1/3ページ
カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(938.6Kb)

【アプリケーションノート】VERTEX FM 広域をカバーする最新の光学系を用いた赤外スペクトル測定

製品カタログ

豊富な官能基情報を与える中赤外スペクトルに加えて、物質の高次構造や結晶性を反映する遠赤外スペクトルを同時に測定することが可能

赤外分光法は、測定に用いる赤外線の波数範囲により、近赤外分光法、(中)赤外分光法、遠赤外分光法の三つに大別できます。近赤外分光法は、多変量解析手法との併用による定性・定量分析をベースとした品質管理やプロセス管理に用いられています。中赤外領域におけるスペクトルは、物質を構成する分子の官能基に関する豊富な情報を与えることから、未知物質の同定や構造解析に広く用いられています。

また遠赤外領域には、とくに固体試料の場合、分子団どうしの相互作用に基づく分子間振動や結晶の格子振動に起因する吸収が現れることから、高次構造や結晶構造の解析に有用です。それぞれのスペクトル領域がもつ特長を活かすことで、分析対象物に対する理解をさらに深めることが可能となります。一方、フーリエ変換型赤外分光計(FT-IR)で得られるスペクトルの波数範囲は、装置を構成する光源やビームスプリッタ、検出器などの光学部品の組み合わせによって決まるため、着目する波数範囲に応じてこれらを交換しなければならない場合があります。こうした問題に対して、最新のリサーチグレード FT-IR には、主要な光学部品を自動的に切り替える機構を持つ製品もあります。

たとえばブルカー・オプティクスの VERTEX 80v では、光源、ビームスプリッタ、検出器について、それぞれ最大 4 種類を同時に装備し、ソフトウェア制御により部品を切り替えながら紫外・可視域から遠赤外域にわたる広域の連続スペクトルを全自動で測定することが可能となっています。しかしながらこうした機能を使おうとした場合、システム全体としては自ずと高価なものになってしまい、必ずしも汎用性の高い装置とは言えず、広域をカバーするビームスプリッタや検出器などの光学部品の開発が古くから求められていました。

ここで紹介する VERTEX FM は、ブルカー・オプティクスがもつ光学設計技術による最新のビームスプリッタおよび検出器をベースとし、光学部品を交換することなく一回の測定で近赤外域の一部から中赤外/遠赤外にわたる広域スペクトルの取得を可能にする、VERTEX 70 シリーズ FT-IR の新たなオプションです。ここではとくに、“ 中~遠 ” 広域赤外スペクトルの測定事例を交え、VERTEXFM の特長と測定の実際を紹介します。

◆詳細はカタログをダウンロードしご覧いただくか、お気軽にお問い合わせ下さい。

このカタログについて

ドキュメント名 【アプリケーションノート】VERTEX FM 広域をカバーする最新の光学系を用いた赤外スペクトル測定
ドキュメント種別 製品カタログ
ファイルサイズ 938.6Kb
登録カテゴリ
取り扱い企業 ブルカージャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

