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【技術資料】電気化学式ガス検知に関わる技術的課題の解決

製品カタログ

電気化学式ガス・センサーは、酸素モニタリング用に開発された1950年代までさかのぼる実績ある技術です。
この技術の初期のアプリケーションの1つがグルコース・バイオセンサーで、グルコース内の酸素の減少を測定するために使われていました。

その後の数十年間でこの技術は発展を遂げ、センサーの小型化や、様々なターゲット・ガスの検出が実現しました。
ユビキタス・センシング時代の到来と共に、例えば自動車内の空気質モニタリングや電子臭気検知器など、様々な産業分野で数えきれないほどの新しいガス検知アプリケーションが出現しています。

その一方で、規則や安全基準も進化を続け、新たなアプリケーションや既存のアプリケーションに求められる条件は、従来よりもはるかに厳しくなってきました。
すなわち、将来のガス検知システムには、極めて低濃度のガスを正確に測定できること、ターゲットのガスだけを検知できること、バッテリ電源で長時間使用できること、そして常に安全で信頼できる動作を維持しながら長期にわたって安定した性能を発揮できることが求められます。

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ドキュメント名 【技術資料】電気化学式ガス検知に関わる技術的課題の解決
ドキュメント種別 製品カタログ
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取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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Technical Article 電気化学式ガス検知に 関わる技術的課題の解決 Michal Raninec、システム・アプリケーション・エンジニア 電気化学式ガス・センサーは、酸素モニタリング用に開発された 善されてはいるものの、他のガスに対する交差感度は依然として 1950年代までさかのぼる実績ある技術です。この技術の初期の ゼロではなく、測定時の干渉や誤指示の可能性が増大する結果と アプリケーションの1つがグルコース・バイオセンサーで、グル なっています。また、温度にも左右されるので、内部的な温度補 コース内の酸素の減少を測定するために使われていました。その 償が必要です。 後の数十年間でこの技術は発展を遂げ、センサーの小型化や、 様々なターゲット・ガスの検出が実現しました。 技術的課題 ユビキタス・センシング時代の到来と共に、例えば自動車内の空 先進的なガス検知システムの設計において克服すべき技術的課題 気質モニタリングや電子臭気検知器など、様々な産業分野で数 は、システムの様々な段階に応じて、3つのグループに分類でき えきれないほどの新しいガス検知アプリケーションが出現してい ます。 ます。その一方で、規則や安全基準も進化を続け、新たなアプリ まず、製造時の再現性や、センサーの特性評価およびキャリブ ケーションや既存のアプリケーションに求められる条件は、従来 レーションなど、センサーの製造に関わる課題があります。セン よりもはるかに厳しくなってきました。すなわち、将来のガス検 サー自体の製造プロセスは高度に自動化されていますが、セン 知システムには、極めて低濃度のガスを正確に測定できること、 サーごとにばらつきが生じるのは避けられません。このようなば ターゲットのガスだけを検知できること、バッテリ電源で長時間 らつきのため、生産時に特性評価とキャリブレーションを行う必 使用できること、そして常に安全で信頼できる動作を維持しなが 要があります。 ら長期にわたって安定した性能を発揮できることが求められます。 第二に、システムの寿命期間を通じて様々な技術的課題が存在し 電気化学式ガス検知の長所と短所 ます。これらには、シグナル・チェーンの設計や消費電力の検討 といったシステム・アーキテクチャの最適化が含まれます。主に 電気化学式ガス・センサーが普及した理由として、出力の直線性、 工業用アプリケーションにおいては、電磁両立性(EMC)や機 低消費電力、良好な分解能が挙げられます。更に、一度既知の濃 能的安全性に対するコンプライアンスにかなりの重点を置くこと 度のターゲット・ガスを使って補正を行えば、測定時に非常に優 が、設計コストや製品市場投入までの時間的側面でマイナスの作 れた再現性と精度を発揮します。