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名古屋大学 未来社会創造機構 客員教授 佐藤登氏
EVは世界的な脱炭素化の潮流によって市場が拡大を続け、2023年のEV販売台数は約 1,400万台に達し、2030年には5,000万台を超えるという予測もある。この成長を支える鍵となるのが「車載電池」であり、技術革新やサプライチェーンの確保が、市場での競争を左右する重要な要素となっているのだ。
今回のセミナーでは、株式会社本田技術研究所で車載用電池研究開発機能を創設し、韓国サムスンSDI株式会社で常務役員を務められた佐藤氏をお招きし、車載電池の市場動向や技術の現在地、そして今後の展望について解説いただいた。
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このカタログについて
| ドキュメント名 | 【セミナー講演録】 EV市場の成長の鍵「車載電池」の現在地と課題 |
|---|---|
| ドキュメント種別 | その他 |
| ファイルサイズ | 2.4Mb |
| 登録カテゴリ | |
| 取り扱い企業 | ストックマーク株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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【イベントレポート】 佐名
藤古
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EV 市場の成長の鍵。 登大
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「車載電池」の現在地と課題 会
創
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客
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教
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EVは世界的な脱炭素化の潮流によって市場が拡大を続け、2023年のEV販売台数は約 1,400万台に達し、2030年には
5,000万台を超えるという予測もある。この成長を支える鍵となるのが「車載電池」であり、技術革新やサプライチェー
ンの確保が、市場での競争を左右する重要な要素となっているのだ。
今回のセミナーでは、株式会社本田技術研究所で車載用電池研究開発機能を創設し、韓国サムスンSDI株式会社で常
務役員を務められた佐藤氏をお招きし、車載電池の市場動向や技術の現在地、そして今後の展望について解説いただい
た。
※本記事は、ストックマーク株式会社が 2025 年 3 月18 日に開催したオンラインセミナー、『車載電池の現在地と未来— EV市場で生き残るた
めのグローバル競争戦略とは』の内容を中心にまとめたものです。
「 車載電池」における各国の動きと こうした動きのなかで、全世界における電池産業の実態については
日本の現在地 以下である。
車載電池が注目を浴びるなか、各国でもさまざまな政策方針が出さ
れている。中国は従来から「自動車強国」と称していたが、そこに加
えて 2016 年頃から「電池強国」を打ち出し、新エネルギー車への補
助金や電池産業への投資と、莫大な支援を国を挙げて続けているの
だ。
中国の「電池強国」に対して、韓国は「世界の電池最強国」と自
国を称している。大手 3 大財閥のサムスン SDI 社・LG エナジー社・
SKON 社があり、その資金力と投資のスピード、政府の後ろ盾を基
盤にして、ダイナミックな展開を図っている。
EUは「脱アジア・EU 独自の電池産業」を掲げており、2017 年に
ドイツのメルケル首相が旗振り役を担い、500 社による『バッテリー 日本の実態を見ると、トヨタ自動車株式会社とパナソニック株式会
アライアンス』を結成し、8,000 億円規模の補助金による投資と開 社以外は投資力不足などで海外進出は困難な状況にある。2023年、
発支援を進めてきた。 株式会社 GSユアサと本田技研工業株式会社の EV用電池合弁事業に
経済産業省から 1,587億円の補助金が拠出されている。トヨタ自動
米国は「車載電池を経済安全保障」としている。「半導体チップ、 車株式会社の電池事業にも 1,200 億円の補助金が支給されている。
レアアース、医薬品と同列で扱う」という。2022 年には北米生産の
EV と電池生産を対象に税額控除として IRA 法案を打ち出した。 2024年9月には自動車業界の大手4 社への支援も決まり、日本で
も官民での車載電池への取り組みが進んでいる。こうした背景には佐
こうした諸外国が国を挙げての大々的な投資を進めるなか、日本 藤氏の提言があるとのことだ。海外と比較すると、国の投資が全くな
では 2021 年 9 月まで政策上のメッセージは皆無だった。2021 年 11 い日本の状況は『崖っぷち』であること、全固体電池よりもリチウム
