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高い忠実度を備えた状態監視用振動アクイジション・プラットフォーム

製品カタログ

本稿では、最近のMEMS技術の進歩がどのように加速度センサーを普及させ、状態基準保全アプリケーションにおいて圧電式センサーのライバル的存在となるに至ったかを説明します。また、これらすべてのことを可能にする新しい開発プラットフォームの使い方についても述べます。

このカタログについて

ドキュメント名 高い忠実度を備えた状態監視用振動アクイジション・プラットフォーム
ドキュメント種別 製品カタログ
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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Technical Article 高い忠実度を備えた 状態監視用 振動アクイジション・プラットフォーム 著者:Chris Murphy、 アプリケーション・エンジニア 概要 を持つ様々なタイプの顧客が存在しますが、すべての顧客が両方 本稿では、最近のMEMS技術の進歩がどのように加速度セン の分野に通じているわけではありません。 サーを普及させ、状態基準保全アプリケーションにおいて圧電 自分たちのアルゴリズム開発に集中しようとする開発者は、設備 式センサーのライバル的存在となるに至ったかを説明します。 資産の故障やダウンタイムを正確に予測するために、情報のデー また、これらすべてのことを可能にする新しい開発プラット タ・レイクを必要としています。これらの開発者は、ハードウェ フォームの使い方についても述べます。パート2では、この開 アを設計したり、データの完全性についてトラブルシュートをし 発プラットフォームを支えるソフトウェア・フレームワークと、 たりすることを望んでいません。望んでいるのは、高い忠実度を どうすればそれを一般的なデータ解析ツールに統合化して機械 備えたデータを使用することだけです。同様に、システムの信頼 学習の実例を開発できるのか、そして最終的にはどうすればそ 性向上やコスト削減を目指すハードウェア・エンジニアが必要と れを様々な資産に展開できるのかということに焦点を当てます。 しているのは、既存のインフラストラクチャに簡単に接続し、既 存ソリューションを基準として評価を行うことのできるソリュー 状態基準保全(CbM)と予防保全(PdM)の概要 ションです。これらの開発者やエンジニアは、性能評価に余分な 状態基準保全(CbM)では、センサーを使って装置や設備資産 時間をかけずに済むよう、使用やエクスポートが容易で判読可読 を監視し、それらの現在の健全性を計測します。予防保全(PdM) なフォーマットのデータを利用できることを必要としています。 では、CbM、機械学習、分析手法といった技術を組み合わせて 使用し、設備資産の将来的な保全サイクルや故障を予測します。 システムレベルの多くの課題は、センサーからアルゴリズム開発 装置の状態監視分野の著しい発展が世界的に予想される中で、 に至るまで、すべてプラットフォーム・アプローチによって解決 その重要な傾向を知り、理解することは不可欠です。より多くの することができます。また、それにより、あらゆる顧客タイプへ CbM企業が、その提供製品を差別化するためにPdMに目を向け の対応が可能になります。 るようになっています。CbMに関して言えば、保全管理者や施 設管理者には、ワイヤレス設備や低コストで高性能の設備といっ CN0549の概要とそれによる設備寿命延長の原理 た新たな選択肢が提供されています。ほとんどのCbMシステ ム・インフラストラクチャが変わっていない中で、これまで圧電 CN0549 CbM開発プラットフォーム 式センサーによって占められていたシステムや、コスト的な問題 CN0549状態基準保全プラットフォームは既成のハードウェアと から監視されていなかったシステムに、新しいMEMS技術を直 ソフトウェアで構成された高性能ソリューションで、高忠実度の 接組み込むことができるようになっています。 振動データを設備資産からアルゴリズム/機械学習開発環境へス トリーム送信することができます。このプラットフォームは、テ ストおよび検証済みのシステム・ソリューションです。高精度の 状態監視 – エンジニアリング上の課題と設計の決定 データ・アクイジションが可能で、設備資産への機械的な取付け 標準的なCbMシグナル・チェーンの設計では、必要とされる様々 についても実績があり、高性能の広帯域振動センサーを備えてい なエンジニアリング分野と考慮すべき技術が数多く存在し、それ るので、ハードウェアのエキスパートにとって大きな利益となり らの分野と技術は常に改善されていると共に複雑さを増していま ます。また、すべてのハードウェア設計ファイルが提供されてい す。今日では、アルゴリズム開発(ソフトウェアのみ)やハード るので、ユーザが設計した製品に容易に組み込むことができます。 ウェア設計(ハードウェアのみ)といった特定分野の知識と経験 CN0549は状態監視シグナル・チェーン・ハードウェアの課題を VISIT ANALOG.COM/JP
