Analog Tech. アペルザカタログ|基礎知識特集(生産技術)
基礎知識ガイド|生産技術
設備の
予兆保全
の基礎知識
測る対象・集め方・判断の置き場所から導入の進め方まで
保存版|現場の技術者のための基礎知識ガイド
測る対象・集め方・判断の置き場所から小さく始める進め方まで
POINT 01 POINT 02 POINT 03
測る・集める 判断の置き場所 置き方と進め方
振動・電流・温度の取り方 センサ・エッジ・上位の分担 過酷環境での設置の考え方
I/Oと一次蓄積の設計 クラウドとの使い分け 1設備・1信号から始める
予兆保全は、AIの前の「データの取り方」で決まる。
アナログ・テック株式会社
産業用PC・エッジAI PCのハードウェアメーカー|社内勉強会・新人教育にもご活用ください
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
はじめに
設備が止まってから直す。点検周期どおりに部品を替える。どちらも現場を支えてきた保全のやり方で
す。一方で、突発停止の損失や、まだ使える部品の交換に悩む現場も少なくありません。そこで注目さ
れるのが、設備の状態データから異常の兆しをつかむ予兆保全です。
ただし実際に着手すると、多くの取り組みがAIの話に入る前でつまずきます。「判断に足るデータが取
れていない」「どこで判断させるか決めていない」の2点です。本書では、測る対象と取り方、データ収
集の設計、判断の置き場所、過酷環境での置き方、小さく始める手順を順に整理します。
こんな方におすすめです
● こんな方に:予兆保全の検討を任された生産技術の方
● データ収集で何から決めるか迷っている設備保全の方
● 現場PCの構成や設置場所を検討している方
目次
01 保全の3つの考え方と予兆保全 p.3
02 何を測るか——信号の種類と取り方 p.4
03 データ収集を支える3つの設計要素 p.5
04 判断をどこに置くか——3層の分担 p.6
05 過酷環境での置き方と始め方 p.7
+ 導入前チェックリスト/用語集 p.8
アナログ・テック株式会社 2
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
01 保全の3つの考え方と予兆保全
保全には事後・予防・予兆の3つの考え方があります。予兆保全は状態データから兆しをつか
む方法で、成否はAIより先にデータで決まります。
設備保全の進め方は、大きく3つに分けて整理できます。どれか1つが正解ではなく、設備の重要度や故
障の傾向に応じて組み合わせるのが一般的です。
方式 保全のタイミング 主な課題
事後保全 故障・停止してから修理 突発停止による損失
予防保全 一定期間・稼働時間ごとに点検・
交換 まだ使える部品も交換する
予兆保全 状態データで兆しを捉えたとき データ収集と判断の設計
予兆保全は「データ」が先
予兆保全のAIがしていることは、突き詰めると「正常時のパターンからの外れ」の検知です。そのため、
正常時のデータが十分な期間と粒度で取れていることが前提になります。数か月分の正常データがなけ
れば、どんなモデルでも何が異常かを学べません。
取り方も重要です。1秒に1回の平均値では、振動の異常は見えません。逆に、高速で取った生データを
全部上位へ送ると、通信費と保存容量が膨らみます。
現場のポイント
「何を、どの周期で、どこまで一次処理して、どこに置くか」を先に設計する。これが予兆保全の出発
点です。
アナログ・テック株式会社 3
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
02 何を測るか——信号の種類と取り方
代表的な信号は振動・電流・温度・音・稼働ログです。信号ごとに見える兆候と取りやすさが
違うため、特徴を押さえて選びます。
信号 主に見える兆候 取り方の特徴
振動 軸受劣化・アンバランス・芯ずれ 高速サンプリング。最も重い
電流 負荷変動・摩耗・絶縁劣化 既存の計測値を流用しやすい
温度 軸受・巻線・油温の上昇 周期は粗くてよいが継続蓄積
音 熟練者が気づく異音 暗騒音の分離が必要
稼働ログ サイクルタイムの伸び・エラー PLCに既にある情報を使える
振動は、モーター・ポンプ・ファン・スピンドルなど回転機器の劣化が現れやすい信号です。ただし高