過去数十年間で実現した技術の 用を及ぼします。動作条件も大きく影響し、求められる性能と寿 進歩によって、電気化学式ガス・センサーは、特定のガス・タイ 命を維持する上での課題を提起します。この技術の性質上、電気 プに対して非常に良好な選択性を示すようになっています。 化学式センサーにはその寿命期間を通じて経時変化とドリフトが 様々な利点を持つ電気化学式センサーは、まず初めに作業者の安 生じるのは避けられず、キャリブレーションやセンサーの頻繁な 全面から有毒ガス検知などを行う工業用アプリケーションに採用 交換が必要となります。後述するように、過酷な環境下で使用し されました。このセンサーは運用上経済的であるため、領域内に た場合、この性能変化は一層加速されます。センサーの性能を維 有毒ガス監視システムを展開可能となり、鉱業、化学工業、バイ 持しながらその寿命を延ばすことは、多くのアプリケーションに オガス・プラント、食品生産、医薬品業界などの多くの産業分野 とって重要な条件の1つです。とりわけシステムの総所有コスト において従業員の作業環境条件として安全性が担保されるように が重要な要素となる場合はこの点が重視されます。 なりました。 第三に、動作の延長手段を講じたとしても、すべての電気化学式 センシング技術自体は常に進歩していますが、基本的な動作原理 センサーにはやはり寿命があり、寿命に達して性能が条件を満た やそれに伴う欠点などは、電気化学式ガス検知のごく初期の頃か さなくなると、交換が必要となります。寿命に達した状態を効果 ら変わっていません。電気化学式センサーの有効期間は限られて 的に判定することは課題の1つであり、この課題が解決されれば、 いるのが普通で、通常6ヵ月から1年です。センサーの経時変化 不要なセンサー交換を減らすことが可能となり、コストを大幅に も、その長期的性能に大きく影響します。多くのセンサー・メー 削減できます。更に一歩進めて、どの時点でセンサーが使用不能 カーの仕様では、センサー感度は1年で最大20%変化するとさ になるかを予測することができれば、ガス検知システムの運用コ れています。更に、ターゲット・ガスに対する選択性は大幅に改 ストを一層低減できます。 VISIT ANALOG.COM/JP
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電気化学式ガス・センサーの利用は、あらゆるガス検知アプリ リケーションにおいては極めて重要な要素となります。最後に、 ケーションで増え続けていますが、それに伴いこれらのシステム 測定精度は、シグナル・チェーンのノイズ・レベルを低減した結 のロジスティクス、試運転、メンテナンスに関わる課題が生じ、 果として改善されますが、場合によっては、より高性能のTIAや 総所有コストを増大させる結果となっています。したがって、こ ADCなどの信号処理コンポーネントの利用も有効です。 の技術の短所(主にセンサー寿命が限られていること)による影 マルチガス計測器の例に目を戻すと、シグナル・チェーンの集積 響を緩和し、ガス検知システムの長期的な持続性と信頼性を確 化によって以下のことが可能になります。 保するために、診断機能を備えたアプリケーション固有のアナロ グ・フロント・エンドが採用されています。 X シグナル・チェーンの複雑さを軽減する一方で、測定チャンネ ルを自由に設定できるので、1つのシグナル・チェーン設計を シグナル・チェーンの集積化による設計の複雑化 容易に再利用できます。 を緩和 X シグナル・チェーンの占有するPCB面積が減ります。 従来の複雑なシグナル・チェーンは、ほとんどの場合スタンドア ロンのA/Dコンバータ、アンプ、その他のビルディング・ブロッ X 消費電力が減ります。 クを使って設計されており、設計者は電力効率や測定精度、シグ X 測定精度が向上します。 ナル・チェーンの占めるPCB面積などの面で妥協をせざるを得ま せんでした。 センサーの性能低下と診断 このような設計課題を抱えた一例が、複数のターゲット・ガスを シグナル・チェーンの集積化は大きな前進ですが、それだけでは、 測定するマルチガス構成の計測器です。各センサーを正常に動 電気化学式ガス・センサーの基本的な欠点である経時劣化の問題 作させるには、それぞれ異なるバイアス電圧が必要です。また、 を解決することはできません。当然ながら、これはセンサーの動 各センサーの感度が異なることがあるので、シグナル・チェーン 作原理と構造に起因する問題です。使用条件も性能低下に影響 の性能を最大限に引き出すには、アンプのゲインを調整する必要 し、センサーの寿命を縮めることがあります。