、薬指や小指側に体重を乗せていれば背筋を優位に使っ て泳いでいるという仮説を立てて、自分の理想とするフォー ムを身につけるアシストができないかと思って開発をはじ めました」 国際大会に出場するクラスのアスリートともなれば、自分 が理想とするフォームを練習時から何度も確認し、本番に 合わせていく。理想とするフォームを入念に調整し、本番で ベストな結果を出すために、アスリートは試行錯誤を繰り 返すのだという。 試作品の制作3Dプリンタを使うことを決めたのは、古賀氏 古賀氏が制作するパドルの変遷。指の間にある水かき部分は試作と検証を 重ねた結果、小型化しているのがわかる。 自身だった。形状を細かく調整しながら、短いスパンで改良 していくためには3Dプリンタしか考えられなかったという。 ー データ制作は古賀氏の知人が経営する、XRコンテンツ開発 漆と 3D プリント 伝統と最新技術が 会社「カディンチェ」に依頼。造形する3Dプリンタは迷うこと 出会ったリング 無く「Form 2」を選択した。 古賀氏がパドル制作と並行して、制作しているのが3Dプリ 「水泳選手は肌触りに人一倍こだわる人が多いので、積層 ンタを使用したジュエリーリング制作だ。 痕がなく肌に触れても違和感の無い光造形方式しか考えら 友人でアーティストとして活動するyutaokuda氏と共に、 れませんでした。『Form 2』を選んだ理由は自動でラフトや 2019年に立ち上げたブランド「Bucephalus(ブケパロス)」 サポート材が設定され非常に使いやすいことや、造形の成 が制作するリングは、「Form 2」でプリントしたリングに漆塗 功率が圧倒的に高いこと。プリントだけでなく後工程の時 や螺鈿など日本の伝統工芸による加工が施されている。
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FORMLABS USER STORY : VOL.7 : JUNYA KOGA 会津若松の漆器職人小松 愛実氏が筆と刷毛を巧みに使い、漆加工したリングは 3D プリントしたリングに独特の艶が加わる。 制作プロセスも非常にユニークだ。3Dデータから「Form 古賀氏らのチャレンジを成功させるにあたっては、作品の 2」のHigh Temp Resinで造形したリングに職人が漆を塗 土台となる素材はクオリティを左右する重要な役割を担っ る。その後、一ヶ月かけて乾燥させる。 ていた。当初は原型をFormlabsのCastable Wax Resinで 模様を施す塗り方になると、さらに工程は複雑だ。漆に豆 作り、鋳造用の型を制作していたが、原型となるリングの高 腐を混ぜて粘度の高い漆を作りリングに塗る。その後、銀粉 精細な仕上がりに、「このままリングとして使える」と判断。 を吹付け、その上から再び漆を塗る。乾燥させたあと、表面 レジン製のリングに漆塗りを施すことで、世界でも類を見な を磨くと模様が浮き出る。一つとして同じ模様がないリング い作品へと昇華した。コンセプトとしていた「新たなチャレ はアート作品とも言える仕上がりだ。 ンジ」という文脈でも、3Dプリントによるアクセサリは前例 が無い。 この他にも貝殻の内側にある真珠層を切り出し、漆地の表 面にはめ込む「螺鈿細工」をリングの内側に施した作品も リングの製作はFormlabsの3Dプリンタとレジンが無けれ あり、世界でも類を見ない3Dプリントの可能性を突き詰め ば実現しなかったと古賀氏は振り返る。 るブランドとして活動している。 「原型を作るためのリングを『Form 2』で造形したら思ってい た以上にクオリティが高く、型を作らなくても後加工をすれ 制作のコンセプトは、関わる人にとって新しいチャレンジを ば普通にこのまま商品になるという確信がありました。強度 すること。アスリートである古賀氏と、絵画アーティストであ や色合いなどを確認するために最初はClear ResinやWhite るyutaokuda氏にとってもジュエリー制作はチャレンジだ Resin、そして強度のあるRigid Resinで検証しました」 が、二人に協力する職人にとってもチャレンジングな要素が あることを目指している。 伝統工芸とコラボレーションしたモデルにはHigh Temp Resinを採用した。乾燥工程による変形やひび割れもなく、 「二人でデザインした案をもとにリングを制作するジュエ 漆との相性も抜群だった。3Dプリントしたリングに漆を塗 リー職人さんによっても、3Dプリンタによる原型づくりだけ るという奇抜なアイデアはアスリート時代の経験が生きて でなく、リングそのものを3Dプリンタで制作するというのは いると古賀氏は明かす。 初の試みでしたし、会津若松の漆塗職人の方にとっても、 「陸上競技の腕の動きやテニスでラケットを振る動作から 3Dプリントしたリングに加工を施すのは初めてのことでし フォームであったり、科学や物理の理論を参照したりしなが た。私たちは一緒に関わる方にとっても、初めての試みがあ ら泳ぐフォームを考えるということを、高校生の頃からやっ り、それに対して対価を支払うことで下請けではなく、一緒 ていました。それと同じ発想で、自分で作りたいものがあっ に作品を作り上げる仲間というスタンスを大事にしていま たときには、技術的にできるかわからないけれども異なる した」 二つを掛け合わせてみるというトライをやりたいと思ってい ました」
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FORMLABS USER STORY : VOL.7 : JUNYA KOGA Bucephalus の最新作ではネイルアーティストとコラボレーションし、ジェルネイルを使ったカラフルなリングを発表している。 アスリートのセカンドキャリアや 競泳選手として再び復帰し、1年延期となったことで新たな 『デュアルキャリア』につなげたい 目標となったオリンピックも見据える古賀氏。今後はアス リートと並行して、2つのプロジェクトにも邁進する『デュア ルキャリア』の確立を目指す。 期間の限られたアスリートとしてのキャリアと並行して、一 生涯取り組むことができるキャリアを歩む『デュアルキャリ ア』は、引退後のプロアスリートの人生を豊かなものにする という側面から、その重要性が議論されている。 資格停止という厳しい状況のなかにいた古賀氏は、周囲の 友人の支えがあったことで、新たなキャリアの糸口を掴み、 Formlabsの3Dプリンタを通じて理想を形にしようとしてい る。 古賀氏がパドルの試作開発に利用している 3D プリンタ「Form 2」と、洗浄・ 二次硬化を行う「Form Wash」と「Form Cure」 「アスリートの『デュアルキャリア』というと、どこかの会社に 所属して働くというキャリアが今は中心ですが、自分自身 競泳用のパドルと伝統工芸を組み合わせたリング製作をサ がやりたいことを仕事にできる先例になりたいと思います。 ポートするFormlabsの3Dプリンタとレジンを、古賀氏は必 海外進出も視野に入れているパドルと、さまざまな職人や 要不可欠な存在だと評価する。 アーティストとコラボレーションする刺激を楽しむリングは、 「一言で言えば、自分の頭の中にある理想を、そのまま作り いずれも引退後も長く続けられるプロジェクトなので、これ 出してくれる機械ですね。いろんな種類の3Dプリンタがあり からもFormlabsのプリンタとレジンで理想を形にし続けて ますが、データ通りに確実に造形できる『成功率』の高さが いきたいと思います」 最も高い点が素晴らしいと思います。私自身、水泳選手とし て練習したことが本番のレースで発揮されるかという『成 功率』にずっとこだわってきたので、『今、出力したい』という ときに、しっかり良いものを造形してくれるという面で頼も しい存在です」 発行元: Instagram, Facebook, Twitter Formlabs 株式会社 @ FormlabsJapan https://formlabs.com/ja/ ©Formlabs 株式会社 2020 Printed in japan