速で取るため、生データのまま送るには最も重くなります。電流は既存の電力計測やインバータのモニ
タ値から取れることも多く、着手しやすい信号です。温度は変化が緩やかで、「上昇の傾き」を見るに
は継続的な蓄積が要ります。
見落とされがちなのが稼働ログです。サイクルタイムの伸びやリトライ回数はすでにPLCにある情報で、
最も費用対効果の高い予兆になることも珍しくありません。
最初から全部を測らない
故障モードが分かっている設備なら、そのモードが最初に現れる信号1〜2種類から始めます。データ量
も判断も扱いやすくなります。
現場のポイント
測定項目は故障履歴から逆算します。止まると損失の大きい故障が、どの信号に先に現れるかを考えま
しょう。
アナログ・テック株式会社 4
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
03 データ収集を支える3つの設計要素
データ活用が止まるのは、分析より手前の「収集」です。I/O・一次蓄積・長期供給の3要素を、
設備一覧と突き合わせて決めます。
データ収集設計の3要素——I/O・一次蓄積・長期供給
I/O——変換器を重ねない
現場には、シリアル(RS-232C/485)・接点・アナログ値でしか出せない機器が混在します。変換器を
積み重ねると障害点が増えます。必要なI/Oを受け側のPCに最初から持たせ、設備一覧から逆算します。
一次蓄積——切れても欠けない
工場のネットワークは、保全作業や停電で切れる時間があります。現場側でデータを一時保持し、復旧
時に自動で追送する仕組みを設けます。保持容量は、週末をまたぐ断なら2〜3日分が目安です。常時書
き込みが続くため、ストレージは書き込み耐久性と温度範囲を見て産業用グレードを選びます。
長期供給——同じ構成で集め続ける
設置先は制御盤内や設備の脇が多く、ファンレス・広温度範囲対応が効く環境です。また予兆保全は、
同じ条件で取り続けることに価値があります。数年後も同じ構成のPCを調達できるか、EOL情報が事前
に届くかを確認します。
アナログ・テック株式会社 5
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
04 判断をどこに置くか——3層の分担
異常の判断は、センサ/PLC側・現場のエッジ・上位/クラウドのどこにも置けます。置く場
所で応答時間・通信量・運用の手間が決まります。
予兆保全の「判断の置き場所」3層の役割分担
● センサ/PLC側:閾値超過の即時停止・警報。ミリ秒級の応答。学習型は置けない
● 現場のエッジ:特徴量抽出と異常度算出、一次蓄積。通信断でも判断が止まらない
● 上位/クラウド:再学習、複数拠点の横断分析、長期の傾向管理、保全計画との連携
中心になるのはエッジ層です。重い生データを現場で軽い判断結果に変えるため、通信量を大きく減ら
せます。設備ごと・ライン単位で置くのが基本です。
クラウドとエッジの使い分け
即時性が要る判断ほど下の層に、横断性が要る分析ほど上の層に置きます。判断結果は何ms以内に必要
か。通信断で止まってよいか。データを外部に出せるか。データ量はどの程度か。厳しい条件が多いほ
ど、エッジの比重が高まります。
現場のポイント
現実的な分担は「特徴量抽出と異常度算出はエッジ、再学習と傾向管理はクラウド」。判断は現場、知
見は上位です。
アナログ・テック株式会社 6
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
05 過酷環境での置き方と始め方
現場のPCが先に止まっては、データは集まりません。環境ストレスに合わせて置き方を決め、
1設備・1信号の閾値監視から段階的に育てます。
現場ごとの環境ストレス
現場 主なストレス 設計上の打ち手
金属加工 切削油・オイルミスト IP等級+シール材の耐油性
金属加工 導電性の切粉・金属粉 ファンレス密閉で開口部なし
金属加工 連続振動 可動部排除・ロック付き端子
食品 洗浄水・薬剤 IP67+接続部の防水
食品 結露(温度差) 温度移動の設計+密閉筐体
食品 粉・油分・蒸気 ファンレス・密閉構造
IP等級の試験媒体は粉塵と水です。油や薬剤、高温水への耐性は別途確認します。最も確実なのは「浴
