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プラグ&プレイ機能を備えるデジタル入力のD級アンプ、優れたオーディオ性能の実現が容易に

製品カタログ

プラグ&プレイ機能を備えるデジタル入力のD級アンプをご紹介。D級アンプを採用することで、基板面積、コスト、労力を削減しつつ、高性能のオーディオ性能を実現する方法を解説します。

本稿で紹介するデジタル入力のD級アンプ(オーディオ・アンプ)は、プラグ&プレイに対応する新世代の製品です。アナログ入力を使用する従来のD級アンプと比べてはるかに優れたオーディオ性能を達成します。より重要なポイントは、デジタル入力のD級アンプを採用することにより、消費電力、複雑さ、ノイズ、システムのコストを削減できるという追加のメリットが得られるということです。

このカタログについて

ドキュメント名 プラグ&プレイ機能を備えるデジタル入力のD級アンプ、優れたオーディオ性能の実現が容易に
ドキュメント種別 製品カタログ
ファイルサイズ 637.6Kb
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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Vol 56, No 4—December 2022 プラグ&プレイ機能を備える デジタル入力のD級アンプ、 優れたオーディオ性能の実現が容易に 著者:Matt Felder、ディスティングイッシュト・エンジニア 概要 これまで電子機器のメーカーは、効率が高くフィルタが不要なア 本稿では、プラグ&プレイ機能を備えるデジタル入力のD級ア ナログ入力のD級アンプを広く採用してきました。主な用途とし ンプを紹介します。それらの製品を採用すれば、I2C対応のプ ては、スマートフォンやタブレット端末、ホーム・セキュリティ・ ログラミング、低ジッタのサンプリング・クロック、ロジック システム、スマート・スピーカなどが挙げられます。アナログ入 信号用のレベル・シフタ、慎重な基板設計、EMI(電磁干渉) 力のD級アンプにより、それらの機器が備えるポータブル・オー 対策用のフィルタが不要になります。そのため、システム設計 ディオ・スピーカの出力に関する要件に対応してきたということ が大幅に簡素化されます。本稿では、この種のD級アンプを採 です。実際、D級アンプを採用すれば、バッテリに直接接続でき 用し、基板面積、コスト、労力を削減しつつ、高性能のオーディ る、損失を最小限に抑えられる、部品点数を削減できるといった オ性能を実現する方法を明らかにします。 メリットが得られます。また、80dBを超える電源電圧変動除去 比(PSRR)を達成できることもメリットの1つです。この性能 はじめに は、GSM(Global System for Mobile Communications)の 217Hzの復調信号によって生じる可聴ノイズを防ぐ上で重要に 本稿で紹介するデジタル入力のD級アンプ(オーディオ・アンプ) なります。 は、プラグ&プレイに対応する新世代の製品です。アナログ入力 を使用する従来のD級アンプと比べてはるかに優れたオーディオ アナログ入力のD級アンプを使用する場合、通常はアプリケー 性能を達成します。より重要なポイントは、デジタル入力のD級 ション・プロセッサにD/Aコンバータ(DAC)とライン・ドラ アンプを採用することにより、消費電力、複雑さ、ノイズ、シス イバ・アンプを集積することになるはずです(図1)。その結果、 テムのコストを削減できるという追加のメリットが得られるとい ダイのコスト、消費電力、スピーカ出力のノイズが増大します。 うことです。 ノイズと消費電力に ACカップリング用の 寄与する ノイズに敏感な コンデンサが 追加の要素 アナログ経路 必要 + ∑-∆ DAC ライン・ アナログ入力の アンプ – D級アンプ I2S I2S 入力 の処理 + ∑-∆ DAC ライン・ アナログ入力の アンプ – D級アンプ アプリケーション・ プロセッサ D級アンプはスピーカの 近くに配置するのが望ましい。 但し、そうすると アナログ入力経路が 長くなってしまう 図1. アナログ入力のD級アンプをスピーカ・アンプとして使用した従来型のシステム。 アプリケーション・プロセッサにDACとライン・ドライバ・アンプ(ライン・アンプ)を集積する必要があります。 そのため、ダイのコスト、消費電力、スピーカ出力のノイズが増加します。 VISIT ANALOG.COM/JP 1 プラグ&プレイ機能を備えるデジタル入力のD級アンプ、優れたオーディオ性能の実現が容易に
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変調器は DACとライン・ ノイズの影響を 不要 アンプは不要 受けないデジタル経路 MAX98357/ MAX98360/ MAX98365 BCLK I2S I2S LRCLK PCM入力の 入力 の処理 DIN D級アンプ アプリケーション・プロセッサ MAX98357/ MAX98360/ MAX98365 PCM入力の D級アンプ デジタル入力信号のパターンは ノイズの影響を受けないので、 長くても構わない。 このことは、D級アンプを スピーカの近くに配置できる ということを意味する 図2. PCM入力のD級アンプをスピーカ・アンプとして採用したシステム。 配線は3本で済むことに加え、アプリケーション・プロセッサに変調機能や データのアップサンプリング機能を集積する必要はありません。 