センサーの精度は があります。設計者にとっては、この2つの要素があるだけで、 徐々に低下していき、やがて信頼性が失われ、その用途に適さな 部品表や回路図を変更することなく種々のセンサーとインター くなってしまいます。このような場合は通常、装置をオフライン フェースできる設定変更可能な測定チャンネルを設計すること にしてセンサーを手動で点検しますが、これには時間もコストも が、より一層複雑な作業になってしまいます。単一測定チャンネ かかります。センサーは状態に応じて、キャリブレーションし直 ルの簡略化したブロック図を図1に示します。 して再利用できる場合もあれば、交換が必要となる場合もありま す。いずれも、かなりのメンテナンス・コストを要する作業です。 他のあらゆる電子システム同様、集積化は進化のための必然的な しかし、電気化学的診断技術を利用すれば、センサーの状態を分 ステップであり、より効率的で強力なソリューションの設計を可 析して、性能の変化を効果的に補償することができます。 能にします。集積化されたシングルチップのガス検知シグナル・ チェーンは、例えばTIA(トランスインピーダンス・アンプ)ゲ 性能の低下に影響する一般的な要因には、高温、湿度、ガス濃度、 イン抵抗を組み込んだり、D/Aコンバータをセンサーのバイアス 電極被毒などがあります。高温(50ºC超)への曝露は、短時間 電圧源として使用したりすることによって、システム設計を簡素 であれば一般的には許容できます。しかし、繰り返し高温下でセ 化します(図2参照)。シグナル・チェーンを集積化すると、測 ンサーを使用すると、電解質が蒸発して、基準指示値にオフセッ 定チャンネルをソフトウェアで自由に設定できるようになり、設 トが生じたり応答時間が遅くなるといった不可逆的な損傷を引き 計の複雑さを軽減しながら種々の電気化学式センサーとインター 起こす可能性があります。一方、非常に低い温度下では(–30ºC フェースを取ることが可能となります。更に、このように集積化 未満)、センサーの感度と応答性が大幅に低下します。 されたシグナル・チェーンでは、必要な電力も非常に少なくて済 みます。このことは、バッテリ寿命が重要な考慮事項となるアプ Potentiostat Bias Voltage Voltage Source Reference CE (DE) RE Signal TIA ADC MCUConditioning WE Transimpedance Electrochemical Amplifier Gas Sensor 図1 代表的な電気化学式センサーのシグナル・チェーン(簡略図) 2  電気化学式ガス検知に関わる技術的課題の解決 V BIAS
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Potentiostat DAC CE (DE) RE TIA Voltage WE Reference   TransimpedanceElectrochemical Amplifier Gas Sensor Potentiostat Mux Signal ADC MCU Conditioning DAC CE (DE) RE TIA WE   TransimpedanceElectrochemical Amplifier Gas Sensor 図2 デュアルチャンネル集積化ガス検知シグナル・チェーン(簡略図) 9.00 × 10–6 20 Sensor Initial 8.00 × 10–6 Response 7.00 × 10–6 Sensor Response 15 After 2 Days in 6.00 × 10–6 Low Relative Humidity 10 5.00 × 10–6 Sensor Response After 7 Days in 4.00 × 10–6 Low Relative Humidity 5 3.00 × 10–6 Sensor Response 2.00 × 10–6 After 14 Days in Low Relative 0 –6 Humidity1.00 × 10 0 × 100 –5 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 0 1 2 3 4 5 6 7 Time (s) Re(Z) (Ω) 図3 低相対湿度下での加速寿命テスト時におけるセンサー感度(左グラフ)とインピーダンス(右グラフ)の相関関係 また、湿度はセンサーの寿命にはるかに大きな影響を与えます。 イキスト線図とボーデ線図として表されます。