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テーマは脱炭素社会「CKD技法 Vol.10 (2024年)」

事例紹介

リモートI/O保護構造技術・高信頼性エアブースタの長寿命化技術・リチウムイオン電池用巻回機の多軸巻芯による巻回工程の最適化などの技術を紹介

CKD技報は、永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への
技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。

下記の内容をご紹介しています
リチウムイオン電池用巻回機の多軸巻芯による巻回工程の最適化
円筒形太陽電池の製造技術開発
冷却水循環ポンプ搭載打抜型
PTP包装機のトレーサビリティシステム
リモートI/O保護構造技術について
高信頼性エアブースタの長寿命化技術
防水形省電力アクチュエータの耐環境、省電力技術
カルマン渦式流量センサ技術
空気圧バルブ組立の自動化

このカタログについて

ドキュメント名 テーマは脱炭素社会「CKD技法 Vol.10 (2024年)」
ドキュメント種別 事例紹介
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取り扱い企業 CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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H1

C K D 技 報                 V o l ・ 10 CKD技報 Vol.10 CKD Technical Journal チタンパイプ 2 0 ガラス 2 4 年 1 月
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00_企業理念_目次_ごあいさつ

CKDの理念 CKDグループは、2023年4月に「Purpose」と「Brand Slogan」を、 2023年10月に「Values」を制定しました。 Purpose Purposeは、CKDグループを取り巻く社会の変化に合わせた 存在意義と目指す方向を定めたものです。 Valuesは、Purpose実現のため社員一人ひとりが Values 大切にすべき5つの価値観です。 Brand Sloganは、PurposeとValuesの理念を包含し、 未来に向けた私たちの考えや行動を Brand Slogan 簡潔に表現しています。 Purpose 存在意義 自動化技術の探究と共創を続け 健やかな地球環境と豊かな未来を拓きます。 Values 価値観 ~CKD-SHIP~ [C-SHIP] CKDらしさ Customer 顧客志向 Sustainability 持続可能性 Human 人材重視 Innovation 革新 Professionalism プロ意識 Brand Slogan ブランドスローガン 1 CKD 技報 2024 Vol.10
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目次 CKDの理念 CKDグループは、2023年4月に「Purpose」と「Brand Slogan」を、 2023年10月に「Values」を制定しました。 Purpose Purposeは、CKDグループを取り巻く社会の変化に合わせた 存在意義と目指す方向を定めたものです。 Valuesは、Purpose実現のため社員一人ひとりが Values 大切にすべき5つの価値観です。 目次 Brand Sloganは、PurposeとValuesの理念を包含し、 未来に向けた私たちの考えや行動を Brand Slogan 簡潔に表現しています。 ごあいさつ 1 巻内特集 テーマ「脱炭素社会」 Purpose リチウムイオン電池用巻回機の多軸巻芯による巻回工程の最適化 2 存在意義 自動化技術の探究と共創を続け 円筒形太陽電池の製造技術開発 4 健やかな地球環境と豊かな未来を拓きます。 冷却水循環ポンプ搭載打抜型 9 Values PTP包装機のトレーサビリティシステム 12 価値観 ~CKD-SHIP~ リモートI/O保護構造技術について 16 [C-SHIP] CKDらしさ 高信頼性エアブースタの長寿命化技術 20 Customer 顧客志向 Sustainability 持続可能性 防水形省電力アクチュエータの耐環境、省電力技術 24 Human 人材重視 カルマン渦式流量センサ技術 28 Innovation 革新 Professionalism プロ意識 空気圧バルブ組立の自動化 31 Brand Slogan ブランドスローガン CKD 技報 2024 Vol.10 2
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Table of Contents Greetings 1 Special Report on“ The Decarbonized Society” Optimization of Winding Process by Multi-axis Mandrel of Lithium-ion Battery Winding Machines 2 Development of manufacturing technology for cylindrical solar cells 4 Punching mold with cooling water circulation pump 9 Traceability System of Blister Packaging Machines 12 Ingress Protection Technology for Remote I/O 16 Technology for Extending the Service Life of High-Reliability Air Boosters 20 Environmental-Resistance and Power-Saving Technologies in Waterproof Power-Saving Actuators 24 Karman Vortex Flow Sensor Technology 28 Automation of pneumatic valve assembly 31 3 CKD 技報 2024 Vol.10
