1/4ページ
カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(891.5Kb)

【アプリケーションノート】建築用材料の品質管理 ALPHA II

製品カタログ

ブルカーのコンパクトFT-IR「ALPHA」は、あらゆる形状の試料に対応する汎用性の高い分析システムです。

現代の建築材料は、様々な厳しい要求を満たすために最適化された製品です。橋梁、トンネル、路面など、各種建築物に用いられるコンクリートでは、機械的耐久性の向上や建築時間の短縮等を目的に、数多くの混和剤が使用されています。これら混和剤は、最終的なその用途に合わせてコンクリートに添加されますが、有機物質であるケースもしばしばあります。例えばポリカルボキシレートエーテル(PCE)は、コンクリート懸濁液の分散特性を向上させるための超可塑剤として機能します。またシロキサン化合物は、コンクリートの白華現象の抑制と撥水性の向上を目的に使用されます。アスファルトコンクリートやポリマーコンクリートの様な一部のコンクリートにおける接合剤は、完全なポリマーです。

建築材料の化学分析
ポルトランドセメントや石膏、石灰石等、基本的な無機構造材料の品質をコントロールする場合、成分分析の手法として蛍光エックス線法(XRF)が有効であり、酸化物、硫酸塩、炭酸塩等の元素組成の測定が可能です。さらにエックス線回折法(XRD)を用いることで、建築材料に関する物理的特性ならびに化学的特性の両面を把握することが可能となります。

しかし残念ながら、XRFやXRDは混和剤や接合剤といった有機材料に関する分析には不向きです。有機系材料の定性と複雑な化学組成の解析には、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)が有用です。FT-IRは、様々な工業分野の品質管理において広く活用されている化学分析機器のひとつで、これにより得られる赤外スペクトルは、測定対象物の化学情報の詳細を反映することから、人間の指紋と同様に考えることができます。すべての有機化合物と多くの無機化合物は、それぞれのもつ化学構造を反映したスペクトルを与えます。したがって、赤外分光法は、純粋化合物ならびに複合材料の識別に適用が可能です。さらに赤外分光法は、着目する成分に関する定量分析にも有効ですので、その応用分野は多岐に渡ります。

◆詳細はカタログをダウンロードしご覧いただくか、お気軽にお問い合わせ下さい。

このカタログについて

ドキュメント名 【アプリケーションノート】建築用材料の品質管理 ALPHA II
ドキュメント種別 製品カタログ
ファイルサイズ 891.5Kb
登録カテゴリ
取り扱い企業 ブルカージャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

この企業の関連カタログ

このカタログの内容

Page1

Application Note AN M138 建築用材料の品質管理 はじめに キーワード 装置およびソフトウェア 現代の建築材料は、様々な厳しい要求を満たすために最適化さ 建築材料 ALPHA FT-IR れた製品です。橋梁、トンネル、路面など、各種建築物に用いられ 混和剤 Platinum-ATR るコンクリートでは、機械的耐久性の向上や建築時間の短縮等を 建築用化学物質 OPUS ソフトウェア 目的に、数多くの混和剤が使用されています。これら混和剤は、 品質管理 スペクトル比較 最終的なその用途に合わせてコンクリートに添加されますが、有 リバースエンジニアリング 混合物検索 機物質であるケースもしばしばあります。例えばポリカルボキシレ ートエーテル(PCE)は、コンクリート懸濁液の分散特性を向上さ せるための超可塑剤として機能します。またシロキサン化合物は、 しかし残念ながら、XRFやXRDは混和剤や接合剤といった有機材 コンクリートの白華現象の抑制と撥水性の向上を目的に使用され 料に関する分析には不向きです。有機系材料の定性と複雑な化学 ます。アスファルトコンクリートやポリマーコンクリートの様な一部 組成の解析には、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)が有用です。 のコンクリートにおける接合剤は、完全なポリマーです。 FT-IRは、様々な工業分野の品質管理において広く活用されている 建築材料の化学分析 化学分析機器のひとつで、これにより得られる赤外スペクトルは、 測定対象物の化学情報の詳細を反映することから、人間の指紋 ポルトランドセメントや石膏、石灰石等、基本的な無機構造材料 と同様に考えることができます(図1)。すべての有機化合物と多 の品質をコントロールする場合、成分分析の手法として蛍光エッ くの無機化合物は、それぞれのもつ化学構造を反映したスペクト クス線法(XRF)が有効であり、酸化物、硫酸塩、炭酸塩等の元素 ルを与えます。したがって、赤外分光法は、純粋化合物ならびに複 組成の測定が可能です。さらにエックス線回折法(XRD)を用いる 合材料の識別に適用が可能です。さらに赤外分光法は、着目する ことで、建築材料に関する物理的特性ならびに化学的特性の両 成分に関する定量分析にも有効ですので、その応用分野は多岐に 面を把握することが可能となります。 渡ります。
Page2