ナイキスト線図は 電気化学式ガス・センサーの理想的な動作条件は、温度20ºC、 複素インピーダンス・データを表し、それぞれの周波数ポイント 相対湿度60%です。相対湿度が60%を下回るとセンサー内の電 はx軸上の実部とy軸上の虚部によってプロットされます。この 解質が蒸発してしまい、応答時間に悪影響を及ぼすおそれがあり データ表現の大きな欠点は、周波数情報が失われてしまうことで ます。逆に湿度が60%を上回ると、空気中の水分がセンサーに す。ボーデ線図は、インピーダンスの大きさおよび位相角度と周 吸収されることで電解質が希釈され、センサーの特性に影響を 波数の関係を表します。 与える可能性があります。加えて、水分の吸収によりセンサーに 実験測定の結果は、センサー感度の低下とEISテスト結果の変化 リークが生じてピンが腐食することも考えられます。 の間に、強い相関関係があることを示しています。図3の例は、 以上に述べた性能低下のメカニズムは、その程度が極端でない場 電気化学式ガス・センサーを低湿度(10% RH)の高温(40ºC) 合でもセンサーに何らかの影響を与えます。つまり、例えば電解 環境下に置いてストレスを加えた場合の、加速寿命テストの結果 質の減少は自然に生じるもので、センサーの寿命に影響します。 を示しています。実験中はセンサーを周期的に環境チャンバから 電気化学式ガス・センサーの中には10年以上使用できるものも 取り出し、状態を安定させるために1時間放置しました。その後、 あるとはいえ、センサーの寿命は、使用条件に関わらず、このよ 既知のターゲット・ガス濃度での基準感度テストとEISテストを うな経年変化プロセスによって制限されます。 実施しました。テスト結果は、センサー感度とインピーダンスの 相関関係を明確に示しています。この測定の欠点を挙げるとすれ センサーの分析は、電気化学インピーダンス分光法(EIS)やク ば、時間がかかることで、1Hz未満の周波数での測定にはかなり ロノアンペロメトリ(センサーの出力を見ながらバイアス電圧に の時間を要します。 パルスを加える)といった手法を使って行うことができます。 クロノアンペロメトリ(パルス・テスト)は、センサー状態の分 EISは周波数領域の分析測定で、サイン波信号(通常は電圧)を 析に利用できるもう1つの方法です。測定は、センサーのバイア 使って電気化学システムを励起することによって行います。更に ス電圧に重ねて電圧パルスを加え、電気化学セルに流れる電流を 電気化学セルを流れる電流を周波数ごとに記録し、これを使って 観察することによって行います。一般的にパルスは非常に小さく セルのインピーダンスを計算します。通常、これらのデータはナ Visit analog.com/jp  3 Current (A) V V BI BA IAS S –Im(Z) (Ω)
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(例えば1mV)かつ短い(例えば200ms)ものなので、センサー ガス検知装置では、この傾向が更に顕著になります。 自体の動作を妨げることはありません。このため、ガス検知装置 通常、EMCテストは非常に時間のかかるプロセスで、そのシス を通常どおり動作させながら、高い頻度でテストを行うことがで テム設計がすべての条件を満たすようになるまで、最終的に設 きます。クロノアンペロメトリは、より時間のかかるEIS測定を 計を何度も繰り返す必要があります。このテストは、製品開発に 行う前に、センサーが物理的に装置に挿入されているかどうかや、 投入するコストと時間に大きく影響します。EMCに関する条件 センサー性能に変化の兆しがないかどうかをチェックするために を満たすために予めテストされた集積化シグナル・チェーン・ソ 使用できます。出力パルスに対するセンサー応答の例を図4に示 リューションを使用すれば、時間とコストの両方を減らすことが します。 できます。 もう1つの重要な検討事項(これは技術的な課題でもあります) Current Area of Interest は、機能的な安全性です。定義上、機能的安全性とは、有害事象 Background Current Background Current を防止するために保護または是正のためのメカニズムを作動させ Time Pulse Test: る可能性のある、潜在的な危険状態を検出することを言います。  Small Pulse (for example, 1 mV)  Very Fast (for example, <250 ms) 更に、安全機能が提供するリスク軽減の相対的レベルは、安全度 図4 クロノアンペロメトリ・テストの結果の例 水準(SIL)として定義されます。