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3D工作機械キットで“個人的に何かの役に立つロボット”を作ろう

製品カタログ

レーザーカッターで加工されたMDF(繊維板)、電子部品などで構成される100ドル3D工作機械

「OCPC Delta Kit」と呼ばれる“3Dプリンタのようなキット”を学生らに配布し、組み立て、動作確認を行った後、それを「個人的に何かの役に立つ工作機械(ロボット)」に仕立て上げるという授業(「デザイン言語実践」の4つの演習のうちの1つ)が、2015年12月17日~2016年1月14日の期間、慶應義塾大学 環境情報学部および総合政策学部の1~2年生を対象に行われた。その模様をお届けする。

また、後半では未来の図書館や博物館に設置されるかもしれない3Dプリンタの姿を紹介する。

※本資料はMONOistの記事をまとめたブックレットです。

このカタログについて

ドキュメント名 3D工作機械キットで“個人的に何かの役に立つロボット”を作ろう
ドキュメント種別 製品カタログ
ファイルサイズ 1.6Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 TechFactory|アイティメディア株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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Page 1:Copyright © 2016 ITmedia Inc.Booklet100ドル3D工作機械「OCPCDelta Kit」で何を作る?慶應義塾大学 環境情報学部および総合政策学部の1~2年生を対象に、レーザーカッターで加工されたMDF(繊維板)、電子部品などで構成される100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」を用いた授業が行われた。仕掛け人は、同学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏だ。記事後半では、未来の図書館や博物館に設置されるかもしれない3Dプリンタを紹介する。初出:MONOist 2016/1/7http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1601/07/news062.html

Page 2:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 2「個人的に何かの役に立つ工作機械」を作る授業がスタート!“3Dプリンタのようなキット”を学生らに配布し、組み立て、動作確認を行った後、それを「個人的に何かの役に立つ工作機械(ロボット)」に仕立て上げるという大変興味深い授業(「デザイン言語実践」の4つの演習のうちの1つ)が、2015年12月17日~2016年1月14日の期間、慶應義塾大学 環境情報学部および総合政策学部の1~2年生を対象に行われた。デザイン言語実践は、モノづくりやデザインに興味のある学生向けの入門的な位置付けの内容で、4人の教授が授業を受け持つ。その1人が同学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏だ。今回、100人弱の学生を25グループに分け、それぞれのグループにレーザーカッターで加工されたMDF(繊維板)、電子部品(Arduinoやサーボモータ)、ネジ/ナットなどで構成される「OCPC DeltaKit」を配布し、全4回の授業で組み立て、動作確認、アイデア検討、発表会までを行う。100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像1 授業が行われた慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)

Page 3:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 3100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像2 田中浩也研究室が考案・企画した「OCPC Delta Kit」(アクリル板バージョン)。田中浩也研究室の学生が「Rhinoceros」を使ってOCPC Delta Kitの設計を手掛けた。現在のカタチになるまで3~4回繰り返し試作を行ったとか。「機械設計の専門家でなくてもレーザーカッターのおかげで、失敗を繰り返しながらメカっぽいものが作れるようになった。3Dプリンタだと試作や量産に時間がかかり過ぎてしまう」(田中氏)画像3 現段階の「OCPC Delta Kit」のコストは70ドルほどだとか。100ドルを意識し過ぎて、電源スイッチなどをケチってしまったという

