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テフロン™コーティング/フッ素樹脂コーティングの教科書

ハンドブック

基礎から活用事例まで学べるフッ素樹脂コーティングの教科書! フッ素樹脂コーティングの基礎から応用まで 全38ページの資料を進呈中です。

フッ素樹脂コーティングの専門メーカーである当社から、
フッ素樹脂を基礎から学べる『フッ素樹脂コーティングの教科書』を進呈中!

製造業において様々な場面で活用される当コーティングについて
素材の特性から加工方法、選定方法など基本的な内容をわかりやすく解説しています。

この1冊でフッ素樹脂の基本から応用まで学ぶことができます。
ご興味のある方はお気軽にダウンロードください。

【掲載内容(一部抜粋)】
■フッ素樹脂とは
■フッ素樹脂の特性を解説
■フッ素樹脂コーティングとは
■フッ素樹脂コーティングの加工方法
■フッ素樹脂コーティングの選定のコツ
■フッ素樹脂コーティングに適した基材
■フッ素樹脂コーティングの採用事例

このカタログについて

ドキュメント名 テフロン™コーティング/フッ素樹脂コーティングの教科書
ドキュメント種別 ハンドブック
ファイルサイズ 6.4Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 株式会社吉田SKT (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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https://www.y-skt.co.jp ◎掲載の事例はひとつのケースであり、個別の条件により耐久性や効果等は異なります。  ◎記載の仕様は、予告なく変更することがありますのでご了承ください。 掲載内容の複製、無断転載はお断りします。
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はじめに C O N T E N T S  フライパンへの加工で知られる「フッ素樹脂コーティング」や「テフロン™加工」が産業界の至る所 CHAPTER 01 フッ素樹脂とは……………………………………………………………………… 03 で広く使われていることは、工業、製造業に携わる皆様はよくご存じのことと思います。それはフッ素樹 フッ素樹脂とテフロン™樹脂 ……………………………………………………………… 03 脂という材料が、同時にいくつもの優れた特性をもつという独自性により、大きく発展してきたことの表 フッ素樹脂の種類 …………………………………………………………………………… 03 れです。 CHAPTER 02 フッ素樹脂の特性を詳しく解説 …………………………………………… 05  このテキストではまず、そのフッ素樹脂の主要な特性を一つひとつ掘り下げて紹介します。フッ素樹 フッ素樹脂の「非粘着性」…………………………………………………………………… 05 脂のもたらすさまざまな効果や恩恵を得るにあたり、その特性について基本事項を理解することで、よ フッ素樹脂の「撥水/撥油性」……………………………………………………………… 08 り活用のヒントが見えてきます。 フッ素樹脂の「低摩擦性」…………………………………………………………………… 11  そのうえで、このテキストの本題であるテフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとはどういうも フッ素樹脂の「耐薬品性」…………………………………………………………………… 13 のか、加工方法や選定方法から具体的な採用事例(製造現場の改善事例)まで、できる限り鮮明 CHAPTER テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとは ………… 16 に、わかりやすい表現でご紹介しています。 03 概要 ………………………………………………………………………………………… 16 特徴・効果 …………………………………………………………………………………… 16  テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングを行うには、上述したフッ素樹脂についての知見 おもな種類…………………………………………………………………………………… 16 や、特殊な設備が必要です。専門メーカーにご相談いただくことで、ものづくりにおけるお悩みの解決 仕様・性能比較 ……………………………………………………………………………… 17 や、実現したいことが叶えられる可能性が高まります。 おもな用途…………………………………………………………………………………… 18  私たち吉田SKTは、1963年にフッ素樹脂コーティングを開始し、1968年には米国デュポン社(現ケ マーズ社)とテフロン™ PTFE(四フッ化エチレン樹脂)の加工ができるライセンス契約を結びました。 CHAPTER 04 テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)の加工方法 19 とくに「くっつきにくくする」「すべりやすくする」「腐食しにくくする」を中心とした機能をお届けするため CHAPTER 05 テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)選定のコツ  23 に、お客様の現場に最適な形のフッ素樹脂コーティングを実現してきました。昨今は環境対応、現場 の安全配慮、IoTや自動化といったニーズへの実績も数多くあります。 CHAPTER 06 テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)に適した基材 26  また情報発信にも力を入れており、オフライン/オンラインの両面でお客様との接点を増やし、コミ CHAPTER テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)の採用事例 31 ュニケーションを深めております。 07 非粘着性を活用した事例 …………………………………………………………………… 31  これからもフッ素樹脂(テフロン™)の特性を見つめ、その可能性を開発し、多様なニーズに高い次 撥水性・耐薬品性を活用した事例…………………………………………………………… 32 元で応えていきたいと思います。 低摩擦性を活用した事例 …………………………………………………………………… 33 株式会社吉田SKT C O L U M N フッ素樹脂(PTFE)の発見 …………………………………………………… 34 GLOSSARY フッ素樹脂の機能・特性に関する用語集 ……………………………… 35
