1/3ページ
カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(993.2Kb)

【アプリケーションノート】共焦点顕微ラマン分光システム SENTERRA IIによる複合材料の深さ分析

製品カタログ

複合試料や多層構造体の分析に適用できる強力な分析ツール

顕微ラマン分光法は、試料の微小領域を迅速に、かつ非破壊で測定することができる分析法です。製品の品質管理における異物分析や、研究開発の分野において微小、微量試料などの分析に用いられており、近年では、材料化学を始め、生物学、薬学、法医学などの幅広い分野に応用されています。

顕微ラマン測定は、測定対象物にレーザー光を照射し、そこから放出される微弱なラマン散乱光を取得することにより行われ、高空間分解能を要する1μm前後の非常に小さい領域についての測定が可能です。さらに、光学的に透明な試料では、共焦点光学系を用いることで深さ方向についても選択的に分析することができます。つまり、ミクロトームなどを用いて試料を切削することなく、試料の内部を非破壊で分析することができます。例えば、試料内部に見られた包埋物を共焦点顕微ラマンで測定することにより、それが意図的な包含物か、それとも汚染物かを識別することができます。

また、深さ方向にレーザーの焦点を移動させながら測定することにより、ラミネートフィルムやブレンドポリマーのような複合構造をもつ試料について、2次元あるいは3次元プロファイルを作成することができます。ここでは、2つのアプリケーション例を元に、共焦点顕微ラマン分光システム SENTERRAⅡを用いた深さ分析の有用性について紹介します。

◆詳細はカタログをダウンロードしご覧いただくか、お気軽にお問い合わせ下さい。

このカタログについて

ドキュメント名 【アプリケーションノート】共焦点顕微ラマン分光システム SENTERRA IIによる複合材料の深さ分析
ドキュメント種別 製品カタログ
ファイルサイズ 993.2Kb
登録カテゴリ
取り扱い企業 ブルカージャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

この企業の関連カタログ

このカタログの内容

Page1

Application Note AN R527 共焦点顕微ラマン分光システム SENTERRAⅡII による複合材料の深さ分析 はじめに キーワード 装置・ソフトウェア 顕微ラマン分光法は、試料の微小領域を迅速に、かつ非破壊 深さプロファイル SENTERRA II で測定することができる分析法です。製品の品質管理における 異物分析や、研究開発の分野において微小、微量試料などの 非破壊測定 FlexFocus 分析に用いられており、近年では、材料化学を始め、生物学、 異物分析 OPUSソフトウェア 薬学、法医学などの幅広い分野に応用されています。顕微ラマ ン測定は、測定対象物にレーザー光を照射し、そこから放出さ 共焦点 OPUS/SEARCH れる微弱なラマン散乱光を取得することにより行われ、高空間 分解能を要する1μm前後の非常に小さい領域についての測定 が可能です。さらに、光学的に透明な試料では、共焦点光学系 共焦点顕微ラマン分光システム を用いることで深さ方向についても選択的に分析することがで きます。つまり、ミクロトームなどを用いて試料を切削すること 共焦点光学系 なく、試料の内部を非破壊で分析することができます。例えば、 試料内部に見られた包埋物を共焦点顕微ラマンで測定するこ 一般的な光学顕微鏡と共焦点顕微鏡の光学系の違いを図1に とにより、それが意図的な包含物か、それとも汚染物かを識別す 示します。一般的な光学顕微鏡の光学系(図1a)では、深さ方 ることができます。また、深さ方向にレーザーの焦点を移動さ 向について、一定の範囲(図1のZ1からZ2の範囲)からの光が せながら測定することにより、ラミネートフィルムやブレンドポリ 検出器に入射するため、測定で得られるスペクトルはその平均 マーのような複合構造をもつ試料について、2次元あるいは3次 になります。一方、共焦点光学系(図1b)では、対物レンズの焦 元プロファイルを作成することができます。ここでは、2つのア 点と共役な位置に円形の開口をもつ共焦点アパーチャを配置 プリケーション例を元に、共焦点顕微ラマン分光システム SEN- することで、焦点の合った位置のみの光を検出することが可能 TERRAⅡを用いた深さ分析の有用性について紹介します。 です。つまり、この図では、Z1からの散乱光はブロックされ、Z2
Page2