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EVAL-CN0532-EBZ XLMOUNT1 EVAL-CN0540-EBZ Embedded Gateway Reference Design for Converting Mechanically Optimized Mounting Reference Design for Converting Two Platforms Are Supported from the Low Noise, Wideband ADXL1002 Block for Accelerometer the Low Noise, Wideband ADXL1002 Intel and Xilinx. There Is Support for All MEMS Accelerometer’s Output to an Breakout Boards MEMS Accelerometer’s Output to an Associated Software. Each Platform Runs IEPE-Compatible Sensor Interface IEPE-Compatible Sensor Interface Linux and Can Display Time and Frequency Domain Data in Real Time or Send Data to the Cloud over Ethernet or Directly to MATLAB, Python, etc. 図1. CbM開発プラットフォームの要素 引き出して、ソフトウェア・チームとデータ・サイエンティスト ズ、帯域幅、g範囲などの面で圧電式センサーと肩を並べるよう がすぐに機械学習アルゴリズムの開発に着手できるようにしてく になり、これまでは故障発生後の対処、つまり事後保全による対 れるので、SWエキスパートにとっても魅力的な存在です。その 応が取られてきた比較的重要度の低い設備資産についても、保全 主な機能と利点を以下に挙げます: 管理者や施設管理者がその状態をより正確に把握できるようにな りました。これは主に、MEMSの高い性能と低いコストによるも X 設備資産への取付けが容易で、機械的結合時も信号の完全性 のです。現在では、重要度が比較的低い設備資産や中程度の設備 を維持 資産についても、費用効果の高い方法で継続的な監視を行えるよ X IEPEデータ出力フォーマットの広帯域MEMS加速度センサー うになっています。設備資産の無用な摩耗や損耗を容易に確認し X DC~54kHzのアナログ入力帯域幅を備えたIEPE高忠実度 て是正することができるので、高度な振動検出は設備資産の寿命 データ・アクイジション(DAQ)ソリューション を延ばす助けとなります。これは、全体的な装置の有効性確保や、 X 組込みのゲートウェイがローカル/ネットワーク処理用に未 設備および工程のダウンタイム短縮にも役立ちます。 加工データをキャプチャして保存 X アナログ・デバイセズのIIO Oscilloscopeアプリケーション 設備資産の監視 – 検出に関わる諸問題 を使って周波数領域のデータをリアルタイムで可視化 CbMとPdMにおいてはタイプの異なる検出方法が多数存在しま X PythonやMATLAB®などの一般的なデータ解析ツールにセン す。電流検出、磁気検出、流量監視、その他様々な方法が多くの サー・データを直接ストリーム送信 アプリケーションで使われています。振動検出はCbMに使われ る最も一般的な方法であり、これには圧電式の加速度センサーが CbM開発プラットフォームは図1に示す4つの異なる要素で構 最も多く使われています。ここでは、振動センサーの使用範囲が 成されています。これらについては、個々の要素を組み合わせた 技術の進歩によってどのように拡大してきたのか、そして、それ 全体的なソリューションを検討する前に個別に解説します。 がアプリケーションにおける意思決定にどのような影響を与えて いるのかを改めて見ていきます。 高精度、高忠実度のデータ・キャプチャと処理 広帯域幅で低ノイズのセンサーは、ベアリングやキャビテーショ MEMSセンサーと圧電センサーの比較 ン、ギアのかみ合いに関する問題といった故障を早期に発見する 圧電式加速度センサーは非常に高性能のセンサーですが、その性 ことを可能にします。