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ごあいさつ 脱炭素社会の実現に向けて “Towards the realization of a decarbonized society” 林田 勝憲  Katsunori Hayashida CKD株式会社 常務執行役員 コーポレート役員 CKD Corporation Managing Executive Officer Corporate Officer  世界的に猛威を振るった新型コロナウイルスも漸 COVID-19, which raged around the world, has く収束し、コロナ禍前の日常に戻ってきました。原 finally been brought under control, and we have returned to the everyday life of prior to the 材料を含む数多くの部材の入手難も一部を除いて落 pandemic. The difficulty of obtaining many raw ち着きを取り戻しております。一方米中関係は緊張 materials and other parts, has, with some exceptions, regained stability. On the other hand, が続いており、ウクライナ情勢も解決の兆しが見え US-China relations continue to be tense, and the ません。為替も円安が当面続くとの見方から様々な situation in Ukraine shows no signs of resolution. As the yen is expected to continue to weaken for the 業界におけるサプライチェーンの再構築が必要な状 foreseeable future, the rebuilding of supply chains 況となっております。ここ数年活況だった半導体関 wi l l be necessary in var i ous indus t r i e s . 連の設備投資も鈍化傾向です。製造業各社における Semiconductor-related capital investment, which has boomed in recent years, is also tending to slow 部材や製品の在庫も積み上がっており、当面は厳し down. Inventories of parts and products at い状況が継続すると思われます。 manufacturing companies are also piling up, and it seems the difficult situation will continue for the  このような状況の中でも脱炭素社会に向けた取り time being. 組みは大きく注目され、モノづくりにおいても環境 In such circumstances, initiatives for a decarbonized society have attracted considerable attention, and 目線は無くてはならないものとなっております。 there must be an environmental perspective in TCFDの開示や賛同、Scope1,2,3への取り組みなど大 manufacturing. TCFD disclosures and the endorsement of the framework, as well as initiatives 企業だけでなく数多くの中小企業においても避けて for Scope 1, 2 and 3 emissions, have become は通れない状況となっております。 unavoidable not only at large companies, but also at  今回お届けするCKD技報Vol.10の巻頭特集の many small and medium-sized enterprises. The theme of the special feature at the beginning of テーマは「脱炭素社会」です。「リチウムイオン電池 this CKD Technical Journal Vol. 10 is“ decarbonized 用巻回機の多軸巻芯による巻回工程の最適化」「円 society.” It provides information on technical themes for the realization of carbon neutrality such 筒形太陽電池の製造技術開発」などカーボンニュー as“ optimization of the process of winding using the トラルの実現に向けた技術テーマを掲載しました。 multi-axis winding cores of a lithium ion battery winding machine” and “ the development of 皆様の活動に少しでもご参考になれば幸いです。 cylindrical solar cell manufacturing technology.” We  CKDグループは持続可能な社会の実現に向けて hope that this will be of reference to you all in your activities. お客様と共に歩んで参ります。 The CKD Group will work together with customers  引き続き皆様からのご指導、ご鞭撻をよろしくお towards the realization of a sustainable society. 願い申しあげます。 Please continue to provide us with your guidance and encouragement. CKD 技報 2024 Vol.10 1
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01_リチウムイオン電池巻回機の多軸巻芯による巻回工程の最適化

巻内特集 テーマ「脱炭素社会」 リチウムイオン電池用巻回機の多軸巻芯による 巻回工程の最適化 Optimization of Winding Process by Multi-axis Mandrel of Lithium-ion Battery Winding Machines 八木 崇典 Takanori Yagi 近年、世界的な環境意識の高まりにより、二酸化炭素を排出しない電気自動車の普及が求められている。それに伴 い、電池製造会社では車載用リチウムイオン電池の品質向上と生産性向上が大きな課題となっている。 当社が手掛けるリチウムイオン電池用巻回機では、巻きズレによる品質低下の抑制と生産性の向上を目的に、多 軸巻芯による巻回工程の最適化を図っている。 本稿ではその技術を紹介する。 A rise in environmental awareness globally in recent years has led to demand for an increase in electric vehicles that do not emit carbon dioxide. Accordingly, increasing the quality and productivity of in-vehicle lithium-ion batteries has become a major challenge for battery manufacturers. The lithium-ion battery winding machines manufactured by our company optimize the winding process through the use of a multi-axis mandrel in order to increase productivity and reduce quality losses due to winding misalignment. This paper introduces the technology behind it. 1 はじめに  当社はリチウムイオン電池製造装置の一つである巻 回機を製造・販売している。