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状態監視向けのMEMSソリューション、振動検出に最適なシステムを構築する

製品カタログ

状態監視は、産業分野で最も大きな注目を集めている技術のひとつだと言えます。モータやジェネレータ、ギアを使用する機械系の設備や技術系のシステムの異常をいかに検出するかということが大きな課題になっているからです。的確な保守は、産業分野だけでなく、機械を使用するあらゆる分野において、ダウンタイムのリスクを最小限に抑えるためにますます重要になっています。保守の必要性の有無を判定するために使われているのが、機械の振動パターンを解析する手法です。通常、ギア・ボックスで生じる振動は、周波数領域で見ると軸速度(周波数)の倍数に当たる成分として観測されます。様々な周波数に不規則に現れる成分は、摩耗や不均衡、部品の緩みを表します。周波数の測定には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)をベースとする加速度センサーがよく用いられます。その種のセンサーは、圧電センサーよりも高い分解能、優れたドリフト性能、高い感度、良好なS/R比を実現できるからです。また、DCに近い低周波の振動を検出できることも特徴の1つです。

このカタログについて

ドキュメント名 状態監視向けのMEMSソリューション、振動検出に最適なシステムを構築する
ドキュメント種別 製品カタログ
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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Technical Article 状態監視向けの MEMSソリューション、 振動検出に最適なシステムを構築する 著者:Thomas Brand、フィールド・アプリケーション・エンジニア 状態監視は、産業分野で最も大きな注目を集めている技術のひと つだと言えます。モータやジェネレータ、ギアを使用する機械系 の設備や技術系のシステムの異常をいかに検出するかということ が大きな課題になっているからです。的確な保守は、産業分野だ けでなく、機械を使用するあらゆる分野において、ダウンタイム のリスクを最小限に抑えるためにますます重要になっています。 保守の必要性の有無を判定するために使われているのが、機械 の振動パターンを解析する手法です。通常、ギア・ボックスで生 じる振動は、周波数領域で見ると軸速度(周波数)の倍数に当た る成分として観測されます。様々な周波数に不規則に現れる成分 図1. ADXL1002を使用して構成した回路の例 は、摩耗や不均衡、部品の緩みを表します。周波数の測定には、 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)をベースとする ADXL1002は、高い周波数に対応可能な1軸のMEMS加速度セ 加速度センサーがよく用いられます。その種のセンサーは、圧電 ンサーです。その出力信号の通過帯域は、センサーの共振周波数 センサーよりも高い分解能、優れたドリフト性能、高い感度、良 を超える広い領域となります。そのため、3dB帯域幅の外側の周 好なS/R比を実現できるからです。また、DCに近い低周波の振 波数も観測したいというニーズに対応できます。このような仕様 動を検出できることも特徴の1つです。 を実現するために、ADXL1002の出力アンプは、70kHzの小信 号帯域幅をサポートしています。また、同アンプは、最大100pF 本稿では、MEMS加速度センサーを使用した振動計測用のソ の容量性負荷を駆動することが可能です。100pF以上の負荷に リューションを紹介します。その特徴は、広帯域に対応し、直線 対応させたい場合には、8kΩ以上の直列抵抗を追加します。 性が高く、ノイズが小さいことです。MEMS加速度センサーと しては、アナログ・デバイセズの「ADXL1002」を使用します。 ADXL1002の出力アンプには、エイリアシング・ノイズなどを このソリューションは、ベアリング(軸受)の解析やエンジンの 除去するためのフィルタを外付けする必要があります。その他の 監視のほか、最大±50gの広いダイナミック・レンジとDC~ ノイズの例としては、ADXL1002の内部クロック(200kHz)が 11kHzの周波数応答が求められる各種アプリケーションに適用で 結合することによって生じる内部ノイズが挙げられます。フィル きます。 タの帯域幅は、発生し得るノイズに応じて設定する必要がありま す。R1、R2、C1、C2として、図1に示す各値を採用した場合に 図1に示したのが、その回路例です。ADXL1002のアナログ出力 は、200kHzにおいて約84dBの減衰量が得られます。また、後 信号は、2極RCフィルタを通過した後、逐次比較型(SAR)の 段のADCのサンプリング・レートは、アンプの帯域幅(例えば A/Dコンバータ(ADC)「AD4000」に入力されます。高度な信 32kHz)よりも高い値に設定するべきです。 号処理を行うために、アナログ信号をデジタル・データに変換す るということです。 VISIT ANALOG.COM/JP
