1/4ページ
カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(574.2Kb)

最大71.3Wの電力が使えるハイパワー版PoEの標準化が完了

ホワイトペーパー

業界動向とソリューション

thernetケーブルを通じて電力を供給するPoE(Power over Ethernet)の新しい規格

IEEE 802.3btがリリースされました。受電機器側で最大71.3Wの電力を使えるのが特徴です。 IEEE 802.3btの概要とアナログ・デバイセズのソリューションを紹介します。

カテゴリー5e以上のEthernetケーブルを使って通信先に電源を供給する「PoE」(PoweroverEthernet)の新しい規格「IEEE802.3bt-2018」が2018年9月27日に正式に発効されました。PoEの従来規格である802.3at(PoE+)では受電側が利用できる最大電力は25.5Wでしたが、802.3btでは71.3Wにまで増大されたのがポイントです。カテゴリー5eケーブルの4組のツイストペアすべてを使うことから「4PPoE(」4-pairPoE)と呼ばれたり、802.3afの通称であるPoE+のエンハンス版という意味で「PoE++」とも呼ばれたりしています。

◆続きはカタログをダウンロードしご覧下さい。

このカタログについて

ドキュメント名 最大71.3Wの電力が使えるハイパワー版PoEの標準化が完了
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 574.2Kb
登録カテゴリ
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

この企業の関連カタログ

このカタログの内容

Page1

業界動向とソリューション H o t T o p ioc s t Topics 最大71.3Wの電力が使える ハイパワー版PoEの標準化が完了 岡村 武夫 /アナログ・デバイセズ株式会社 Ethernetケーブルを通じて電力を供給するPoE(Power over Ethernet)の新しい規格 IEEE 802.3btがリリースされました。受電機器側で最大71.3Wの電力を使えるのが特徴です。 IEEE 802.3btの概要とアナログ・デバイセズのソリューションを紹介します。 カテゴリー5e以上のEthernetケーブルを使って通信先に電源を しようとしたとき、カメラ用に外部電源を用いて電力を供給するのは 供給する「PoE」(Power over Ethernet)の新しい規格「IEEE 施工コストが膨らんでしまいますが、PoEを使えばEthernetケーブル 802.3bt-2018」が2018年9月27日に正式に発効されました。PoE の敷設だけで済むため安価で済みます。 の従来規格である802.3at(PoE+)では受電側が利用できる最大 ところが、パン/チルト/ズーム(PTZ)のためにモータを駆動し 電力は25.5Wでしたが、802.3btでは71.3Wにまで増大されたのが たり、雪や霜を溶かすヒーターを加熱したりすると、これまでの最大 ポイントです。カテゴリー5eケーブルの4組のツイストペアすべてを となる802.3af(PoE+)の25.5Wでは不十分なため、ハイパワーの 使うことから「4PPoE」(4-pair PoE)と呼ばれたり、802.3afの通称 ニーズが顕在化していました。 であるPoE+のエンハンス版という意味で「PoE++」とも呼ばれたり しています。 アナログ・デバイセズ(旧リニアテクノロジー)ではこうした市場 ニーズを踏まえて、受電側で最大90W(カスタム仕様のUltraPWR ちなみにPoEという用語には、Ethernetケーブルで電源を供給する モードでは123W)が利用可能な「LTPoE++」を独自に開発し、ハイ 一般名詞としての意味と、802.3afで策定された13W(正確には パワーを必要とされるお客様にソリューションを提供してきました。 12.95W)まで供給できる規格名としての意味の両方がありますが、 さらに、並行して802.3btのワーキンググループに参加して標準仕様 本稿ではPoEという用語を一般名詞として使い、規格名は主にIEEE の策定に努めるとともに、ソリューションの開発を進めてきました。 番号で表記することにします。 PoEの代表的なアプリケーションがサーベイランス用IPカメラの 接続です。サーベイランス・システムから離れた地点にカメラを設置 Ethernetケーブルを介して通信と合わせて電力を供給するPoE(Power over Ethernet)の概念図 04
Page2

