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【アプリケーションノート】小型FT-IR によるトランス脂肪酸の迅速な定量分析 ALPHA II

製品カタログ

ATRによる赤外分光法を用いることで、食用油脂中に含まれるトランス脂肪酸を高い精度で定量分析することが可能

トランス脂肪酸は、化学構造中に含まれる二重結合がトランス型で存在する不飽和脂肪酸です。自然界で生み出される植物性油脂に含まれる不飽和脂肪酸の二重結合は、通常シス型構造で存在します。しかしながら、マーガリンやショートニングなどの固形油脂製品においては、生産時に必要な水素処理工程の間にトランス体が生成され、トランス脂肪酸が副生成物として含まれます。また、一部の動物性油脂や乳製品、海洋油には自然に生成される微量のトランス脂肪酸が含まれるとされています。

ここでは、濃度既知のトランス脂肪酸標準試料を用いて定量分析に必要となる検量線を作成し、その結果をもとに、本手法の精度について検討を行いました。

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このカタログについて

ドキュメント名 【アプリケーションノート】小型FT-IR によるトランス脂肪酸の迅速な定量分析 ALPHA II
ドキュメント種別 製品カタログ
ファイルサイズ 700.8Kb
登録カテゴリ
取り扱い企業 ブルカージャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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Bruker Optics Application Note 小型 FT-IRによるトランス脂肪酸の迅速な定量分析 はじめに 力と時間を要します。これに対して、ATRアクセサリを用 トランス脂肪酸は、化学構造中に含まれる二重結合が いる赤外分光法は、試料の前処理の必要はなく、測定に トランス型で存在する不飽和脂肪酸です。自然界で生み出 必要な試料の量も 50 μL以下と微量です。さらには、分析 される植物性油脂に含まれる不飽和脂肪酸の二重結合は、 結果が 1分程度で得られることから、作業性、時間効率、 通常シス型構造で存在します。しかしながら、マーガリン 経済性の点で優れる分析法と言えます。 やショートニングなどの固形油脂製品においては、生産 ここでは、濃度既知のトランス脂肪酸標準試料を用い 時に必要な水素化処理工程の間にトランス体が生成され、 て定量分析に必要となる検量線を作成し、その結果をも トランス脂肪酸が副生成物として含まれます。また、一部 とに、本手法の精度について検討を行いました。 の動物性油脂や乳製品、海洋油には、自然に生成される 微量のトランス脂肪酸が含まれるとされています。 トランス脂肪酸は、代謝異常や心疾患など様々な健康 障害に関係することが立証されており、医学界や栄養学の 分野において注目が高まっています。たとえばアメリカに おいては、2006年以降、同食品医薬品局(FDA)による ガイドラインのもと、食品メーカーは製品ラベルにトラン ス脂肪酸含有量を表示することが義務付けられています。 以前は、製造工程における制御パラメータの一つに過ぎな かったトランス脂肪酸含有量が、現在ではラベル表示が 法的な義務となり、生産者はその量を常に把握しておくこ とが必須となっています。さらには、2013年 11月、FDA は段階的にトランス脂肪酸の使用を禁止していく方針を決 定しています。日本では現在、トランス脂肪酸の使用は禁 図1. 温調型ATRモジュール搭載 ALPHA - P 止されていないものの、“食の安全 ”の観点から使用量の 低減や自主規制を発表する企業も多く、トランス脂肪酸含 有量の迅速な定量が必要不可欠となりつつあります。 試料・分析方法 ここでは、ATRアクセサリを用いた、赤外分光法による 検量線作成のため、100%トランス型構造を有するトリ トランス脂肪酸含有量の定量分析について紹介します。こ エライジンと 100%シス型構造を有するトリオレインを調 の手法は、アメリカ油化学会(AOCS)による公定法であ 合し、トリエライジンの濃度を 0.5 ~ 50 %に調整した 9水 るCd 14d-99に基づくもので、油脂等に含まれるトランス 準の標準試料を用意しました。 脂肪酸量について、簡単な手順で分析することを可能にし 測定には、温調機能付 1回反射型ダイヤモンドATR ています。トランス脂肪酸の定量に関する他の公定法とし モジュールを装着したコンパクトFT-IR、ALPHA-Pを使 ては、ガスクロマトグラフィー(GC)分析法があり、とく 用しました(図 1)。ALPHA-Pは、設置面積がA4用紙 に 0.5%程度の低濃度域では赤外分光法よりも優れた手法 1枚分というコンパクトなボディに加えて、耐震性と堅牢性 と言えます。しかしながら、GC法では、脂肪の分離抽出 の高いデザインを採用しており、使用環境の厳しい工場等 や化学修飾などの前処理が必要であり、分析には多くの労 でも安心して使用することができます。
