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【技術資料】車載バッテリ電圧を直接 DC/DC 変換 厳しい EMI 規格に適合する 3.3V/5V、5A 出力の電源回路
ホワイトペーパー
はじめに
一般に、車載分野や産業分野のアプリケーションは、厳しい環境で運用されることになります。
特に、ノイズの影響を受けやすいアプリケーションの場合、小型、低ノイズ、高効率の降圧レギュレータ(D C / D C コンバータ)が必要になるはずです。
そうしたケースでは、DC/DCコントローラICと外付けのパワー M O S F E T を組み合わせるのではなく、より小型化が図れる降圧レギュレータ製品がよく選択されます。
つまり、パワー MOSFET も集積した 1 パッケージ/モノリシックの降圧レギュレータ製品が使われるということです。
なかでも、A M 帯よりもはるかに高い 2M H z のスイッチング周波数で動作するモノリシック・レギュ レータであれば、外付け部品についても小型のものを選択できます。
加えて、最小オン時間(T O N)が非常に短い製品であれば、 中間レギュレーションを適用することなく、高い入力電圧を直接必要なレベルまで降圧することが可能です。そうすれば、実装スペースの削減と複雑さの軽減を図ることができます。
最小オン時間を短くするためには、高いスイッチング周波数での動作に対応するだけでなく、スイッチング損失を効果的に低減しなければなりません。それに向けては、高速のスイッチング・エッジと最小デッドタイムの制御が必要になります。
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このカタログについて
| ドキュメント名 | 【技術資料】車載バッテリ電圧を直接 DC/DC 変換 厳しい EMI 規格に適合する 3.3V/5V、5A 出力の電源回路 |
|---|---|
| ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
| ファイルサイズ | 1.4Mb |
| 取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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Vol 54 No 2, June 2020
車載バッテリ電圧を直接DC/DC変換
――厳しいEMI規格に適合する
3.3V/5V、5A出力の電源回路
著者:Zhongming Ye、システム・アプリケーション・マネージャ
はじめに 電流変化(di/dtが高い)と、ホット・ループ内の寄生インダク
一般に、車載分野や産業分野のアプリケーションは、厳しい環 タンスに起因して生じるリンギングによってEMIが発生します。
境で運用されることになります。特に、ノイズの影響を受けや
システム設計者が小型で高性能な電源を設計しようとする場合、
すいアプリケーションの場合、小型、低ノイズ、高効率の降圧
必ずEMIの問題に直面するはずです。また、設計を行う際には、
レギュレータ(DC/DCコンバータ)が必要になるはずです。そ
対立する制約として多くのパラメータを扱わなければなりませ
うしたケースでは、DC/DCコントローラICと外付けのパワー
ん。このことから、許される時間内に求められる仕様を満たしつ
MOSFETを組み合わせるのではなく、より小型化が図れる降圧
つ設計を完了するためには、大きな妥協を強いられることになる
レギュレータ製品がよく選択されます。つまり、パワーMOSFET
でしょう。
も集積した1パッケージ/モノリシックの降圧レギュレータ製品
が使われるということです。なかでも、AM帯よりもはるかに高
い2MHzのスイッチング周波数で動作するモノリシック・レギュ EMI性能の向上
レータであれば、外付け部品についても小型のものを選択できま 降圧コンバータのEMI性能を高めるためには、ホット・ループか
す。加えて、最小オン時間(T )が非常に短い製品であれば、 らの影響を可能な限り抑えなければなりません。言い換えれば、ON
中間レギュレーションを適用することなく、高い入力電圧を直接 ホット・ループからの不要な信号を可能な限り低減する必要があ
必要なレベルまで降圧することが可能です。そうすれば、実装ス ります。放射性のEMIを低減する方法は、いくつも存在します。
ペースの削減と複雑さの軽減を図ることができます。最小オン時 但し、それらのうちの多くは、レギュレータとしての本質的な性
間を短くするためには、高いスイッチング周波数での動作に対応 能を低下させてしまうという問題を抱えています。
するだけでなく、スイッチング損失を効果的に低減しなければな 例として、外付けのMOSFETを使用する標準的な降圧コンバー
