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国内ベンチャー企業による宇宙開発はどこまで進んでいる?小さな荷物を宇宙に届けるロケット開発

製品カタログ

「北海道における民間企業によるロケット開発の現状と未来」講演レポート

 国内ベンチャー企業による宇宙開発はどこまで進んでいるのか? 「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016」(開催:2016年11月8日)のユーザー事例セッションに登壇した、インターステラテクノロジズ 代表取締役社長 稲川貴大氏による講演「北海道における民間企業によるロケット開発の現状と未来」の内容を紹介する。

 インターステラテクノロジズは、北海道・十勝地方の南側にある海沿いの町、大樹町に本社を構える。エンジニア14人からなる技術者集団で、ロケットエンジンの開発を中心に、日々モノづくりに明け暮れ、試験をし、ロケットの打ち上げに備えるといった活動を行っている。

 彼らは、国策として行われる数千億~数兆円規模の大型プロジェクト以外の領域、小~中規模クラスのロケットによる商業活動を狙っている。それが、「ホンダスーパーカブ」のような、誰でも気軽に使えて、量産が可能なロケットによる打ち上げサービスだ。

※本資料はTechFactoryの記事をまとめたブックレットです。

このカタログについて

ドキュメント名 国内ベンチャー企業による宇宙開発はどこまで進んでいる?小さな荷物を宇宙に届けるロケット開発
ドキュメント種別 製品カタログ
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取り扱い企業 TechFactory|アイティメディア株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログ(国内ベンチャー企業による宇宙開発はどこまで進んでいる?小さな荷物を宇宙に届けるロケット開発)の内容


Page 1:国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発ベンチャー企業による宇宙開発はどこまで進んでいるのか?「SOLIDWORKSWORLD JAPAN 2016」のユーザー事例セッションに登壇した、インターステラテクノロジズ 代表取締役社長 稲川貴大氏による講演「北海道における民間企業によるロケット開発の現状と未来」について取り上げ、彼らが何を目指してロケット開発に着手し、どのような将来ビジョンを描いているのかを紹介する。初出:2016/11/22 | TechFactoryhttp://techfactory.itmedia.co.jp/tf/articles/1611/22/news004.htmlCopyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016 講演レポート:

Page 2:Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.2国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発 これまで宇宙開発分野は、国家の威信をかけた一大プロジェクトとして、米国であればNASA(米航空宇宙局)、日本であればJAXA(宇宙航空研究開発機構)といった研究開発機関が中心となり進められてきた。そうした時代が長く続いてきたわけだが、ここ数年、民間のベンチャー企業が宇宙開発に進出するケースが増えてきている。 こうした動きは日本でも例外ではない。超小型人工衛星の設計開発などを手掛けるアクセルスペースや、堀江貴文氏が設立したロケット開発のベンチャー企業インターステラテクノロジズなどが知られている。 国内ベンチャー企業による宇宙開発はどこまで進んでいるのか? 本稿では、2016年11月8日に開催された「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016」のユーザー事例セッションに登壇した、インターステラテクノロジズ 代表取締役社長 稲川貴大氏による講演「北海道における民間企業によるロケット開発の現状と未来」について取り上げ、彼らが何を目指してロケット開発に着手し、どのような将来ビジョンを描いているのかを紹介する。宇宙開発は国策から民間へ、ベンチャー企業が注目する宇宙産業 インターステラテクノロジズは、北海道・十勝地方の南側にある海沿いの町、大樹町に本社を構える。エンジニア14人からなる技術者集団で、ロケットエンジンの開発を中心に、日々モノづくりに明け暮れ、試験をし、ロケットの打ち上げに備えるといった活動を行っている。「現状、本社工場に町工場的な加工・製造設備をそろえ、ロケット開発に必要となる大部分の部品を内製している。一方、東京にある事務所ではロケットに搭載する電子部品の設計開発などを行い、2拠点による開発体制をとっている」と稲川氏。 ロケット部品の設計には、3次元CAD設計ソフトウェア「SOLIDWORKS」を使用し、部品の1つ1つを設計して、CAMに落とし込んで製造しているそうだ。 ロケットというと、多くの方が「H-IIAロケット」や「イプシロンロケット」

Page 3:Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.3のような大きなロケットを思い描くのではないだろうか。しかし、稲川氏は「こうした皆が知っているロケットとは違う流れが宇宙開発にはある。それをわれわれがやっている」と語る。 稲川氏率いるインターステラテクノロジズは、国策として行われる数千億∼数兆円規模の大型プロジェクト以外の領域、小∼中規模クラスのロケットによる商業活動を狙っている。「日本の宇宙産業はそれほど大きな市場ではなく、2500億∼3000億円規模といわれ、その92%が官需によるものである。文部科学省や経済産業省、内閣府などが発注して、JAXAがそれを受けて、宇宙産業を手掛ける大手重工メーカーと連携し、開発・製造、打ち上げなどを行う。われわれは、こうした官需に大きく依存した枠組みではない、官需によらない市場を模索。小さな市場をしっかりと獲得して、そのパイを大きく育てていきたい」と稲川氏は説明する。宇宙旅行や宇宙ホテルまで、世界中で宇宙開発ベンチャーが台頭 一方、世界的には多くの民間による宇宙開発ベンチャーが誕生している。ロケットの再使用打ち上げなどに取り組むSpaceX、米国のホテル王ロバート・ビゲロウ氏が設立した宇宙ホテル建造を目指す企業Bigelow Aerospace、宇宙旅行ビジネスへの進出をもくろむヴァージングループのVirgin Galacticなロケット部品の設計に「SOLIDWORKS」を使用国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発