Page 4:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 4OCPC Delta Kitの「OCPC」とは“One CNC per Child”の略で、発展途上国の子どもたちに100ドルPCを提供しようと活動してきた「OLPC(One Laptopper Child)」のように、100ドル以内でコンピュータによる数値制御が行える工作機械を実現しようとするもの。「OCPC Delta Kitは、100ドルでPCを作ろうというOLPCの思想や、米ミシガン大学で行われている1人1台3Dプリンタを作る授業などからインスピレーションを受け、約1年前に考案・企画したものだ。当初はミシガン大学にならい、3Dプリンタを作れるキットにしようと考えたが、私の研究室に所属する学生が3Dプリンタをハックして『3Dふりかけプリンタ』を作ったこともあり、3Dプリンタに限らない工作機械(ロボット)を自由な発想で作れるキットにすることにした」と田中氏は説明する。OCPC Delta Kitは、慶應義塾大学 田中浩也研究室で企画から設計・試作、量産まで行っている。OCPC Delta Kitのレーザーカッター用のデータや必要な電子部品のリスト、工具類、そして組み立ておよび動作確認の手順などについては、Fabプロジェクトのためのプラットフォーム「Fabble」にて公開されており、オープンソースとして誰でも自由に利用することができるという。「現在100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像4 25グループ分の「OCPC Delta Kit」(MDFバージョン)を田中浩也研究室のメンバーが手分けして、レーザーカッターで量産。一部彫刻も施されているので1キットのカットで約20分

Page 5:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 5公開しているものが、完璧に使いやすいものかというとそうではない。まだファーストバージョンの段階で、実は電源スイッチもない状態だ。オープンソースとして公開しているので、いろいろな人が改善に関わってくれたらと思う」(田中氏)。同授業の対象者は理系とも文系とも限らない。当然、全4回の授業ではArduinoを用いたプログラミングや電子回路設計、機械設計などの詳細は説明し切れないが、最低限知っておいてもらいたい知識にポイントを絞りながら、機械や回路の基本的な仕組み、手を動かし小さな部品を組み合わせながらモノを作り上げる作業などを、体系的に学ぶことができる。「これまでも3Dデータをモデリングするとか、3Dプリンタで何かを出力するといったデザイン側の授業はやってきたが、3Dプリンタのような工作機械そのものを組み立てる授業はやったことがなかった。また、あえて3Dプリンタキッ100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像5 「OCPC Delta Kit」(アクリル板バージョン)を手にする田中氏。「この授業はモノづくり入門的な位置付け。これをきっかけに電子工作やプログラミング、機械設計などに興味を持ってもらえたらと思う。既製品が壊れるとクレーマーになりがちだが、自分で作ったものであれば何とか直そうと努力するものだ。モノの仕組みを理解することの大切さをOCPC Delta Kitを通じて感じてほしい」(田中氏)

Page 6:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 6トにしなかったことで、最終的にどのようなオリジナルの工作機械(ロボット)に仕上げてくるのか、各グループの独自性が出せる要素も教材として面白いと思う」と田中氏は説明する。企画・構想から1年、OCPC Delta Kitを用いた授業はスタートしたばかり。今後の展望について田中氏は、「とにかく初めての挑戦だったので、まずは今回の25グループの成果をきちんと見届けたい。恐らく、さまざまな工作機械(ロボット)のバリエーションが期待できるだろう。また同時に、3Dプリンタ100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像6 メカ(機構)に興味を持ってもらうために、授業の冒頭、田中氏はテナー・サックスを吹いた! 全4回では、機械設計や回路設計、プログラミングの詳細まで説明できないので、必要最低限知ってほしいポイントに絞り、身近な事例などを交えながら授業が進められた画像7(左)、画像8(右) グループで動作確認を行う学生たち

Page 7:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 7としても使えるようにキットの完成度を高めていきたいとも思っている。今後は授業を活用しながらブラッシュアップを図り、教育的価値を高めていきたい」と語る。前述した通り、OCPC Delta KitはFabbleにて、オープンソースとして公開されている。加工にレーザーカッターが必要になる点は1つハードルではあるが、興味を持たれた方はFabbleの内容を参考に、OCPC Delta Kitの製作にチャレンジしてみてはいかがだろうか。100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」の取材をした際、田中氏に慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) メディアセンター内にあるファブスペースを案内された。そこで、大きな存在感を示していた装置があった。100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像9 授業後半では、「個人的に何かの役に立つ工作機械(ロボット)」のアイデア出しが行われた。コンセプトが固まったら発表会向けのプロモーション動画の準備が待っている。さすがにプログラミングを教える時間はないので、マウス操作でアームの動きを記録し、それを再生できる田中氏のオリジナルプログラムを用いて、オリジナルの工作機械(ロボット)を考える