りません。それに向けては、高速のスイッチング・エッジと最小 タを車載用途に適用するケースを考えます。その場合、車載向
デッドタイムの制御が必要になります。 けの厳しい放射性EMIの規格を満たすためには、最後の手段と
実装スペースを削減するもう1つの方法は、EMI(電磁干渉)規 して、外付けのゲート抵抗やブースト抵抗、スナバ回路を使用す
格と熱に関する要件を満たすために必要になる部品点数を削減す ることになるでしょう。それらにより、スイッチング・エッジを
ることです。残念ながら、降圧レギュレータを単純に小型化する 緩やかにするということです。こうしたその場しのぎの解決方法
と、これらの要件を満たすのがより難しくなるケースが少なくあ を適用すると、降圧コンバータの本質的な特性が犠牲になること
りません。そこで、本稿では、実装スペースを削減することが可 が少なくありません。つまり、効率が低下し、部品点数が増え、
能で、EMI性能と熱性能に優れる最先端のソリューションを紹介 ソリューションとしてのサイズが大きくなってしまうのです。
します。 スイッチング・エッジを緩やかにすると、スイッチング損失と
デューティ比損失が増加します。その場合、条件を満たす効率を
特に高い降圧比と高い効率が求められる場合には、スイッチング 達成しつつ、EMI規格で定められた放射試験に合格するためには、
方式のDC/DCコンバータが使用されます。ただ、同方式のDC/ DC/DCコンバータをより低い周波数(例えば400kHz)で動作
DCコンバータには、スイッチング動作に伴いEMIが生じるとい させなければなりません。
う課題が存在します。降圧コンバータでは、スイッチでの高速な
VISIT ANALOG.COM/JP
Page2
図1に、スイッチング・ノードにおける代表的な電圧波形を示し
ました。それぞれ、低速、高速のスイッチング・エッジで動作し
ている様子を表しています。この図から容易に推測できるはずで
すが、スイッチング・エッジが非常に遅い場合には、スイッチン
グ損失が増加します。また、最小デューティ・サイクル(つまり
降圧比)も著しく増大してしまい、性能に悪影響が及ぶことは明
らかです。
図2. 実装面積の比較。スイッチング周波数が
それぞれ400kHz、2MHzの場合の例です。
放射性EMIを低減するための最後の手段としては、シールドが挙
げられるでしょう。但し、システム内にはシールドを配置できる
だけのスペースが既に残っていない可能性があります。そうする
と、機械設計と試験を再度実施し直さなければなりません。
車載アプリケーションの場合、AM帯を避けつつソリューション
のサイズを抑えるためには、2MHz以上のスイッチング周波数を
図1. スイッチング・エッジの例。スイッチング・エッジが
低速である場合、スイッチング損失とデューティ比損失が増大します。 選択することが望ましいと言えます。AM帯を避ければ、必要な
のはより高い周波数のノイズとスイッチングに伴うリンギングを
DC/DCコンバータのスイッチング周波数を下げると、インダク 確実に最小化することだけです。高いスイッチング周波数を採用
タ、出力コンデンサ、入力コンデンサとしてはサイズの大きいも すると、残念ながら30MHz~1GHzの放射性EMIは増加します。
のを選択しなければなりません。加えて、伝導性EMIの試験に合
格するためには、かさばるπ型フィルタを追加しなければならな アナログ・デバイセズは、Power by LinearTM製品の1つとして
くなります。同フィルタに必要なインダクタとコンデンサの値は、 Silent Switcher®技術を適用したDC/DCコンバータを提供して
スイッチング周波数を下げるほど大きくなります。また、インダ います。それらの製品は、高速かつクリーンなスイッチング・エッ
クタの定格電流値は、ライン全負荷が小さい場合の最大入力電流 ジで動作します。そうした製品を採用することで、EMIを低減す
よりも大きくなければなりません。つまり、厳しいEMI規格に合 ることが可能になります。
格するためには、フロント・エンドに大きなインダクタと複数の ここで、EMIの低減に有効な一般的な技術を紹介しておきます。
コンデンサを付加する必要があるということです。 それはスペクトラム拡散周波数変調(SSFM:Spread spectrum
例えば、スイッチング周波数が2MHzよりはるかに低い400kHz frequency modulation)です。SSFMでは、システム・クロッ
である場合、サイズの大きいインダクタとコンデンサを使用しな クを既知の範囲内でディザリングし、EMIのエネルギーを周波数
ければなりません。加えて、車載用途に求められる伝導性EMI規 帯域全体に分散させるということが行われます。多くの場合、ス
格を満たすためには、EMI用のフィルタのインダクタとコンデン イッチング周波数はAM帯(530kHz~1.8MHzなど)の範囲外