巻回機とは、シート状の正 極材、負極材(以下、極板とする)、セパレータ材2枚の 合計4枚を重ねて層状に巻き取る装置であり、その巻 き取る部品を巻芯と呼ぶ(Fig.1)。 Fig. 2  巻回体の外観 2 巻回工程における課題 2-1  セパレータの巻きズレ  セパレータは数ミクロンの厚みしかなく、カットし た先端・終端をフリー状態にすると、始端部を巻芯に 供給する際、また終端部を巻き取る際に、幅方向に動 き、巻きズレが起こりやすい。セパレータの巻きズレ が起こると、電池を充放電した際に正極・負極間で ショートが起こり、電池としては不良品となるため、 0.1mm台での巻きズレ精度管理が行われている。 Fig. 1  巻回機イメージ 2-2  時間を要する3つの工程  巻回機では、巻芯にて上記4枚を所定の長さで巻き  巻回工程には、下記3つの工程が生産性に大きく起 取り、カットした後、終端がばらけないように巻止め 因する。 テープを貼り付ける。こうして製作された製品を巻回  ①巻 回工程:材料の供給から、材料を巻き取り、 体と呼ぶ(Fig.2)。 カットするまでの工程  ②終 端処理工程:カットした材料を最後まで巻き 取り、巻止めテープを貼り付ける工程 2 CKD 技報 2024 Vol.10
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【巻内特集】 リチウムイオン電池用巻回機の多軸巻芯による巻回工程の最適化  ③取 り出し工程:巻き取った巻回体を巻芯から取 り出し、後工程へ受け渡す工程  生産性を向上させるためには、如何に各工程に掛か る時間を短くするかが課題である。 3 課題に対する解決策  当社の巻回機は多軸巻芯による工程の分割化と、セ パレータの始端・終端をフリーにしない摑み替え構造 により、この課題を解決している。その工程を以下に 示す(Fig.3)。  ①生 産開始時、既に巻芯Aにセパレータのみが把 Fig. 3 工程イメージ 持されている  上記工程により、工程④・⑤にて巻芯Aと巻芯Bによ  ② 極板を供給し、巻き取りを開始する るセパレータの摑み替えを行うことで、セパレータの  ③極 板のみ所定の長さでカットする 始端がフリーにならず、巻きズレを防止する。また工  ④セ パレータがつながったままターレットにより 程⑤・⑥にてカットしたセパレータの終端にテンショ 巻芯Aがポジション(以下Pos.)2へ移動する ンを掛けながら巻き取ることで、セパレータ終端の巻  ⑤巻 芯Bがセパレータをチャックした後、セパレー きズレや折れ・シワを防止する。 タをカットする  生産性においては、3ポジションに工程を分割する  ⑥巻 芯Bに極板を供給し、巻き取りを開始する ことで、従来掛かっていた時間の1/3で生産可能と 巻 芯 A に て セ パ レ ー タ の 終 端 を テ ン シ ョ ン なった。 チャックにて引っ張りながら巻き取る  ⑦巻 芯Bにて極板のみ所定の長さでカットする 4 おわりに 巻芯Aにて巻止めテープを貼り付ける  ⑧セ パレータがつながったままターレットにより  今回は、セパレータの巻きズレによる品質低下の抑 巻芯BがPos.2へ移動する 制と生産性の向上についての技術を紹介した。当社は、 巻芯AがPos.3へ移動する この他にも数多くの技術により、巻回機の性能向上に  ⑨巻 芯B、Cが工程⑤~⑦を繰り返す 努めている。今後も新たな技術に挑戦し、電池業界の 巻芯Aから巻回体を取り出し、後工程へ搬送する 発展を通して、持続可能な社会の実現に貢献していき  ⑩巻 芯AがPos.1に戻り、以降この動作を繰り返す たい。 ※1 特 開2013-161740巻回装置 特許権者:CKD株式会社 執筆者プロフィール 八木 崇典 Takanori Yagi 自動機械事業本部 Automatic Machinery Business Division CKD 技報 2024 Vol.10 3
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02_円筒形太陽電池の製造技術開発

巻内特集 テーマ「脱炭素社会」 円筒形太陽電池の製造技術開発 Development of manufacturing technology for cylindrical solar cells 林 雅博 Masahiro Hayashi 野村 隆利 Takatoshi Nomura 地球温暖化の抑止のため、世界的にカーボンニュートラルに向けた取り組みとして再生可能エネルギーの導入を 増やし、主力電源化が推進されている。日本は国土面積当たりの太陽光発電導入量は主要国で1位であるが、従来の 平板型太陽電池を設置する適地が残されていない。設置場所制約の課題を克服する次世代型太陽電池の開発が不可 欠であり、産学官による大規模な開発事業が進められている。円筒形太陽電池は軽量かつ垂直設置も可能な太陽電 池であるため、設置の自由度が高く、これまで平板型では設置できなかった場所へ設置することが可能となる。本稿 では次世代型太陽電池として有望な円筒形太陽電池の特長と円筒形太陽電池の基盤技術であるガラス封止技術に ついて紹介する。 In order to curb global warming, the introduction of renewable energy is increasing and renewable energy is being promoted as a main power source as part of efforts to achieve carbon neutrality worldwide. Although Japan ranks first among major countries in terms of the amount of solar power generation it has installed per unit of land area, there is still no suitable land left for installing conventional flat-plate solar cells. It is essential to develop next-generation solar cells that overcome the issue of installation location constraints, and large- scale development projects are underway by industry, academia, and government. Since cylindrical solar cells are lightweight and can be installed vertically, they have a high degree of installation freedom and can be installed in locations where flat plate solar cells could not be installed in the past. This paper introduces the features of cylindrical solar cells, which are promising as next-generation solar cells, and the glass sealing technology that is the basic technology for cylindrical solar cells. 