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【技術記事】絶縁設計の隠れたコストを回避する――次世代ソリューションにより、プロジェクトのリスクを管理

ハンドブック

小型化と軽量化が求められる車載システム。自動車の電動化が進み急速にニーズが高まる絶縁技術関する記事をご紹介

絶縁型DC/DCコンバータICこそが、システム設計者にとっての最適なソリューションになります。
そうしたICを使用することにより、設計の複雑さが劇的に解消され、より容易にEMC規格の認証を得ることができます。
つまり、再設計、再評価、再試験に費やす時間が大幅に削減されます。
その結果、設計者は、基板面積の削減、リスクの低減、コストの削減、開発期間の短縮に注力できるようになります。

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このカタログについて

ドキュメント名 【技術記事】絶縁設計の隠れたコストを回避する――次世代ソリューションにより、プロジェクトのリスクを管理
ドキュメント種別 ハンドブック
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取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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技術記事 | Share on Twitter | Share on LinkedIn | Email 絶縁設計の隠れたコストを回避する―― 次世代ソリューションにより、  プロジェクトのリスクを管理  著者: David Carr Analog Devices, Inc. 自動車の電動化 絶縁設計について理解する 新たに導入される電動システムには、小型化と軽量化が求めら 絶縁設計という言葉で一括りにされがちですが、個々のアプリ れます。典型的な例が車載システムです。プロフェッショナ ケーションで実際に求められる事柄は非常に複雑です。絶縁設 ル・サービス・ファームであるPwCは、2024年までに自動車の 計を行う際には、まず絶縁に対する要求レベルを決定します。 世界売上高のうち40%は、ハイブリッド車と完全な電気自動車 次に、絶縁を施したデータ・パスを適切に機能させるために、 で占められるようになると予測しています。自動車の電動化が 絶縁された電源を供給する手段を検討します。更に、このよう 進むということは、より多くの電気部品や電動システムが使わ な事柄を踏まえたソリューションを、定められたスペース内に れるようになるということです。それに伴い、絶縁技術に対す 収められるようにしなければなりません。こうした過程では、 るニーズが急速に高まっています。例えば、最近では、400VDC 設計上の多くのトレードオフに対処する必要があります。しか のバッテリ・スタックを備えた電気自動車が一般的になってき も、新たなプロジェクトでは、設計上の要件を満たすだけでな ました。このような高い電圧を使用する車で安全の確保が必須 く、個々の設計目標も達成しなければならないはずです。技術 の要件になるのは当然のことです。 的な難易度、過去の設計との類似性、スケジュール、リソーシ 電動化に伴い高まる絶縁の必要性 ングといった複数の要素を結びつけ、再利用する部分と新規設計を行う部分を決定します。新規設計の部分については、その 次世代の絶縁ソリューションを提供するには、数多くの多様な 実現方法も選択しなければなりません。一般に、過去の設計や 課題に対応しなければなりません。車載電動システムには、特 アーキテクチャに最小限の変更を加えて再利用すれば、開発期 に絶縁に関して、アジリティと柔軟性の面で制約になる複雑な 間の短縮やリスクの低減を図ることができます。しかし、新た アーキテクチャとプロセスが含まれています。つまり、それら な機能を追加したり性能を改善したりするためには、多くの場 は絶縁に関する変更を適用する上での障壁になるということ 合、新たなアプローチについて検討しなければなりません。つ です。競争とグローバル化のペースが加速したことから、企 まり、設計に付加価値を加えるためには、新たな技術や改善さ 業は、製品を市場に投入するまでの期間(TTM)と投資対効果 れた技術の評価が必要になるということです。その作業に、貴 (ROI)をより重視せざるを得なくなりました。このことは、 重な開発リソースが費やされてしまうことが問題になる可能性 開発部門は従来よりも厳しいスケジュールに完璧に対応しなけ もあります。 ればならないということを意味します。設計や開発について は、リソーシングの精査と強化が進められています。ただ、重 従来のアプローチの限界 要なすべての領域に、経験豊富な人員が存在するというわけで 現在では、上述した事柄のうちの多くを容易に解決できるよう はありません。ROIの目標を達成するためには、繰り返し作業 になっています。なぜなら、IC化された絶縁型DC/DCコンバー を最小限に抑える必要があります。例えば、何らかの事情で設 タが登場したからです。言い換えれば、安全規格に適合するこ 計をやり直すといった事態は、極力避けなければならないとい とが実証された、小型で使いやすいソリューションが提供され うことです。また、競合他社からの圧力を受け、製品の差別化 るようになったということです。ここで、新たなプロジェクト を更に推し進めるために、短期間のうちに性能目標が押し上げ が承認されるまでの1つのシナリオを考えてみます。そのプロ られてしまうこともあります。更に、規制機関の新設や規制の ジェクトでは、過去の設計を再利用することを前提とします。 強化に伴って、アプリケーションの試験や認証の面で、新たな ただし、新たな機能を追加すると共に、より高い性能を達成し ハードルが生じてしまうこともあります。絶縁に対する需要が なければなりません。設計チームのメンバーは、直ちに業務に 急増している一方で、リスクはより高まっているということで 取り掛かれる状態にあります。しかし、プロジェクトのリーダ す。 ーは、失敗の可能性のある技術的な事柄について懸念を持って います。しかも、予算とスケジュールが厳しいという条件の下 で、複雑化が進む状況に対処しなければなりません。 analog.com/jp