サとしても比較的大きなものを使用する必要があります。その理 になるように選択されます。しかし、スイッチングに伴う高調波
由の1つは、400kHzの基本周波数だけでなく、1.8MHzまでの が十分に低減されていない場合、AM帯において車載EMI規格の
すべての高調波を減衰させなければならないからです。2MHzの 厳しい要件を満たせない可能性があります。SSFMを適用すれば、
スイッチング周波数で動作するDC/DCコンバータであれば、こ AM帯(あるいは他の帯域内)のEMIを大幅に低減することがで
のような問題は発生しません。図2は、スイッチング周波数が異 きます。
なる2つの電源回路の実装面積を比較するためのものです。ス 「LT8636」は、Silent Switcherを採用したモノリシック型の降
イッチング周波数がそれぞれ400kHz、2MHzの場合の部品の配 圧コンバータです。入力は12V、出力は5V/5A、スイッチング
置例を示しています。 周波数は2MHzで、高い効率と非常に優れたEMI性能を実現しま
す。
2 車載バッテリ電圧を直接DC/DC変換――厳しいEMI規格に適合する3.3V/5V、5A出力の電源回路
Page3
FB1 L2
ビーズ 0.33 µH
VIN
5.7V~42V
10 µF 10 µF 10 µF
1210 1210 1210 EN/UV
VIN VIN
1 µF 1 µF
0603 GND 0603GND
BST
LT8636 0.1 µF
1 µF 1.5 µH VOUT
INTVCC SW 5 V
SYNC/MODE 5 ABIAS
10 pF 1 MΩ 100 µF
RT FB 1210
17.8 kΩ GND 243 kΩ X5R/X7R
fSW = 2 MHz
未使用のピン: L:XEL6030
CLKOUT、PG、TR/SS FB1:MPZ1608S300ATAH0
図3. LT8636を使用して構成した電源回路。5.7V~42V入力、5V/5A出力の降圧コンバータです。7Aのピーク電流に対応します。
SSFMモードで動作させることにより、極めて高いEMI性能を達成することができます。
この製品を採用した電源回路の例を図3に示しました。また、図 それにより、三角波周波数変調が適用され、実際に使用されるス
4には、同ICを採用した電源回路の伝導性EMIと放射性EMIの イッチング周波数が変化します。LT8636では、スイッチング周
測定結果を示しました。これらの測定結果は、同ICのデモ用ボー 波数はRTピンによって設定します。SSFMモードでは、その設
ドを使用し、14V入力、5V/5A出力という条件で取得したもの 定値よりも約20%高い値までスイッチング周波数が変化します。
です。フロント・エンドに付加した小さなインダクタとセラミッ 例えば、RTピンによってスイッチング周波数を2MHzに設定し
ク・コンデンサは、伝導性EMIのフィルタリングに役立ちます。 た場合、SSFMモードでは、実際のスイッチング周波数が2MHz
フェライト・ビーズとセラミック・コンデンサは、放射性EMIの から2.4MHzまで3kHz刻みで変化します。
低減に貢献します。Silent Switcherを適用した製品の特徴でも
伝導性EMIの測定結果から明らかなように、SSFMモードでは、
ありますが、LT8636は2つの入力ピンと2つのグラウンド・ピ
ピークの高調波エネルギーが周波数軸に対して広く拡散されて
ンを備えています。各入力ピンとグラウンド・ピンの間には、小
います。その結果、各高調波のピーク振幅が低減されているこ
さなセラミック・コンデンサを配置しています。Silent Switcher
とがわかります。SSFMによって、ノイズは少なくとも20dBμ
は、ホット・ループの面積を最小限に抑えつつ、更にホット・ルー
V/m低減されています。また、放射性EMIの測定結果を見て
プを分割することによって高周波ノイズを相殺する技術です。
も、SSFMによってノイズが低減されていることがわかります。
LT8636では、EMI性能を高めるためにSSFMモードで動作する LT8636を使って構成した電源回路は、入力側に単純なEMI用
ように設定することができます。この回路では、そのための設定 フィルタを付加するだけで、車載向けのEMI規格(CISPR 25の
として、SYNC/MODEピンにINTVCCピンを接続しています。 クラス5)で定められた値を満たすということです。
60 50
垂直偏波
50 45 ピーク検出
40 40
30 35
30
20
25
10
20
0
15
–10
10
–20 5 クラス5のピークの上限値
–30 SSFMモード SSFMモード
固定周波数モード 0 固定周波数モード
–40 –5