1 はじめに 2 背景  地球温暖化は、現代社会における最も深刻な環境問  次世代型太陽電池として設置の自由度が高く軽量な 題の一つとして、世界的な関心を集めている。気温の 太陽電池が求められている。CKDを含む産学官連携の 上昇、異常気象、海面上昇、生態系の変化など、その影 プロジェクトにおいて、我々はガラス管内に発電シー 響はますます顕著に現れており、人類と地球環境に対 トを挿入したFig.1に示す円筒形太陽電池を提案し、そ する深刻な脅威をもたらしている。 の特長から従来の平板型太陽電池では設置しづらい場  地球温暖化の主要因は、人間の活動による温室効果 所への設置をターゲットとする新市場を目指して研究 ガスの排出であり、化石燃料の燃焼、森林伐採、産業プ 開発を進めている。これまで塗布型フレキシブル太陽 ロセスなどにより温室効果ガスが大気中に放出され地 電池が報告されているが、高額なバリアフィルムを必 球温暖化を加速している。 要としており、低コストで水分、酸素等の侵入を完全  地球温暖化の抑止のため、世界的なカーボンニュー に遮断する封止ができないという課題があった。我々 トラルに向けた取り組みとして、再生可能エネルギー は円筒形状のガラス管封止技術を用いてこの問題点を 比率を高め、再生可能エネルギーの主力電源化が推進 解決した。今回新たな外部電極を開発し、円筒形太陽 されている。日本においては第6次エネルギー基本計 電池の信頼性をより高めた。 画において2030年の再生可能エネルギー比率を36 ~38%に、その内訳として太陽光発電は再生可能エネ ルギーの中でも最大の14~16%を目指している。日本 は国土面積当たりの太陽光発電導入量は主要国で1位 であるが、従来の平板型太陽電池を設置する適地が残 されていない。設置場所制約の課題を克服する次世代 型太陽電池の開発が不可欠である。 Fig.1   円筒形太陽電池ユニット及びモジュール (写真提供:株式会社フジコー) 4 CKD 技報 2024 Vol.10
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【巻内特集】 円筒形太陽電池の製造技術開発 3 円筒形太陽電池の構造 ン太陽電池を使用して、円筒形及び平面型の発電量の 評価を実施した。Fig.4に水平設置、垂直設置した円筒  円筒形太陽電池はFig.2のようにガラス管内に発電 形及び平板型の投影面積当たりの8時~18時の発電量 シートを挿入し、ガラス管の両端に外部電極を気密溶 を比較したグラフを示す。円筒形太陽電池は平板型と 着したものである。発電シートは将来的に高効率が期待 比較して朝方から夕方まで発電していることがわかる。 されるペロブスカイト太陽電池を使用することを見据 えており、封止性能が太陽電池の寿命に大きく影響す ることから、Heリークテストにおいて10-10Pa・m3/sの リークレートでHeのリークが無いことを確認してい る。そのため、ペロブスカイト太陽電池の寿命に影響 する酸素、水分を外気より完全遮断することが可能で ある。 Fig.3  円筒形太陽電池の受光イメージ(資料提供:電気通信大学) Fig.2  円筒形太陽電池の構造 4 円筒形太陽電池の特長  円筒形太陽電池は平板型太陽電池と比較して以下の 特長を持つ。 ・一日の総発電量が多い ・光と風が通過( モジュールの場合) ・多方向からの受光 ・高い耐久性(ガラス封止) ・軽量 ・風の影響を受けにくい ・雪、埃が積もりにくい ・水平・垂直設置可能 ・狭い場所でも縦型設置できる(壁面設置) ・運搬、メンテナンスが容易 ・防眩性に優れる ・意匠性に優れる設計・設置に期待 ・ガラス管は、飛散防止フィルムで保護  つまり、自然現象の影響を受けにくい「自然共存型太 陽電池」といえる。Fig.3は円筒形太陽電池の受光イ メージを示す。太陽からの直達光を高効率で長時間受 光可能で、散乱光や反射光も円周に沿って多方向から 受光できるため、投影面積当たりの一日の総発電量は 平板型の1.5倍に達する。  変換効率7.5%のフレキシブルアモルファスシリコ Fig.4  時間別発電量の比較 (資料提供:株式会社フジコー) CKD 技報 2024 Vol.10 5
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5 ガラス封止 映したものではFig.6のように界面に多孔質層が形成 された。この状態でもHeのリークが確認された。 5-1    封止の加工条件を調整したところ、Fig.7のような界面  ガラス管両端部には「ステム」と呼ばれる、フレア形 を持つリークのないサンプルを試作することができた。 状のガラスに金属パイプが気密溶着された外部電極が 備わっている。このステムを円筒ガラス管両端に溶着 し完全封止が可能となることにより外部からの酸素、 ガラス 水分の侵入を完全に防ぐことができる。  ステムはフレア状に加工されたガラス管と金属パイ プを気密溶着することが要求される。当社のランプ製 造装置のガラス加工技術を応用して、新たな封止技術 を確立することができた。本稿ではこの新たな封止技 チタンパイプ 術を確立した内容について記述する。 5-2   Fig.6  従来のランプ封止技術  ペロブスカイト太陽電池を発電シートとする場合、 ヨウ素が発電シートに含まれるため、ヨウ素に侵され ない電極用金属としてチタンを選定した。チタンの線 ガラス 膨張係数は8.4×10-6/Kのため、対応するガラスとし て、軟質ガラス(線膨張係数9.5×10-6/K)が整合する。  これまでのランプの製造技術においては、軟質ガラ スに対して、ジュメット線と呼ばれる鉄ニッケル合金 チタンパイプ 線を芯材とした銅線(銅被覆鉄ニッケル合金線)をリー ド線とするガラス-金属封止の実績があるが、チタン 線をリード線として封止するランプはCKDにおいて Fig.7  チタンに対応した封止技術 は実績がなく、文献等を調査しても見つけられなかっ たため、手探りのスタートとなった。 5-5 5-3  ステムとガラス管の気密溶着はランプ製造技術の応  外部機関によりチタンパイプを使用したステムを試 用で可能である。ガラス管の両端にステムを気密溶着 作したところ、チタンパイプとガラス溶着部からの させる工程は蛍光灯などのランプ製造工程と共通であ リークが確認された。その後加工条件を変えて調整し るが、ランプと異なる点は、円筒形太陽電池の場合、ガ たが、リークを無くすことができなかった。