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アナログ・デバイセズでは、最大限の電力効率を実現し、電気自動車の走行距離を最大限まで延ばすために、EV用サブシステムを支える半導体材料のリエンジニアリングを行っています。
政府の規制当局は自動車OEMに対し、その販売車両の全体的なCO2排出量削減を継続的に求めており、その要求に違反した場合は厳しい罰則が科されます。また、道路沿いや駐車場では、EV充電用インフラストラクチャの整備拡充が始まっています。しかし、これらすべての進歩にも関わらず、EVの走行距離上の制約がなかなか解消されないことから、主流層の消費者による電気自動車購入は進まないままになっています。
問題を複雑にしているのは、EVの走行距離を延ばして消費者の不安を解消するであろうEVバッテリの大型化が、同時にEVの価格を押し上げるおそれがあるということです。バッテリは、最終的な車両コストの25%以上を占めています。
このカタログについて
| ドキュメント名 | トランクション・インバータでのSiC使用によるEVの走行距離延長 |
|---|---|
| ドキュメント種別 | 製品カタログ |
| ファイルサイズ | 1.6Mb |
| 取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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Technical Article
トランクション・
インバータでの
SiC使用による
EVの走行距離延長
著者:Timothé Rossignol 、マーケティング・マネージャ
現在、自動車輸送と半導体技術の将来に影響を与える大きな破壊
的創造の流れ(ディスラプション)が2つあります。アナログ・
デバイセズでは、電力を使ってクリーンに自動車を走らせるため
の新しい画期的な手段の採用を進める一方で、最大限の電力効率 Motor
を実現し、その結果としてEVの走行距離を最大限まで延ばすた
めに、電気自動車(EV)用サブシステムを支える半導体材料の Traction
Inverter
リエンジニアリングを行っています。 AC
LV Battery Charge
OBC Point
政府の規制当局は自動車OEMに対し、その販売車両の全体的な
CO2排出量削減を継続的に求めており、その要求に違反した場合 DC-to-DC
DC
は厳しい罰則が科されます。また、道路沿いや駐車場では、EV Charge
Point
充電用インフラストラクチャの整備拡充が始まっています。しか BMS
し、これらすべての進歩にも関わらず、EVの走行距離上の制約 HV Battery
がなかなか解消されないことから、主流層の消費者による電気自
動車購入は進まないままになっています。
問題を複雑にしているのは、EVの走行距離を延ばして消費者の 図1. EVの電力変換要素。トラクション・インバータは、HVバッテリのDC
電圧をAC波形に変換してモータを駆動し、それによって車を走らせます。
不安を解消するであろうEVバッテリの大型化が、同時にEVの価
格を押し上げるおそれがあるということです。バッテリは、最終 SiCパワー・デバイスを提供するリーダー企業の1つである
的な車両コストの25%以上を占めています。 Wolfspeedのパワー・プラットフォーム担当マネージャAnuj
Narainは、次のように述べています。「SiC MOSFETがその真価
幸いなことに、このような状況と平行して起こっている半導体の を発揮すれば、シリコンベースの既存技術と比較して、標準的な
革命によって、シリコン・カーバイド(SiC)MOSFETパワー・ EVの運転サイクルを5%~10%向上できると広く期待されてい
スイッチなどの新たなワイド・バンドギャップ・デバイスが登場 ます。」このため、これらのデバイスは、EVドライブ・トレイン
しました。これらのデバイスは、EVの走行距離に対する消費者 用の次世代トラクション・インバータにとって重要な部品です。
の期待と、競争力の高いコスト構造でその期待を満たすOEMの 各種の補助部品と共に適切に活用すれば、これらの部品による電
能力との間にある差を縮める助けとなります。 力効率の向上が、EVの走行距離に関する消費者の信頼を獲得し
てEV普及を加速させる上で、大きな助けとなる可能性がありま
す。
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SiC技術による最大限の効果実現 ゲート・ドライバの挿入
D
HV SiC Motor
Battery BMS MOSFET °t
Control PWM G
Unit
Power Current Isolated Current Motor Position
Mgt Sensor Gate Driver Sensor Sensor
v, i S
図4. 絶縁型のゲート・ドライバは、信号領域(制御ユニット)と
MCU 電力領域(SiCスイッチ)の橋渡しをします。このドライバは、絶縁と
信号バッファリングの他に、テレメトリ、保護、および診断の機能を実行し、
シグナル・チェーンの重要な要素となっています。
図2. バッテリからモータへのシグナル・チェーン。
走行距離延長を実現するには、最大限の効率レベルを実現できるように 絶縁型ゲート・ドライバは最適なスイッチング・スイート・スポッ
