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GPCRを標的とするモノクローナル抗体から画期的な新薬を生み出す

ホワイトペーパー

GPCRを標的とした抗体の研究開発に関した情報などを掲載しています

当資料は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のモノクローナル抗体医薬の開発に特化したバイオベンチャーであるエヌビィー健康研究所(札幌市)のインタビューをご紹介しております。

Gタンパク質をはじめ、GPCRに対する抗体を作製する取り組みなど、掲載しております。

【掲載内容】
■疾患に関わる情報伝達を制御する
■細胞外に露出したタンパク質を捉える
■高速フローサイトメトリーが鍵に
■北海道のフロンティア精神が開花

※詳しくはPDF資料をご覧いただくか、お気軽にお問い合わせ下さい。

このカタログについて

ドキュメント名 GPCRを標的とするモノクローナル抗体から画期的な新薬を生み出す
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 1.3Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 ザルトリウス・ジャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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GPCRを標的とするモノクローナル抗体から 画期的な新薬を生み出す エヌビィー健康研究所 代表取締役 髙山 喜好 Kiyoshi Takayama  髙山喜好氏が率いるエヌビィー健康 るので,非常に有用な薬の開発につな ル抗体は1つのエピトープのみを認識 研究所(札幌市)は,Gタンパク質共 げられるはずだ」と語る。 する。1975年にジョルジュ・ケーラー 役受容体(GPCR)のモノクローナル  なかでも,髙山氏が目指すのは,化 とセーサル・ミルスタインは,動物に 抗体医薬の開発に特化したバイオベン 学合成された低分子医薬ではなく,バ 抗原を投与して抗体を作らせ,目的の チャーである。肺や腎臓の線維症をは イオ医薬品の抗体医薬である。 抗体を産生する細胞のみを分離して細 じめとして,いくつかの疾患に対する  抗体は,免疫反応において抗原を特 胞増殖能の高い腫瘍細胞と融合させ, 薬剤が実用化に近付いている。 異的に認識するタンパク質で,これを 単一の抗体のみを大量に産生させる方 有効成分とする抗体医薬は,標的分子 法を確立。1984年にノーベル生理学・ 疾患に関わる情報伝達を制御する を狙い撃ちにするため,薬効が高く, 医学賞を受賞している。 副作用が少ないとされる。  1980年代末に東京大学薬学部の4年  Gタンパク質とは,正式名称をグア  すでに日本発の画期的な抗体医薬も 生だった髙山氏は,初めてモノクロー ニンヌクレオチド結合タンパク質共役 いくつかあり,大阪大学の岸本忠三氏 ナル抗体の作製に取り組んだ。当時の 受容体といい,GPCRは細胞膜に存在 が発見したサイトカイン,インターロ 技術は不十分だったが,「酵素などの する受容体(膜タンパク質)で,1986 イキン-6(IL-6)を標的としたリウマ 活性を中和する中和抗体を作れば,薬 年に初めて同定された。構造は複雑 チ治療薬トシリズマブ(中外製薬), になるのではないか」と考えたことが で,細胞膜を7回繰り返して貫通する またCCR4という受容体を標的とした 原点である。その後,大正製薬の研究 という特徴を持つことから,「7回膜 成人T細胞白血病治療薬モガムリズマ 所などを経て,2006年に起業した。 貫通型受容体」とも呼ばれる。GPCR ブ(協和発酵キリン)がある。また, の構造と機能は,ロバート・レフコ がん免疫治療薬のニボルマブ(小野薬 高速フローサイトメトリーが鍵に ウィッツとブライアン・コビルカに 品工業)も,京都大学の本庶佑氏が発 よって解明され,2人は2012年にノー 見したPD-1に対する抗体医薬である。  GPCRを標的とした抗体の研究開発 ベル化学賞を受賞した。 にとって,大きなブレークスルーと  GPCRは細胞外のシグナル物質の存 細胞外に露出したタンパク質を捉える なったのは,様々な技術要素を組み合 在を検知すると,そのシグナルを細胞 わせて最適化されたプラットフォー 内のGタンパク質に伝達するという重  GPCRに対する抗体を作製しようと ム,MoGRAA(モグラ)ディスカバ 要な役割を担い,GPCRファミリーに いう取り組みは世界中で試みられて リーエンジンを開発したことだ。 属するタンパク質は800以上ある。ホ きたが,GPCRは細胞での発現量が少  MoGRAAと は ,Mod i f i c a t i on ルモンや神経伝達物質など,細胞外か なく,さらに膜外に露出した部分が少 of G-prote in coupled Receptor らのシグナルがGPCRにより細胞内に ない構造を持つことから,なかなか実 Activation with monoclonal Antibody 伝えられると,細胞内の生化学的シグ 現を見なかった。とりわけモノクロー の頭文字をつないだもので,「モノク ナル伝達のカスケード(反応の連鎖) ナル抗体は難度が高く,情報伝達を直 ローナル抗体によりGPCRの機能を調 にスイッチが入る。 