からの散乱光のみのスペクトルが得られます。このように、共 異物の顕微鏡像を図2に示します。測定には、波長532nmの励 焦点光学系では深さ分解能が向上され、焦点の合った対象物 起レーザー、倍率50倍の長作動対物レンズを使用し、比較のた の情報だけを捉えることができます。さらに共焦点光学系を用 めに異物と併せて、注射器の材質及び注射器内のゲルについて いるメリットとして、焦点位置以外からの散乱光はブロックされ もラマンスペクトルを取得しました。その結果を図3に示します(上段:注射器の材質、中段:ゲル、下段:異物)。異物のスペクトル るため、迷光の侵入やラマン測定で妨害となる蛍光の影響も抑 は、注射器やゲルのスペクトルとは明らかに異なり、各々が別の 制することができます。 成分であることがわかります。ライブラリ検索の結果、異物はポ リプロピレンであることが判明し、注射器の破片に由来するも のではなく、外部から混入したものであることが確認されました。 なお、異物のスペクトルの3100~3700cm-1に見られるブロードな ピークは水酸基に由来しており、さらにこのピークはゲルのスペ a) 一般的な顕微鏡の光学系 b) 共焦点光学系 クトルにも見られることから、異物はゲルと混在した状態で存在 していると考えられます。 検出器 検出器 アパーチャ 共焦点アパーチャ 試料 図1. 従来の光学系と共焦点光学系 図2. 注射器内部の異物の観察像 顕微ラマン分光システム SENTERRAⅡ ブルカー・オプティクスの顕微ラマン分光システム SENTERRAⅡ は、共焦点顕微鏡、励起レーザー、分光器、検出器が一体とな った、コンパクトかつ堅牢な統合システムです。その共焦点光学 機構は、さまざまな試料に対して深さ方向の分光分析を可能に し、測定深さの最高分解能が2μm未満のラマンスペクトルが得 られます。一方、顕微ラマン分光計で採用されている分散型分 光器は、例えばフーリエ変換型と比較すると、波数再現性の低 いことが弱点とされていました。SENTERRAⅡでは、特許技術 であるSure_Cal®連続自動波数校正機構により、波数の変動が 0.1cm-1未満という高い再現性を実現しました。これにより、高 い空間分解能と波数精度を両立させた、高精度のラマンスペク トルの取得が可能となっています。 アプリケーション例 1:注射器内のゲル中の異物に関する定性 分析 図3. ラマンスペクトル(上段から注射器材質、ゲル、異物) ゲルで 満たされた注 射器内に存 在する異物を分析する場 合、他の分析法では、まず異物を取り出して調製する必要が あり、通常は異物を単離、洗浄し、乾燥しなければなりませ ん。SENTERRAⅡの共焦点光学系では、このような試料の調製は 必要なく、注射器の中にある異物を直接分析することが可能で す。
Page3

アプリケーション例 2:多層構造を有するラミネートフィルムの 分析 60 フィルム成形品には、その用途に適した機能を付与するために、 数種類の材質から成る多層構造を有するものが多く存在します。 通常、これらの各層を定性する場合は、断面または切片を作成 し、フィルムの側面方向から測定します。これに対して、共焦点 顕微ラマンでは、直接、フィルムの表面からレーザーを照射して 40 測定することが可能です。ここでは、ラミネートフィルムの深さプ ロファイルを調べるために、フィルム表面から深さ方向へレーザ ーの焦点を1μmステップで移動させながら測定した例を紹介し ます。 測定には、波長785nmの励起レーザー、倍率100倍の油浸対物 20 レンズを使用しました。連続して得られたラマンスペクトルの2 次元等高プロット(X軸:ラマンシフト、Y軸:ラマン散乱強度を 色分け、Z軸:測定深さ)を図4に示します。この図のZ軸方向で、 スペクトルの指紋領域(~1500cm-1)に変化が見られることから、 多層構造は確実に捉えられており、最終的にこのラミネートフィ 3000 2000 1000 ルムは5層構造を有することがわかりました。各層の代表的なス Wavenumber cm-1 ペクトルと層構造を図5に示します。各スペクトルをライブラリ検 図4. 深さ方向に対するスペクトルの2次元等高プロット 索することにより、3種類の材料で構成されていることがわかり ました。表裏の外層は厚さ約20μmのポリプロピレン(PP)から 成り、その間の内層には同じく厚さ約20μmのポリエチレン・ビ ニルアルコール共重合体(EVOH)が確認されました。さらに、外 層のPPと内層のEVOHの境界には、厚さが約3μmの薄いポリア ミド(PA)層が存在することがわかりました。このようにPA層を 二重に設けていることから、本フィルムは酸化防止機能の向上と、 フィルムとしての強度アップを意図して設計されたものであると 予想されます。 まとめ 共焦点顕微ラマンシステム SENTERRAⅡは、複合試料や多層構 造体の分析に適用できる強力な分析ツールです。SENTERRAⅡ の共焦点光学系により、試料の表面情報を取得するだけでなく、 その深さ方向の分析も高分解能で行うことが可能です。注射器 やガラス瓶などの容器内にある試料や、透明なポリマーの場合 は、試料の前調製を行うことなく、そのままの状態で内部構造 図5. 深さ分布の測定結果および多層構造の予想モデル を分析することができます。 共焦点で測定可能な顕微ラマン分光法は、今後も多くの分野に おける展開が期待されます。 Bruker Optik GmbH ブルカー・オプティクス株式会社 Ettlingen · Germany 〒221-0022 神奈川県横浜市神奈 [大阪オフィス] 〒532-0004 Phone +49 (7243) 504-2000 川区守屋町 3-9 大阪府大阪市淀川区西宮原 Phone 045-450-1601 1-8-29 テラサキ第2ビル Fax +49 (7243) 504-2050 Fax 045-450-1602 Phone 06-6394-8118 info.bopt.de@bruker.com marketing.bopt.jp@bruker.com Fax 06-6394-9003 www.bruker.com/optics Bruker Optics is continually improving its products and reserves the right to change specifications without notice. © 2012 Bruker Optics BOPT-4000724-01 Z[Micron]