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2 絶縁設計の隠れたコストを回避する――次世代ソリューションにより、プロジェクトのリスクを管理 このようなプロジェクトを管理する際には、1つの大きな課題に アを適用するということは、入力と出力の状態を同時に監視す 直面することになります。それは、より厳しい条件が課せられ ることが、本質的に難しくなるということを意味します。言い るEMC(電磁両立性)の規格を満たすことです。新たに誕生し 換えると、絶縁バリアを適用すると、必要な性能を満たすこと た市場やアプリケーションでは、より多くのEMC規格に準拠す がより困難になるということです。また、分離されたグラウン ることが求められます。性能の限界を追求するたびに、そのハ ド領域は、ダイポール・アンテナを形成します。絶縁バリアを ードルはより高く設定されるようになります。 越えるコモン・モード電流は、ダイポールを励起して不要な放 絶縁型フライバック・コンバータなど、ディスクリート部品を 射エネルギーを発生させます。 使用する既存のソリューションには、BOMコストを抑えられる 試験に合格するための労力 といった長所があります。ただ、短所も併せ持っています。図 1に、一般的なフライバック・コンバータの回路図を示しまし 先述したように、ディスクリート構成の電源設計によってEMC た。この回路は、2次側で整流とフィルタ処理を担う絶縁トラン の認証を得るには、多くの場合、基準を満たすために数回の繰 スを駆動するためのコントローラを備えています。また、光学 り返し作業が発生します。当然のことながら、EMCの試験には 手法で絶縁を実現した帰還回路を備えています。この回路にお 時間と費用がかかります。また、開発チームは、外部のEMC認 いて、エラー・アンプの部分には、電圧ループを安定化するた 証施設で行われる試験の準備などに多くの時間を費やさなけれ めの補償回路が必要になります。これを開発するためには、そ ばなりません。問題が発生した場合には、実験室に戻ってトラ れなりの技術的な労力が必要になります。なぜなら、フォトカ ブルシューティングと修正を行います。更に、修正によって基 プラの性能のばらつきに対応しなければならないからです。フ 本性能が低下しなかったことを確認するために、設計内容のす ォトカプラは、電源回路で使用できる安価なアイソレータだと べてを再評価しなければなりません。その作業が完了したら、 捉えられることがよくあります。ただ、フォトカプラは電流伝 再試験のためにEMC施設に戻ることになります。 導率(CTR:Current Transfer Ratio)にばらつきがあるという ディスクリート構成の絶縁型電源を開発する際、最終段階では 欠点を持ちます。このことにより、電圧帰還性能と有効動作温 安全性に関する認証も得る必要があります。これも時間と費用 度範囲の面で制約が生じます。CTRは、LEDの入力電流に対する がかかる工程です。認証を得るには、外部機関に試験を依頼し トランジスタの出力電流の比として定義されます。その特性は なければなりません。それに向けて、設計チームは大量のド 非線形で、デバイスごとにかなりばらつきます。通常、フォト キュメントを用意します。それらのドキュメントは、認証機関 カプラは初期CTRについて、2:1の不確実性を持ちます。それ によって慎重に精査されます。新規の部分は追加で調査される が、大出力/高密度の電源のような高温環境で数年間使用する ことになるので、過去に認証済みの回路をできるだけ再利用す と、最大50%ほど劣化することがあります。プロジェクト・マ ることが望ましいとも言えます。認証機関から、安全性を確保 ネージャにとって、ディスクリート構成のフライバック手法は するための要件を満たしていないという判断が下された場合に コストの点では優れているように見えるはずです。しかし、技 は、回路に変更を加えることもあるでしょう。そうなると、変 術的な労力と技術的なリスクの面で、トレードオフが存在する 更後の設計を再評価し、EMC試験からやり直さなければならな ことを認識しておかなければなりません。 くなります。 より優れたソリューション VIN T1 VOUT 上述した問題に対する答えは、完全に集積化され、EMC性能に コントローラ SW 関するドキュメントが用意されており、安全規格に準拠すると いう認証を取得済みのコンポーネントを採用することです。そ VOUT 制御 のようなコンポーネントの例としては、アナログ・デバイセズ ロジック の「ADuM5020」、「ADuM5028」が挙げられます。これら 補償回路 の製品は、isoPower®技術を適用した絶縁型DC/DCコンバータ シャント・ レギュレータ です。