0 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1k
周波数〔MHz〕 周波数〔MHz〕
デモ用ボード「DC2918A」を使用(EMI用フィルタを搭載) デモ用ボード「DC2918A」を使用(EMI用フィルタを搭載)
14V入力、5V/5A出力( fSWは2MHz) 14V入力、5V/5A出力(fSWは2MHz)
図4. LT8636のEMI性能。CISPR 25で定められた伝導性EMI/放射性EMIの測定結果を示しています。
SSFMモードを適用することにより、EMI性能が向上することがわかります。
Visit analog.com/jp 3
振幅〔dBμV/m〕
振幅〔dBμV/m〕
Page4
全負荷範囲にわたる高い効率 図5は、LT8636を使用して車載アプリケーション向けに構成し
車載向け電子機器の数は、増加の一途をたどっています。ほとん た電源回路の効率を示したものです。12Vの入力から3.8V/5A
どの機器では、設計を繰り返すごとに、より多くの電流を必要と の出力を得るという条件下で、高い効率を実現できることがわ
するようになります。アクティブな負荷に非常に多くの電流を供 かります。この回路は、非常に高い効率を得るために400kHzで
給しなければならない場合には、負荷が重い場合の効率と適切な 動作させています。インダクタとしては、10μHの「XAL7050-
温度管理を重視しなければなりません。動作の堅牢性は、温度管 103」を使用しています。出力電流が4mA(軽負荷)~5A(重負荷)
理にかかっていると言ってもよいでしょう。熱の発生をうまく抑 の範囲で、90%を上回る効率を達成しています。1A出力時には、
えなければ、大きなコストが生じる設計上の重大な問題に発展す 96%というピーク効率に達します。
るかもしれません。
また、バッテリの寿命は、主に軽負荷時/無負荷時の自己消費電 97
流によって決まります。そのため、システム設計者は、軽負荷時
の効率についても気を配る必要があります。実際、軽負荷時の効
率は、重負荷時の効率と同じくらい重要だとも言えるのです。シ 92
ステム・レベルの設計と同様に、ICの設計においても、全負荷時
の効率、無負荷時の自己消費電流、軽負荷時の効率の間のトレー
ドオフに対処する必要があります。 87
全負荷時に高い効率を得るためには、MOSFET、特に下側の
MOSFETのオン抵抗RDS(ON)を最小化する必要があります。それ XAL7050-103
は簡単なことであるように思われるかもしれません。しかし、ト 820.001 0.01 0.1 1
ランジスタのオン抵抗を下げるということは、通常は容量値も 負荷電流〔A〕
12V入力、3.8V出力(F は400kHz)
大きくなるということを意味します。それに伴い、スイッチング sw
損失やゲート駆動損失が増加すると共に、チップ・サイズとコ 図5. LT8636における負荷と効率の関係(その1)。400kHzの スイッチング周波数で動作させ、インダクタとしてはXAL7050-103を
ストも増大します。モノリシック型のDC/DCコンバータである 使用しています。12V入力、3.8V/5A出力の場合の効率を示しました。
LT8636は、そうした課題に対処しつつ、オン抵抗も非常に小さ 図6に、LT8636を2MHzのスイッチング周波数で動作させた
く抑えたMOSFETを内蔵しています。そのため、全負荷の条件 場合の効率を示しました。LT8636が内蔵するレギュレータは、
下でも、非常に高い効率を実現できます。LT8636は、ヒート・ BIASピンを介して5Vの出力から電力の供給を受けることによ
シンクを使用しない自然空冷の条件下において、連続で5A、ピー り、消費電力を最小限に抑えています。13.5V入力、5V出力の
クで7Aの最大出力電流に対応できます。そのため、堅牢性の高 場合の全負荷効率は92%で、ピーク効率は95%に達します。
い設計を容易に実現できます。 5V出力の場合、30mAまでの軽負荷時にも89%以上の効率を維
LT8636では、低リップルのBurst Mode®で動作させることに 持できます。インダクタとしては「XEL6060-222」を使用して
より、軽負荷時の効率を高めることができます。このモードでは、 おり、比較的小型のソリューションによって重負荷時と軽負荷時
出力電圧のリップルと入力静止電流を最小限に抑えつつ、出力コ の両方に対して効率を最適化できます。軽負荷時の効率は、より
ンデンサによって所望の出力電圧までの充電が行われます。短い 大きなインダクタを使用することで90%以上に高めることも可
パルスによって電流が出力コンデンサに供給され、その後、比較 能です。抵抗分圧器で構成した帰還パスに流れる電流は、負荷電
的長いスリープ期間が続き、制御回路(ロジック回路)のほとん 流として出力に現れますが、その値も最小限に抑えています。