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はじめに C O N T E N T S  フライパンへの加工で知られる「フッ素樹脂コーティング」や「テフロン™加工」が産業界の至る所 CHAPTER 01 フッ素樹脂とは……………………………………………………………………… 03 で広く使われていることは、工業、製造業に携わる皆様はよくご存じのことと思います。それはフッ素樹 フッ素樹脂とテフロン™樹脂 ……………………………………………………………… 03 脂という材料が、同時にいくつもの優れた特性をもつという独自性により、大きく発展してきたことの表 フッ素樹脂の種類 …………………………………………………………………………… 03 れです。 CHAPTER 02 フッ素樹脂の特性を詳しく解説 …………………………………………… 05  このテキストではまず、そのフッ素樹脂の主要な特性を一つひとつ掘り下げて紹介します。フッ素樹 フッ素樹脂の「非粘着性」…………………………………………………………………… 05 脂のもたらすさまざまな効果や恩恵を得るにあたり、その特性について基本事項を理解することで、よ フッ素樹脂の「撥水/撥油性」……………………………………………………………… 08 り活用のヒントが見えてきます。 フッ素樹脂の「低摩擦性」…………………………………………………………………… 11  そのうえで、このテキストの本題であるテフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとはどういうも フッ素樹脂の「耐薬品性」…………………………………………………………………… 13 のか、加工方法や選定方法から具体的な採用事例(製造現場の改善事例)まで、できる限り鮮明 CHAPTER テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとは ………… 16 に、わかりやすい表現でご紹介しています。 03 概要 ………………………………………………………………………………………… 16 特徴・効果 …………………………………………………………………………………… 16  テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングを行うには、上述したフッ素樹脂についての知見 おもな種類…………………………………………………………………………………… 16 や、特殊な設備が必要です。専門メーカーにご相談いただくことで、ものづくりにおけるお悩みの解決 仕様・性能比較 ……………………………………………………………………………… 17 や、実現したいことが叶えられる可能性が高まります。 おもな用途…………………………………………………………………………………… 18  私たち吉田SKTは、1963年にフッ素樹脂コーティングを開始し、1968年には米国デュポン社(現ケ マーズ社)とテフロン™ PTFE(四フッ化エチレン樹脂)の加工ができるライセンス契約を結びました。 CHAPTER 04 テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)の加工方法 19 とくに「くっつきにくくする」「すべりやすくする」「腐食しにくくする」を中心とした機能をお届けするため CHAPTER 05 テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)選定のコツ  23 に、お客様の現場に最適な形のフッ素樹脂コーティングを実現してきました。昨今は環境対応、現場 の安全配慮、IoTや自動化といったニーズへの実績も数多くあります。 CHAPTER 06 テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)に適した基材 26  また情報発信にも力を入れており、オフライン/オンラインの両面でお客様との接点を増やし、コミ CHAPTER テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)の採用事例 31 ュニケーションを深めております。 07 非粘着性を活用した事例 …………………………………………………………………… 31  これからもフッ素樹脂(テフロン™)の特性を見つめ、その可能性を開発し、多様なニーズに高い次 撥水性・耐薬品性を活用した事例…………………………………………………………… 32 元で応えていきたいと思います。 低摩擦性を活用した事例 …………………………………………………………………… 33 株式会社吉田SKT C O L U M N フッ素樹脂(PTFE)の発見 …………………………………………………… 34 GLOSSARY フッ素樹脂の機能・特性に関する用語集 ……………………………… 35
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CHAPTER 01 フッ素樹脂とは CHAPTER 01 | フッ素樹脂とは フッ素樹脂とテフロン™樹脂 PVdF(Poly Vinyli dene Fluoride) 融    点 170~175℃ 連続使用温度 150℃ フッ素樹脂は、フッ素原子を含むプラスチック原料の総称で多くの種類があります。分子構造などの違いによ フッ化ビニリデン(VdF)の単独重合体で、硬く、フッ素樹脂のなかで最も誘電率が高く、高温で極性溶媒 りそれぞれ特徴が異なります。 に溶解します。 一方テフロン™樹脂は、デュポン社のプランケット博士によって発見され、その後、開発が進められ、テフロ ン®PTFEが発売されました。現在では、ケマーズ社の商標でケマーズ社が販売している、一部のフッ素樹脂を PVF(Poly Vinyl Fluoride) “テフロン™樹脂”や“テフロン™フッ素樹脂”と呼びます。テフロン™樹脂にはテフロン™PTFE、テフロン™ FEP、テフロン™PFAなどの種類があります。 フッ化ビニル(VF)の単独重合体で成形が難しいため、フィルムが主用途となっています。 フッ素樹脂の種類 TFE/PDD(Tetra Fluoro Ethylene/2,2-bistrifluoro-methyl-4,5-difluoro-1,3-dioxole) PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene) 融    点 327℃ 連続使用温度 260℃ 非晶質フッ素樹脂で透明な樹脂です。紫外領域から赤外領域まで光透過性に優れ、低反射率、低屈折 率などの光学特性を持ちます。 PTFEはフッ素樹脂のなかで最も多く生産される白色の結晶性樹脂で、耐薬品性や潤滑性に優れます。 フッ素樹脂のなかでも低摩擦性に優れ、固体潤滑材としても利用されます。また、溶融粘度が高く融点近 くでも柔らかくなりにくい特徴があり、家庭用のフライパンのコーティングでよく知られています。 FEP(Fluorinated Ethylene Propylene) 融    点 260~270℃ 連続使用温度 200℃ FEPはPFAより早く開発された溶融性パーフルオロポリマーで、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)と の共重合体です。 低温の離型性に優れているため非粘着・離型コーティングとしても利用されます。 PFA(Per Fluoro Alkoxy Polymer) 融    点 290~310℃ 連続使用温度 260℃ PFAはPTFEの溶融粘度を下げて射出成形できるように開発された樹脂で、テトラフルオロエチレン(TFE) とパーフルオロビニルエーテル(PFVE)との共重合体で半透明のフッ素樹脂です。耐薬品性、非粘着性に 優れており、耐食コーティングや耐食ライニング、非粘着・離型コーティング材料としても利用されます。 PTFEの原料「蛍石」 ETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylen Copolymer)融    点 220~270℃ 連続使用温度 150℃ ETFEはTFEとエチレンとの共重合体で、非常に加工性が良い樹脂ですが、パーフルオロポリマーではない ため、PFAなどのパーフルオロポリマーに比べて耐薬品性は少し低下します。 ECTFE(Ethylene Chloro Tri Fluoro Ethylene Copolymer)融    点 230~250℃ 連続使用温度 150℃ ECTFEはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とエチレンとの共重合体で、加工性に優れます。ETFEに比べ 難燃性と硬さに優れています。 PCTFE(Poly Chloro Tri Fluoro Ethylene) 融    点 210~215℃ 連続使用温度 120℃ PTFEパウダー PCTFEはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の単独重合体で、半透明で硬く、ガス透過性がフッ素樹脂 のなかで最も小さいのが特徴です。 3 