データ・アクイジション用のあらゆる電子 能のすべてが数多くの設計トレードオフを必要とします。例えば、 機器には、測定した振動データの忠実度を維持することが絶対条 圧電式加速度センサーは消費電力が大きく、物理的サイズも大き 件として求められます。忠実度を維持できないと、重要な故障情 い(特に3軸センサー)上に高価なので、通常その使用は有線に 報が失われてしまうからです。振動データの忠実度を維持できれ よる取付けに制限されます。これらすべての要素を考え合わせる ばすぐに傾向を把握することが可能になり、確信を持って予防保 と、工場内のすべてのものに圧電センサーを使用することは現実 全を推奨することができるので、結果として機械要素の不必要な 的でありません。このセンサーが主として非常に重要性の高い設 摩耗や損耗を減らし、確実に設備資産の寿命を延ばすことができ 備資産だけに使われる理由は、ここにあります。 ます。 最近まで、MEMS加速度センサーは帯域幅が十分でない上にノ 比較的重要性の低い設備資産向けの経済的な イズが大きく、g範囲にも限りがあって、比較的重要度の低い設 状態監視方法 備資産にしか使われていませんでした。MEMS技術の最近の進 歩はこれらの制約を克服し、ローエンド資産と重要度の高い資産 圧電式加速度センサーは最も高い性能を備えた振動センサーで の両方について、振動監視にMEMSセンサーを使用することが あり、コストより性能条件が重視されるような極めて重要性の高 可能になりました。CbMアプリケーション用の圧電センサーと い設備資産に使われます。比較的重要性の低い設備資産について MEMSセンサーに必要とされる最も重要な特性を表1に示しま は、圧電式装置のコストが高いことから、これまでCbMの対象 す。物理的サイズが小さく、バッテリで数年間駆動することが可 から外されていました。現在では、MEMS振動センサーが、ノイ 2 高い忠実度を備えた状態監視用振動アクイジション・プラットフォーム
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能で、同等性能の圧電センサーより安価なMEMS加速度センサー は、多くのCbMアプリケーションに適したセンサーとして急速 に認められつつあります。 CN0549 CbM開発プラットフォームにはMEMS加速度セン サーと圧電加速度センサーの両方を使用できるので、両方のセン サー・タイプのベンチマーク比較が可能です。 表1  MEMS加速度センサーと圧電加速度センサーの比較 圧電 MEMS DC 応答 ✓ 耐衝撃性 ✓ 図2. CN0532 MEMS IEPE変換回路 統合化の可否(3 軸、ADC、アラーム、FFT) ✓ 時間と温度に対する性能の変動 ✓ 通常、1軸MEMSセンサーには3本の出力ラインがあります(電 源、グラウンド、加速度出力)。IEPEインフラストラクチャに必 消費電力 ✓ 要なのは2本だけです。すなわち1本がグラウンド、もう1本が 物理的サイズ(小さい方が良い) ✓ 電源/信号です。センサーには電流が供給され、センサーが振動 セルフテスト ✓ を検出すると同じラインで電圧が出力されます。 性能が同じ場合のコスト ✓ 4 mA ノイズ ✓ V_IEPE 12 V ±2 V 帯域幅 ✓ ✓ R3 5 V Regulator B 機械的取り付け ✓ ✓ 9.5 V 業界標準インターフェース ✓ ✓ Regulator A ADXL1002 2.5 V ±2 V 5 V VOUT g 範囲 ✓ ✓ 図3. MEMSセンサーと既存IEPEインフラストラクチャの 既存IEPEインフラストラクチャでの インターフェース方法を示す簡略回路図(電源とデータ) MEMS加速度センサー使用 CN0532 PCBは、MEMS加速度センサーのデータシートに記載 表1に概要を示したように、MEMS加速度センサーは圧電セン された周波数応答性能を維持するために、厚さ90ミルで設計さ サーに並ぶ仕様と性能を提供できるようになりましたが、既存の れています。スタッド取付け式の立方体を使用すれば、そのまま 圧電センサーをMEMSに置き換えることは可能なのでしょうか。 すぐにテストが可能です。取付け用立方体は、PCBやハンダ・ 圧電加速度センサーからMEMS加速度センサーへの置き換えの ペーストなどと共に、全帯域幅で機械的伝達関数を確保するため 評価と実行を設計者が容易に行えるように、アナログ・デバイセ に幅広い特性評価が行われており、センサーの帯域幅内で、でき ズはIEPE互換のインターフェースを設計しました。このインター るだけ広範な故障を検出できるようになっています。したがって、 フェースは、CbMアプリケーションにおける圧電センサー・イ これらの故障を検出できるようにすることを通じて、設備資産の ンターフェースのデファクト・スタンダードとなっています。 寿命を延長することができます。