接制御できるような機能性抗体の作製 節する」という,同社が提唱するコン  このためGPCRを標的とした薬剤 は,いっそう困難だとされる。 セプトに由来している。さらにもう1 は,降圧薬,糖尿病薬など大変多くあ  1つの抗原の表面には,様々な種類 つ,土中に潜む動物のモグラのイメー り,薬剤全体の3割以上を占めている の抗原決定基(エピトープ)が存在し ジを重ね合わせたネーミングでもあ ともされる。 ており,生体に1種類の抗原を投与し る。膜外にわずかしか露出していない  髙山氏は「GPCRを標的とした抗体 ても,多種のエピトープに対する抗体 抗体の部位を見つけようという試み を作製すれば,GPCRが関与する疾患 の混合物,ポリクローナル抗体が産生 は,モグラ叩きのゲームに似ているか に関する情報伝達を直接的に制御でき される。これに対して,モノクローナ らだ。 96
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 GPCRを発見するための一次スク  抗体を産生しているB細胞と不死化  髙山氏は「MoGRAAの抗体の標的 リーニングにおいて鍵となったのは, したがん細胞(ミエローマ)を人工的 となり得るGPCRは,生体内にまだ 酵素反応により抗体を検出する従来の に融合させると,特定の抗体遺伝子を 100種類以上あり,今後も革新的な創 ELISA法に代えて,標的膜タンパク 維持しながら半永久的に生存できる融 薬シーズを送り出して,創薬につなげ 質を発現した細胞株を高速のスクリー 合細胞(ハイブリドーマ)が作製でき ていきたい」と,抱負を語る。 ニング機器で調べて,反応を検出する る。さらに,このハイブリドーマの中 システムを採用したことだ。 から,結合親和性や特異性に優れた有 北海道のフロンティア精神が開花  これは,髙山氏が2000~2002年に留 用なモノクローナル抗体を産生する細 学していたボストンの大手バイオ企業 胞を選択していく。   社 名 の エ ヌ ビ ィ ー ( N B ) は , で,フローサイトメトリーを使った探  そこから抗体医薬品にするには,マ Northern Brothersの略称。北海道で 索手法を用いていたことがヒントに ウスのモノクローナル抗体を,活性に 生まれ育った髙山氏は,当地にこだわ なっている。 必要な部分だけを残して,他の部分を りがあり,埼玉で創業した後,2012年  起業後,これをGPCRの発見に応用 ヒトの抗体タンパク質で置き換える に移転して,現在は「北大ビジネス・ することを決めたが,さらに,インテ 「ヒト化」が必要になるが,ヒト化の スプリング」に本社・研究所を置く。 リサイトのiQue® Screenerとの出会い 高い技術を持つ会社と提携している。  北海道大学北キャンパスに位置する により,研究は大きく加速することに  こうして2012年,自己免疫疾患やが 施設は,北大をはじめとした研究機関 なった。iQue® Screenerは,抗原への ん免疫で注目されているプロスタグ が持つ地域の知的資源を有効に活用 結合性と交差反応を観察できる超高速 ランジンE2受容体のサブタイプである し,新事業の創出・育成を目的に据 解析機器で,自然な状態の標的を高速 EP4受容体に対する抗体を作製するこ え,大学とも連携しており,創薬研究 でスクリーニングすることができるの とに成功した。さらに,線維症の治療 に不可欠な動物実験施設も備えられ, が特徴である。 薬を目指して,ケモカイン受容体であ 社員が学べる環境もある。中小企業基  自動プレート搬送装置を備えてお るCCR7に対する抗体の特許を取得して 盤整備機構,北海道,札幌市,地元経 り,96ウェルプレートのスクリーニ おり,製薬企業に技術移転し,3年以内 済界等が一体となり,起業をはじめ, ングは,従来は手作業で1時間以上か に治験を始めることを目指している。 実用化やマーケティングなど,あらゆ かっていたのが5分で済むようにな  日本では,抗体医薬を開発できる製 る局面において支援が得られる。 り,探索速度は10倍以上加速した。 薬会社は限られるが,同社の開発技術  北の大地のフロンティア精神が開花  「フローサイトメトリーに手間取る は,大手と比肩するレベルにまで達し して,画期的な新薬が生み出される日 と,その間に細胞も変化してしまう。 ている。 も近いだろう。 高速化によって,効率が高まるだけで なく,実験の精度も高められるように なった」と,髙山氏は効用を語る。  手法上,もう1つ大きなブレークス ルーになったのが,細胞の調製法であ る。生体内に存在するGPCRは立体構 造を保持しているが,実験環境でこれ を保持した状態で抗原提示することが 難しかった。そこで,これを克服する 技術を有していた国内化学メーカーと 提携し,さらにそのオリジナルを凌ぐ 技術を自社で確立した。  具体的には,精製GPCRタンパク 質や細胞外ドメインのペプチドを抗 原とする代わりに,標的分子である GPCRを高頻度で発現する細胞や,標 的GPCR全長タンパク質を発現するプ ラスミドベクターを,抗原としてマウ スに投与して抗体を作らせるという方 法を採用した。 提供:Intellicyt Corp  https://intellicyt.com/ 97