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CHAPTER 01 フッ素樹脂とは CHAPTER 01 | フッ素樹脂とは フッ素樹脂とテフロン™樹脂 PVdF(Poly Vinyli dene Fluoride) 融    点 170~175℃ 連続使用温度 150℃ フッ素樹脂は、フッ素原子を含むプラスチック原料の総称で多くの種類があります。分子構造などの違いによ フッ化ビニリデン(VdF)の単独重合体で、硬く、フッ素樹脂のなかで最も誘電率が高く、高温で極性溶媒 りそれぞれ特徴が異なります。 に溶解します。 一方テフロン™樹脂は、デュポン社のプランケット博士によって発見され、その後、開発が進められ、テフロ ン®PTFEが発売されました。現在では、ケマーズ社の商標でケマーズ社が販売している、一部のフッ素樹脂を PVF(Poly Vinyl Fluoride) “テフロン™樹脂”や“テフロン™フッ素樹脂”と呼びます。テフロン™樹脂にはテフロン™PTFE、テフロン™ FEP、テフロン™PFAなどの種類があります。 フッ化ビニル(VF)の単独重合体で成形が難しいため、フィルムが主用途となっています。 フッ素樹脂の種類 TFE/PDD(Tetra Fluoro Ethylene/2,2-bistrifluoro-methyl-4,5-difluoro-1,3-dioxole) PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene) 融    点 327℃ 連続使用温度 260℃ 非晶質フッ素樹脂で透明な樹脂です。紫外領域から赤外領域まで光透過性に優れ、低反射率、低屈折 率などの光学特性を持ちます。 PTFEはフッ素樹脂のなかで最も多く生産される白色の結晶性樹脂で、耐薬品性や潤滑性に優れます。 フッ素樹脂のなかでも低摩擦性に優れ、固体潤滑材としても利用されます。また、溶融粘度が高く融点近 くでも柔らかくなりにくい特徴があり、家庭用のフライパンのコーティングでよく知られています。 FEP(Fluorinated Ethylene Propylene) 融    点 260~270℃ 連続使用温度 200℃ FEPはPFAより早く開発された溶融性パーフルオロポリマーで、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)と の共重合体です。 低温の離型性に優れているため非粘着・離型コーティングとしても利用されます。 PFA(Per Fluoro Alkoxy Polymer) 融    点 290~310℃ 連続使用温度 260℃ PFAはPTFEの溶融粘度を下げて射出成形できるように開発された樹脂で、テトラフルオロエチレン(TFE) とパーフルオロビニルエーテル(PFVE)との共重合体で半透明のフッ素樹脂です。耐薬品性、非粘着性に 優れており、耐食コーティングや耐食ライニング、非粘着・離型コーティング材料としても利用されます。 PTFEの原料「蛍石」 ETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylen Copolymer)融    点 220~270℃ 連続使用温度 150℃ ETFEはTFEとエチレンとの共重合体で、非常に加工性が良い樹脂ですが、パーフルオロポリマーではない ため、PFAなどのパーフルオロポリマーに比べて耐薬品性は少し低下します。 ECTFE(Ethylene Chloro Tri Fluoro Ethylene Copolymer)融    点 230~250℃ 連続使用温度 150℃ ECTFEはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とエチレンとの共重合体で、加工性に優れます。ETFEに比べ 難燃性と硬さに優れています。 PCTFE(Poly Chloro Tri Fluoro Ethylene) 融    点 210~215℃ 連続使用温度 120℃ PTFEパウダー PCTFEはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の単独重合体で、半透明で硬く、ガス透過性がフッ素樹脂 のなかで最も小さいのが特徴です。 4 
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CHAPTER 02 フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂は下表に挙げたような特性をもつことで知られています。 非粘着性 低摩擦性(すべり性) PTFE(ポリテトラフルオロエチエレン)は多くの物質に対してはじく性質をもっています。 例えば、テフロン™コーティングのフライパンに水を垂らすと綺麗な水滴になります。 付着性の強い粘着物に対してもくっつきにくく、 摩擦による抵抗が小さく摩擦係数が大変低いた このように水や油をはじく理由として、PTFEの表面張力(※1)が低いことがあげられます。 付着しにくい性質です。汚れなども簡単にとれる めすべりやすい性質です。特にPTFEは固体潤滑 PTFEは表面張力が低く、逆に水は表面張力が高く、その数値の差が大きいことで綺麗な水滴ができます。 ようになります。 材としても利用され、潤滑性にも優れます。 ※1 固体や液体の表面(厳密には気層側と接触している最表面の分子)には、表面張力(表面自由エネルギー)というものが存在しています。固体や液体の種類 によって表面張力の大きさは異なり、その差が大きいものほどよくはじきます。 撥水・撥油性 耐薬品性 固体/液体の表面自由エネルギー、表面張力 72 70 70 表面に水や油がついても良くはじく性質です。 ほとんどすべての薬品や溶剤に侵されたり溶け 60 60 表面自由 50 46 50 水や油をはじきやすく、汚れが付きにくく洗浄が たりすることのない性質です。一部の溶融アルカ エネルギー 39 差が 大きい 35.8 表面張力 40 40 (mN/m) 31 (mN/m) 簡単に行えます。 リや高温環境のフッ素ガスなどを除き、侵される 30 18.5 22 30 20 18.4 20 ことがありません。 10 10 物質名 ナイロン ポリ塩化 ポリ テフロン™ 水 オリーブ 物質名 (固体) 66 ビニル エチレン PTFE オイル エタノール ヘキサン (液体) 耐熱・耐寒性 電気特性 プラスチックのなかでは高温環境でも使用でき、 絶縁耐力(絶縁破壊の強さ)、体積抵抗率、表 例えば水に油を注ぐと、混ざり合わずなじみません。これと同じように、PTFEはほとんどの物質に対して「な PTFEの連続使用温度は260℃になります。また 面抵抗率が大きく、電気絶縁性に優れます。 じみにくい」性質をもっています。 寒さにも強く-250℃の低温にも耐えます。 なじみにくさを数値化して表したもののひとつとして、SP値というものがあります。SP値とは溶解度パラメータ とも呼ばれ、この数値が離れている物質は「なじみにくく、くっつきにくい」といわれています。 物質のSP値 耐候性 純粋性 ~ ~ アセトン, 9.8 ~ ~ 紫外線の影響を受けにくい性質です。長い時間 化学的に不活性なため、高純度な液体の搬送 ~ ~ ~ ~ キシレン, 8.8 ~ ~ 屋外で使用しても劣化することがありません。 経路にも利用できる性質です。 