これらのソリューションを使用 すれば、CbM設計者は極めて容易にMEMS加速度センサーを設 IEPEセンサー・インターフェースと機械的取付け 備資産に取り付けることができるほか、既存の圧電センサー・イ (CN0532) ンフラストラクチャとシームレスにインターフェースを取ること 図2に示すCN0532は、MEMS加速度センサーとIEPEインフ も可能です。 ラストラクチャの間で直接インターフェースを取ることのできる IEPE変換回路です。これは、既存のIEPEセンサーと同じように 高周波振動試験においては、信号経路の機械的な完全性が極めて シームレスに行うことができます。 重要です。つまり、信号源からセンサーまでの間において、(ダ ンピングによる)減衰または(共振による)増幅が振動信号に生 じないようにしなければなりません。図4では、アルミニウム製 取付けブロック(EVAL-XLMOUNT1)、4本の固定ねじ、および 厚いPCBを使うことで、全測定周波数範囲で平坦な機械的応答 を確保しています。また、IEPEリファレンス設計を使用すれば、 設計者は圧電センサーに代えて容易にMEMSセンサーを実装す ることができます。 VISIT ANALOG.COM/JP 3
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図6に示す回路はIEPEセンサー用のセンサーtoビット(デー タ・アクイジション)シグナル・チェーンで、電流源、入力保 護、レベル・シフトおよび減衰段、3次アンチエイリアシング・ フィルタ、A/Dコンバータ(ADC)ドライバ、および完全差動 ∑-Δ ADCで構成されています。圧電加速度センサーを使用す るCbMシステムの設計者には、高忠実度の振動データを維持す るために高性能のアナログ・シグナル・チェーンが必要です。設 計者は、使用しているIEPEセンサーやCN0532 IEPEセンサーを 図4. 振動測定試験のセットアップ:アルミニウム製取付けブロック EVAL-XLMOUNT1を使って振動台に固定された CN0540 DAQリファレンス設計に直接接続するだけで、追加設 EVAL-CN0532-EBZボード 定などを行うことなくシグナル・チェーンの性能をすぐに判定す 15 ることができます。アナログ・デバイセズは、この設計を幅広く ADXL1002 ADXL1002 +IEPE テストしてオープンソース設計ファイル(回路図、レイアウト・ ファイル、部品表など)を提供しているので、エンド・ソリュー ションの設計が容易になります。 10 CN0540 IEPEデータ・アクイジション・ボードは、IEPEセン サーの振動データを収集するために設計されたテストおよび検 証済みのアナログ・シグナル・チェーンで、100dBを超えるS/ 5 N比(SNR)を実現します。圧電センサーとのインターフェー スを取る市販のソリューションのほとんどはACカップリングさ れており、DC測定能力や1Hz未満の測定能力を欠いています。 0 100 1k 10k CN0540は、DC結合アプリケーションのシナリオに適していま Frequency (Hz) す。このようなシナリオでは信号のDC成分を保存したり、1Hz 図5. EVAL-CN0532の周波数応答と 以下の周波数までシステムの応答を維持したりする必要がありま ADXL1002のデータシートに記載された周波数応答の比較 す。 振動データのデジタル化 – データ変換の完全性 この高精度データ・アクイジション用リファレンス設計は、表2 に示すように2種類のMEMSセンサーと3種類の圧電センサー 以上から、IEPE圧電センサーに代えてMEMSセンサーを使用で でテストされています。各センサーのg範囲、ノイズ密度、帯域 きることが分かりました。また、データシートに記載された性能 幅は、価格同様に大きく異なることが分かります。この場合も、 を維持しながら、設備資産に簡単に取り付けられることも分か 振動のノイズや帯域幅に関する性能は、やはり圧電センサーが最 りました。CbM開発プラットフォームの重要な部分は、MEMS も優れているという点に留意する必要があります。 ベースか圧電ベースかを問わず、高品質の振動データを適切な環 境内に収集できることです。次に、IEPEセンサーのデータを収集 CN0540のシステム帯域幅は54kHzに設定されており、シグナ して最大限の忠実度を備えたデータを維持し、できる限り優れた ル・チェーンのノイズ性能は、この帯域幅にわたって100dBを CbMアルゴリズムまたは機械学習アルゴリズムを開発するとい 超えるダイナミック・レンジを実現できるセンサーを対象として う点について検討します。これは、アナログ・デバイセズのもう います。例えば、PCB PiezotronicsのModel 621B40加速度セ 1つのCbMリファレンス設計、CN0540を使用することによっ ンサーは30kHzで105dBを実現します。