この企業の関連カタログ

このカタログの内容

Page1

Bruker Optics Application Note VERTEX FM 広域をカバーする最新の光学系を用いた 赤外スペクトル測定 はじめに よび検出器をベースとし、光学部品を交換することなく一 赤外分光法は、測定に用いる赤外線の波数範囲により、 回の測定で近赤外域の一部から中赤外/遠赤外にわたる 近赤外分光法、(中)赤外分光法、遠赤外分光法の三つに 広域スペクトルの取得を可能にする、VERTEX 70シリー 大別できます。近赤外分光法は、多変量解析手法との併 ズ FT-IRの新たなオプションです。ここではとくに、“ 中 用による定性・定量分析をベースとした品質管理やプロセ ~遠 ”広域赤外スペクトルの測定事例を交え、VERTEX ス管理に用いられています。中赤外領域におけるスペクト FMの特長と測定の実際を紹介します。 ルは、物質を構成する分子の官能基に関する豊富な情報 を与えることから、未知物質の同定や構造解析に広く用い 超広帯域ビームスプリッタ/超広帯域検出器 られています。また遠赤外領域には、とくに固体試料の場 VERTEX FMに用いられるビームスプリッタおよび検出 合、分子団どうしの相互作用に基づく分子間振動や結晶 器について、従来品との比較を図 1に示します。FT-IR分光 の格子振動に起因する吸収が現れることから、高次構造 計に用いられるビームスプリッタの波数帯域は、基板の材質 や結晶構造の解析に有用です。それぞれのスペクトル領域 とコーティング *の仕様によって決まります。たとえば中赤外 がもつ特長を活かすことで、分析対象物に対する理解をさ 用 FT-IR分光計では、臭化カリウム(KBr)基板にゲルマニ らに深めることが可能となります。 ウム(Ge)を蒸着したビームスプリッタが用いられ、一般に 一方、フーリエ変換型赤外分光計(FT-IR)で得られる は 8000~ 350cm-1程度の波数帯域を有します。これに対し スペクトルの波数範囲は、装置を構成する光源やビームス て、VERTEX FM用に新たに開発された超広帯域ビームス プリッタ、検出器などの光学部品の組み合わせによって決 プリッタ(部品番号:T240/3)は、6000~ 10cm-1というこ まるため、着目する波数範囲に応じてこれらを交換しなけ れまでにない広い帯域をカバーする特性をもち、近赤外の ればならない場合があります。こうした問題に対して、最 一部から遠赤外/テラヘルツ域にわたる広域のスペクトル測 新のリサーチグレード FT-IRには、主要な光学部品を自 定を可能にします。一方、検出器としては、一般的な FT-IR 動的に切り替える機構を持つ製品もあります。たとえばブ 分光計と同様にTGS(硫酸トリグリシン)検出器 **が搭載 ルカー・オプティクスのVERTEX 80vでは、光源、ビー されます。TGS検出器は、熱型検出素子である焦電素子の ムスプリッタ、検出器について、それぞれ最大 4種類を同 ひとつで、素子自体の感度には波数依存性はほとんどなく、 時に装備し、ソフトウェア制御により部品を切り替えなが 検出器としての分光感度は、潮解性をもつ TGSを大気中 ら紫外・可視域から遠赤外域にわたる広域の連続スペクト の水分から保護する目的で装着される窓材の透過特性に依 ルを全自動で測定することが可能となっています。しかし 存します。一般的な窓材としては、中赤外用TGSではKBr ながらこうした機能を使おうとした場合、システム全体とし (~ 350cm-1)やヨウ化セシウム(CsI: ~ 130cm-1)が、また ては自ずと高価なものになってしまい、必ずしも汎用性の 遠赤外用 TGSにはポリエチレン(PE: ~ 20cm-1)が用いら 高い装置とは言えず、広域をカバーするビームスプリッタ れます。VERTEX FMの超広帯域 TGS検出器(部品番号: や検出器などの光学部品の開発が古くから求められていま D201/BD)では、最新の光学材を採用することで、12000 した。 ~ 20cm-1という赤外領域のほぼ全域をカバーしつつ、従来 ここで紹介するVERTEX FMは、ブルカー・オプティ の中赤外用TGSや遠赤外用TGSと同等の分光感度特性を クスがもつ光学設計技術による最新のビームスプリッタお 維持しています。また従来のKBrや CsI窓材と異なり、潮
Page2