エタノール, 12.8 ~ ~ ~ ~ 水 , 23.4 n-ヘキサン, 7.2 ~ ~ ~ ~ なぜこのように多彩な特性を備えているのか、それぞれについて詳しく解説していきます。 ~ ~ ~ ~ 溶媒 SP値 ~ ~ 5 10 15 ~ ~ ~ ~ 25 フッ素樹脂の「非粘着性」 ~ ~ ~ ~ 溶質 ~ ~ テフロン™PTFE , 6.2 ポリアミド, 13.2 ~ ~ 「非粘着性」とは付着性の強い粘着物に対しても離型しやすく、付着しないか、または付着しにくい性質のこと ~ ~ ~ ~ を指します。 ポリエチレン, 7.9 ~ ~ ポリ塩化ビニル, 9.6 テフロン™フッ素樹脂が非粘着性に優れる理由 水と油(n-ヘキサン)はSP値が離れており、お互いが「なじみにくい」ことを表しています。 テフロン™フッ素樹脂は他の物質とくっつきにくい樹脂として有名です。くっつきにくさの理由は、テフロン™ そしてテフロン™PTFEは、ほとんどの物質に対してSP値が離れていることから、それらと「なじみにくい」とい フッ素樹脂がもつ3つの特徴にあります。 えるのです。 代表的なテフロン™フッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を例に、その特徴をひとつずつご紹 介します。 5 
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CHAPTER 02 フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂は下表に挙げたような特性をもつことで知られています。 非粘着性 低摩擦性(すべり性) PTFE(ポリテトラフルオロエチエレン)は多くの物質に対してはじく性質をもっています。 例えば、テフロン™コーティングのフライパンに水を垂らすと綺麗な水滴になります。 付着性の強い粘着物に対してもくっつきにくく、 摩擦による抵抗が小さく摩擦係数が大変低いた このように水や油をはじく理由として、PTFEの表面張力(※1)が低いことがあげられます。 付着しにくい性質です。汚れなども簡単にとれる めすべりやすい性質です。特にPTFEは固体潤滑 PTFEは表面張力が低く、逆に水は表面張力が高く、その数値の差が大きいことで綺麗な水滴ができます。 ようになります。 材としても利用され、潤滑性にも優れます。 ※1 固体や液体の表面(厳密には気層側と接触している最表面の分子)には、表面張力(表面自由エネルギー)というものが存在しています。固体や液体の種類 によって表面張力の大きさは異なり、その差が大きいものほどよくはじきます。 撥水・撥油性 耐薬品性 固体/液体の表面自由エネルギー、表面張力 72 70 70 表面に水や油がついても良くはじく性質です。 ほとんどすべての薬品や溶剤に侵されたり溶け 60 60 表面自由 50 46 50 水や油をはじきやすく、汚れが付きにくく洗浄が たりすることのない性質です。一部の溶融アルカ エネルギー 39 差が 大きい 35.8 表面張力 40 40 (mN/m) 31 (mN/m) 簡単に行えます。 リや高温環境のフッ素ガスなどを除き、侵される 30 18.5 22 30 20 18.4 20 ことがありません。 10 10 物質名 ナイロン ポリ塩化 ポリ テフロン™ 水 オリーブ 物質名 (固体) 66 ビニル エチレン PTFE オイル エタノール ヘキサン (液体) 耐熱・耐寒性 電気特性 プラスチックのなかでは高温環境でも使用でき、 絶縁耐力(絶縁破壊の強さ)、体積抵抗率、表 例えば水に油を注ぐと、混ざり合わずなじみません。これと同じように、PTFEはほとんどの物質に対して「な PTFEの連続使用温度は260℃になります。また 面抵抗率が大きく、電気絶縁性に優れます。 じみにくい」性質をもっています。 寒さにも強く-250℃の低温にも耐えます。 なじみにくさを数値化して表したもののひとつとして、SP値というものがあります。SP値とは溶解度パラメータ とも呼ばれ、この数値が離れている物質は「なじみにくく、くっつきにくい」といわれています。 物質のSP値 耐候性 純粋性 ~ ~ アセトン, 9.8 ~ ~ 紫外線の影響を受けにくい性質です。長い時間 化学的に不活性なため、高純度な液体の搬送 ~ ~ ~ ~ キシレン, 8.8 ~ ~ 屋外で使用しても劣化することがありません。 経路にも利用できる性質です。 エタノール, 12.8 ~ ~ ~ ~ 水 , 23.4 n-ヘキサン, 7.2 ~ ~ ~ ~ なぜこのように多彩な特性を備えているのか、それぞれについて詳しく解説していきます。 ~ ~ ~ ~ 溶媒 SP値 ~ ~ 5 10 15 ~ ~ ~ ~ 25 フッ素樹脂の「非粘着性」 ~ ~ ~ ~ 溶質 ~ ~ テフロン™PTFE , 6.2 ポリアミド, 13.2 ~ ~ 「非粘着性」とは付着性の強い粘着物に対しても離型しやすく、付着しないか、または付着しにくい性質のこと ~ ~ ~ ~ を指します。 ポリエチレン, 7.9 ~ ~ ポリ塩化ビニル, 9.6 テフロン™フッ素樹脂が非粘着性に優れる理由 水と油(n-ヘキサン)はSP値が離れており、お互いが「なじみにくい」ことを表しています。 テフロン™フッ素樹脂は他の物質とくっつきにくい樹脂として有名です。くっつきにくさの理由は、テフロン™ そしてテフロン™PTFEは、ほとんどの物質に対してSP値が離れていることから、それらと「なじみにくい」とい フッ素樹脂がもつ3つの特徴にあります。 えるのです。 代表的なテフロン™フッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を例に、その特徴をひとつずつご紹 介します。 6 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂の「撥水/撥油性」 「撥水/撥油性」とは素材表面が水や油をはじく性質のことを指します。 PTFEの分子構造 C この性質をイメージしやすいものとして、ハスの葉が有名です。ハスの葉はこの撥水性を利用して、葉自体を 濡れにくく綺麗に保ち、光合成をスムーズに行えるようになっています。 テフロン™フッ素樹脂もこの「撥水/撥油性」を有しており、例えば、液体が濡れ広がる素材であっても、表面 にテフロン™フッ素樹脂コーティング処理をすることで撥水/撥油性をもたせ、液体をはじいて濡れ広がりにく F F くすることができます。 炭素・フッ素結合 (イメージ) テフロン™フッ素樹脂が撥水/撥油性に優れる理由 ~表面自由エネルギー~  テフロン™フッ素樹脂は撥水/撥油性に優れる樹脂です。これには表面自由エネルギーが大きく関係していま 炭素原子(C) フッ素原子(F) す。 続いてテフロン™ PTFEを例に、「撥水性」のメカニズムに注目してご説明します。 PTFEは、炭素原子とフッ素原子が結合したものが直鎖的につながった分子構造になっています。さらに炭素 原子同士の結合部はフッ素原子で隙間なく覆われています。 また下図のとおり、炭素原子とフッ素原子の結合エネルギーは化学結合のなかでとても強いものです。 物質の表面には、表面自由エネルギー(表面張力)というものが存在しています。表面自由エネルギーとは、 結合エネルギーが強いことで、ほとんどの物質と化学的に結合することがありません。 物質の中で分子同士が引き合う力のことをいいます。 テフロン™ PTFEはこの表面自由エネルギーが非常に低いという特徴があります。 C-F(炭素-フッ素) ※一般的に、固体に対しては「表面自由エネルギー」、液体に対しては「表面張力」と表現します。 