当然のことながら、FT-IRは建築材料の分析にも応用が可能で、各 原材料等の受入検査 種原材料の受入検査から最終的な配合材料の品質管理まで、幅 広く利用することができます。さらに赤外分光法は、研究開発や 建築材料の品質を保証するためには、まず第一に、間違った原 トラブル対応にも有効で、例えば製品中に見つかった異物や競合 料や質的に不十分な原料が使用されることを防ぐ必要がありま 他社が使用する未知の物質について定性分析を行う場合にも、 す。FT-IRを用いて入荷原料を化学的に分析することで、例えば、誤 強力なツールとなります。成分や化学構造が既知の標準物質につ った包装やラベル付けといった簡単なエラーによる取り間違いを いて収集されたスペクトルデータベースも数多く用意されており、 防ぐことができます。さらに、複数の成分からなる配合剤について これらを用いることで、未知物質の定性を迅速に行う事ができま も、組成の違いや経時による品質の変化も判別することが可能で す。 す。原料が正しいかどうかは、品質の基準となる標品の赤外スペ クトルを予め測定しておき、検査対象品のスペクトルと比較するこ とで、簡単に判別することができます。赤外スペクトルどうしの比 較・判別は、ALPHAの制御ソフトウェア「OPUS」とこれに付属する QuickCompare機能を組み合わせることで、全て自動的に実行さ れ、その結果は直ちにオペレータに示されます。 図1. 赤外スペクトルは、人間にとっての指紋と同様、その物質の化学組成 を反映します。上から:ケイ酸塩、炭酸カルシウム、アクリルモノマー、エ ポキシ樹脂 装置と手法 建築材料の分析には、Platinum ATRモジュールを装備したALPHA が最適です(図2、上)。ALPHAは、設置面積がA4用紙1枚分と いう非常にコンパクトなボディに加え、耐震性と可搬性を有する FT-IRで、測定を行う場所を選びません。このATR法による測定時 間は、ほとんどの試料において1分程度と短時間で、しかも事前の 試料調製、あるいは測定のための試薬や消耗品も不要です。 Platinum ATRには、ダイヤモンド製ATRプリズムが標準で採用され ます。ダイヤモンドは物理的にも化学的にも非常に安定であり、あ らゆるタイプの試料に適用が可能です。とくにPlatinum ATRは、モ ノリシック構造のダイヤモンドプリズムをタングステンカーバイト 製の台座に直接ろう付けするという、非常に高い堅牢性を有する 設計となっています。これにより、あらゆる硬度の試料を測定する ことが可能で、さらにクリーニング等メンテナンスにおいても安心 図2. 上: Platinum ATRモジュール付 ALPHA FT-IRスペクトロメータ、下: ATR法の概略図。赤外線が試料とATRプリズムの界面で反射するとき、わ です。測定は、図2の下段に示すように、少量の試料をダイヤモンド ずかに試料側に潜り込み、試料に吸収されます。液体または固体試料を プリズムの表面に密着させるだけで、操作も非常に簡単です。 ATRプリズム表面に密着させるだけで、測定が可能です。
Page3