Page 4:Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.4どが有名なところだろう。それ以外にも、Googleが人工衛星の製造・運用や衛星画像の提供などを手掛けるSkybox Imagingを買収したことも話題となった。「Googleは地球観測を行い、Google EarthやGoogle Mapsをリアルタイム化しようとしている。現在公開されている画像は 1、2年くらい前のものだが、最新の画像を閲覧できるようになる。そのために彼らは自ら人工衛星を打ち上げようと計画している。他にも、世界中にインターネットを普及させる全世界インターネットといった構想も持ち上がっている。このように、さまざまな民間企業が新たな宇宙開発や宇宙ビジネスに取り組んでいる」(稲川氏)。世界の民間宇宙ベンチャーその他、非商業のプロジェクトも立ち上がっている国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発

Page 5:Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.5インターステラテクノロジズは宇宙産業で何を目指す? 前述の通り、民間企業による宇宙開発が盛んに行われつつある今、インターステラテクノロジズは宇宙産業の中で、どこの領域を目指しているのだろうか? 宇宙開発・宇宙産業は、大きく「衛星・探査」と「ロケット」に区分されるが、彼らが手掛けるのはロケットの開発。具体的には「観測用ロケット」と「超小型衛星用ロケット」の開発を目指すという。「将来的には小型ロケットで、超小型人工衛星をはじめとする小さな荷物を運ぶ打ち上げサービスを展開したいと考えている」と稲川氏。人工衛星に起こるイノベーション 人工衛星は、宇宙開発が進むにつれて次第に大きくなっていったという。「当然、大きな人工衛星であればいろいろな機能を備え、多くの情報を観測・収集できる。そうなると、自然に大きなモノを運ぶには大きなロケットが必要だ! となるわけだ。気象衛星『ひまわり』はマイクロバスほどの大きさがあるという。そんな大きなものを宇宙空間に飛ばしている。巨大プロジェクトの場合、ロケットの開発費も100億円どころではなく、多大な費用が掛かる。打ち上げ費用も日本での宇宙産業国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発

Page 6:Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.61機で100億円などともいわれる」(稲川氏)。 その一方で、テクノロジー・半導体プロセスの進化を背景に、人工衛星の小型化が急速に進展している。これまで人工衛星といえば巨大なものだったのが、人間が抱えられるほどの大きさに必要十分な機能を備えた、超小型の人工衛星が低コストかつ短期開発で作れるようになってきたのだ。「この領域は日本のお家芸といえる。数百億円も掛かっていた人工衛星の開発が、数千万∼数億円で可能になった。もちろん機能などは劣る部分もあるが、開発コストの大幅削減は大きなインパクトがある。人工衛星の開発にイノベーションが起きているのだ」と稲川氏は説明する。 これに対して、ロケットはどうか? 人工衛星に超小型化・低コスト化をもたらすイノベーションが起きているのに対し、それを運ぶ手段であるロケットは、H -IIAロケットやイプシロンロケット以外に解がない状態である。このギャップに対してインターステラテクノロジズは「こうした人工衛星開発のドラマチックな変化を受け止め、ロケット側でもしっかりとそれに応えていこう! という思いでロケットの開発に取り組んでいる」(稲川氏)という。人工衛星の小型化国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発

Page 7:Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.7超小型人工衛星の打ち上げニーズが増加 超小型人工衛星の打ち上げ数もここ数年、ベンチャー企業の参入により急激に伸びているという。大型の人工衛星に対して、超小型の人工衛星は短期間・低コストで開発が可能で、若手人材の育成にも役立つ。実際、超小型人工衛星の開発で経験を積んでから大型の人工衛星開発に携わるといったケースも増えているという。 日本のベンチャー企業であるアクセルスペースは、2022年までに超小型人工衛星を50機打ち上げる計画を打ち出している。「この50機という数字は宇宙開発分野では驚異的な数である。日本国内で2015年までに打ち上げられた人工衛星の数は、200機に満たないといわれている。アクセルスペースは単独で50機を打ち上げるとしているのだから驚きだ。少数精鋭の宇宙開発ベンチャーとして知られるアクセルスペース以外にも、海外には多くの超小型人工衛星ベンチャーが存在している」(稲川氏)。 こうした増加しつつあるニーズに対して、気軽に利用できるロケットを提供しようというのがインターステラテクノロジズの考えである。「これまで国家プロジェクトで作られてきたロケットはいわば『フェラーリ』のようなものだ。超小型人工衛星(50kg 以下)の打ち上げ数国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発