結合エネルギー C-H(炭素-水素) 116kcal/mol C-O(炭素-酸素) 固体/液体の表面自由エネルギー、表面張力 結合エネルギー 99 (l 炭素-塩素) 72 kcal/mol 70 70 C F 結合エネルギー C-C 88 結合エネルギー 60 60 kcal/mol 表面自由 50 46 39 差が 50 表面張力 C H 78kcal/mol エネルギー 40 1 大きい 35.8 40(mN/m) 30 1 (mN/m) 3 C O 18.5 22 30 20 18.4 20 C Cl 10 10 2 3 物質名 ナイロン ポリ塩化 ポリ テフロン™ 水 オリーブ 物質名 (固体) 66 ビニル エチレン PTFE オイル エタノール ヘキサン (液体) 4 ◉炭素原子がフッ素原子で隙間なく覆われた構造 上の表から、 ◉炭素原子とフッ素原子の結合エネルギーはとても強い 水・・・・・・・・・・・・表面張力が高い この2つの理由により、代表的なテフロン™フッ素樹脂であるPTFEは、化学的に安定した性質に恵まれている テフロン™ PTFE・・表面自由エネルギーが低い のです。 ということを知っていただけると思います。 以上のように、テフロン™フッ素樹脂が非粘着性に優れている理由は、 では、この表面自由エネルギー(表面張力)と撥水性がどのように関係しているのでしょうか? という3つの特徴から説明できます。 吉田SKTではこうした裏付けをしっかりと押さえたうえで、お客様の問題解決と目的のために最適なテフロン™ フッ素樹脂のコーティングを開発、ご提供しています。 7 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂の「撥水/撥油性」 「撥水/撥油性」とは素材表面が水や油をはじく性質のことを指します。 PTFEの分子構造 C この性質をイメージしやすいものとして、ハスの葉が有名です。ハスの葉はこの撥水性を利用して、葉自体を 濡れにくく綺麗に保ち、光合成をスムーズに行えるようになっています。 テフロン™フッ素樹脂もこの「撥水/撥油性」を有しており、例えば、液体が濡れ広がる素材であっても、表面 にテフロン™フッ素樹脂コーティング処理をすることで撥水/撥油性をもたせ、液体をはじいて濡れ広がりにく F F くすることができます。 炭素・フッ素結合 (イメージ) テフロン™フッ素樹脂が撥水/撥油性に優れる理由 ~表面自由エネルギー~  テフロン™フッ素樹脂は撥水/撥油性に優れる樹脂です。これには表面自由エネルギーが大きく関係していま 炭素原子(C) フッ素原子(F) す。 続いてテフロン™ PTFEを例に、「撥水性」のメカニズムに注目してご説明します。 PTFEは、炭素原子とフッ素原子が結合したものが直鎖的につながった分子構造になっています。さらに炭素 原子同士の結合部はフッ素原子で隙間なく覆われています。 また下図のとおり、炭素原子とフッ素原子の結合エネルギーは化学結合のなかでとても強いものです。 物質の表面には、表面自由エネルギー(表面張力)というものが存在しています。表面自由エネルギーとは、 結合エネルギーが強いことで、ほとんどの物質と化学的に結合することがありません。 物質の中で分子同士が引き合う力のことをいいます。 テフロン™ PTFEはこの表面自由エネルギーが非常に低いという特徴があります。 C-F(炭素-フッ素) ※一般的に、固体に対しては「表面自由エネルギー」、液体に対しては「表面張力」と表現します。 結合エネルギー C-H(炭素-水素) 116kcal/mol C-O(炭素-酸素) 固体/液体の表面自由エネルギー、表面張力 結合エネルギー 99 (l 炭素-塩素) 72 kcal/mol 70 70 C F 結合エネルギー C-C 88 結合エネルギー 60 60 kcal/mol 表面自由 50 46 39 差が 50 表面張力 C H 78kcal/mol エネルギー 40 1 大きい 35.8 40(mN/m) 30 1 (mN/m) 3 C O 18.5 22 30 20 18.4 20 C Cl 10 10 2 3 物質名 ナイロン ポリ塩化 ポリ テフロン™ 水 オリーブ 物質名 (固体) 66 ビニル エチレン PTFE オイル エタノール ヘキサン (液体) 4 ◉炭素原子がフッ素原子で隙間なく覆われた構造 上の表から、 ◉炭素原子とフッ素原子の結合エネルギーはとても強い 水・・・・・・・・・・・・表面張力が高い この2つの理由により、代表的なテフロン™フッ素樹脂であるPTFEは、化学的に安定した性質に恵まれている テフロン™ PTFE・・表面自由エネルギーが低い のです。 ということを知っていただけると思います。 以上のように、テフロン™フッ素樹脂が非粘着性に優れている理由は、 では、この表面自由エネルギー(表面張力)と撥水性がどのように関係しているのでしょうか? という3つの特徴から説明できます。 吉田SKTではこうした裏付けをしっかりと押さえたうえで、お客様の問題解決と目的のために最適なテフロン™ フッ素樹脂のコーティングを開発、ご提供しています。 8 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 『表面張力が高い』液体は、液滴内の分子同士が引き合う力が非常に強いため、内側に強く引っ張られます。 このため、液滴はより丸い球体になろうとします。 水とオリーブオイルでは、表面張力が高い水の方が、より丸い液滴になります。 水 球状になる 液体の表面張力イメージ エタノール 濡れ広がる 表面張力が低い液体 表面張力が高い液体 例) オリーブオイル 例) 水 ポリエチレン 撥水/撥油性に優れているテフロン™PTFEの場合、表面自由エネルギーは固体のなかで最も低いと言われ ているため、ほとんどの液体をはじくことができます。 さらに、固体表面に液体が付着した状態を考えてみます。下図をご覧ください。 固体表面と液体(図の例では水)の界面では、固体の表面自由エネルギーが高いほど液体の分子と引き合う 撥水/撥油性の確認方法 ~接触角~ 力が大きくなり、液体が濡れ広がることになります。 逆に、固体の表面自由エネルギーが低いほど液体の分子と引き合う力が小さくなり、液体を引き付ける力が では、撥水とはどのような状態を指すのでしょうか?ここからは撥水/撥油性の確認方法についてご説明します。 弱くなります。この場合、液体は自身の表面張力によって内側に引っ張られ、固体表面上で小さくなり球状に 撥水/撥油性は、下図のような静止状態での液滴の端での接線の角度「接触角」によって数値化します。 なります。 固体の表面自由エネルギーの差による水滴のイメージ 接触角θ 接触角θ 水 接触角θ 水 濡れる はじく 接触角が0°に近いほど固体表面は濡れており、逆に接触角が180°に近いほどよくはじいています。 一般的に水の場合、接触角が90°以上の場合は撥水性、90°未満で親水性と区分されることが多いです。さ らに、接触角が150°~160°以上になると超撥水と区分されることもあります。 固体の 通常、テフロン™PTFEの接触角は100°以上になり、撥水性を示します。 水の表面張力より高い 表面自由エネルギー 水の表面張力より低い 撥水/撥油性を利用してできること これは接する固体と液体の表面自由エネルギー(表面張力)の大きさの差によるもので、つまり同じ固体でも 表面張力が異なる液体を滴下すると、濡れ広がったりはじいたりします。 テフロン™フッ素樹脂は水も油もよくはじくため、さまざまな液体をはじかせたい場面で使用されています。 自動車のフロントガラスや傘などの水はじきはよく目にしますが、工業製品の生産現場やプロの現場でも撥水 分かりやすい例として、ポリエチレンに水を滴下した場合、ポリエチレンの表面自由エネルギーより水の表面 /撥油性は利用されています。例えば、塗料ポットや漏斗の場合、液切れが良くなるため残渣の低減ができ、 張力の方が勝るため、水は内側に引っ張られて球状になります。 塗料ロスや清掃時間を少なくすることが可能です。 ところが同じポリエチレンに表面張力が低いエタノールを滴下すると、ポリエチレンの表面自由エネルギーの メッキ治具の場合は防食性能や絶縁性に加え、撥水性によりメッキ液の持ち出し量を低減することができ、 方が勝るため、エタノールは濡れ広がります。 