機能的安全性に関する条件は、 以上に述べたセンサー・インタロゲーション手法は、電気化学分 当然ながら工業規格に取り入れられています。 野において数十年間にわたって使われてきました。しかし、通常 工業用ガス検知アプリケーションにおける機能的安全性の重要性 これらの測定に使われる装置は、高価でかさばります。実用およ が最も関係するのは、爆発性あるいは可燃性のガスが存在する可 び予算の観点からして、現場に展開された大量のガス・センサー 能性のある環境での安全動作です。化学プラントや鉱山施設が、 のテストにこのような装置を使用することは、現実的ではありま このようなアプリケーションの典型的な例です。機能的安全性の せん。リモート式の組み込みセンサーによる状態分析を可能にす 基準を満たすには、そのシステムが機能的に十分な安全度水準を るには、診断機能をシグナル・チェーンの一部として直接組み込 備えていることを確認する必要があります。 む必要があります。 診断機能を組み込めば、人間が介入することなく、ガス・セン アナログ・デバイセズのシングルチップ電気化学 サーを自律的にテストすることができます。生産時にガス・セン 測定システム サーの特性評価が行われている場合は、センサーから得られる 前述の課題を解決して、より高性能で正確、しかも高い競争力 データをそれらの特性評価のデータセットと比較して、センサー を備えたガス検知システムをユーザが設計できるように、アナロ の現状に関する判断材料を得ることができます。これに基づき、 グ・デバイセズはADuCM355を発表しました。このデバイスは、 スマート・アルゴリズムを使ってセンサー感度の低下を補償する ガス検知アプリケーションや水分析アプリケーションをターゲッ ことも可能です。更にセンサーの履歴を記録することでセンサー トとしたシングルチップ電気化学測定システムです。 の寿命を予測し、交換が必要になった場合はそれをユーザに知ら ADuCM355は、2つの電気化学式測定チャンネルと、センサー せることができます。組み込み診断機能は、最終的にガス検知シ 診断に使用するインピーダンス測定エンジン、および超低消費電 ステムのメンテナンスの必要性を軽減して、センサーの寿命を延 力のミックスドシグナルARM® Cortex®-M3マイクロコントロー ばします。 ラを内蔵しています。マイクロコントローラは、ユーザ・アプリ ケーションの実行、センサー診断、および各種補償アルゴリズム 工業用アプリケーションのシステム設計上の課題 を実行します。図5にADuCM355の簡略化した機能ブロック図 工業環境においては特に、安全と信頼性が最重要視されます。ガ を示します。 ス検知システムについては、それらのシステムが定められた条件 を満たし、化学工場などの過酷な工業環境で使用した場合でもす べての機能を確実に維持できるように、厳格な規則が定められて ADuCM355Oscillators Potentiostat 0: います。 Amplifiers and DAC ARM Current Cortex-M3 電磁両立性(EMC)は、一般的な電磁環境下において、様々な Timers:Channels Watchdog, SRAM 電子機器が互いに干渉することなく正しく動作できるようにする 16-Bit ADC Wake-Up, Voltage Flash Memory General-Purpose Channels 能力です。EMCに関するテストには、例えば放射妨害波や放射 GPIOsLDOs PORs with Internal 耐性があります。妨害波テストは、システムの不要な妨害波を調 External Channels Voltage Interrupts べてそれらを減らすためのものですが、放射耐性テストは、他の SWDTemperature References Channels システムからの干渉がある中で、システムがその機能を維持する Potentiostat 1: Impedance Engine 能力を確かめるものです。 Amplifiers and DAC Amplifiers and DAC 電気化学式ガス・センサーは、その構造自体がEMC性能に悪影 図5 ADuCM355の簡略化機能ブロック図 響を与えます。つまり、センサーの電極がアンテナのような役割 を果たし、近傍にある電子システムからの干渉を拾う可能性があ ります。作業者用の携帯型安全装置のようなワイヤレス接続式の 4  電気化学式ガス検知に関わる技術的課題の解決