Fig.5に示 ラス管内部に発電シートが存在するため、ステムとガ すSEM観察の結果、チタンとガラスの界面に隙間があ ラス管を溶着する際の熱の影響を発電シートに及ぼさ り、リークの原因となっていることがわかった。 ない工夫が必要である。ガラス溶着を行う加熱部から 発電シート端部までの距離を多くとれば熱影響を少な くすることは可能である。しかし、ガラス管長に対す る非発電部の比率が大きくなるため、発電能力が低下 チタンパイプ し製品としてマイナスポイントとなる。そこで、発電 シートに熱を及ぼさないように断熱板をガラス加工部 と発電シートの間に用意して発電シートに対する熱影 響を最小限に抑えている。 ガラス 6 封止部の構造と屋外テスト Fig.5  外部機関により試作したステム  フレア形状のガラスにチタンパイプを気密溶着させ た外部電極であるステムを円筒ガラス管両端に溶着す 5-4 ることで、完全封止が可能となり、外部からの酸素、水  当社においてステム製造装置を試作し、封止テスト 分の侵入を完全に防ぐことができるようになった。封 した結果を示す。ランプの封止で行ってきた条件を反 止構造のイメージをFig.8に示す。 6 CKD 技報 2024 Vol.10
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【巻内特集】 円筒形太陽電池の製造技術開発  Fig.9では同仕様の太陽電池を用いて、ガラス管封 のガラス管にチタンパイプが気密溶着された外部電極 止されたサンプルと、大気中に放置されたサンプルの を形成し、この外部電極を円筒ガラス管両端に溶着し 変換効率の低下率を測定したものである。大気中に放 完全封止が可能となることにより外部からの酸素、水 置されたサンプルは18日間で初期性能から80%低下 分の侵入を完全に防ぐことができる封止技術を得たこ しているが、ガラス管封止のサンプルは57日後でも初 とである。また、円筒形太陽電池の実証実験を通じて 期性能を維持している。 実用化に大きく近づけることができた。  円筒形太陽電池の将来像として、Fig.11のような ルーバー状のビル壁面設置イメージ、Fig.12のような 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が有力と考 えている。共同研究先の電気通信大学が主体となり、 東京都の「大学研究者による事業提案制度」において円 Fig.8  封止部の構造 筒形太陽電池による「都会型太陽電池による創電・蓄電 の強化推進事業」を提案し、都民投票の結果1位通過で 採択された。3年計画(2023年度~ 2025年度)で総予 算4.9億円の大型プロジェクトであり、このプロジェク トを通じて円筒形太陽電池の実用化に向けた開発を加 速させたいと考えている。 Fig.9  封止耐久性テスト(情報提供:株式会社フジコー) 7 製造装置  チタンパイプとガラスの気密溶着によりステムを製 作し、製作したステムとガラス管の気密溶着を行う新 しい封止技術と自動機械装置の同時開発で、安定した Fig.11  ビル壁面設置イメージ※ 封止工程の実現を達成した。封止装置の外観写真を Fig.10に示す。 Fig.10  封止装置 Fig.12  営農型太陽光発電実証試験 (写真提供:株式会社フジコー) 8 おわりに  ランプ製造技術等で使用される溶着技術ではガラス ※h ttps://townphoto.net/tokyo/roppongi3.html とチタンの接着性は良くなく、接触部に僅かな隙間が から使用 空いて、酸素・水分の侵入が発生してしまう。本稿の成 果は、ガラス管両端部にステムと呼ばれるフレア形状 CKD 技報 2024 Vol.10 7
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執筆者プロフィール 林 雅博 Masahiro Hayashi 野村 隆利 Takatoshi Nomura 新規事業開発室 新規事業開発室 New Business Development Office New Business Development Office 8 CKD 技報 2024 Vol.10
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03_冷却水循環ポンプ搭載打抜型

冷却水循環ポンプ搭載打抜型 冷却水循環ポンプ搭載打抜型 Punching mold with cooling water circulation pump 八幡 裕樹 Yuki Yahata 当社で製造している食品向けブリスタ包装機は、衛生面での安全確保やロングライフ化に貢献してきた。近年で は、機械の長寿命化開発を行い、環境負荷低減にも取り組んでいる。 当社の食品包装機では、容器フィルムを打ち抜く機構がある。そこで使用している打抜型の寿命が想定より短く なってしまうことが課題であった。 打抜型が生産中の温度変化の影響を受け、熱膨張することが原因の一つであった。熱膨張により打抜ダイ(下型) とパンチ(上型)のクリアランスが崩れる。それにより打ち抜き時の負荷が増加し、想定より短い寿命となることが わかってきた。 冷却水を循環させるポンプを搭載した打抜型を新たに開発し長寿命化に貢献した。今回はその事例を紹介する。 Our company’s food product blister packaging machines help to ensure safety and long life from the perspective of hygiene. In recent years, we have been striving to develop products that reduce the impact on the environment as well by developing machines with longer lifespans. Our food product packaging machine has a mechanism that punches out bottom film. However, there was a problem where the lifespan of the punching mold used in the process was shorter than expected. One of the reasons for this was that the mold was affected by the changes in temperature during production, causing it to undergo thermal expansion. The thermal expansion caused a breakdown in the clearance between the punching die( lower mold) and punch( upper mold) of the punching mold, and we came to realize that this resulted in increased stress during punching and a shorter-than-anticipated lifespan for the punching mold. We have helped to extend the lifespan of the punching mold by developing a new punching mold equipped with a pump for circulating cooling water, which we will introduce in this paper. 