コストダウンに貢献します。  9 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 『表面張力が高い』液体は、液滴内の分子同士が引き合う力が非常に強いため、内側に強く引っ張られます。 このため、液滴はより丸い球体になろうとします。 水とオリーブオイルでは、表面張力が高い水の方が、より丸い液滴になります。 水 球状になる 液体の表面張力イメージ エタノール 濡れ広がる 表面張力が低い液体 表面張力が高い液体 例) オリーブオイル 例) 水 ポリエチレン 撥水/撥油性に優れているテフロン™PTFEの場合、表面自由エネルギーは固体のなかで最も低いと言われ ているため、ほとんどの液体をはじくことができます。 さらに、固体表面に液体が付着した状態を考えてみます。下図をご覧ください。 固体表面と液体(図の例では水)の界面では、固体の表面自由エネルギーが高いほど液体の分子と引き合う 撥水/撥油性の確認方法 ~接触角~ 力が大きくなり、液体が濡れ広がることになります。 逆に、固体の表面自由エネルギーが低いほど液体の分子と引き合う力が小さくなり、液体を引き付ける力が では、撥水とはどのような状態を指すのでしょうか?ここからは撥水/撥油性の確認方法についてご説明します。 弱くなります。この場合、液体は自身の表面張力によって内側に引っ張られ、固体表面上で小さくなり球状に 撥水/撥油性は、下図のような静止状態での液滴の端での接線の角度「接触角」によって数値化します。 なります。 固体の表面自由エネルギーの差による水滴のイメージ 接触角θ 接触角θ 水 接触角θ 水 濡れる はじく 接触角が0°に近いほど固体表面は濡れており、逆に接触角が180°に近いほどよくはじいています。 一般的に水の場合、接触角が90°以上の場合は撥水性、90°未満で親水性と区分されることが多いです。さ らに、接触角が150°~160°以上になると超撥水と区分されることもあります。 固体の 通常、テフロン™PTFEの接触角は100°以上になり、撥水性を示します。 水の表面張力より高い 表面自由エネルギー 水の表面張力より低い 撥水/撥油性を利用してできること これは接する固体と液体の表面自由エネルギー(表面張力)の大きさの差によるもので、つまり同じ固体でも 表面張力が異なる液体を滴下すると、濡れ広がったりはじいたりします。 テフロン™フッ素樹脂は水も油もよくはじくため、さまざまな液体をはじかせたい場面で使用されています。 自動車のフロントガラスや傘などの水はじきはよく目にしますが、工業製品の生産現場やプロの現場でも撥水 分かりやすい例として、ポリエチレンに水を滴下した場合、ポリエチレンの表面自由エネルギーより水の表面 /撥油性は利用されています。例えば、塗料ポットや漏斗の場合、液切れが良くなるため残渣の低減ができ、 張力の方が勝るため、水は内側に引っ張られて球状になります。 塗料ロスや清掃時間を少なくすることが可能です。 ところが同じポリエチレンに表面張力が低いエタノールを滴下すると、ポリエチレンの表面自由エネルギーの メッキ治具の場合は防食性能や絶縁性に加え、撥水性によりメッキ液の持ち出し量を低減することができ、 方が勝るため、エタノールは濡れ広がります。 コストダウンに貢献します。  10 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂の「低摩擦性」 PTFE分子内の原子間結合力が非常に大きいため、相手材分子との分子間力(引き合う力)が小さくなり、凝 物体表面に生じる摩擦力の大きさは、よく摩擦係数という指標で表されます。静止しているものを動かそうと 着しにくいこともすべりやすい理由といえます。 するときの摩擦係数を「静摩擦係数」、動いているときの摩擦係数を「動摩擦係数」といいます。 フッ素樹脂(PTFE)の摩擦係数は、静摩擦係数・動摩擦係数ともに、他のプラスチックと比較して非常に小さ C-F(炭素-フッ素) くなっています。フッ素樹脂のFEPやPFAと比較しても、PTFEの摩擦係数は最も小さいです。そのためフッ素樹 結合エネルギー 脂(PTFE)は低摩擦性に優れ、潤滑用途で多く利用されています。 116kcal/mol 潤滑材としてのPTFEのメリットには C F  ・潤滑油やグリスのように周囲を汚染しない  ・相手材を着色させない C-H(炭素-水素) C-O(炭素-酸素)  ・さまざまな環境で使用できる 結合エネルギー 結合エネルギー 99kcal/mol 88kcal/mol などがあります。 C H C O フッ素樹脂の静摩擦係数 PTFE 0.06 PFA 0.08 FEP 0.14 PTFEは結晶性プラスチックに分類され、結晶層と非晶層が積層した構造をしています。 ※弊社測定値 PTFEがすべりやすい理由として、結晶層のラメラが結晶層中でせん断(ズレ)を起こしやすいためといわれて います。 フッ素樹脂(PTFE)が低摩擦性に優れる理由 また、PTFEの表面で摩擦が発生した際、結晶ラメラが相互にすべりを起こし、相手材に移着することで非常 に薄いPTFE膜を形成するとされています。 それでは、なぜフッ素樹脂(PTFE)は低摩擦性に優れる(摩擦係数が小さい)のでしょうか? 肉眼では確認できないほどの非常に薄いPTFE層が形成されることで、摩擦界面が「PTFE 対 相手材表面」か その理由を、分子構造に着目してみていきましょう。 ら「PTFE 対 PTFE」に変化することも低摩擦性に優れる理由のひとつです。 フッ素樹脂(PTFE)の分子構造 炭素原子(C) フッ素原子(F) 相手材 PTFE PTFEの分子構造は炭素原子のまわりをフッ素原子が隙間なく取り囲んだ構造になっています。 拡大図 PTFEの分子構造は、化学的に対称で直鎖状です。そのため分子表面の凹凸が少なく、全体的に滑らかな表 相手材 面をしており、低摩擦性に優れると考えられています。 PTFE F F F F F F 相手材表面にPTFEが移着するため PTFE 対 PTFE のすべりになる C C C C C C F F F F F F 11 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂の「低摩擦性」 PTFE分子内の原子間結合力が非常に大きいため、相手材分子との分子間力(引き合う力)が小さくなり、凝 物体表面に生じる摩擦力の大きさは、よく摩擦係数という指標で表されます。静止しているものを動かそうと 着しにくいこともすべりやすい理由といえます。 するときの摩擦係数を「静摩擦係数」、動いているときの摩擦係数を「動摩擦係数」といいます。 フッ素樹脂(PTFE)の摩擦係数は、静摩擦係数・動摩擦係数ともに、他のプラスチックと比較して非常に小さ C-F(炭素-フッ素) くなっています。フッ素樹脂のFEPやPFAと比較しても、PTFEの摩擦係数は最も小さいです。そのためフッ素樹 結合エネルギー 脂(PTFE)は低摩擦性に優れ、潤滑用途で多く利用されています。 116kcal/mol 潤滑材としてのPTFEのメリットには C F  ・潤滑油やグリスのように周囲を汚染しない  ・相手材を着色させない C-H(炭素-水素) C-O(炭素-酸素)  ・さまざまな環境で使用できる 結合エネルギー 結合エネルギー 99kcal/mol 88kcal/mol などがあります。 C H C O フッ素樹脂の静摩擦係数 PTFE 0.06 PFA 0.08 FEP 0.14 PTFEは結晶性プラスチックに分類され、結晶層と非晶層が積層した構造をしています。 ※弊社測定値 PTFEがすべりやすい理由として、結晶層のラメラが結晶層中でせん断(ズレ)を起こしやすいためといわれて います。 フッ素樹脂(PTFE)が低摩擦性に優れる理由 また、PTFEの表面で摩擦が発生した際、結晶ラメラが相互にすべりを起こし、相手材に移着することで非常 に薄いPTFE膜を形成するとされています。 