業界動向とソリューション 最大71.3Wの電力が使えるハイパワー版PoEの標準化が完了 H o t T o p i c s 最大13Wの802.3afと最大25.5Wの802.3atが規格化 (2) Type 電力線と通信線を共通化しようという試みは古くからあり、さま 規格の種類を表します。802.3af(PoE)はType1、       ざまな分野で技術開発が行われ、一部が実用化されています。商用 802.3at(PoE+)はType2です。 のAC100Vラインにデータを載せるPLC(Powe r L i n e (3) Class Communication:電力線搬送通信)や、身近なところではUSB PDの要求電力を表し、802.3af(PoE)ではClass0からClass3 などがその代表といえます。その中で、Ethernetケーブルで電力を まで、802.3at(PoE+)ではClass0からClass4までが規定されて 送ろうという構想が生まれたのも自然な流れといえます。 います。このうちClass 0は電力クラスをサポートしていないPSE用 そして、1999年にIEEEに802.3afワーキングループが結成され、 に設けられたクラスです。 受電側で最大13Wまで利用できる規格として2003年に発効され (4) 認証 ました(図1)。 PSEとPDをEthernetケーブルで接続すると、PSEとPDとの間で PoEでは、PHYとPHYの間にある絶縁用のパルス・トランスの2次 認証が行われます。最初に、PSEは接続されたEthernet機器がPD 側間で電力を供給します。コネクタは通常のEthernetと同じRJ45 かどうかを識別するために負荷側の抵抗値を測定します。シグネ ですが、短絡事故や感電事故を防ぐために活線挿入は許されていま チャ抵抗(19~26kΩ)が検出された場合にのみPDが接続されて せん。ケーブル長は最大100mです。 いると判断します。接続相手がPDであると認識されると、その後 最大で13Wが利用できる802.3af (PoE)は、消費電力の小さいIP PSEはPDと通信を行う上でPDのClassを読み取り、PDが要求する カメラやWi-Fiアクセスポイントを動作させるには十分でしたが、より 電力を検出します。PSEの供給できる電流とPDが必要とする電力 多くの電力を使いたいというニーズに応えて、受電側の最大電力を が整合したことが確認されてから既定の電力範囲での給電を行う 25.5Wに高めた「PoE+」が802.3atとして2009年に発効されました。 ために電流制限を行いながら実際の電力供給が開始されます。 さて、802.3af(PoE)や802.3at(PoE+)の動作を理解するには、 このように、安全に給電を行うために接続機器の確認、要求電力の いくつかの用語をおぼえておく必要があります。 識別を行うことを認証と呼びます。 (1) PSEとPD ルーター、ハブ、ミッドスパンなどの給電側デバイスを「PSE」 ハイパワー化のニーズから生まれた最大71.3Wの802.3bt (Power Sourcing Equipment)、IPカメラなどの受電側デバイス 802.3at(PoE)の規格化によってPD側で最大25.5Wの電力が使える を「PD(」Powered Device)と呼びます。ケーブルでの損失(ドロッ ようになりましたが、さらなるハイパワーを求めるアプリケーションに プ)を想定して、PSEが供給する電力>PDで利用できる電力、と 応えて、一部のベンダーはIEEEでの標準化を待たずに独自のハイパワー 定められています。たとえば802.3at(PoE+)のClass 4の場合、 規格を策定しました。旧リニアテクノロジー(現アナログ・デバイセズ)が PSE側の供給電力は30Wですが、PDで利用できる最大電力は 開発した「LTPoE++」もそのひとつで、PDは最大90Wまでの電力を使う 25.5Wです。 ことができます。 IEEE802.3a(f PoE)の構成 PSE PD ▶ PSE = Power Sourcing Equipmen(t endspan or midspan) ▶ 25KΩの抵抗値を電力供給を受けたい際に提供 ▶ 電源投入前に25KΩの抵抗値をチェック ▶ 36V~57V、13W max ▶ 絶縁の44V~57V、350mA max( 15.4W) ▶ どちらのペアの電力も受けることができなくてはいけない ▶ データラインまたは予備ラインのどちらかに電力を供給可能 だが、片側のみ CAT 5 20Ω MAX PSE PD RJ45 ROUNDTRIP RJ45 4 0.05μF MAX 4 5 5 GND SPARE PAIR 1N4002 0.1μF ×4 100V 0.1μF 1 1 DGND BYP AGND CMPD3003 Tx Rx SMAJ58A 5μF ≤ CIN 3.3V VDD DETECT 58V ≤ 300μF INTERRUPT INT 2 DATA PAIR 2 SCL 1/4 1k I2C LTC4259ASDAIN 0.47μF 100V 3 3 0.1μF SDAOUT X7R Rx Tx 1N4002 VEE SENSE GATE OUT ×46 GNDDATA PAIR 6 SMAJ58A RCLASS PWRGD DC/DC + 10k CONVERTER 0.5Ω 58V LTC4257 VOUT –48V IRFM120A 7 7S1B –48VIN –48VOUT – 6 6 SPARE PAIR 4259A F11 図1. 802.3af(PoE)の構成(802.3at(PoE+)の構成も基本的に同一) 05
Page3