Page 8:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 8オープン3Dデータを気軽に出力できる3Dプリンタの研究近年、所蔵品の3Dスキャンデータや設計データを広く一般に公開する「オープン3Dデータ」と呼ばれる動きが活発化しているのをご存じだろうか。世界的に有名なスミソニアン博物館や大英博物館などでは、マンモスの化石やアメンエムハト3世の像といった所蔵品の一部を3Dデータとして公開している。また、米航空宇宙局(NASA)でも、探査機や小惑星の3Dデータを提供している。これらの目的は、学術的に価値のある3Dデータをダウンロードして“触れる教材”として学習に役立てることだ。田中氏の研究室では、こうしたオープン3Dデータの流れと3Dプリンタの今後の発展性を視野に、10年、15年先の3Dデータの新たな活用シーンとして、誰でも、気軽に、素早くオープン3Dデータを出力できる“自動販売機のような3Dプリンタ”を1年ほど前に考案。未来の博物館や美術館、図書館などに設置されることを想定して、SHC設計の増田恒夫氏、コメヤデザインの山下公明氏らに設計・製作を依頼し、2015年の春ごろに現在のプロトタイプを完成させた。「既に、米国では図書館や博物館などに3Dプリンタを設置し、いわゆるファブ的な使い方だけではなく、オープン3Dデータを出力して学習教材として活用しようとする動きがある。自分で3Dデータを作って3Dプリントする従来の使い方ではなく、公開されているオープン3Dデータをダウンロードし、それをすぐに3Dプリントして教材化したり、お土産として持ち帰って部屋に飾ったりと100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像10 人の背丈よりも大きい“自動販売機のような3Dプリンタ”のプロトタイプ。上部には映像投影用のプロジェクターも搭載されている。対応素材はPLA樹脂で、Z方向で50cm程度の大きさまで出力可能だとか

Page 9:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 9いった、従来のファブ以外の3Dデータ/3Dプリンタの活用にも目を向けていく必要がある」(田中氏)。100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?画像11 “自動販売機のような3Dプリンタ”のプリントヘッド部分画像12 “自動販売機のような3Dプリンタ”で造形したサンプル

Page 10:Copyright © 2016 ITmedia Inc. 10100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?MONOist ブックレット100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?編集:TechFactory発行:アイティメディア株式会社Copyright 2016 ITmedia,Inc. All Rights Reserved.現在のプロトタイプは、最初の構想を具現化した“ファーストプロトタイプ”である。今後は、本体上部に設置されているプロジェクターを活用して、造形中の3Dデータの情報(解説文など)を造形テーブルに投影したり、タッチパネルなどを前面に搭載して、自動販売機のようにボタンを押して造形をスタートさせたりといった機能改善を視野に、研究開発を進めていくという。「あと10年たてば、積層造形方式の3Dプリンタの造形スピードが今の10倍くらい速くなっているかもしれない。例えば、30分かかっていたものが3分になれば、その場で待てるはずなので、出力したいと思う人も増えるのではないか。フィラメントさえ補充しておけば、現在の自動販売機のように商品ごとに在庫をストックしたり、補充したりする必要もなくなる」と田中氏。一般的な3Dプリンタは、3Dデータを作れる、ごく一部の限られた人たちのツールといえる。しかし、オープン3Dデータの普及と3Dプリンタの進化のスピードがもっと加速していけば、田中氏が述べるようにファブ的な発想とは違う方向性でも、3Dプリンタの利用が拡大していくのではないだろうか。そうなると、好きなオープン3Dデータを選んで出力する自動販売機のような3Dプリンタが、本当に図書館や博物館に普及するのかもしれない。画像13 本体上部に設置されている映像投影用のプロジェクター