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Form 3 & Form 3L採用事例:株式会社トリアド工房

事例紹介

博物館・資料館等に向け、文化財の展示用レプリカを製作するトリアド工房。デジタル化で変わったことは。

株式会社トリアド工房は博物館や資料館などの展示造形物制作を手掛ける企業だ。1970 年の創業以来、文化財の修復や展示造形物· レプリカなどの制作、常設展や企画展などの内装施工まで一貫に手掛ける。国指定重要文化財を扱える日本でも数少ない企業として、これまでに数多くの展示品を手掛けてきた。同社が近年力を注いでいるのがアナログとデジタルを融合したものづくりだ。

文化財のデジタルデータ化の流れを読み、10 年以上前から3D データを活用したレプリカの作成に着手。現在ではFormlabsの3Dプリンターを活用し、データ化から造形に至るまで自社内で内製化している。

このカタログについて

ドキュメント名 Form 3 & Form 3L採用事例:株式会社トリアド工房
ドキュメント種別 事例紹介
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登録カテゴリ
取り扱い企業 Formlabs株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

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USER STORY: デジタル化することで文化財の魅力は果てしなく広がる—— レプリカ製作を手掛けるトリアド工房の Form 3L 活用法 PRODUCT: COMPANY: 3D プリンタ Form 3L 株式会社トリアド工房 株式会社トリアド工房は博物館や資料館などの展示造形物制作を手掛ける企 業だ。1970 年の創業以来、文化財の修復や展示造形物 · レプリカなどの制作、 常設展や企画展などの内装施工まで一貫に手掛ける。国指定重要文化財を扱 える日本でも数少ない企業として、これまでに数多くの展示品を手掛けてきた。 同社が近年力を注いでいるのがアナログとデジタルを融合したものづくりだ。 文化財のデジタルデータ化の流れを読み、10 年以上前から 3D データを活用 したレプリカの作成に着手。現在では Formlabs の 3Dプリンターを活用し、デー タ化から造形に至るまで自社内で内製化している。 造形物の品質は業界内でも折り紙付きで、近年トレンドになっているレプリカを 直接触れる展示形態との相性も良く、3D プリンタの稼働が途切れることはな いという。同社が独自に追求してきたデジタル×アナログ技術は他社の追随を 許さず、顧客からの評価も高いという。まさに業界屈指のデジタル職人集団で あるトリアド工房の「Form 3L」活用法や、手作業と 3D プリントを融合させる 職人哲学について話を伺った。
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FORMLABS USER STORY : VOL.11 : TORIADO KOUBOU Co.,Ltd. トリアド工房社内の作業場の様子 トリアド工房 取締役社長 阿部知行氏(左)と、工場製作室別所俊春氏(右) デジタル化の加速によって、レプリカ製 体制など長きに渡って安定的に利用できるメーカーを基 作工程も劇的に変化 準に選定したという。同社の条件に最も合致していたのが Formlabsの3Dプリンタだったと阿部氏は振り返る。 繊細な作業が要求される文化財のレプリカ製作の現場で 「Formlabsは他社と比較して価格が手頃だった一方で、造 は、長らく型取り工法による手作業が中心だった。文化財 形品質が安定していました。故障時のサポート体制や定期 資料表面を慎重に錫箔などで保護した上でシリコン樹脂 的なファームウェアやソフトウェアの更新など中長期的に を用いて内型を、不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維を 運用できる条件が整っている点や、新しいモデルを定期的 用いて外型の製作を行っていた。この型を用いて手作業に にリリースしていることも決め手になりました」(阿部氏) よる樹脂成形(FRP樹脂成型)を行った後に、手作業による 彩色を行い博物館や美術館にレプリカを納めていた。文化 当時、最初に導入したのは「Form 2」(2020年に販売終了) 財資料に直接触れるというリスク管理と一点物の製作によ だったが、造形の精度や仕上がりの面も理想通りだったと るネックにより、長らく手作業に頼る多数の工程による時間 いう。 を要した。 「レプリカは小さいものだと近づいてじっくり鑑賞するの で、仕上がりも近距離での鑑賞に耐えうるものでなくては デジタル化のきっかけは2000年代後半ごろ。取引先から文 なりません。その点、Formlabsの3Dプリンタは積層ピッチ 化財資料の3D計測データを活用して、資料の凹凸に対応 を100μmにしても再現度が高く、納品先の学芸員からの評 した演示具(展示台)をできないかという相談を受けたとき 価も非常に高いですね」(阿部氏) のことだった。 「その当時は弊社だけでなく、業界全体でも3Dに関するノ ウハウが無かったので、他業界で実績のある外部パート ナーに相談するところから始まりました」(取締役社長 阿 部知行氏) 同社は3Dデータを活用したレプリカ製作ノウハウを他業界 から積極的に吸収した。その後、実績と共にデジタルを活 用した案件が増加したことに伴い、データ化から造形まで を一貫して内製化することを決断する。 展示物のクオリティを左右する3Dプリンタは光造形方式 の導入を前提としつつも、コストパフォーマンスやサポート トリアド工房に導入された「Form 3L」
