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CKD技報「リモートI/O保護構造技術について」

ホワイトペーパー

リモートI/Oにおける保護構造(IP65/IP67)の設計と、課題及び解決方法について紹介します

CKD技報は、永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、
問題解決への技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。

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ドキュメント名 CKD技報「リモートI/O保護構造技術について」
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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リモートI/O保護構造技術について Ingress Protection Technology for Remote I/O 本田 祥 Sho Honda リモートI/OはPLC等の制御装置と通信して、入出力を行う機器である。当社は、製造設備のIoT化や、労働力人口 の減少を要因とした配線工数削減の要求に応えるため、リモートI/Oを開発した。工数削減のためには、リモートI/O は設備内の各種アクチュエータやセンサの直近に設置されることが望ましい。そのため、様々な使用環境を考慮し て、粉塵の侵入や噴流水あるいは一時的な水没からの浸水を防ぐ必要があった。開発したリモートI/Oは、高速内部 通信、柔軟な電源供給、ユニットの自動認識が可能で、目的や点数に応じてユニットを自由に組み合わせて使用する。 そのため、ユニット間には接続用の開口部があり、開口部を浸水から保護する堅牢さと同時に、組み立ての手軽さも 求められた。 本稿では、リモートI/Oにおける保護構造(IP65/IP67)の設計と、課題及び解決方法について紹介する。 Remote I/O is a device that communicates with a control device such as PLC to perform input and output. CKD has developed remote I/O to meet the needs for implementing IoT in manufacturing equipment and the demands for reducing man-hours spent on wiring which has arisen due to the decline in the labor force. In order to reduce man-hours, it is desirable to install remote I/O close to actuators and sensors in the equipment. Therefore, considering the various types of components and working environments, it was necessary to prevent not only dust intrusion but also water intrusion due to water jets and temporary submersion. The remote I/O we developed is capable of high-speed internal communication, flexible power supply, and automatic unit recognition. Since the units are freely combined and used according to purpose and number of points, there are openings between the units for connection. For this reason, the units had to be robust enough to protect these openings from water intrusion, while at the same time be easy to assemble. This paper presents the design, including its issues and solutions, of ingress protection( IP65/IP67) in remote I/O. 1 はじめに 水の浸入が予見される部位へのモールドや、独自の強 固な金具を使用したものが主であった。  当社が開発したリモートI/Oは、省配線や省スペー  しかし、当社のリモートI/Oでは、製造品質の安定や、 スの要求を満たすため、デジタル・アナログの入力・出 ユーザー環境での品質担保、環境負荷低減を目的とし 力など、個別の機能をもつユニットを、任意の種類、台 て、前に挙げたいずれとも異なる設計を目指した。 数、位置で組み合わせることができる仕様になってい  次項から、リモートI/O保護構造の設計における課 る(Fig.1)。 題とその解決方法について紹介する。 2 設計の課題と解決方法 2-1  基本構造  組み立て品質を平準化し、保護構造を確実なものと するため、ユニットを構成する部品の接触面にはガス ケットを、筐体前面のコネクタ部にはOリングを使用し て止水する方針とした。また、各ユニットの連結部はO リングを長円形の開口部に沿わせて取り付けしている。 Fig. 1  リモートI/O 外観  2本のタイロッドを、全体を貫く形で配置することで、 開口部の防水性向上と、耐振動性を実現した(Fig.2)。  そのほか、耐環境性能として振動や使用温度、そし  この構造は、当社で実績のある空気圧バルブの設計 て本稿の主題である保護構造を満たす必要があった。 を参考にして、IP67を実現可能な設計に進化させた。  他社の同種製品では、保護構造の実現方法として、 16 CKD 技報 2024 Vol.10