CN0540は、高性能 て可能になります。 の振動データを収集する際にボトルネックとなるのを避けるため に、帯域幅と精度に十分な余裕を持たせて、現在使用できる振動 高忠実度のIEPEセンサー用24ビット・データ・ センサーの性能を上回るように設計されています。同じシステム アクイジション・システム(CN0540) 上でMEMSセンサーと圧電センサーの比較およびベンチマーク 実験室でテスト・検証済みのIEPE DAQシグナル・チェーンを図 を行うのは極めて容易です。MEMSセンサーを使うか、圧電セン 6に示します。このリファレンス設計は、MEMSセンサーと圧電 サーを使うか、あるいはその両方を使うかのいずれを選択するか 加速度センサーの両方に使用できる最適なアナログ・シグナル・ に関わらず、CN0540はデータのアクイジションと処理に最適な チェーンを提供します。アナログ・デバイセズは、MEMS加速度 シグナル・チェーン・ソリューションを提供します。当然、組込 センサーをベースとするソリューションだけを重視しているわけ みソリューションの設計に取り入れることも可能です。 ではありません。圧電加速度センサーは最も高い性能を備えてお 圧電センサーと同等の性能をはるかに低いコストで提供する り、なおかつ最も広く使われているという点に留意することが重 MEMSセンサーの例としては、ADXL1002を挙げることができ 要です。したがって、圧電式加速度センサーは、高精度のシグナ ます。このデバイスは、圧電センサーの1/10のコストで83dB ル・チェーンを実現する上で重要なセンサーです。 のS/N比を実現します。今やMEMSセンサーは、極めて高性能 の圧電センサーを除いて、数分の一のコストですべての圧電セン サーに代わり得る継続的な存在としての地位を確立するに至って います。 4 高い忠実度を備えた状態監視用振動アクイジション・プラットフォーム Relative Output (dB)
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5 V ADR4540 26 V REF BUF BUF 4.096 V 5 V LT3092 5 V 3.3 V +V ADA4945-1 FB+ S 4.5 mA REF+ AVDD1 AVDD2 IOVDD ADG5421F IN– +OUT DRDY S1 D1 VCOM AIN+ CS S2 D2 AAF IN+ AD7768-1 Serial AIN– DOUT Interface 5 V –OUT SDI IEPE Fault FB– REF– AVSS DGND SCLK Sensor Detection FF and Switch D Antialiasing GND MODE DISABLE Driver Filter VSS GND AD8605 3.3 V 5 V 3.3 V Antialiasing V Filter Regulate IN Stage DC-to-DC VOUT Boost 26 V 3.3 V LDO I2 SCL C Interface SDA LTC2606 VOUT REF REF 図6. CN0540:IEPEセンサー用の高性能、広帯域、高精度データ・アクイジション 表2. MEMSおよび圧電センサーとそれぞれのノイズ密度測定値 フラット帯域幅での フラット帯域幅での 範囲 出力範囲、ピークtoピーク 直線性 NSD フラット帯域幅 ノイズ ダイナミック・レンジ センサー (±g) (V) (%FSR) (µg/√Hz) (kHz) (µg RMS) (dB) ADXL1002 50 4 0.1 25 11 2622 82.60 ADXL1004 500 4 0.25 125 24 19365 85.32 PCB 621B40 500 10 1 10 30 1732 104.95 PCB 352C04 500 10 1 4 10 400 118.93 PCB 333B52 5 10 1 0.4 3 22 98.50 組込みゲートウェイ た様々なクラウド・コンピューティング・サービスへの接続も行 DAQシグナル・チェーンによって高忠実度の振動データを取り います。この組込みゲートウェイは、選択したアルゴリズム開発 込んだ後は、そのデータをリアルタイムで処理して表示すること ツールに対し、イーサネット経由で6.15Mbps(256kSPS×24 や、機械学習環境やクラウド環境へ送信することが重要になりま ビット)の転送を行うことができます。組込みゲートウェイの重 す。これは組込みゲートウェイの仕事です。 要機能の一部を以下に示します。 