びない場所に置く」ことです。センサやカメラは現場に、処理するPCは盤内や離れた場所へ。ただし盤
内は夏場に温度が上がりやすい点に注意します。
小さく始めて育てる5ステップ
● ①1設備・1〜2信号を選ぶ(故障が多く、止まると損失が大きい設備から)
● ②閾値監視で運用を始め、同時に正常データを蓄積する
● ③蓄積データで傾向を可視化し、学習型の要否を判断する
● ④学習型の異常度算出をエッジに載せ、結果を上位へ送る
● ⑤同型設備へ同じ構成で横展開する
アナログ・テック株式会社 7
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
導入前チェックリスト
□ 対象設備の故障モードと、最初に現れる信号を特定した
□ 測る信号を1〜2種類に絞り、取得周期を決めた
□ 正常データを数か月分ためる計画と保存先を決めた
□ 設備の出力(シリアル・接点・アナログ)を一覧化した
□ ネットワーク断の最長時間と一次蓄積の容量を見積もった
□ 復旧時に未送信データが自動で追送される仕組みがある
□ 判断をセンサ・エッジ・上位のどこに置くか決めた
□ 設置場所の油・粉・水・結露・温度・振動を確認した
□ 数年後も同じ構成で調達・増設できるか確認した
□ 閾値監視から学習型へ移る条件を決めた
用語集
事後保全 故障や停止が起きてから修理する保全方式。突発停止の損失が課題になる。
予防保全 一定期間や稼働時間ごとに点検・部品交換する保全方式。時間基準保全とも呼ばれる。
予兆保全 振動・電流・温度などの状態データから異常の兆しを捉え、計画的に保全する考え方。
特徴量 生データから判断に役立つ値を取り出したもの。振動の周波数成分などが例。
異常度 正常時のパターンからどれだけ外れているかを数値で表したもの。
閾値監視 測定値があらかじめ決めた上限・下限を超えたら通知する監視方法。
現場側でデータを一時保存し、通信の復旧後に上位へ送る仕組み。ストアアンドフォ
一次蓄積 ワード。
IP等級 防塵・防水性能の等級。IP67は粉塵が侵入せず、一時的な水没に耐える水準。
暗騒音 測りたい音以外に、周囲で常に鳴っている背景の音。異音検知では分離が必要。
EOL End of Lifeの略。製品の生産・供給が終了すること。
アナログ・テック株式会社 8
設備の予兆保全とデータ収集の基礎知識 基礎知識ガイド|生産技術
PR|データ収集・予兆保全の現場PCをお探しの方へ
AT-IPC(エーティーアイピーシー)カスタム産業用PC
必要なI/O・設置環境・供給期間から構成を組み上げる産業用PCシリーズ。データ収集の器から、現場で
のAI判断まで対応します。
01 I/Oと設置環境から
現場の制約を起点に構成を設計
02 AI判断にも対応
AI対応モデルで現場側での判定も
03 長期供給を前提に
長期運用を見据えた設計と保守体制
シリーズ 筐体タイプ 主な用途・特徴
省スペース・装置組込み・制御用途
AT-IPCF ファンレス小型
(広温度・PoE・防水の派生あり)
AT-IPCFG ファンレス・AI対応 Hailo-8™/Jetson搭載のエッジAI
AT-IPCW/WG ウォールマウント 壁面設置/高負荷AI処理・画像解析(GPU対応)
AT-IPCR/RG ラックマウント1U〜4U サーバールーム・高拡張性/AI推論(GPU対応)
AT-IPCTPG タッチパネル一体型 HMI・操作端末一体型
AT-Kit 評価キット AIアクセラレータの評価・PoC用途
具体的な仕様は、ご要件のヒアリング後に個別にご提案します。
商標について
Hailo、Hailo-8は、Hailo社の商標または登録商標です。
NVIDIA、Jetson、CUDAは、米国およびその他の国におけるNVIDIA Corporationの商標または登録商標です。
その他、本書に記載の会社名・製品名・規格名は、各社・各団体の商標または登録商標です。
お問い合わせ|アナログ・テック株式会社
AT-IPCは産業用PCのハードウェア製品です。アプリケーション・ソフトウェアの開発や監視システム全体のインテ
グレーションは弊社の提供範囲外となります。仕様のご相談・お見積りに関するお問い合わせは、アナログ・テック
株式会社まで。
アナログ・テック株式会社 9