また、基板のアナログ経路に信号が結合してしまうと性能が劣化 同じデジタル入力のD級アンプでも、古いタイプの製品では、サ します。それを防ぐためには、基板のレイアウトを慎重に行う必 ンプリング・レートやビット深度を調整可能ではあるものの、複 要があります。 雑なプログラミングが必要になることがあります。それに対し、 新世代の製品では、広範にわたるサンプル・レートとビット深度 一方、デジタル入力のD級アンプを採用すれば、基板設計に関連 を自動的に検出して自己構成が行われるようになっています。つ するほとんどの問題が解消されます(図2)。例えば、大電流を供 まり、プラグ&プレイが実現されているのでプログラミングは一 給するバッテリと負荷であるスピーカの接続に使用する配線を最 切必要ありません。 短にするために、シングルチャンネルのD級アンプを基板上の離 れた場所に配置することができます。また、上述したように、ア マルチチャンネルに対応する必要がある場合、デジタル入力のD ナログ入力のD級アンプではDACとライン・ドライバ・アンプ 級アンプを採用すれば、外付けのコンデンサや基板上の配線の が必要になります。デジタル入力のD級アンプではそれらは不要 数を減らすことができます。PCM入力に対応するためにBCLK、 なので、実装面積とシステム・コストを抑えつつ、設計を簡素化 LRCLK、DINの各配線を用意するだけで、ステレオのデータや8 することが可能になります。 チャンネルのTDMデータに対応できます(図2)。一方、アナロ グ入力のステレオD級アンプの場合、通常は2つの差動入力信号 システム設計の簡素化 (配線は4本)を、ACカップリング用のコンデンサによってルー デジタル入力のほとんどのD級アンプは、PCM(Pulse Code ティングしなければなりません(図1)。 Modulation)の入力データ(I2Sの入力データ)を受け取ります。 デジタル入力のD級アンプでは、ほとんどの場合、デジタル そのためには、BCLK、LRCLK、DINという3本の配線が使用さ 回路用の低い電源電圧(1.8V)とスピーカ用の高い電源電圧 れます。PCMデータを入力とするD級アンプを使用する場合、 (2.5V~5.5V)が必要になります。それに対し、MAX98357 アプリケーション・プロセッサに変調機能やデータのアップサン やMAX98360は単電源で動作します。そのため、部品点数を削 プリング機能を集積する必要はありません(図2)。なお、PCM 減し、基板の設計を簡素化することが可能です。MAX98365も 入力のD級アンプの中でも、古い実装方法を採用した一部の製品 3.0V~5.5Vの単電源で動作します。ただ、この製品は1.8V~ では、ジッタのないサンプリング・クロックを生成するためのク 5.5Vと3.0V~14.0Vの2つの電源で動作させることも可能で リーンなマスタ・クロック(MCLK)が必要になります。一方、 す。また、デジタル入力用のロジック電圧はこれらの電源電圧に 「MAX98357」、「MAX98360」「MAX98365」のような新しい は依存しません。入力ロジック電圧は1.2V~5.5Vの範囲の任意 PCM入力のD級アンプであれば、MCLKの入力は必要ありませ の値に設定でき、レベル・シフタは必要ありません。 ん。そのため、ピン数や消費電力、基板の複雑さが低減されます。 2 プラグ&プレイ機能を備えるデジタル入力のD級アンプ、優れたオーディオ性能の実現が容易に
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サイクルのスキップ 図3. 12.288MHzのMCLKの生成方法。 25MHzのクロックのサイクルをスキップしています。 ジッタに対する耐性、クロックの生成方法 テムの複雑さを緩和できる好ましいソリューションが得られま デジタル入力のD級アンプを使用する場合、通常はクロック・ す。BCLKの生成方法として最も簡単なものは、クロックのサイ ジッタという新たな課題に直面することになるでしょう。ほとん クルをスキップするというものです(図3)。しかし、それでは非 どの製品では、優れたオーディオ品質を得るためにBCLKまたは 常に大きなジッタが発生してしまいます。例えば、13MHzのリ MCLKのジッタ・レベルをかなり低く抑える必要があります。た ファレンス・クロックのサイクルをスキップして、6.144MHzの だ、D級アンプ製品のデータシートを見ても、ジッタに対する耐 BCLK(48kSPS×128 OSR)を生成するとします。その場合、 性について明記されているケースは少ないはずです。記載されて ジッタのピーク値は38.4ナノ秒、rms値は22.2ナノ秒になりま いる場合の標準的な仕様は、rms値で約200ピコ秒程度となりま す。これらは、ほとんどのDACが耐えられるジッタの値と比べ す。一般に、クロック・ジッタが大きいと、D級アンプのダイナ て2桁も高い値です。 ミック・レンジまたはフルスケールにおけるTHD + N(全高調 しかし、本稿で紹介した新たなD級アンプ製品であれば、それだ 波歪み+ノイズ)性能が低下します。 けのクロック・ジッタが存在していても、103dBを超えるダイナ 多くのシステムでは、アプリケーション・プロセッサ用のリファ ミック・レンジを達成できます。クロックのサイクルをスキップ レンス発振器の周波数が都合良くBCLKの周波数の倍数になって する手法は、アプリケーション・プロセッサにわずかな論理ゲー いるとは限りません。