業界動向とソリューション H o t T o p i c s 最大71.3Wの電力が使えるハイパワー版PoEの標準化が完了 ほかにもいくつかのベンダーが独自のハイパワー仕様を定め、それ 供給最大電力および利用可能最大電力は規格の小さいほうに律速され ぞれソリューションを提供してきましたが、ベンダーを超えて相互に接続 ます。また、LTPoE++などの独自規格と接続した場合でも正しく認証が ができるようにと、2013年5月に結成されたのが802.3btスタディ 行えるように工夫されています(その場合は802.3af(PoE+)として動作 グループです(のちにワーキングループに昇格)。 します)。 各社の独自仕様を包含するのではなく、それぞれの独自仕様に用い DEVICE PSE られたハイパワー化技術を取り入れながら、802.3at(PoE)を拡張する STANDARD 802.3bt 形で規格化が進められました。そして冒頭で触れたように、2018年9月 TYPE TYPE1 TYPE2 TYPE3 TYPE4 27日に802.3bt-2018として発効されました。 TYPE1 13W 13W 13W 13W 802.3btと、従来の802.3af(PoE)および802.3at(PoE+)との主な TYPE2 13W 25.5W 25.5W 25.5W 違いは次のとおりです。 TYPE3 13W 25.5W 40W, 51W 40W, 51W (1)Ethernetケーブルで、従来は2ペアを使って電力を供給していた TYPE4 13W 25.5W 40W, 51W 62W, 71.3W のを、4ペアすべてを使用して電力を供給するように拡張されました (図2)(。備考:LTPoE++も4ペアを使用します。) 図4. PSEとPDの接続組み合わせによるPD側で利用できる電力の一覧 –55V 0.15Ω 802.3btに対応したソリューションをラインアップ RJ45 RJ45 1 1 GND アナログ・デバイセズがラインアップする802.3bt対応のソリューション 2 DATA PAIR 2 + VEE SENSEA GATEA OUTA RCLASS PWRGD DC/DC V CONVERTER OUT 3 3 – を紹介します。 PD PSE 6 DATA PAIR 6 Controller ◆ LTC4291/LTC4292 Controller 4 4 –V 802.3btに準拠したPSE用チップセットです(図5)。Type3およびIN –VOUT VEE SENSEB GATEB OUTB 5 DATA PAIR 5 Type4のPSEを構成して、最大71.3Wを消費するPD(Class8)に対し 7 7 て電力を供給することができます。もちろんLTC4291とLTC4292の 8 DATA PAIR 8 –55V 0.15Ω 間に外付けトランスを接続して絶縁を行う構成となっているため、オプ PSE PD ティカル・カプラーなどは必要ありません。評価キットが提供されて います。ちなみにLTC4291/LTC4292は、SifosTechnologies社が 図2. 4ペアのツイストペアを使用して電力を供給し、   PDでは最大71.3Wを利用可能な802.3btの概略構成 管理している802.3btの適合性試験に業界で初めて(当社調べ)合格 したチップです。 (2) Class 5からClass 8までが新設され、最大で71.3W(Class 8)の 電力をPDで利用できるようになりました(図3)。 図5. 802.3btに対応したPSE用チップセットLTC4291/LTC4292 図3. Classとシングル・シグネチャのPDで利用できる電力 ◆ LT4294 802.3bt(draft3.7)に準拠したPDインターフェース・コントローラで、 (3)Typeが新設され、Class 5とClass 6に対応したPSE/PDはType 3、 最大71.3WのPD(Class 8)を構成できます(図6)。もちろん従来の Class 7とClass 8に対応したPSE/PDはType 4に分類されます。 802.3at(PoE)/802.3af(PoE+)にも準拠しています。LTPoE++対応 (4)認証および電気仕様において従来の802.3at(PoE)/802.3af のPDであるLT4275と基本的にピン互換となっているため、すでに設計 (PoE+)との互換性が維持されており、802.3btのPSEと802.3at/ 済のLTPoE++の既存機器からの設計変更も容易です。こちらの製品の 802.3afのPD、といった接続の組み合わせが可能です(図4)。ただし、 評価キットが提供されています。 06 PD 802.3bt
Page4