月に政府が補助金を出すことを表明し、その 2 週間後に「産業戦略 イオン電池への支援が必要であること、安全性に関する日本独自の
検討官民協議会」が設立された。 基準を設ける必要性があることなど、さまざまな角度からの提言を行
い、官民一体となった車載電池産業への対応を推進してきたという。
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競争が激化する「車載電池産業」と
求められるグローバルでの競争力
世界的に EVシフトは減速しているが、中国はBYD 社を中心に低価
格攻勢によって自立成長を続けている。一方、日米欧韓では EVより
も HEV・PHEV が好調であり、これは日本メーカーに追い風となって
いる。GMやフォードは電池コストの低減を課題とし、正極材にリン
酸鉄を採用する動きがある。トヨタは HEVがCO2排出削減に効果的
と主張し、米国での電動車比率は43%に達している。
電池価格は 2024 年には世界平均で 115ドル /kWh と試算されて
いるが、中国は 75-100 ドル /kWh と安価である。一方、欧州では計
画されていた電池工場が凍結され、スウェーデンのノースボルトは歩
留まり向上の遅れから経営破綻した。一方、中国の CATL はスペイン、
モロッコ、スロバキアへと生産を拡大している。
絶えない「車載電池」の火災事故と
日本では経済産業省が全固体電池の開発支援として 5 社に 255 億 日本の力強い実績
円の補助金を決定した。しかし 2024 年の電池業界のグローバルシェ
アでは、CATL が 37% 前後を維持し、BYD が 2 番手、LG エナジー
車載電池が引き起こす深刻な事故として「火災」がある。中国では、
が 3 番手と予測されている。日本企業は HEV 主体のため容量ベース
2010 年から多くの火災事故が発生している。2024 年 8月には韓国で、
でのシェアが低い状況だが、今後 EV 用電池事業を拡大する方向に
中国のファラシスエナジー社の電池を搭載した、メルセデス・ベンツ
ある。
EV の「EQE」から火災が発生し車両 72 台が全焼したという。
さらに、2024 年5月にBYD 社がショールームで火災事故を起こして
いる。これは初めての火災事故ではなく、2021年11 月以降で10 件
目の発生である。工場での火災や車両を輸送するトレーラーでの火
災も起きていて非常に深刻な事態だ。
韓国では 2019 年以降、LGエナジー社とサムスン社の車載電池を
搭載した EVとPHEV において火災事故が発生した。米国のテスラも
断続的ではあるが火災事故を起こしている。2024 年8月、ポルトガル
で 200 台以上の車が全焼した事故の火元はテスラだったという。
韓国政府は、2024 年 8月に対策会議を開き、国内で普及している
EV のバッテリー情報を自動車メーカーが自発的に公開するよう勧告
懸念材料は日系部材業界のシェア低下だ。2011 年時点では正極 した。それを受けて、現代自動車や起亜自動車が対応した。韓国電
材が 37%、負極材が 56%、電解液が 39%、セパレーターで 70% 池企業が安全性を競争力とする契機にすべきだと高麗大のソン教授
近くあったシェアが、2023 年にはそれぞれ正極材と負極材が 4%、 が強調した。「EV の走行距離を技術競争と捉えていたが安全競争が
電解液が 7%、セパレーターが 10% にまで減少している。これは日 重要である」「競争国より安全性の側面で優れているという韓国電池
本企業がハイエンド市場に特化する一方で、韓国・中国企業がミッド の差別化を強調すべきである」と主張した。
レンジからハイエンド市場にまで食い込んできたためである。
こうした諸外国と比較をすると、日本では公道での火災事故は 28
日本企業が生き残るためには、ハイエンド市場だけでなく、コスト 年の長きにわたって起きていない。それは日本の非常に力強い実績と
ダウン戦略を進めてボリュームゾーンでも競争できるビジネスモデル いえる。日本と諸外国との一番の大きな違いは、日本の自動車各社
への転換が必要である。品質による差別化と価格競争は不可避であ の徹底した厳格な品質基準にある。
り、方向転換が求められている。
国連規則である「ECE R-100」や「GB 規格」は、日本においては通っ
て当たり前という感覚だ。それだけでは駄目で、足りないということ
を日本の自動車各社は理解をしている。その前提で独自の高等教育
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という意味合いで、それに基づいて電池メーカーも車載電池の開発 ンを EVからHEVに変更することを発表したが、これは理にかなった
に取り組み、きちんと対応を行っているのだ。結果的に非常に高品 判断だった。HEV用途では電池容量の中間程度を使うため、膨張・
質な車載電池ができている。 収縮が極めて小さいからである。
しかし、再び EV用途に方向転換した背景には、HEVの場合は電
池の出力がかなり大きくなるという問題があった。そうすると、固体
と固体の界面抵抗の大きさもあり、高出力を維持できなくなるリスク