どがシャットダウンされるという形で動作します。
1
軽負荷時の効率を高めるという観点からは、より値の大きいイン 0.95
ダクタを使用する方が有利に働きます。なぜなら、短いパルス期 0.9
間に、より多くのエネルギーを出力に供給することができ、DC/ 0.85
DCコンバータが各パルス間のスリープ・モードに長くとどまる 0.8
ことが可能になるからです。パルスの間隔を最大化し、各短パル 0.75
スのスイッチング損失を最小化することにより、LT8636をはじ 0.7
めとする当社製品では、自己消費電流を2.5μA程度までに抑え 0.65
ることができます。市場に供給されている代表的な製品は静止電 0.6
流が数十μA~数百μA程度なので、効率向上の観点からは非常 VOUT = 3.3 V0.55 VOUT = 5 V
に優れていると言えます。 0.5
0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1
負荷電流〔A〕
図6. LT8636における負荷と効率の関係(その2)。2MHzの
スイッチング周波数で動作させ、インダクタとしてはXEL6060-222を
使用しています。13.5V入力、5V/3.3V出力の場合の効率を示しました。
4 車載バッテリ電圧を直接DC/DC変換――厳しいEMI規格に適合する3.3V/5V、5A出力の電源回路
効率〔×100%〕 効率〔%〕
Page5
図7のグラフは、デューティ比と温度上昇の関係を示したもので 400kHzの5倍の2MHzに設定すれば、インダクタとコンデンサ
す。13.5V入力、自然空冷、室温、4Aの固定負荷と4Aのパル の値を1/5に低減できます。一見、スイッチング周波数を高める
ス負荷が存在する状態(計8Aのパルス負荷)で、デューティ比 のは、簡単なことであるかのように感じられます。実際、高い周
を10%(2.5ミリ秒)として動作させた場合の熱性能を表してい 波数で動作が可能なICはいくつも存在します。しかし、高い周波
ます。ご覧のように、2MHzのスイッチング周波数、40Wのパ 数で動作させると固有のトレードオフが生じるので、それらの製
ルス電力という条件でも、LT8636のパッケージ温度は40℃未 品をどのようなアプリケーションにも適用できるとは限りません。
満に維持されます。そのため、短時間であれば、ファンやヒート・
例えば、降圧比の高いアプリケーションでスイッチング周波数を
シンクを使用しなくても、8A出力まで安全に動作させられます。
高めるには、最小オン時間を短縮しなければなりません。V
これは、優れた熱性能を発揮するパッケージング技術(3mm× OUT
= T ×f ×V という式に基づけば、スイッチング周波数が
4mmのLQFN)と、高い周波数におけるLT8636の高い効率に ON SW IN
2MHzの場合、24Vの入力から3.3Vの出力を得るには、上側の
よって実現されます。グラフだけでなく、熱画像も併せて示して
パワー・スイッチ(MOSFET)は約50ナノ秒のオン時間T で
おきました。 ON
動作する必要があります。パワー・スイッチがこの短いオン時間
に対応できない場合に、レギュレートされた低い出力を維持する
39
には、パルスをスキップしなければなりません。これは本質的に、
37 スイッチング周波数を高くするという目標に反しています。つま
35 り、パルスのスキップによる等価的なスイッチング周波数がAM
帯に位置する可能性が高くなるということです。多くのパワー・
33 スイッチの最小オン時間は、75ナノ秒以上と規定されています。
31 そのため、高い降圧比においてパルスのスキップを避けるには、
400kHzという低いスイッチング周波数で動作させる必要があり
29 ます。それに対し、LT8636の上側のMOSFETは、30ナノ秒の
27 最小オン時間に対応します。そのため、2MHzのスイッチング周
波数を採用した場合でも、高いVINを直接低いVOUTに変換するこ
25
0 2 4 6 8 10 とができます。
4Aの負荷に対するデューティ比
一般に、スイッチング周波数を高めるとスイッチング損失が増大
します。これも大きな課題の1つです。スイッチングに関連する
損失には、パワー・スイッチのターン・オン損失、ターン・オフ
損失、ゲート駆動損失があります。これらの値は、いずれもスイッ
チング周波数にほぼ比例します。ただ、これらの損失は、スイッ
チのターン・オン時間/ターン・オフ時間を短縮する(高速化す
る)ことによって改善できます。LT8636の場合、MOSFETの
ターン・オン/ターン・オフは5V/ナノ秒未満と高速です。その
ため、デッドタイムとダイオード時間(diode time)を最小化で
き、高いスイッチング周波数で動作させても、スイッチング損失
図7. デューティ比と温度上昇の関係。13.5V入力、5V出力、 を少なく抑えられます。