1 はじめに  ブリスタ包装機は、容器フィルムを加熱・ポケット 成形・充填・蓋フィルムとの熱シール・所定形状の打ち 抜きを行う機械である。  本稿では、上記打抜工程の打抜型長寿命化を実施し た内容について紹介していく。 2 打抜型 Fig.1  打抜型イメージ図  当社の打抜型は、フィルムをストリッパプレートで 押さえながら、ダイ(下型)とパンチ(上型)でフィルム 3 現状の課題 を打ち抜く方式となっている(Fig.1)。  フィルムの種類によっても異なるが、ダイとパンチ  打抜型製作時は、数μm単位でのクリアランスの加 のクリアランスは数μmとシビアな精度調整が必要に 工、検査を行いながら製作を行っている。 なる。  しかし、実機に打抜型を搭載するとフィルム加熱成 形時の温度や内容物の温度がフィルム搬送を介して打 抜型に伝わり、時間経過により打抜型が熱膨張する。 それにより打抜型のダイとパンチのクリアランスが崩 れてしまい、製品にバリが発生してしまう。クリアラ ンスが崩れると打ち抜き時の負荷も増加し、打抜型の 寿命が短くなってしまうことが課題であった。Fig.2に CKD 技報 2024 Vol.10 9
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特定の打抜形状のCAE解析の結果を示す。この場合、 4 冷却水循環ポンプ搭載打抜型の効果 ダイとパンチの温度差がおよそ6℃以上あるとクリア ランスに5μm以上の偏りが生じてしまうことがわ  前述の熱膨張によるダイとパンチの温度差を軽減す かった。 るために「冷却水循環ポンプ搭載打抜型」を発明した  これにより、ダイとパンチの温度差を最小限に抑え (Fig.4)(特許:6944984)。 ることが重要だと判明した。  本発明はブリスタ包装機の打抜型においてダイに掛 けた洗浄水を有効活用している。ダイにかけた洗浄水 を皿で受けて集め、ポンプで汲み上げてパンチホルダ に流す。パンチをダイとほぼ等しい温度に冷却・維持 することで温度差を無くし、熱膨張差を無くした。こ れによりクリアランスが維持され「バリ」を防ぎ、かつ 打抜型の寿命を延ばすことができる。また、ポンプの 駆動源としてストリッパプレートの上下動作を利用す ることで、省エネにも貢献している。  冷却水循環ポンプ搭載打抜型使用時のパンチとダイ の温度差をグラフに示す(Fig.5)。  グラフから、本発明を採用した打抜型は、稼働2時間30 Fig.2  ダイの温度20℃ パンチホルダ26℃時のCAE 解析結果 分の間で温度差1℃程度と安定していることがわかる。  容器フィルムの種類や、厚み、機械速度等いろいろ な条件で効果は変わるが、寿命が約3倍に増えた事例  打抜型を長期間使用していると充填物やフィルムの もある。 カスが堆積し刃の切れ味が悪くなってしまう。これを 防ぐために当社のブリスタ包装機は、製品打ち抜き前 のフィルムに洗浄水を流す場合が多い。洗浄水はフィ ルム搬送時に打抜装置の前から打抜型まで搬送され、 打ち抜き時に打抜型の刃を洗浄する役割を果たす(特 許:6837119)。  また、打ち抜き時のフィルムの温度が上昇すること により、フィルムが伸びやすくなる。その結果、フィル ムに「バリ」が発生しやすくなることから、打ち抜き前 のフィルムに水を掛け、冷却させることにより「バリ」 を抑制している(Fig.3)。  ただし、洗浄水による冷却効果が期待できるのはダ イのみである。パンチには洗浄水が掛からないので時 Fig.4  冷却水循環ポンプ搭載打抜型 間経過で徐々に温度が上昇していく。これによってダ イとパンチの温度差が大きくなることで熱膨張差が生 じる。その結果、クリアランスが崩れ「バリ」の増大、負 荷が増加することにより部品寿命の低下を招いてしま うことが次の課題となった。 Fig.5 パンチホルダとダイの温度差(パンチホルダ温度−ダイ温度) Fig.3  洗浄水の流れ 10 CKD 技報 2024 Vol.10
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冷却水循環ポンプ搭載打抜型 5 冷却水循環ポンプ搭載打抜型の仕組み  掛け流した水をダイからパンチホルダへポンプ方式 で水を汲み上げて上下型の温度を一定に保つ(Fig.6)。  狙いとして、打抜動作をポンプ動力源に活用するこ とで、温度差を無くす機能を安価に追加できる。  別途外部に冷却水循環装置を設置することで同じ冷 却効果は期待できるが、高価な設備を追加することに なる。また電源が必要になり、追加ランニングコスト が発生する。この観点から本発明は「省エネ」にも貢献 している。 Fig.6  ポンプ冷却水流れ説明図 6 おわりに  当社のブリスタ包装機は包んだお客様の商品のロン グライフ化だけでなく、機械そのもののロングライフ 化も目指している。  本稿は打抜型に絞った紹介ではあるが、他の工程で も機械のロングライフ化を進めている。お客様に末永 く使用していただく機械を目指すと共に、環境負荷低 減に貢献し持続可能な社会の実現に向けて引き続き新 しい発明を進めていく。 執筆者プロフィール 八幡 裕樹 Yuki Yahata 自動機械事業本部 Automatic Machinery Business Division CKD 技報 2024 Vol.10 11
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04_PTP包装機のトレーサビリティシステム

PTP包装機のトレーサビリティシステム Traceability System of Blister Packaging Machines 今泉 汐理 Shiori Imaizumi 大谷 剛将 Takamasa Ohtani 近年、あらゆる業界で製品のトレーサビリティ確保のため、製造から流通、使用に至るまでの履歴を確認できるシ ステムが要求されている。当社のPTP包装機で製造されるPTPシートにおいても同様で、医薬品流通の効率化やお 客様へ「安全・安心」を提供できるよう、シート一枚一枚を識別できるシステムを検討してきた。 このような背景の中、「物体指紋」と呼ばれる、製品の製造過程で表面上に自然発生する微細な紋様から個体の識 別が可能な技術が発表された。現在、当社ではこの技術を活用し、高解像度カメラを用いたPTPシート外観検査装 置「フラッシュパトリ」によるPTPシートの個体識別技術の構築に取り組んでいる。 本稿では、当社のPTP包装機のトレーサビリティシステムの取り組みについて紹介する。 