それでは、なぜフッ素樹脂(PTFE)は低摩擦性に優れる(摩擦係数が小さい)のでしょうか? 肉眼では確認できないほどの非常に薄いPTFE層が形成されることで、摩擦界面が「PTFE 対 相手材表面」か その理由を、分子構造に着目してみていきましょう。 ら「PTFE 対 PTFE」に変化することも低摩擦性に優れる理由のひとつです。 フッ素樹脂(PTFE)の分子構造 炭素原子(C) フッ素原子(F) 相手材 PTFE PTFEの分子構造は炭素原子のまわりをフッ素原子が隙間なく取り囲んだ構造になっています。 拡大図 PTFEの分子構造は、化学的に対称で直鎖状です。そのため分子表面の凹凸が少なく、全体的に滑らかな表 相手材 面をしており、低摩擦性に優れると考えられています。 PTFE F F F F F F 相手材表面にPTFEが移着するため PTFE 対 PTFE のすべりになる C C C C C C F F F F F F 12 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂の低摩擦性を利用してできること C フッ素樹脂の低摩擦性は、無給油潤滑を可能にし、潤滑油やグリスが使用できない環境で多く利用されてい ます。 また、耐熱性や耐候性などにも優れるため、さまざまな環境で使用することができます。例えば免振装置のス F F テフロン™フッ素樹脂の ライディングパットの場合、すべり性に加えて耐候性なども必要になります。ご家庭で使われるアイロンの熱 分子構造 板では、フッ素樹脂コーティングが加工され、すべりの良さと熱に強い性質(耐熱性)が活用されています。 炭素・フッ素結合 (イメージ) フッ素樹脂の「耐薬品性」 「耐薬品性」とは、さまざまな薬品に対する耐久性のことです。 薬品の種類には、酸・アルカリ・有機溶剤などがあり、それらに対して溶けたり(溶解)、膨張したり(膨潤)、反 炭素原子(C) フッ素原子(F) 応しないことを「耐薬品性がある」と言います。 この耐薬品性を利用したものとして、ガラスや樹脂製の容器があります。 この炭素原子とフッ素原子(C-F)の結合エネルギーは化学結合のなかでもとても強く、さらに炭素原子同士 樹脂製の容器として、ポリエチレン(PE)がよく利用されています。ポリ瓶(PE瓶)と呼ばれるものです。 の結合部(C-C結合)はフッ素原子がらせん状に隙間なく覆っています。 ポリエチレンはフッ素樹脂と似た骨格をもっており、常温下で塩酸を保管する場合はポリエチレン容器でも 十分に使用できます。しかし、高い温度での使用や、薬品の種類によっては容器の変形、変色、漏れなどの  ・C-F結合エネルギーが強く壊されない 問題が起こります。  ・C-C結合はフッ素原子に守られている 一方、テフロン™フッ素樹脂は樹脂のなかで優れた耐熱性と耐薬品性を有しており、ポリエチレンが使用で きない環境下でも、容器の形状や樹脂の物性を保ったまま使用することができます。そのため、テフロン™ →そのため薬品や溶剤に触れても不活性、樹脂として劣化・溶解しない フッ素樹脂は薬品を使用するさまざまな環境で使われています。 →つまり耐薬品性に優れる ということになります。 薬品による樹脂への影響 一方でポリエチレンは、炭素原子と水素原子が結合したものが直鎖状につながった分子構造になっていま す。 薬品による樹脂への影響として、溶解や膨潤があります。 溶解とは、「液体(溶媒)が他の物質(溶質)を溶かして均一な混合物(溶液)になる現象」のことを指します。 身近なものでは、油性ペンキがあります。ペンキは、樹脂(溶質)をシンナー(溶媒)に溶かして塗料(溶液)に C したものです。 膨潤とは、「物質が溶媒を吸収し、物質の体積が増加する現象」のことを指します。分かりやすい例として、 ゴム製品を有機溶剤に触れた状態で使用していると、だんだん膨れてぶよぶよになることがあります。このと H H き、分子の世界では分子間の隙間に溶媒が入り込んだ状態になっています。 ポリエチレンの分子構造 樹脂の溶解、膨潤の程度は、樹脂の「種類」「分子量」「分子構造」「結晶化度」などにより差が出てきます。 炭素・水素結合 (イメージ) テフロン™フッ素樹脂が耐薬品性に優れる理由 テフロン™フッ素樹脂は耐薬品性に優れており、ほとんどすべての液体に溶解しない樹脂として有名です。 これにはテフロン™フッ素樹脂の 安定した分子構造 が大きく関係しています。 炭素原子(C) 水素原子(H) ここでは冒頭でご紹介した、ポリエチレンと比較してご説明します。 テフロン™フッ素樹脂は、右図のように炭素原子とフッ素原子が結合したものが直鎖状につながった分子構 フッ素樹脂のC-F結合エネルギーと比較すると、ポリエチレンのC-H結合エネルギーは小さく、またC-C結合部 造になっています。 の露出も多くなっています。 そのため、フッ素樹脂と比べてポリエチレンは薬品の影響を受けやすいことがあります。 13 
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CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 フッ素樹脂の低摩擦性を利用してできること C フッ素樹脂の低摩擦性は、無給油潤滑を可能にし、潤滑油やグリスが使用できない環境で多く利用されてい ます。 また、耐熱性や耐候性などにも優れるため、さまざまな環境で使用することができます。例えば免振装置のス F F テフロン™フッ素樹脂の ライディングパットの場合、すべり性に加えて耐候性なども必要になります。ご家庭で使われるアイロンの熱 分子構造 板では、フッ素樹脂コーティングが加工され、すべりの良さと熱に強い性質(耐熱性)が活用されています。 炭素・フッ素結合 (イメージ) フッ素樹脂の「耐薬品性」 「耐薬品性」とは、さまざまな薬品に対する耐久性のことです。 薬品の種類には、酸・アルカリ・有機溶剤などがあり、それらに対して溶けたり(溶解)、膨張したり(膨潤)、反 炭素原子(C) フッ素原子(F) 応しないことを「耐薬品性がある」と言います。 この耐薬品性を利用したものとして、ガラスや樹脂製の容器があります。 この炭素原子とフッ素原子(C-F)の結合エネルギーは化学結合のなかでもとても強く、さらに炭素原子同士 樹脂製の容器として、ポリエチレン(PE)がよく利用されています。ポリ瓶(PE瓶)と呼ばれるものです。 の結合部(C-C結合)はフッ素原子がらせん状に隙間なく覆っています。 ポリエチレンはフッ素樹脂と似た骨格をもっており、常温下で塩酸を保管する場合はポリエチレン容器でも 十分に使用できます。しかし、高い温度での使用や、薬品の種類によっては容器の変形、変色、漏れなどの  ・C-F結合エネルギーが強く壊されない 問題が起こります。  ・C-C結合はフッ素原子に守られている 一方、テフロン™フッ素樹脂は樹脂のなかで優れた耐熱性と耐薬品性を有しており、ポリエチレンが使用で きない環境下でも、容器の形状や樹脂の物性を保ったまま使用することができます。そのため、テフロン™ →そのため薬品や溶剤に触れても不活性、樹脂として劣化・溶解しない フッ素樹脂は薬品を使用するさまざまな環境で使われています。 →つまり耐薬品性に優れる ということになります。 薬品による樹脂への影響 一方でポリエチレンは、炭素原子と水素原子が結合したものが直鎖状につながった分子構造になっていま す。 薬品による樹脂への影響として、溶解や膨潤があります。 溶解とは、「液体(溶媒)が他の物質(溶質)を溶かして均一な混合物(溶液)になる現象」のことを指します。 身近なものでは、油性ペンキがあります。ペンキは、樹脂(溶質)をシンナー(溶媒)に溶かして塗料(溶液)に C したものです。 膨潤とは、「物質が溶媒を吸収し、物質の体積が増加する現象」のことを指します。分かりやすい例として、 ゴム製品を有機溶剤に触れた状態で使用していると、だんだん膨れてぶよぶよになることがあります。このと H H き、分子の世界では分子間の隙間に溶媒が入り込んだ状態になっています。 ポリエチレンの分子構造 樹脂の溶解、膨潤の程度は、樹脂の「種類」「分子量」「分子構造」「結晶化度」などにより差が出てきます。 炭素・水素結合 (イメージ) テフロン™フッ素樹脂が耐薬品性に優れる理由 テフロン™フッ素樹脂は耐薬品性に優れており、ほとんどすべての液体に溶解しない樹脂として有名です。 これにはテフロン™フッ素樹脂の 安定した分子構造 が大きく関係しています。 炭素原子(C) 水素原子(H) ここでは冒頭でご紹介した、ポリエチレンと比較してご説明します。 テフロン™フッ素樹脂は、右図のように炭素原子とフッ素原子が結合したものが直鎖状につながった分子構 フッ素樹脂のC-F結合エネルギーと比較すると、ポリエチレンのC-H結合エネルギーは小さく、またC-C結合部 造になっています。 の露出も多くなっています。 そのため、フッ素樹脂と比べてポリエチレンは薬品の影響を受けやすいことがあります。 14 