業界動向とソリューション 最大71.3Wの電力が使えるハイパワー版PoEの標準化が完了 H o t T o p i c s AUX INPUT LT4320 DC TO 600Hz Ideal Diode Bridge Controller ■ Maximizes Power Efficiency ■ Reduces Heat, Eliminates Thermal Design Problems ■ DC to 600Hz ■ 1 9V to 72V Operating Voltage Range ■ IQ = 1.5mA (Typical) DATA 2 PAIRS 3 FORWARD OR FLYBACK 6 DISCRETES + LT4321 PD Forward/Flyback Controller4 ■ IEEE 802.3bt Compliant LT4295 VOUT ■ High Efficiency Forward or No-Opto Flyback Operation DATA 5 ■ Superior Surge Protection (100V) PAIRS 7 ■ Wide Junction Temperature Range – (–40°C to125°C) 8 PoE Diode Bridge Controller ■ Maximizes Power Efficiency ■ Reduces Heat, Eliminates Thermal Design Problems ■ Less Than 800µA Quiescent Operating Current 図6. 802.3bt対応のPD用コントローラLT4294 ■ Fully Compatible with IEEE 802.3 Detection and Classification 図8. PDの電源回路に最適な理想ダイオード・ブリッジ・コントローラLT4321(左) ◆ LT4295 802.3bt(draft3.7)に準拠したPDインターフェース・コントローラで す(図8)。フォワード/フライバック・コントローラを内蔵しているため、 以上、ハイパワー版PoEともいえる802.3btの概要とソリューション 最大71.3WのPD(Class8)を電源回路を含めてコンパクトに構成でき を簡単に紹介しました。2019年内に802.3btに対応したさまざまな ます。LT4295はLTPoE++対応のPDであるLT4276とピン互換と 機器やデバイスが登場すると見込まれていますが、従来の802.3af なっているため、すでに設計済のLTPoE++の既存機器からの設計変更 (PoE+)に比べて3倍近い71.3Wの規格が標準化されたことにより、 も容易です。こちらも評価キットが提供されています。 アプリケーションが大きく広がると期待されています。 具体的には、PTZ機能とヒーターを内蔵したサーベイランス・カメラ、 高機能なIP電話、無線LANのアクセスポイント、基地局設備、HVAC (空調)制御バルブ、IoTなどのリモートセンサー、調光機能のついた LED照明、デジタルサイネージ、シン・クライアントなど、さまざまな アイデアが考えられます。 なおアナログ・デバイセズでは、71Wではまだ足りないというお客様 に向けて、最大90Wの電力が使えるLTPoE++を引き続き提供して いきます。 LTPoE++で培ったハイパワーPoEの実績やノウハウをベースに、 802.3btにおいても、認証の堅牢性、ノイズ性能、安全性などを高め 図7. フォワード/フライバック・コントローラを内蔵した802.3bt対応の    PD用コントローラLT4295 ているのがアナログ・デバイセズならではの強みです。可能性が広がる 802.3bt 対応機器の開発に際してぜひご検討ください。 ◆ LT4321 大電流に対応したPoEに使用する場合、従来のダイオードを用いた ダイオードブリッジでは、ダイオードで損失する電力が大きく、発熱が 問題となる場合があります。 そこで開発されたのが大電力PoE PDのコンパニオン・チップとも いえる理想ダイオード・ブリッジ・コントローラLT4321です(図8)。外付 けのNチャンネルMOSFET×4個をダイオードとして制御するブリッジで、 著者 損失(発熱)が少なく、電力を有効に取り出すことができます。 岡村 武夫 LT4295と組み合わせたとき、PDの入力電力変換効率は92%を上 回ります。クロス・ケーブルとストレート・ケーブルのいずれの接続にも アナログ・デバイセズ株式会社  対応しています。 東日本地区 営業技術グループ フィールド・アプリケーション・ エンジニア マネージャー 07