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油脂試料を加温するため、ATRクリスタルの温度を トランス脂肪酸を定量することが可能となります。 65 ℃ に保持し、ここに約 50μLの油脂試料を滴下して測定 OPUSソフトウェアの QUANT1機能により求めた検量 を行いました。測定条件は、波数分解能を 4 cm-1、積算 線を図 3に示します。横軸は、標準試料の 966 cm-1のバ 回数を 64回としました。測定時間は約 1分です。 ンドの積分強度(990 ~ 945 cm-1)を表し、縦軸は、配合 なお、ATRアクセサリを用いた一般的な測定では、リ 比から求めたトランス脂肪酸濃度を表します。計算の結 ファレンス試料として空気(試料を置かない状態)が用い 果、寄与率(R2)99.98 %、確度誤差の標準偏差(SDDa) られますが、本手法では、トランス体を含まない、100% 0.5 %、精度誤差の標準偏差(SDDr)0.2 %の検量線が シス型構造を有する油脂(ここでは 100%トリオレイン)を 得られ、GC分析法に劣らない精度をもつ分析法であると 用います。つまり、分析される油脂試料のスペクトルから、 言えます。一方、定量下限については、今回測定した試料 トランス体を含まないリファレンス試料のスペクトルを差し の最低濃度が 0.5 %であり、SDDaが 0.5 %ということか 引いたデータが得られます。これにより、トランス体以外 ら、1 %程度とすることが妥当であろうと考えます。赤外 の構造に由来する吸収やベースラインの傾斜の影響はキャ 分光法は、定量下限においてはGC分析法に比べ若干劣 ンセルされます。 るものの、1 %以上の試料を対象とすれば十分に信頼でき 得られたスペクトルをもとに、ALPHAに付属する る手法であり、とくに操作の簡便性と分析スピードの点か OPUSソフトウェアの QUANT1(線形回帰)機能を用い らは、スクリーニング用途に最適な手法と言えます。 て検量線を作成しました。QUANT1では、ウィザード形 式のシンプルなユーザーインターフェースにより、着目する 成分や化学構造に帰属されるバンドの積分強度をもとにし た検量線を、簡単な操作で作成することが可能です。 測定結果 トリエライジン濃度 0.5 ~ 50 %の標準試料について 得られた赤外スペクトルを図 2に示します(1040~900 cm-1 を拡大)。図中の 966 cm-1 のバンドは、トランス型二重結 合の C-H 面外変角振動に帰属され、シス型構造のみを有 する不飽和脂肪酸においては観測されません。したがっ てこの吸収バンドの強度をもとに検量線を作成することで 図3. トランス脂肪酸含有量の検量線 まとめ ATRによる赤外分光法を用いることで、食用油脂中に 含まれるトランス脂肪酸を高い精度で定量分析することが 可能です。また、赤外分光法はGC法等に比べ、試料の 前処理が不要であり、必要量も少なく、測定時間も早い ことから、簡便で迅速な分析法と言えます。 国際的にトランス脂肪酸の使用が禁止される方向へ進ん でいることから、今後日本でも分析を行う頻度が増えるこ とが予想され、赤外分光法による迅速な定量分析は必要 不可欠なものになると考えます。 図2. 0.5 ~ 50%のトランス脂肪酸を含む標準試料の FT-IR吸収スペクトル (1040 - 900 cm-1) ブルカー・オプティクス 株式会社 本社:〒104-0033 東京都中央区新川 1-4-1 住友不動産六甲ビル Phone:03-3523-6870 Fax: 03-3523-6871 大阪営業所:〒532-0004 大阪市淀川区西宮原 1-8-29 テラサキ第2ビル www.bruker.jp/optics Phone:06-6394-8118 Fax: 06-6394-9003 Application Note AN-JP 6