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市場の動向と顧客のニーズを理解することで、アナログ・デバイ セズは以下の要素を内蔵した高集積のオンチップ測定システムを 著者について 設計しました。 Michal Raninec X 16ビット、400kSPSのA/Dコンバータ アナログ・デバイセズのオートメーションおよびエネル 電気化学セル用のバイアス電圧を生成する2つのデュアル出 ギー・ビジネス・ユニットの工業用システム・グループ所X 力D/Aコンバータ 属のシステム・アプリケーション・エンジニア。専門分野 は、電気化学式ガス検知やワイヤレス・センサー・ネット X 超低消費電力、低ノイズのTIAアンプ内蔵ポテンショスタッ ワークなど。チェコ共和国のブルノ工科大学で電子工学の ト(2個) 修士号を取得。 X 高速TIA内蔵の12ビット高速D/Aコンバータ 連絡先:michal.raninec@analog.com X 診断測定を可能にするアナログ・ハードウェア・アクセラレー タ(波形発生器、デジタル・フーリエ変換ブロック、および デジタル・フィルタ) X 内部温度センサー オンライン・ X 26MHz ARM Cortex-M3マイクロコントローラ サポート・ コミュニティ ADuCM355は、電気化学ガス検出の技術的課題を解決する手 アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュニ 段を提供します。2つの測定チャンネルは、最も一般的な3電極 ティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者との連 ガス・センサーだけでなく、4電極センサー構成もサポートして 携を図ることができます。難易度の高い設計上の問題につ います。4つめの電極は診断用として使用するか、デュアル・ガ いて問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、ディス ス・センサーの場合に2つめのターゲット・ガス用の作用電極と カッションに参加したりすることが可能です。 して使用します。どちらのポテンショスタットも、センサーのバ イアス電圧を維持したまま休止モードに設定して消費電力を抑え ez.analog.com にアクセス ることができますが、バイアス電圧が維持されているので、セト リングして正常動作するまでに要する時間が短縮されます。アナ ログ・ハードウェア・アクセラレータ・ブロックは、電気化学イ *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 ンピーダンス分光法やクロノアンペロメトリなどのセンサー診断 測定を可能にします。更に、内蔵マイクロコントローラは、補償 アルゴリズムの実行、キャリブレーション・パラメータの保存、 およびユーザ・アプリケーションの実行のために使用できます。 また、ADuCM355はEMC条件を念頭に設計されているほか、 予めEN 50270規格に基づいてテストされています。 内蔵マイクロコントローラが不要なアプリケーション用に、フロ ントエンドのみのバージョンであるAD5940も用意されていま す。 まとめ 最近まで、電気化学式ガス・センサーがユビキタス・センシング の時代に入ることを阻んでいた技術的課題がいくつかありました が、技術革新の結果、これらの課題に効率的に対処する上で必要 なすべての知識とツールが使用できるようになりました。低コス トのワイヤレス空気質モニタからプロセス制御および作業者用の 安全アプリケーションに至るまで、シグナル・チェーンの集積化 と組み込みの診断機能は、これらのセンサーを広範に使用するこ とを可能にする一方で、メンテナンスの必要性軽減、精度向上、 センサー寿命の延長、コスト削減などを実現します。 本    社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F 大 阪 営 業 所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F 名古屋営業所 〒451-6040 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー38F ©2020 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possible はアナログ・デバイセズの商標です。 TA21576-10/19 VISIT ANALOG.COM/JP