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ADXL1002の電源電圧とADCのリファレンスには、同じ電圧を まとめ 供給しています。ADXL1002の出力アンプは、電源電圧とレシ 図1のように、MEMSベースの加速度センサーを使用する振動検 オメトリックな関係にあるからです。また、電源電圧(通常は外 出機能は、比較的簡単に構成できます。このような回路を使用す 部のレギュレータから供給)の許容誤差と電圧の温度係数は加速 ることで、回転機械の状態監視でよく求められるDCから11kHz 度センサーとADCに影響を及ぼしますが、電源電圧とリファレ までの振動検出が可能になります。 ンス電圧に関連する潜在的な誤差は相殺されます。 参考資料 周波数応答 回路ノート CN-0303「周波数応答補償付きのMEMS振動アナ この加速度センサーの周波数応答は、システムにおける最も重要 ライザ」、Analog Devices、2016年9月 な特性だと言えます。図2に示すように、ADXL1002のゲイン は2kHz~3kHzより高い周波数領域で増加します。共振周波数 (11kHz)では、出力電圧に約12dB(4倍)のゲイン(ピーク値) 著者について が加わります。 Thomas Brand(thomas.brand@analog.com)は、 2015年10月に修士課程の一環としてアナログ・デバイ 15 セズのミュンヘン支社でキャリアをスタートさせました。 2016年5月から2017年1月まで、アナログ・デバイセズに 12 10 おいて、フィールド・アプリケーション・エンジニアを目指 す人のための研修プログラムに参加。2017年2月にフィー 5 ルド・アプリケーション・エンジニアとなり、主に産業分 野の大口顧客を担当してきました。産業用イーサネットを 0 専門としており、中欧における関連事業のサポートにも携 わっています。ドイツのモースバッハにあるUniversity of –5 Cooperative Education(UCE)で電気工学を専攻した 後、ドイツのコンスタンツ応用科学大学 大学院で国際営業 –10 100 1k 10k 11k 100k を学び、修士号を取得しました。 周波数〔Hz〕 図2. ADXL1002の周波数応答 ADXL1002は、計測範囲のオーバーシュート(オーバーレンジ) EngineerZone® が発生した場合に、そのことを示すための出力(ORピン)を備 オンライン・サポート・コミュニティ えています。また、同製品が内蔵するモニタ機能は、大幅なオー アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ バーレンジが発生した際に警告を発します。 ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者と の連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問 実装時に機械的な面で考慮すべき事柄 題について問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、 加速度センサーを使用する場合には、適切に配置するよう特別な ディスカッションに参加したりすることが可能です。 注意を払う必要があります。加速度センサーは、基板上の固定支 持位置(基板のマウント個所)の近くに配置する必要があります。 それによって、基板自体の振動を避けると共に、基板の非減衰振 動によって生じる計測誤差を避けなければならないということで Visit ez.analog.com す。このように配置することで、基板のすべての振動周波数は、 加速度センサーの共振周波数よりも確実に高くなります。その結 *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 果、実質的に加速度センサーからそれらの振動は見えなくなりま す。センサーの近くに基板のマウント個所が複数存在することや、 基板を厚くすることも、システムの共振がセンサーによる測定結 果に及ぼす影響を低減することに寄与します。 VISIT A N A L O G . C O M / J P お住いの地域の本社、販売代理店などの情報は、analog. ©2020 Analog Devices, Inc. All rights reserved. com/jp/contact をご覧ください。 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possibleはアナログ・デバイセズの商標です。 オンラインサポートコミュニティEngineerZoneでは、アナ ログ・デバイセズのエキスパートへの質問、FAQの閲覧がで きます。 TA22453-9/20 正規化した振幅〔dB〕