各ブロックを設計する必要があります。
トを設定する役割を果たし、絶縁バリア越しの伝搬遅延ができる
電力密度と効率に関しては、SiCベースのパワー・スイッチが持 だけ短く正確な値となるようにする一方で、システム絶縁と安全
つ本質的な利点が十分に理解されています。また、システムの冷 絶縁、パワー・スイッチの過熱制御、短絡の検出と保護などの機
却とサイズに関してもいくつかの重要な関係が分かっています。 能を提供する他、ASIL Dシステムへのサブブロック・ドライバ/
SiCへの進化によって800V/250kWのインバータを1/3のサイ スイッチ機能の挿入を容易にします。
ズに縮小することが可能になる他、これと組み合わせて使用する
DCリンク・フィルム・コンデンサのサイズとコストも大幅に縮 しかし、SiCスイッチによって生じる高スルー・レートのトラン
小/削減できます。従来の半導体と比較して、SiCパワー・スイッ ジェントは絶縁バリア越しのデータ伝送を損なうおそれがある
チは走行距離の延長やバッテリ・パックの縮小が実現でき、これ ので、これらのトランジェントに対する感受率を測定し、理解
らのことはデバイス・レベルからシステム・レベルまで、コスト しておくことが極めて重要です。アナログ・デバイセズ固有の
比較の上でこれらのスイッチに有利にはたらきます。 iCoupler®技術は、優れたコモンモード過渡耐性(CMTI)を備
えていることが実証されており、測定によって最大200V/ns以
こうした走行距離の検討とコスト的な検討の両方に関係するトラ 上の性能が確認されています。これは、安全動作時のSiCスイッ
クション・インバータは、今後も、更なるEVの効率向上と走行 チング時間に関して最大限の可能性をもたらす値です。
距離延長の実現へ向けた革新の中心的存在になると見込まれてい
Transformer Coils Transmit Data
ます。また、SiCパワー・スイッチは最も高価で機能的にも重要 in Both Directions, Can Also
Transfer Power
なトラクション・インバータの要素であり、その価格に見合うだ
Power Coils
けの利点をすべて引き出すためには、極めて正確に制御すること
が求められます。
実際、コモンモード・ノイズの変動や、パワー・スイッチ環境の
20 μm to 30+ μm Polymide Insulation
不適切な管理から生じる超高速の過渡電圧と過渡電流(dv/dtお Withstands >5 kV rms
よびdi/dt)による破壊的な極めて電圧のオーバーシュートがあ
ると、SiCスイッチの本質的な利点がすべて失われてしまうおそ CMOS Interface Chips
Contain Drive and Receive Circuits
れがあります。大まかに言って、SiCスイッチの基礎となる技術
は高度なものですが、その機能は比較的単純であり、端子は3つ
だけです。しかし、システムとのインターフェースを取る場合は Data Coils
注意が必要です。 図5. アナログ・デバイセズは、iCouplerデジタル・アイソレーションICに
より、20年以上にわたってデジタル・アイソレーション技術の進歩を実現
してきました。この技術は、ポリイミドによる厚い絶縁が施されたトランス
で構成されています。デジタル・アイソレータは、ファウンドリCMOS
VDS プロセスを使用しています。トランスは差動で、優れたコモンモード
過渡耐圧を備えています。
小さいダイ・サイズと熱的に厳しい周囲状況を考慮すると、短絡
I はSiCベースのパワー・スイッチに関するもう1つの大きな課題
D
です。ゲート・ドライバは、EVパワー・トレインの信頼性、安
全性、およびライフ・サイクルの最適化に不可欠な短絡保護を実
図3. ターンオン時(左)とターンオフ時(右)の電圧波形と電流波形。 現します。
SiC環境ではdv/dtが10V/nsを超えることがありますが、これは800Vの
DC電圧のスイッチングに80nsかからないことを意味します。
同様に、10A/nsは80nsで800Aが流れることを意味し、
di/dtがどのようなものかをうかがい知ることができます。
2 トランクション・インバータでのSiC使用によるEVの走行距離延長
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高性能ゲート・ドライバは、WolfspeedのようなSiC MOSFET 路用であるか、あるいは補助的な降圧DC/DC回路用であるかの
パワー・スイッチのリーディング・プロバイダと共に行った現実 別を問いません。いずれの場合も、EV設計者にとって重要なの
的なテストによって、その価値が実証されています。様々な重要 はEMIの問題を解決できる性能です。複数電源のスイッチングと
パラメータの中には短絡検出時間と合計障害解消時間が含まれて いう問題に関して言うと、その決定的な課題となるのはEMCで
いますが、これらについては、それぞれ最小300ns(短絡)およ あり、優れたEMCは、テスト・サイクルを短縮して設計の複雑
び800ns(障害解消)までの値を実現することができます。その さを緩和し、それによって製品の市場投入を加速する上で大きな
他の安全および保護機能については、スムーズなシステム動作に 役割を果たします。
不可欠な調整式ソフト・シャットダウン機能が、テストにより実
補助構成部品のエコシステムを深く掘り下げることによる磁気検