図3に、FT-IRによる受入検査結果の例を示します。ここで紹介す 混和剤の定性分析 る原料は「ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)」で、これは増粘 剤、結合剤、膜形成剤および保水剤としてのセメントベースの建 競合する会社の製品を分析することは、自社製品の開発促進や、 材に使用される添加剤です。図の上段は検査対象品のスペクトル その会社による特許侵害の特定等に役立ちます。未知の物質を (青)、下段が標品(=正常品)のスペクトル(赤)です。検査に際 同定する場合には、参照ライブラリを用いたスペクトル検索が有 しては、二つのスペクトルの相関係数を求めることで、両者の異同 用です。未知物質が複数の成分からなる混合物の場合も、最新の を判別しますが、ここに示す例では、相関値が99.9%と非常に高 データ解析用ソフトウェアに含まれる混合物検索機能を用いるこ く、検査品のスペクトルが基準スペクトルと非常に良く一致してい とで、各成分の定性が可能となっています。 ることを示しています。 この検査では判別閾値を99%と設定して いますので、検査票には合格を示す「OK」と表示されます。 ここでは、人工大理石およびコンクリート用ポリエステル樹脂の 重合プロセスを開始するために使用される、組成が未知の液体配 アスファルト/石灰石混合物中の熱可塑性ポリオレフィン(TPO) 合物に関する分析を紹介します。液体試料をATR法で測定する場 の定量 合、必要なサンプリングは、試料液をダイヤモンド製ATRプリズム の表面に乗せるだけと、非常に簡単です。 TPO樹脂は、しばしば建築材料に使用されますが、例えばアスフ ァルトにTPO樹脂を加えることで、アスファルト混合物の耐流動性 が向上します。ここでは、ALPHAによる、アスファルト/石灰石混合 物に添加したTPO樹脂に関する定量分析について紹介します(図 4)。データの再現性を確認する目的で、各試料について測定を2 回ずつ行いました。図4の上段に、アスファルト/石灰石/TPO混合 物と、参照のためのTPO単体のスペクトルを示します。TPOに特徴 的な吸収バンドの強度を積分することで、TPO含有量に関する検 量線が得られます(図4、下)。さらにこの検量線を基準とするこ とで、未知試料におけるTPOの添加量を1分程度で把握すること が可能となります。 図3. OPUS QuickCompare による増粘剤HPMC原料の受入検査の例。検 図4.  上段: アスファルト/石灰石/TPO混合物のスペクトル(TPO含有量: 査対象物のスペクトル(上段)と標品のスペクトル(下段)を比較すること 緑: 5%、青: 10%、オレンジ: 12.5%、赤: 15%)。下段: TPO成分に特徴的な で、両者の同一性を検証することが可能です。 973cm-1のバンド積分強度を基づく検量線。
Page4

ATR測定後、得られたスペクトルについて行った混合物検索の結 まとめ 果を図5に示します。検索候補として挙げられた各成分を足し合 わせた合成スペクトル(黒色のスペクトル)と分析対象試料のスペ 現代の建築材料に関するQA/QCにおいて、XRFやXRDと共にFT-IR クトル(赤)は非常に良く一致しており、検索結果の妥当性が高い を用いることで、相補的な化学分析が可能となります。FT-IRによ ことを示しています。また候補として挙げられた二つの化合物、 る赤外分光法は、とくに有機系材料の分析に有効であり、各種原 ジ-tert-ブチルペルオキシド(青色)ならびにtert-ブチルベンゾイル 材料から混和剤まで、幅広く適用することが可能です。赤外分光 ペルオキシド(ピンク)は、いずれも重合開始剤として知られてお 法の持つ定性および定量分析能力を利用することで、受入検査 り、試料を構成する成分として妥当であると言えます。検索の結 から研究開発まで、多面的な分析が可能となります。 果から、試料溶液は、これら二つの成分がおよそ4対1の割合で配 合されてできているものと推測されました。 ブルカーのコンパクトFT-IR「ALPHA」は、あらゆる形状の試料に 対応する汎用性の高い分析システムです。直感的なハードウェア デザインに加え、ガイド機能付ソフトウェアによるシームレスな操 作感により、どなたでも簡単確実にお使い頂けます。 さらにスペクトルデータベースと検索機能を活用することで、未知 物質の同定を迅速に行っことが可能です。ALPHAは、受入検査等 の品質管理から、故障解析、さらにはリバースエンジニアリングま で、様々な用途にお使い頂ける強力なツールです。 図5. 成分未知の液体配合物に関する混合物検索結果。上段の赤色のス ペクトルが未知試料のスペクトル、黒色が混合物検索の結果から候補と して挙げられた各成分(中段と下段のスペクトル)による合成スペクトル。 Bruker Optik GmbH ブルカー・オプティクス株式会社 Ettlingen ·Germany 〒221-0022 神奈川県横浜市 [大阪オフィス] 〒532-0004 Phone +49 (7243) 504-2000 神奈川区守屋町 3-9 大阪府大阪市淀川区西宮原1-8-29 Phone 045-450-1601 テラサキ第2ビル Fax +49 (7243) 504-2050 Fax 045-450-16029 Phone 06-6394-8118 info.bopt.de@bruker.com info.bopt.jp@bruker.com Fax 06-6394-9003 www.bruker.com/optics Bruker Optics is continually improving its products and reserves the right to change specifications without notice. © 2013 Bruker Optics BOPT-4001063-01