In recent years, there has been growing demand in all industries for systems that can ensure product traceability by checking the history of products from manufacturing to distribution and use. Our company has also been studying systems for identifying every individual PTP sheet manufactured by our blister( PTP) packaging machines in order to increase the efficiency of pharmaceutical distribution and provide customers with safety and security. It was in these circumstances that technology was announced that makes it possible to identify individual units from the minute patterns, known as the“ fingerprint of things,” that naturally occur on the surface on products during the manufacturing process. Currently, we are using that technology to develop technology for identifying individual PTP sheets using FLASH PATRI, inspection machines for PTP sheets and tablets with high resolution cameras. This paper explains our blister packaging machine traceability system initiative. 1 はじめに  近年、生産現場において、製造される製品一つひと つを識別し履歴を追跡できるようにする、トレーサビ リティが重要視されている。個体レベルで加工や品質 などの履歴をビッグデータとして蓄積・解析すること で、品質管理や生産効率の向上、更にはリコール対策 のエビデンスとして活用する動きが広がっている。  製造過程の製品のデータは、それぞれどの個体のも のであるかを紐付けるために、個体の識別が必要とな る。一般的な個体識別方法として、シリアル番号やバー コードなどのマーキングや、RFIDなどの識別タグの取 Fig. 1  PTPシートと裏面のマーキング り付けがある。当社PTP包装機で製造するPTPシート にもシリアル番号の刻印やアルミにバーコードの印刷  しかし、シリアル番号はロットの管理、バーコード がされている(Fig.1)。 は品種の管理と、1日に数十万枚製造されるPTPシー トの個体識別はできていない。一般的な個体識別方法 では、加工や工程の追加や、製品一つひとつにマーキ ングやタグ付けをするため膨大なコストの増加につな がり、現実的ではない。また機械にマーキングやタグ 付け装置を容易に搭載できないといった課題もある。 12 CKD 技報 2024 Vol.10
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PTP包装機のトレーサビリティシステム 2 背景 2-1  製薬業界におけるトレーサビリティ  医薬品は生命や健康に直接関わるため、製品が安全 に、一定の品質で製造されなければならない。そこで 製薬業界では、GMP( Good Manufactur ing Practice)と呼ばれる製造・品質管理基準が制定され Fig. 3  フラッシュパトリの検知精度 ており、GMPに準拠して製造することが義務付けられ ている。最終製品だけでなく、原料の入荷から製造、流 2-3  トレーサビリティ実現への課題 通までの過程においても適切な管理が必要となる。こ  このフラッシュパトリで撮影する製品を識別し、追 うした一連の過程の情報を追跡するために、トレーサ 跡可能にすることで、PTP包装機のトレーサビリティ ビリティシステムがある。例えば製品に異物が混入し システムが実現できる。ただし実現には以下の課題が てしまった際には、すぐに混入源を特定し、排除する ある。 ことができる。また製品の品質低下がみられた際にも、 ・生産している製品全ての検査画像を保存すること すぐに原因を特定し、品質を改善することができる。 ・ 保存した数十万枚の画像の中から、特定の製品1枚を  そこで、当社ではPTP包装機のトレーサビリティ方 見つけるためには膨大な時間が掛かること 法として、既設の検査機が全製品を撮影していること ・追 跡には誰でも簡単に製品を撮影し、保存済みデー に着目し、PTPシートの個体識別を検討した。 タと照合させる簡易的な装置が必要であること  これらの課題に対し、高精度に個体が識別できる「物 2-2  フラッシュパトリ 体指紋」の技術を活用した。  製薬会社の高い要求品質に応えるため、当社では PTP包装機と、その工程に合わせてカメラを搭載した 3 システム概要 独自のインライン検査システムであるフラッシュパト リを開発してきた(Fig.2)。  当社が取り組んでいるPTP包装機のトレーサビリ ティシステム概要について述べる。 3-1  画像管理サーバー  PTPシートは1日数十万枚生産されており、この全 製品データを保存・管理するため、フラッシュパトリの 画像処理装置とは別にサーバーシステムを設置した。 このサーバーでは、全ての撮影画像や検査結果、後述 の個体識別情報、更に生産時の温度や圧力などの機械 の稼働状況を保存する(Fig.4)。 Fig. 2  PTP 包装機と検査ポジション  フラッシュパトリでは生産する全製品を撮影・検査 し、不良と判定したシートは工程内で自動排出する。 不良品を後工程に流さないという観点から、当社PTP 包装機で生産されているお客様にとって、フラッシュ パトリは必要不可欠な存在となっている。  最新の検査システム「FP630」では、錠剤やシート 上の異物検査やアルミシールの状態など、様々な検査 を高解像度カメラで実施している(Fig.3)。 Fig. 4  画像管理サーバーのデータ保存例 3-2  個体識別機能  保存された数十万枚のデータから1枚を特定するに は、高精度に識別する必要がある。製品の製造過程で CKD 技報 2024 Vol.10 13