X Intel Terasic DE10-Nano 振動データをリアルタイムでローカル処理 ■ 800MHzのneon™フレームワーク・メディア処理エンジ 組込みプラットフォームはIntel®(DE10-Nano)とXilinx®(Cora ンと倍精度浮動小数点ユニット(FPU)を使用するデュア Z7-07S)の2つがサポートされており、これには関連するすべ ルコアArm® Cortex®-A9 MP Coreプロセッサ てのHDL、デバイス・ドライバ、ソフトウェア・パッケージ、お よびアプリケーションに対するサポートが含まれています。それ ■ RJ45コネクタ付きの1ギガビット・イーサネットPHY ぞれのプラットフォームは、組込みのADI Kuiper Linux®を実行 X Digilent Cora Z7-07S(Xilinx) します。これは、時間領域および周波数領域データのリアルタイ ■ Xilinx FPGAと緊密に統合化した667MHz Cortex-A9プ ム表示、リアルタイムで収集したデータへのイーサネットによる ロセッサ アクセス、MATLABやPythonなどの一般的データ解析ツールと のインターフェースなどを実現するほか、AWSやAzureといっ ■ 512MB DDR3メモリ ■ USBおよびイーサネット接続 VISIT ANALOG.COM/JP 5
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図7に示すIIO Oscilloscopeは、ADI Kuiper Linuxと共にイン CN0549を使用した予防保全開発 ストールされる無料のオープンソース・アプリケーションで、時 図8に示すように、PdMアプリケーション用の機械学習(ML) 間領域および周波数領域のデータを迅速に表示する助けとなりま アルゴリズムの開発には5つの標準的なステップがあります。通 す。Linux IIOフレームワークを基礎に構築されたこのアプリケー 常、予防保全では、回帰モデルを使用して将来発生し得る故障を ションは、アナログ・デバイセズのLinuxデバイス・ドライバと 分類モデルごとに予想します。これらのモデルは、予測モデルに 直接インターフェースを取り、デバイス設定、デバイス・データ 入力するトレーニング・データが多いほど高い性能を発揮します。 の読出し、画像表示などをすべて1つのツールで行うことを可能 10分間の振動データではすべての運転特性を明らかにできない にします。 可能性がありますが、10時間分のデータがあれば特性を決定で きる可能性ははるかに高くなります。さらに、10日分のデータを 収集すれば、はるかに強力なモデルとなると言えます。 Data Feature Model Verification Deployment Collection Extraction Creation 図8. PdMアプリケーションの開発ステップ CN0549は、1つの使い易いシステムでこのデータ収集ステップ を提供し、選択したML環境へ高性能の振動データをストリーム 送信することを可能にします。 MEMS IEPEセンサーには機械式取付けブロックが付属しており、 MEMSセンサーを設備資産や振動台へシームレスに取り付ける ことができます。このシステムにはIEPE圧電センサーも使用で 図7. IIO Oscilloscopeによる5kHz純音のFFT表示 き、設備資産や起震器などに簡単に取り付けることができます。 データ解析ツールにデータをストリーム送信する場合は、不要な ADI Kuiper Linuxイメージは、MATLABやPythonなどの業界 共鳴が生じないよう、センサーの取付け状態を事前に確認してお 標準ツールもサポートしています。IIOフレームワークと共に機 く必要があります。この確認は、IIO Oscilloscopeを使い、リ 能するインターフェース層を使用してデータを直接これらの代表 アルタイムで簡単に行うことができます。システムの準備が完了 的データ解析ツールへストリーム送信するために、IIOバインディ したら、図9に示す要領でユースケースを決定できます(例えば ングが開発されました。設計者は、これらの強力なツールをIIO 70%の負荷容量での正常なモータ運転)。以上で、高品質の振動 統合フレームワークと組み合わせて使うことで、データの表示 データを、TensorFlowやPyTorchといったMATLABあるいは と分析やアルゴリズム開発に加えて、ハードウェア・イン・ザ・ Phthonベースのデータ解析ツール(およびその他数多くのツー ループ・テストを行ったり、その他のデータ操作手法を実行した ル)へストリーム送信することができます。 りすることができます。高品質の振動データをMATLABまたは Pythonへストリーム送信することを可能にする、詳細な例も提 供されています。 