4Aの固定負荷と4Aのパルス負荷、10%のデューティ比という
条件における温度上昇の様子をグラフとして示しました。 LT8636は、パワーMOSFETを集積したモノリシック型のICで
グラフの下に熱画像も示しておきました。
あり、必要な回路をすべて内蔵しています。パッケージは3mm
×4mmのLQFNです。そのため、最小の実装面積で電源回路を
高いスイッチング周波数による小型化 構成できます。パッケージの下部には、大きな露出グラウンド・
車載アプリケーションでは、実装スペースがますます貴重になっ パッドが設けられており、非常に低い熱抵抗(26℃ /W)でプ
ています。ボードの面積は、非常に高価なものだと表現するこ リント基板に熱を逃がすことが可能です。そのため、放熱機構を
ともできるでしょう。それに応じて、電源回路の小型化を図るこ 追加することなく使用できる可能性があります。なお、このパッ
とは必須となっています。先述したように、DC/DCコンバータ ケージは、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)に準
では、スイッチング周波数を高めることで、コンデンサやインダ 拠して設計されています。図3に示したように、高いスイッチン
クタとしてより小型のものを使用することが可能になります。ま グ周波数で動作させる場合でも、単純なフィルタによって放射性
た、2MHzより高い(あるいは400kHzより低い)スイッチング EMIに容易に対処できます。これは、ホット・ループの面積を削
周波数を採用することにより、AM帯の外側に基本波が存在する 減するSilent Switcher技術の効果によるものです。
状態を作ることができます。ここでは、一般的な400kHzの設計
と2MHzの設計を比較してみましょう。スイッチング周波数を
Visit analog.com/jp 5
温度上昇〔℃〕
Page6
まとめ プを分割して磁界を相殺できるようになっています。その結果、
車載アプリケーションでは、小型かつ高性能の電源回路が求めら 放射性のEMIが抑制されます。また、同期設計を採用すると共に、
れます。DC/DCコンバータ用のICを慎重に選択することで、よ スイッチング・エッジの高速化を図ることで、重負荷時の効率を
くあるトレードオフを回避しつつ、そうした電源回路を構成する 高めています。更に、低リップルのBurst Modeで動作させれば、
ことが可能になります。つまり、高い効率、高いスイッチング周 軽負荷時にも高い効率を得ることができます。
波数、高いEMI性能を達成できるということです。本稿では、そ
LT8636は、3.4V~42Vの入力範囲、低ドロップアウトの変換
うした小型の電源回路の設計例を紹介しました。その回路では、
にも対応します。そのため、自動車のクランキングやロード・ダ
DC/DCコンバータICとしてLT8636を使用しています。同製品
ンプの状態にも適切に対処できます。車載アプリケーションを担
は、3mm×4mmのLQFNパッケージを採用したモノリシック
当するシステム設計者は、電源の小型化を図る際に多くのトレー
型の降圧コンバータです。42Vの入力を基に、連続で5A、ピー
ドオフに直面することになります。本稿で紹介した設計を採用す
クで7Aの出力電流を得ることができます。Silent Switcher技術
れば、そうしたトレードオフを回避しつつ、あらゆる性能目標を
が適用されていることがこの製品の特徴の1つです。具体的には、
達成することができます。
2本のVINピンがIC上に対称的に配置されており、ホット・ルー
著者について
Zhongming Ye(zhongming.ye@analog.com)は、アナログ・デバイセズ(カリフォルニア州ミルピタ
ス)でパワー製品を担当するアプリケーション・エンジニアリング・マネージャです。2009年からLinear
Technology(現在はアナログ・デバイセズに統合)で降圧/昇圧/フライバック/フォワード・コンバー
タを含む様々な製品のアプリケーション・サポートを担当してきました。車載/医療/産業分野に向けた高
効率、高出力密度、低EMIの高性能パワー・コンバータやレギュレータなどのパワー・マネージメント製品
に注力しています。Linear Technologyに入社する前は、Intersilで3年間、絶縁型パワー製品用のPWM
コントローラを担当していました。クイーンズ大学(カナダ キングストン)で電気工学の博士号を取得して
います。IEEE Power Electronics Societyのシニア・メンバーも務めていました。
VISIT A N A L O G . C O M / J P
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