そのため、低ジッタのクロックをD級アン トを集積するだけで実現可能です。また、それらの新たなD級ア プに供給するのは容易ではないはずです。例えば、GSMに対応 ンプ製品を採用した場合、発振器や、PLLの実装に必要となるルー する携帯電話では、水晶発振器の周波数として一般的に13MHz プ・フィルタも不要です(図4)。 が使用されます。また、多くのビデオ・ソリューションでは 27MHzという周波数が選択されます。どちらのリファレンス周 PCM入力のD級アンプを採用したシステム (サイクルのスキップによってクロックを生成) 波数も、オーディオ・アプリケーションで使用される一般的なサ サイクルをスキップするための シンプルなロジック回路 ンプリング・レート(44.1kSPSや48kSPS)の倍数ではありま せん。したがって、それらのシステムでは複雑なフラクショナル MAX98357/ MAX98360/ N型のフェーズ・ロック・ループ(PLL)を使用してオーディオ PDM_CLK 13MHzの サイクルを 6.144 MHz MAX98365 BCLK 用のクロックを生成することになります。加えて、オーディオ用 内部 スキップする クロック ための回路 のリファレンス発振器として独立したものを必要とするソリュー ションも存在します。その場合、複雑さと部品点数(BOM)が 64分周 LRCLK PCM入力の アプリケーション・ D級アンプ 増加することになります。 プロセッサ DIN I2S ∑-∆ 以上のような理由から、オーディオ性能を損なうことなく大き 入力 なクロック・ジッタに耐えられるデジタル入力のD級アンプが 求められています。そのようなD級アンプを採用すれば、シス 図4. PCM入力のD級アンプを採用したシステム。 サイクルのスキップによってクロックを生成しています。 VISIT ANALOG.COM/JP 3
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ジッタに対する耐性の評価結果 まとめ MAX98357/MAX98360/MAX98365のダイナミック・レン 本稿では、プラグ&プレイ機能を備える新たなデジタル入力のD ジは、サイクルのスキップによってクロック・ジッタが増加して 級アンプを紹介しました。これらの製品を採用すれば、I2C対応 も劣化しません。これについては、実測評価で確認されていま のプログラミング、低ジッタのサンプル・クロック(MCLK)、 す(図5)。クロック・ジッタが存在する場合、これらの製品のダ ロジック信号用のレベル・シフタ、慎重な基板設計、EMI対策 イナミック・レンジは、120dBのダイナミック・レンジをうたう 用のフィルタは必要ありません。シンプルな基板設計により、高 DACと比べて20dB以上高くなります。なお、シグマ・デルタ い効率、優れたEMI性能、大きな出力を得ることができます。 (ΣΔ)型DACのジッタ耐性については、稿末に示した参考資料 MAX98357とMAX98360のパッケージはWLPまたはQFNで 「Analyzing Audio DAC Jitter Sensitivity(オーディオ用DAC あり、3.2Wの出力を得ることが可能です。MAX98365のパッ のジッタ感度を解析する)」1をご覧ください。 ケージはWLPであり、17.6Wの出力を供給できます。 120 参考資料 115 1 Matt Felder、Patrick Gallagher、Brian Donoghue 110 MAX98360 MAX98365 「Analyzing Audio DAC Jitter Sensitivity(オーディオ用DAC 105 のジッタ感度を解析する)」EDN、2012年9月 MAX98357 100 95 競合製品 90 1 85 競合製品2 80 クリーンなクロック ジッタを含むクロック 競合製品3 75 図5. ジッタの有無とダイナミック・レンジの関係。 ジッタが存在しない場合と、サイクルのスキップによって 11.5ナノ秒(rms値)のクロック・ジッタが生じた場合の 評価結果を示しています。 著者について Matt Felderは、アナログ・デバイセズのディスティングイッシュト・エンジニアです。2009年にアナロ グ設計エンジニアとして入社しました。オーディオ用のDAC/ADC、マルチチャンネルのSAR ADC、オー ディオ・アンプ、ビデオ用のDAC、FM対応の無線受信機、マルチフォーマットのバッテリ・チャージャな どを担当しています。IEEEのシニア会員であり、47件の特許を保有。テキサスA&M大学で電気工学の学 士号、テキサス大学オースティン校で電気工学の修士号を取得しました。 VISI T A N A L O G . C O M /JP お住いの地域の本社、販売代理店などの情報は、analog. ©2022 Analog Devices, Inc. All rights reserved. com/jp/contact をご覧ください。 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possibleはアナログ・デバイセズの商標です。 オンラインサポートコミュニティEngineerZoneでは、アナ ログ・デバイセズのエキスパートへの質問、FAQの閲覧がで きます。 AD5612-0-12/22 4 プラグ&プレイ機能を備えるデジタル入力のD級アンプ、優れたオーディオ性能の実現が容易に ダイナミック・レンジ〔dB〕