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表面上に自然発生する微細な紋様「物体指紋」は、個体 それぞれで異なることがわかっている。例えばPTP シートでは、個々でアルミの印刷やシール目が僅かに 異なる(Fig.5)。 Fig. 7  ウェブブラウザ画面の一例 4 照合精度  PTP包装機で製造・検査したシート100枚のデータ Fig. 5  PTPシートの物体指紋の一例 を登録し、照合装置で撮影した同シート100枚それぞ れが正しく識別可能か検証した(Fig.8)。  この微細な「物体指紋」を撮影するために、高精度で 検査を行うフラッシュパトリが有効である。「物体指 紋」の特徴点を明確に写すことができ、照合の精度を 高めている。特徴点は「個体識別情報」としてサーバー に保存する。 3-3  製品の照合・特定  手元にある製品と保存した製品データを照らし合わ せるため、インライン検査装置とは別に照合装置が必 要である。照合装置の撮影では、フラッシュパトリ同 様に「物体指紋」の特徴点を捉え、個体識別情報を獲得 できる(Fig.6)。 Fig. 6  照合装置 構想図 Fig. 8  検証方法  獲得した情報と一致する、画像管理サーバーに保存  照合した結果、インラインで撮影したシートと照合 された生産時の個体識別情報が、ウェブブラウザ上で 装置で撮影した100枚は同一個体として認識できた 自動検索される。製品の特定が完了すると、生産時の検 (Fig.9)。 査結果や画像、機械の稼働状況が確認できる(Fig.7)。 14 CKD 技報 2024 Vol.10
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PTP包装機のトレーサビリティシステム Fig. 9  照合結果 5 おわりに  本稿では、PTP包装機におけるトレーサビリティ実 現の可能性を示した。  はじめに記載した通り、製薬業界さらには医療業界 全体でトレーサビリティの要求が高まっており、厚生 労働省では安全確保のために義務化も検討されてい る。当社では、今後もお客様の声を聴きながら、医薬品 の「安全・安心」に寄与するシステムの実現を目指して いく。 執筆者プロフィール 今泉 汐理 Shiori Imaizumi 大谷 剛将 Takamasa Ohtani 自動機械事業本部 自動機械事業本部 Automatic Machinery Business Division Automatic Machinery Business Division CKD 技報 2024 Vol.10 15
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05_リモートI/O保護構造技術について

リモートI/O保護構造技術について Ingress Protection Technology for Remote I/O 本田 祥 Sho Honda リモートI/OはPLC等の制御装置と通信して、入出力を行う機器である。当社は、製造設備のIoT化や、労働力人口 の減少を要因とした配線工数削減の要求に応えるため、リモートI/Oを開発した。工数削減のためには、リモートI/O は設備内の各種アクチュエータやセンサの直近に設置されることが望ましい。そのため、様々な使用環境を考慮し て、粉塵の侵入や噴流水あるいは一時的な水没からの浸水を防ぐ必要があった。開発したリモートI/Oは、高速内部 通信、柔軟な電源供給、ユニットの自動認識が可能で、目的や点数に応じてユニットを自由に組み合わせて使用する。 そのため、ユニット間には接続用の開口部があり、開口部を浸水から保護する堅牢さと同時に、組み立ての手軽さも 求められた。 本稿では、リモートI/Oにおける保護構造(IP65/IP67)の設計と、課題及び解決方法について紹介する。 Remote I/O is a device that communicates with a control device such as PLC to perform input and output. CKD has developed remote I/O to meet the needs for implementing IoT in manufacturing equipment and the demands for reducing man-hours spent on wiring which has arisen due to the decline in the labor force. In order to reduce man-hours, it is desirable to install remote I/O close to actuators and sensors in the equipment. Therefore, considering the various types of components and working environments, it was necessary to prevent not only dust intrusion but also water intrusion due to water jets and temporary submersion. The remote I/O we developed is capable of high-speed internal communication, flexible power supply, and automatic unit recognition. Since the units are freely combined and used according to purpose and number of points, there are openings between the units for connection. For this reason, the units had to be robust enough to protect these openings from water intrusion, while at the same time be easy to assemble. This paper presents the design, including its issues and solutions, of ingress protection( IP65/IP67) in remote I/O. 1 はじめに 水の浸入が予見される部位へのモールドや、独自の強 固な金具を使用したものが主であった。  当社が開発したリモートI/Oは、省配線や省スペー  しかし、当社のリモートI/Oでは、製造品質の安定や、 スの要求を満たすため、デジタル・アナログの入力・出 ユーザー環境での品質担保、環境負荷低減を目的とし 力など、個別の機能をもつユニットを、任意の種類、台 て、前に挙げたいずれとも異なる設計を目指した。 数、位置で組み合わせることができる仕様になってい  次項から、リモートI/O保護構造の設計における課 る(Fig.1)。 題とその解決方法について紹介する。 2 設計の課題と解決方法 2-1  基本構造  組み立て品質を平準化し、保護構造を確実なものと するため、ユニットを構成する部品の接触面にはガス ケットを、筐体前面のコネクタ部にはOリングを使用し て止水する方針とした。また、各ユニットの連結部はO リングを長円形の開口部に沿わせて取り付けしている。 Fig. 1  リモートI/O 外観  2本のタイロッドを、全体を貫く形で配置することで、 開口部の防水性向上と、耐振動性を実現した(Fig.2)。  そのほか、耐環境性能として振動や使用温度、そし  この構造は、当社で実績のある空気圧バルブの設計 て本稿の主題である保護構造を満たす必要があった。 を参考にして、IP67を実現可能な設計に進化させた。  他社の同種製品では、保護構造の実現方法として、 16 CKD 技報 2024 Vol.10