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FORMLABS USER STORY : VOL.11 : TORIADO KOUBOU Co.,Ltd. 町田市指定有形文化財 なすな原遺跡出土透かし彫り土製耳飾り一式(12 点)レプリカ 現在、同社では「Form 3」と「Form 3L」を導入し、休日も含 タを造形できるので、運用方法を工夫すれば造形時間の短 めて全台がフル稼働しているという。割型による樹脂成形 縮も可能です。精度も高く稼働も安定しているので、社員が では成形品にバリが発生し、仕上げ工程に時間を割いてい 稼働しない夜間や週末も安心して造形を任せられます」 たが、精密なレプリカを一回で造形できるようになったこと で工程も大幅に削減された。納期が短くなっただけでなく、 彩色など職人が本来集中するべき工程に時間を割くこと ができるようになり品質面の向上も実現した。 「品質以外にもデジタル化によって、改善した点は多々あり ます。内製化したことでリードタイムも大幅に短縮でき、展 示物が破損した場合に備えて、同じものを複数造形して納 めることもできるようになりました」(阿部氏) 近年は目で鑑賞するだけでなく、触って鑑賞する展示形態 が博物館でもスタンダードになりつつあるという。複数サイ ズでの造形や、スペアをあらかじめ予算内で用意できるの は3Dプリンタならではの利点だと阿部氏はデジタルによる 制作のメリットを語る。 Form 3Lで試作造形した馬型埴輪ミニチュア。造形にはGray ResinやClear 「『Form 3L』の最大造形サイズはレプリカ造形には魅力的 Resinを使用することが多いが、触れる展示品にはTough Resinを採用する ですね。大型のデータを扱うだけでなく、一度に多くのデー こともある
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FORMLABS USER STORY : VOL.11 : TORIADO KOUBOU Co.,Ltd. 提案力も強化し、受注数にも変化 「業界内ではデジタルの到来によって、アナログは淘汰され るという話もありましたが、逆にその価値が高まったと思い 一点一点職人が丁寧に制作するという点はデジタルもア ます。出土品の復元や、そこに刻まれた文字などを検証す ナログも変わらない。しかし、3Dプリンタ導入以降はこれま る際にもデータではなく、実際に3Dプリントしたものを見 での職人技に加え、顧客視点の提案ができるようになった たほうが議論もしやすく、文様や形状の推測もしやすいと という。 好評です」(阿部氏) 海岸のジオラマ模型を納めた案件では、使用された消波ブ 同社では文化財の複製に関する案件の8割はデジタルが ロックのデータを拡大したものを追加で受注。発注企業の 前提となり、データのスキャンから3Dプリントまではデジタ 消波ブロックの設置パターンを学ぶ社内研修用の教材に ルで進める方向にシフト。一方で、複製品のリアリティを左 応用した。また、展示用にスキャンした土器のデータを応用 右する彩色はこれまでの手加工の技術にさらに磨きをかけ したパズルの商品化を実現するなど、データをマルチユー る方向を選択している。デジタルとアナログを行き来する スする提案をする頻度も増えたという。 新たな職人の育成に余念がない。 「デジタルによる内製化が浸透したことで、仕上げの時間に 重きを置く組織づくりにシフトし、結果的に質と量が年々向 上しています。今後は素材の研究も進めながら、金型レス による量産や、3Dプリントで型を作ることにもチャレンジし ていきたいと考えています」 文化財の3Dプリント活用の可能性は高く、その反面樹脂が オリジナルの資料に悪影響が出ないかといった検証も必 要となってくる。今後は大学との共同研究も検討をしている という。時代の変化とともに文化財の保存と活用のための 複製技術や修復技術も変わっていくだろうと阿部氏は将来 を見据えた職人育成を続けている。 縮小プリントした造形物にパズル用のスリット(断面)を、学芸員が手書き で指示したもの。デジタルデータを活用した商品開発の機会も増え、ギャ ラリーショップとのコラボレーション件数も増えている デジタルデータが普及し、そのジャンルも多様化する一方 で、直接手に取って触れられる模型の価値は損なわれてい ない。それどころか、その重要性はデジタルによって増して 文化財業界のトップランナーであるトリアド工房には、ベテランから若手ま いるという。 で、さまざまな技術とバックグラウンドを持った人材が揃う 発行元: Instagram, Facebook, Twitter Formlabs 株式会社 @ FormlabsJapan https://formlabs.com/ja/ ©Formlabs 株式会社 2019 Printed in japan