証されています。
出の進歩が、広い帯域幅と高い精度を備え、電力損失のない新
同様に、スイッチング・エネルギーと電磁両立性(EMC)につ 世代の非接触型電流センサーと、シャフトエンド構成およびオフ
いても、電力性能とEV走行距離を改善するために最大限まで高 シャフト構成用の正確で信頼性の高い位置センサーを生み出しま
めることができます。駆動能力が高まると、ユーザはより高速の した。トラクション・モータの機能を監視する回転センサーと位
エッジ・レートを得ることができます。その結果スイッチング損 置センサーを備えた標準的なプラグイン・ハイブリッドEV1への
失が減少します。これは効率向上の助けとなるだけでなく、ゲー 展開を目的とする電流センサーは、15~30種類あります。様々
ト・ドライバごとに外部バッファを割り当てる必要がなくなるの なEV用電源サブシステムの測定と効率維持にとって、漂遊磁界
で、ボード・スペースとコストの削減も可能になります。逆に、 に関する検出の精度と信頼性は非常に重要な属性です。
一定の条件下では、ゆっくりとスイッチングして、最適な効率を
達成する必要がある場合があります。あるいは、段階的にスイッ エンドtoエンドの効率
チングすることさえあります(こうすることで更に効率を向上で アナログ・デバイセズは、バッテリからトラクション・インバー
きることが研究によって示されています)。アナログ・デバイセ タ、更には補助コンポーネントやその他の部品に至るまで、EV
ズは、このためにスルー・レートを調整できるようにしています。 パワー・トレインのすべての要素を包括的に見ることにより、全
また、外部バッファをなくすことで、更に障害が少なくなります。 体的な電力効率の向上とEVの走行距離延長を実現させる形で、
EVを改善するための機会を数多く見出しています。SiCパワー・
システム内の要素 スイッチング技術がEVのトラクション・インバータに採用され
ゲート・ドライバとSiCスイッチ・ソリューションの組み合わせ ているため、デジタル・アイソレーションは、この複雑なシステ
によって得られる価値と性能も、周囲のコンポーネントに不備や ムを構成する数多くの重要な要素の1つとなっています。
非効率的な点があると、すべて失われてしまうおそれがあります。
同様に、自動車のOEMは、最大限の性能と効率を実現するため
電力および検出の分野でアナログ・デバイセズが積み重ねてきた
に、EVの最適化に分野横断的な手法を利用して、使用可能なす
実績、そして性能の最適化へ向けたそのシステム・レベルのアプ
べての電力監視/制御デバイスを密接に連携させることができま
ローチは、設計上の広範な考慮事項を包含しています。
す。更に各OEMは、これを、主流層の消費者へEVを浸透させ
EVを包括的な視野で眺めると、ドライブ・トレインの電力効率 るための最後の障害の克服、つまり走行距離とコストに関する問
を最適化するための新たな可能性が見えてきます。ドライブ・ト 題克服の助けとする一方で、すべての人にとってより環境に優し
レインの電力効率は、安全で信頼性の高い動作を確保しながら、 い未来の実現を促進することができます。
使用可能なバッテリ容量を最大限に生かす上で不可欠な要素で
す。BMSの品質は、充電1回あたりのEVの走行距離に直接影響 参考資料
し、バッテリの総寿命を最大限延長します。結果として、これは 1 R ichard Dixon“. MEMS Sensors for the Car of the Future.”
総所有コスト(TCO)を削減することにもなります。 4th Annual Automotive Sensors and Electronics Summit,
パワー・マネージメントに関しては、BOMコストやPCBフット February 2019.
プリントに悪影響を与えることなく、複雑な電磁干渉(EMI)上
の課題を克服できることが最も重要な点となります。電源層に関
しては、電力効率、熱性能、およびパッケージングも重要な考慮
事項です。これは、その電源層が絶縁型ゲート・ドライバ電源回
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著者について
Timothé Rossignol
ツールーズ大学で電気工学の修士号と博士号を取得。過去
10年間自動車産業に従事し、サプライ・チェーン全般につ
いて豊富な経験を持つ。フランスのOEMと1次サプライヤ
でそのキャリアを開始し、その後英国でハードウェア設計
リーダーとして勤務。2018年にアイルランドのリメリッ
クでシステム・エンジニアとしてアナログ・デバイセズに
入社。最近フランスへ異動し、現在はマーケティング・マ
ネージャとしてeモビリティ用電力変換システムに関する
様々な業務に従事。
連絡先:timothe.rossignol@analog.com
EngineerZone®
オンライン・サポート・コミュニティ
アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ
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の連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問
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