図 1.  VERTEX FM に用いられるビームスプリッタおよび検出器と従来品との比較 解性を持たないため、ハンドリングも容易となっています。 が不要となるため、部品交換に要する時間が不要となるこ とはもちろん、とくにパージ型 FT-IR分光計VERTEX 70 * ビームスプリッタには非コートのものもあり、この場合は基板の においては、パージのための待ち時間を短縮できるため、 もつ光学特性で分光帯域が決まります。 飛躍的な分析効率の向上が期待できます。またブルカー・ **実際の検出素子としては、TGSを重水素化し、さらに L-アラニ オプティクスの特長的な製品のひとつである真空型システ ンをドープしたDLaTGSを用いています。 ムVERTEX 70vとの組み合わせにおいては、大気中の水 蒸気や炭酸ガスによる妨害吸収を一切気にすることなく短 実測定例 時間で広域スペクトルの取得が可能となります。 中赤外から遠赤外にわたる広域スペクトルの測定におい VERTEX FMを装備したVERTEX 70vによる、シン ては、サンプリング手法の選択が重要となります。たとえ グルビームスペクトルならびに 100%ラインスペクトルを図 ば透過法では多くの場合、適当な希釈材を用いる必要が 2に示します。ここでは光源として VERTEX 70vに標準 ありますが、中赤外域と遠赤外域では使用できる希釈材 搭載のセラミック光源を用いていますが、このデータは、 が異なるため、測定波数域ごとに試料調製の方法を変え 光源、ビームスプリッタ、検出器等の光学部品を交換する なければなりません。しかしながら幸いなことに、既に一 ことなく、6000~ 50cm-1というこれまでにない広域のス 般的なサンプリング手法となっているダイヤモンド製内部 ペクトル測定が可能であることを示しています。測定波数 反射エレメント(IRE)を備えるATRを用いることで、希 域の切り替えのために必要とされていた光学部品の交換 釈等の前処理を行うことなく簡単に中遠広域赤外スペク トルの測定が可能となります。ダイヤモンドは可視域から 15cm-1程度の遠赤外・テラヘルツ域までほぼ透明である ため広域測定には最適な IREであり、さらには化学的に も物理的にも安定であることから操作性にも優れます。ま た ATR法の特徴的な性質として知られる光のもぐり込み 深さの波数依存性に従い、測定における試料の実効的な 厚みは遠赤外領域においてより大きな値を取ります。これ により、中赤外域と比較して相対的に S/Nが低下しがち な遠赤外領域においても、安定したデータを得ることが可 能となり、この点もダイヤモンドATRを用いるメリットと いえます。 ダイヤモンド製 IREを装着した一回反射水平型 ATR 図 2.  VERTEX FM を装備したVERTEX 70v による、シング  “Platinum-ATR” とVERTEX FM機能を用いて測定した、   ルビームスペクトルならびに100%ラインスペクトル 炭酸カルシウム粉末の中遠広域赤外スペクトルを図 3に
Page3

図 3.  VERTEX FM ならびにPlatinum ATR(IRE:ダイヤモンド)   を装備したVERTEX 70v による、炭酸カルシウム粉末の中遠    広域吸収スペクトル(波数分解:4㎝-1、積算時間:約50秒) 示します。中赤外域の 1400cm-1近傍には、炭酸塩に特 徴的なバンドが観測されているのと同時に、遠赤外域に は炭酸カルシウムの結晶構造を示す複数のバンドを確認 することができます。炭酸カルシウムには三方晶、斜方晶 ならびに六方晶系の結晶多形が存在し、それぞれカルサ イト、アラゴナイト、バテライトとして知られますが、図 2 に示すスペクトルの遠赤外領域では、284cm-1、219cm-1 および 90cm-1に比較的シャープなバンドが現れており、 このことから測定に用いた炭酸カルシウムは三方晶構造を もつカルサイトであると判別できます。1, 2) まとめ ブルカー・オプティクスのVERTEX FMを用いることで、 豊富な官能基情報を与える中赤外スペクトルに加えて、物 質の高次構造や結晶性を反映する遠赤外スペクトルを同 時に測定することが可能となります。さらなる機能性の向 上が求められる最先端の材料開発の現場や、物性と分子 構造に関する基礎研究における活用が期待されます。 参考文献 1. E. E. Angino: Amer. Mineral., 52, pp.137-147 (1967). 2. P. Bawuah, M. Z. Kiss, P. Silfsten, C. Tag, P. A. C.  Gane, and K. Peiponen: Opt. Rev., Vol.21, No.3,  pp.373-377 (2014). ブルカー・オプティクス株式会社 本社:〒104-0033 東京都中央区新川 1-4-1 住友不動産六甲ビル Phone:03-3523-6870 Fax: 03-3523-6871 大阪営業所:〒532-0004 大阪市淀川区西宮原 1-8-29 テラサキ第2ビル Phone:06-6394-8118 Fax: 06-6394-9003 www.bruker.jp marketing@bruker-optics.jp Application.Note.AN-JP.9