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リモートI/O保護構造技術について ろ、浸水は筐体表面から裏面までの短い経路(PBTと PCの接触が少ない部分)を通っていることがわかった (Fig.4)。  対策として、レンズ側面にサンドブラスト処理を施 した。これはPBTとPCの接触面を増やして浸水経路上 のいずれかで止水することを目的としている(Fig.5)。  更に、ユニット上部断面図(Fig.6)のように、レンズ 上にある成型上必要だった形状(Fig.6上側紫色凸部) を、金型の構造を工夫して取り除き、浸水経路(Fig.6 水色線部)をふさいだ(Fig.6下側)。 Fig. 2  連結構造 2-2  ガスケットの形状  ユニット上部と下部の浸水を防ぐためのガスケット は、断面を丸ではなくアルファベットのHのような形 状とした。  上下対象のH型であるため、方向の付け間違いがな くなるほか、2重の接触面を持つため、接触面の平面度 の影響を受けにくい。  組立工程では、ユニット上部と下部の組み付けが完 Fig. 4  CTスキャン画像 了する時まで、ガスケットは正立状態を保つため、設 計で期待したつぶし量を確保できる。  他の形状では、ねじれや倒れなどの懸念があり、今 回の用途には適さなかった(Fig.3)。 Fig.5  レンズへのサンドブラスト Fig. 3  H型ガスケット 2-3  レンズ周辺の浸水改善  各ユニットの筐体主材料はガラス入りのポリブチレ ンテレフタレート(PBT)だが、ユニットの状態などを 示すLED光透過のため、一部を透明なポリカーボネー ト(PC)製のレンズとした。  インサート成型で、PBTとPCを成型したが、レンズ 周辺で材料間に隙間ができ、浸水してしまう事象が あった。  この事象が発生する試作品を複数準備し、CTスキャ Fig.6  レンズ形状の変更 ンや現物の切断等を実施して浸水経路を調査したとこ CKD 技報 2024 Vol.10 17
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2-4  異種材料(アルミとPBT)成型時の接着剤使用  子局ユニットの2つのコネクタ部には、耐ノイズ性 能向上のため、金属性のコネクタリングを使用してい る。このリングは、アルミで作られ、ニッケルメッキで 表面処理している(Fig.7)。 Fig. 9  塗布工程の標準化  量産における製造品質確保の観点から、ばらつきに 対する検証を実施した。先に示した標準的な塗布工程 において、作業者の習熟度などによってばらつきが発 生することを考慮して、接着剤の乾燥時間と乾燥温度 の許容範囲を設定した。 Fig. 7  コネクタリング  許容範囲は、接着剤メーカーの推奨範囲にとらわれ ず、品質が担保できる範囲を実際に試作、成形して決  PBTとの接着性を向上させる目的で、このコネクタ 定した(Fig.10)。 リングには綾目のローレット加工が施されているが、 実際の成形品では十分な接着が実現できておらず、浸 水しているものがあった。  そこでリモートI/Oでは、接着力のさらなる向上のた め、コネクタリングに接着剤を塗布する方法を検討す ることになった。  まずは接着剤塗布の実力を確認するため、ハケなど でコネクタリングに接着剤を塗布した(Fig.8)。 Fig. 10  塗布工程のばらつき想定 3 IP67通常評価と代替評価  IP67は粉塵の侵入を完全に防止し、かつ、水深1m の水槽に30分水没しても、内部に水が浸入しないこと が求められている。この項では、当社内で実施した水 Fig. 8  接着剤の塗布 没に対する試験と評価について紹介する。  条件を満たす大型の水槽を購入し、試作毎に成型品  実験の結果、十分な接着能力と防水性能を確保でき を深さ1mの水中に沈め、水の浸入があるかどうかを確 ることが確認できたが、人手による塗布では接着剤の 認した(Fig.11、Fig.12、Fig.13)。 塗りムラがあった。  浸入の有無は、携帯電話の内部等で使用されている、  そのため、製品の量産に向けてこの塗布工程の標準 水没確認シールや、水濡れで透明に変化するインクを 化、できばえの安定化に取り組んだ。接着剤の塗布方 使用した(Fig.14)。 法、回数、乾燥時間、乾燥温度など、重要と考えられる 複数のパラメータについて検証を行い、標準的な工程 を設定した(Fig.9)。 18 CKD 技報 2024 Vol.10
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リモートI/O保護構造技術について これを解決するため、水槽を使用しない保護構造評価 用の装置を準備した(Fig.15)。 Fig. 15  評価用装置 Fig. 11  評価用の水槽  この装置はリモートI/O内部に負圧をかけることで、 水没相当の条件を再現する。エアの経路上に、圧力や 流量を測定するセンサを付けることで、評価開始から 数十秒でリークの有無を定量的に確認できる。圧力を 変化させることで、規格値以上の水深相当でも試験可 能となっている。  このような機器の気密性を測定するには、一般的に リークテスタを用いるが、今回の製品は組み合わせによっ て容積が変動するため、市販品では適当なものがなかっ た。そのため、独自に流量で評価する環境を構築した。 Fig. 12  水深1mの標示  この代替試験環境は、当社のリモートI/O向けに調整 されたもので、あらかじめ複数のOK/NGサンプルを分 析し、リークの有無、水の浸入、流量の関係をつかんで いたため、正確な閾値設定と評価が実現できている。 4 おわりに  構築した保護構造の評価用装置は、リモートI/Oの検 査設備に展開した。この装置を生産初期段階から導入し たことで、ユニットを取り付け状態でお客様に出荷する ことができるようになり、ユニットを個別に出荷した場 合と比較して、高い品質を保ったまま提供できている。 Fig. 13  試験品の水没試験  本開発にて得られた設計ノウハウや製造・検査技術 を活かし、今後も環境に配慮しつつ、お客様に満足い ただける製品開発に取り組んでいく。 執筆者プロフィール Fig. 14  浸入の確認 本田 祥 Sho Honda  規格に沿った評価環境を準備したが、1回当たりの 機器事業本部 評価に30分掛かること、浸水の有無は確認できるが、 Components Business Division 浸水量を定量的に評価できないなどの課題があった。 CKD 技報 2024 Vol.10 19