EMC性能に優れることを特徴とします。-40℃~125℃ とエラー・アンプ の動作温度で、5VのDC電圧から最大0.5Wの絶縁出力を供給す VREF ることが可能です。また、UL、CSA、VDEから、システム・レ フォトカプラ ベル/コンポーネント・レベルの複数の安全規格を満たすとい 図1. 一般的な絶縁型フライバックDC/DCコンバータ う認証を得ています。図2に、簡素な2層プリント回路基板に ADuM5020を実装した例を示しました。この基板を全負荷の状 ディスクリート部品を使用する手法については、もう1つの懸念 態で使用しても、CISPR 22/EN 55022のクラスBで定められた放 があります。それは、安全基準への準拠に関することです。安 射性エミッションの要件を満たすことができます。 全性に関する認証機関は、ディスクリート部品を使用した設計 16ピン/8ピンのワイド・ボディSOICという小型のパッケージ については、非常に詳細な検査を実施します。その種の設計に を採用しているため、わずかな実装面積しか必要としません。 よって必要な認証を得るには、再設計と再検査を繰り返さなけ また、放射性エミッションの目標を満たすための安全容量も不 ればならないことが少なくありません。 要です。例えば、ディスクリート構成で組み込みスティッチン システムに絶縁を適用すると、電源の設計が複雑になります。 グ・コンデンサを使用するという場合には、正確に容量値を実 絶縁を必要としない標準的な設計では、入出力電圧範囲、最大 現するためには、間隔をカスタマイズした4層以上の基板が必要 負荷電流、ノイズとリップル、トランジェント性能、起動時の になります。ADuM5020/ADuM5028を採用すれば、ディスク 特性といった事柄が設計上の条件になります。一方、絶縁バリ リート構成の場合よりも、小型で安価に絶縁型電源を実現でき ます。
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3 絶縁設計の隠れたコストを回避する――次世代ソリューションにより、プロジェクトのリスクを管理 複雑化を排除し、多くの絶縁ニーズに対応 すなわち、絶縁型DC/DCコンバータICこそが、システム設計者 にとっての最適なソリューションになります。そうしたICを使 自動車をはじめとする輸送機器の電動化が進むにつれ、絶縁に 用することにより、設計の複雑さが劇的に解消され、より容易 対するニーズも高まっています。それに伴い、競争が激化する にEMC規格の認証を得ることができます。つまり、再設計、再 ことから、コストの削減と市場投入までの期間の短縮がより重 評価、再試験に費やす時間が大幅に削減されます。その結果、 要な課題になっています。また、絶縁設計は元来複雑なもので 設計者は、基板面積の削減、リスクの低減、コストの削減、開 すが、現在ではより厳しい規格への準拠も求められています。 発期間の短縮に注力できるようになります。 こうした需要と課題に対応するには、従来の絶縁手法では不十 分です。より適切な対処方法は、完全に集積化され、EMC性能 に関するドキュメントが用意されており、安全規格に準拠する という認証を取得済みのコンポーネントを採用することです。 図2. ADuM5020を実装したプリント回路基板。 シンプルかつコンパクトなレイアウトで実現されています。
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著者について オンライン・ David Carr(david.carr@analog.com)は、アナログ・デ サポート・ バイセズのインターフェース&アイソレータ製品を担当 コミュニティ するアプリケーション・エンジニアリング・マネージャ です。長年にわたり、高速アナログ製品やミックスド・ アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ シグナル製品の仕様策定、開発、マーケティング、アプ ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者 リケーション・サポートに尽力してきました。ビンガム との連携を図ることができます。難易度の高い設計上 トン大学で電気工学の学士号と修士号を取得していま の問題について問い合わせを行ったり、FAQ を参照し す。ニューイングランドに住んでおり、天気の良い日に たり、ディスカッションに参加したりすることが可能 はランニングやソフトボールを楽しんでいます。 です。 ez.analog.com にアクセス *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 本    社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F 大阪営業所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F 名古屋営業所 〒451-6040 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー40F ©2018 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本紙記載の商標および登録商標は、 各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possible は アナログ・デバイセズの商標です。 www.analog.com/jp TA20686-0-9/18