IEPE Sensor CN0549 Healthy Model: Motor @ 70% Load 1. Connect and Power CN0549 Hardware, Then Attach Sensor to Asset or Vibration Shaker Asset or Machine 2. Perform Resonance Test by Viewing Data in Real Time (Linux IIO Scope) Vibration Learning Shaker Environment 3. Stream Data for Use Case (For Example, 70% Load) to the ML Environment 4. Analyze Data in MATLAB, TensorFlow, Caffe, etc. to Identify Signatures of Asset Under Normal IEPE Sensor CN0549 Fault Model: Operating Conditions at 70% Load—RMS, Peak, Imbalance @ FFT, etc. 70% Load 5. Seed or Simulate a Fault (Loose Footing, Load Imbalance, Bearing Issue) and Repeat Step 4 to Asset or Machine Identify Unique Fault Signatures Vibration Learning Shaker Environment 図9. CN0549のユースケース例 6 高い忠実度を備えた状態監視用振動アクイジション・プラットフォーム
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解析を行えば、その設備資産が健全な状態にあるかどうかを決定 する重要な兆候や特性を明らかにすることができます。健全な運 著者について 転状態を決定するモデルがあれば、各種故障の要因を排除したり Chris Murphy 故障をシミュレートしたりすることが可能です。ステップ4は故 アイルランドのダブリンに本拠を置くEuropean Centralized 障を決定する重要な兆候を明らかにするために繰り返し行われ、 Applications Centerのアプリケーション・エンジニア。 それによって1つのモデルが導かれます。故障データを健全な 2012年からアナログ・デバイセズに勤務。モータ制御製品 モータのデータと比較することを通じて、予測モデルを作成でき と工業用オートメーション製品の設計をサポート。電子工 ます。 学の修士号とコンピュータ・エンジニアリングの学士号を 保有。 これがCbM開発プラットフォームによって実現されるMLプロ 連絡先:chris.murphy@analog.com セスの概要です。留意すべき重要な点は、このプラットフォーム によって、最高品質の振動データをML環境に提供できるように なるということです。 本稿のパート2では、ソフトウェア・スタック、データフロー、 EngineerZone® 開発戦略の詳細について解説するほか、データ・サイエンティ オンライン・サポート・コミュニティ ストや機械学習アルゴリズム開発者の視点から、Pythonと アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ MATLABの両方を使ったいくつかの例を示します。また、ソフ ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者と トウェア統合の概要と、ローカルおよびクラウドベースの開発オ の連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問 プションについても述べます。 題について問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、 ディスカッションに参加したりすることが可能です。 Visit ez.analog.com *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 VISI T A N A L O G . C O M /JP お住いの地域の本社、販売代理店などの情報は、analog. ©2021 Analog Devices, Inc. All rights reserved. com/jp/contact をご覧ください。 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possibleはアナログ・デバイセズの商標です。 オンラインサポートコミュニティEngineerZoneでは、アナ ログ・デバイセズのエキスパートへの質問、FAQの閲覧がで きます。 TA23054-6/21