Page 8:Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.8国の威信をかけて最高レベルの技術を集結して開発されている。これに対し、われわれが目指すのは『スーパーカブ』のようなロケットだ。誰でも気軽に使えて、量産が可能なロケットを作りたい」(稲川氏)。 インターステラテクノロジズは、ロケット開発であっても「ユーザーファースト」で取り組むべきだと主張する。そのために、彼らは無駄な機能を排除して、なるべく安価な部品で量産できるロケットの開発を目指しているのだ。小さな荷物を宇宙に届けるロケット打ち上げサービス インターステラテクノロジズが手掛けるプロダクトは、観測用ロケットと超小型人工衛星用ロケットである。観測用ロケットは最高高度約120km(宇宙空間)まで打ち上げて、パラシュートで地上に落下させるタイプ。こちらは2016年度中に第1号機を打ち上げる計画だという。そして、超小型人工衛星用ロケットについては基礎開発に着手しており、初号機を2020年ごろに打ち上げたい考えだとしている。インターステラテクノロジズが掲げるコンセプト国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発

Page 9:9超小型人工衛星用ロケットがもたらすメリット H-IIAロケットやイプシロンロケットは全長20∼50数m程度あり、運べる荷物の量(ペイロード)も、H-IIAで10トン、イプシロンで1.2トンと十分な容量を確保している。しかし、打ち上げ費用はH-IIAで100億円、イプシロンで40億円といわれており、超小型人工衛星などを運ぶ際に掛かる輸送コストが非常に高額となる。これに対し、インターステラテクノロジズのロケットは小型であるためペイロードの面で1桁劣るが、「その分、費用の面でも1桁小さく打ち上げできる。今まではどんなに小さな荷物でも大きなロケットしか選択肢がなかったが、われわれは将来的に、小さな荷物を専用で運ぶロケット打ち上げサービスを提供する考えだ」と稲川氏は述べる。インターステラテクノロジズのロケット計画(左)ロケットの比較/(右)インターステラテクノロジズのメリット国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発

Page 10:10 また現状、 相乗り という形でメインとなる人工衛星とともに、複数の人工衛星を宇宙まで運んでいるが、これだとメインの人工衛星の打ち上げが大前提であるため時期が選べなかったり、行き先に当たる軌道を自由に選べなかったりと、デメリットが多くあった。これに対して、インターステラテクノロジズのロケット打ち上げサービスでは、1回の打ち上げコストが安いだけでなく、1社独占で打ち上げできるため打ち上げ時期を選択でき、希望する軌道へピンポイントに打ち上げることが可能となる。「手軽に低コストで、ロケットを打ち上げることができれば、超小型人工衛星を開発するベンチャー企業もよりチャレンジングな取り組みが行えるようになるだろう」(稲川氏)。観測用ロケットの初号機は最終調整段階に! 一方、2016年度の初号機打ち上げを予定している観測用ロケットは全長10m程度、総重量1t弱で、「MOMO」と名付けられている。一般的に日本のロケット(液体ロケット)は推進剤に液体水素を利用するケースが多いが、MOMOはエタノールと液体酸素が用いられている。「2つの燃料、エタノールと液体酸素をロケットエンジンに入れて燃やす。原理は非常にシンプルだが、打ち上げのためには非常に高度なノウハウが必要となる。約3000℃の炎が出るため、燃焼と同時に冷却についても考えなければならない。周りに悪影響を及ぼさずに安定した燃焼を継続できるかが重要だが、これが非常に難しい。現在は開発のめどもつき、今まさに観測用ロケットのエンジン開発の最終調整を行っているところだ」(稲川氏)。国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発ロケットエンジン概念図

Page 11:11 また、資金調達も民間企業ならではの取り組みをしている。まず、クラウドファンディングによる資金調達だ。2カ月間実施して2270万円の資金調達に成功したという。さらに、ロケットの外装面のスペースを広告枠として提供している。協賛企業のDMM.comのロゴを機体に印字して打ち上げる予定だ。また、「過去に実施してきた打ち上げ試験でもグリコから依頼があり『ポッキー』柄のロケットを打ち上げたこともある(2013年)。イベントやプロモーション目的でのロケット利用は民間企業だからこそできることだ」と稲川氏。 インターステラテクノロジズが目指すのは、誰でも気軽に利用できるロケットの打ち上げサービスだ。安価な部品で必要十分な機能を搭載したロケットを大量生産することで徹底的な低コスト化を目指すとしている。「SpaceXが取り組む再使用打ち上げ可能なロケットの方が打ち上げ費用を抑えられるのでは? と思われるかもしれないが、ロケット開発では検査・点検に多くのコストが掛かる。機体を再利用できるようになってもコストを大幅に下げることは難しいだろう。それよりも1回切りの使い捨てのアプローチの方が効く。ロケットといえども1つの工業製品だと捉え、大量生産してコストを徹底的に抑えることで、強みを発揮していきたい」(稲川氏)。国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発(左)観測用ロケット「MOMO」/(右)資金調達

Page 12:12国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発編集:TechFactory発行:アイティメディア株式会社Copyright 2016 ITmedia,Inc. All Rights Reserved.再使用か使い捨てかCopyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.