があり、EV での活用を優先することに方向転換をしたと考えられる
のだ。
全固体電池の利点としては、高温耐性に優れている点が挙げられ
る。これにより冷却システムの簡素化、場合によっては不必要とでき
る可能性がある。しかし現在の電動車、特に EV 市場における最大
の課題は高価格である。これまでは補助金や税額控除を前提に EV
市場は成長を続けてきたが、ドイツやフランスでは補助金撤廃により、
EV の販売が減速している。米国でも同様の動きがあり、EV の価格
低減はますます重要になってくるだろう。
こうした非常に力強い実績を持つにもかかわらず、日本はそれを発
信していないと佐藤氏は説明する。佐藤氏は官民の弱腰だと捉えて つまり、この市場環境においては、電池および部材のコストや価
いるとのことだ。韓国政府は、電池の安全性を認証する独自の制度 格の低減が必要とされている。しかし、全固体電池はこれらの解決
を開始すると表明しており、国内外に安全対策への積極姿勢を発信 策にならず、むしろ当面の間はコスト増加につながる技術である。全
している。 固体電池の開発は重要ではあるが、EV 市場における価格競争力の
向上という命題については、別のアプローチで取り組む必要がある。
「なぜ、日本も同じように取り組みを進められないのか。製品評価
技術基盤機構(NITE)などの公的機関やインフラもある。日本こそ
がやるべきことであり、やるかやらないかの意思の問題ではないか」
と佐藤氏は指摘している。 グローバル競争に勝ち抜くために
日本が取り組むべきこと
注目される「全固体電池」の 日本政府と産業界が一体となって車載電池産業の強化に取り組ん
でいる。愛知県ではバッテリー研究会を設立し、行政・民間・大学
重要性と課題 が連携しながら次世代電池の研究開発を推進している。
全固体電池は従来のリチウムイオン電池とは異なり、セパレーター グローバル市場では CATL 社や BYD 社などの中国企業の攻勢が続
と電解液の役割を固体電解質が担う構造となっている。さまざまな いており、日本企業が競争力を維持するためにはスピード感のある戦
評価があるが、解決すべき大きな課題としては正極・負極・固体電解 略と官民協業が不可欠である。日本の電池メーカーと自動車メーカー
質ともに固体であるために、膨張・収縮時における固体と固体の界 は強固なサプライチェーンを構築しており、特に米国市場と日本市場
面の維持が難しい点だ。特に EV 用途では、広範囲の充放電容量を での事業拡大が期待されている。
使用するため、他の用途よりも膨張・収縮が大きくなり、この問題が
顕著になる。 電池および部材のコスト低減が非常に重要で、価格競争力の向上
が問われている。また、日本の強みである車載電池の「安全性」と「信
また、製造面での課題もある。全固体電池は水分を嫌うため、製 頼性」を武器に、付加価値のある製品を展開することも重要である。
造工程ではマイナス 40 度以下の露点管理が必要となるのだ。これに 日本の技術力は非常に高い水準にあるものの、十分に活用されてお
対応するための設備投資が必要であり、固体電解質そのもののコス らず、これらを積極的に打ち出す戦略が求められる。
トも高い。加えて、有毒な硫化水素発生リスクに対する制御技術も
重要となる。 その他にも、電池資源リサイクルの国内事業の早期確立による安
定補給の確保や、電池製造装置の開発支援と国内産業の育成も欠か
関連記事:全固体電池のメリット・デメリットとは?仕組みや実用化 せない。そして、車載電池産業を魅力あるものにしていくことで、優
への課題をわかりやすく解説 秀な人材の確保も欠かせないのだ。
トヨタ自動車株式会社では一時期、全固体電池のアプリケーショ 韓国や中国では、車載電池産業の魅力を積極的にアピールし、優
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秀な人材を集める仕組みを構築している。しかし、日本ではこの点
が不十分である。産業の魅力を高め、次世代の技術者を確保するこ
とが、長期的な競争力の維持につながると佐藤氏は指摘する。
今後、日本が車載電池産業で生き残るためには、技術力を最大限
に活用し、迅速かつ総合的な戦略を展開する必要がある。日本はす
でに安全性と信頼性を確立しているのだからこそ、産業界と政府が一
丸となり、グローバル市場で成果を出せることに大きな期待が寄せら
れていると佐藤氏は締め括った。
まとめ
「車載電池」は世界中で注目されている分野である一方で、グロー
バル競争は激化している。競合他社との競争に生き残るためには、
技術開発を進めていくとともに、競合の動きに目を向けることが重要
だ。
特に、海外の技術動向や製品開発事例を追うことが重要であり、
それらを踏まえた製品開発や技術開発を進めることで、競合他社に
対して強固な競争優位性を確立できるだろう。改めて、注目技術領域
として情報のキャッチアップをしてみてはいかがだろうか。
※記事内容および、ご所属等はセミナー開催当時のものです。
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