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CHAPTER 03 テフロン™コーティング、 フッ素樹脂コーティングとは CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 ポリエチレン、テフロン™フッ素樹脂の耐酸/耐アルカリ性比較表 概要 硫酸 硝酸 塩酸 水酸化ナトリウム テフロン™コーティング (フッ素樹脂コーティング)とは、フッ素樹脂が持つさまざまな特性(非粘着性や撥水 王水 ※1 10% 98% 10% 61% 10% 38% 10% 30% 30% 性、すべり性に優れ、薬品に強く、高い耐熱温度を持つなど)を部材の表面に与えることで、くっつき・粘着の 防止、摩擦の低減、部材の保護などを実現する表面処理です。 RT RT RT RT RT RT RT RT 70℃ 家庭用フライパンのテフロン™加工は、テフロン™フッ素樹脂コーティングの特徴である非粘着性や耐熱性を フッ素樹脂PTFE ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 利用し、フライパンに食品をくっつきにくくするフッ素樹脂コーティングの一例です。 ポリエチレン × ◎ △ ◎ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ また「テフロン™」は米国ケマーズ社(旧デュポン社)の商標であり、「テフロン™」のブランド、名称を使用で ※1 濃塩酸:濃硝酸=3:1の混合物 きるのはケマーズ社の認定によるライセンス契約を結んだ加工メーカーに限られます。 評価基準 ※当社はケマーズ社の認定加工メーカーです。 【◎】優:まったく、あるいはほとんど侵されず、実用に耐える。 【○】良:若干作用を受けるが、条件により実用に供せる。 【△】可:作用を受けるので、実用には好ましくない。 特徴・効果 【×】不可:侵されるので使用に適さない。 ◆非粘着性 以上のようにテフロン™フッ素樹脂は安定した分子構造により耐薬品性に優れる樹脂ですが、特殊な条件下  付着性の強い粘着物に対しても離型がよく、付着しないか、または、付着しにくい性質のことです。 では使用できないケースがあります。たとえば、高温でのフッ素(ガス)、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、 ◆撥水・撥油性 リチウム)とは反応を起こします。また、低分子化合物(モノマー)は、テフロン™フッ素樹脂の分子間の隙間  表面に水や油がついても良くはじきます。よって汚れがつきにくく簡単に洗浄できます。 に入り込み、堆積します。 ◆耐熱性・耐寒性  樹脂のなかでは耐熱性が高く、高温(260℃)に耐えます。また-250℃の低温にも耐えます。 耐薬品性を利用してできること ◆低摩擦性  すべりやすく低い摩擦係数をもっています。また、潤滑性に非常に優れています。 テフロン™フッ素樹脂の優れた耐薬品性を利用したものとして、各種ガスケットやパッキン類、配管やホー ◆耐薬品性 ス、貯蔵タンクや反応槽、熱交換器などがあり、これらは古くから化学プラント分野で使用されています。 酸やアルカリ等の化学薬品に侵されたり、腐食することがほとんどありません。   被膜が薄いと被膜はおかされませんが、薬品・溶液が被膜を浸透して基材を腐食させますので、被膜を厚く ほかにも酸・アルカリ・有機溶剤を使用する環境で、汎用樹脂では変形や変質をしてしまうときや、配管やタン して基材の腐食を防ぎます。 クの金属が腐食してしまう場合にテフロン™フッ素樹脂の成形品やライニング、コーティングが採用されてい ◆電気特性 ます。  絶縁耐力(絶縁破壊の強さ)、体積抵抗率、表面抵抗率は大きく、電気絶縁性に優れます。 おもな種類 四フッ化エチレンや、4Fと呼ばれています。 F F 連続使用温度が260℃と最も高く、耐熱性のほか、非粘着 C C 性、低摩擦性などにも優れています。 F F n PTFEの改良樹脂で、PTFEと同じ連続使用温度260℃を有し ⎛ F F ⎛ F F ています。 | C C | C C しかも熱溶融粘度が低く、PTFEでは得られなかったピンホー ⎝ F F ⎝ℓ O F ルの少ない連続被膜を得ることができるため、防食用コー C m F 2m+1 ℓ' n ティングとしては、最高の性能を持つフッ素樹脂加工です。ま た、PFAはPTFEより非粘着性に優れているため、高温離型用 として使用されています。 15 
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CHAPTER 03 テフロン™コーティング、 フッ素樹脂コーティングとは CHAPTER 02 | フッ素樹脂の特性を詳しく解説 ポリエチレン、テフロン™フッ素樹脂の耐酸/耐アルカリ性比較表 概要 硫酸 硝酸 塩酸 水酸化ナトリウム テフロン™コーティング (フッ素樹脂コーティング)とは、フッ素樹脂が持つさまざまな特性(非粘着性や撥水 王水 ※1 10% 98% 10% 61% 10% 38% 10% 30% 30% 性、すべり性に優れ、薬品に強く、高い耐熱温度を持つなど)を部材の表面に与えることで、くっつき・粘着の 防止、摩擦の低減、部材の保護などを実現する表面処理です。 RT RT RT RT RT RT RT RT 70℃ 家庭用フライパンのテフロン™加工は、テフロン™フッ素樹脂コーティングの特徴である非粘着性や耐熱性を フッ素樹脂PTFE ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 利用し、フライパンに食品をくっつきにくくするフッ素樹脂コーティングの一例です。 ポリエチレン × ◎ △ ◎ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ また「テフロン™」は米国ケマーズ社(旧デュポン社)の商標であり、「テフロン™」のブランド、名称を使用で ※1 濃塩酸:濃硝酸=3:1の混合物 きるのはケマーズ社の認定によるライセンス契約を結んだ加工メーカーに限られます。 評価基準 ※当社はケマーズ社の認定加工メーカーです。 【◎】優:まったく、あるいはほとんど侵されず、実用に耐える。 【○】良:若干作用を受けるが、条件により実用に供せる。 【△】可:作用を受けるので、実用には好ましくない。 特徴・効果 【×】不可:侵されるので使用に適さない。 ◆非粘着性 以上のようにテフロン™フッ素樹脂は安定した分子構造により耐薬品性に優れる樹脂ですが、特殊な条件下  付着性の強い粘着物に対しても離型がよく、付着しないか、または、付着しにくい性質のことです。 では使用できないケースがあります。たとえば、高温でのフッ素(ガス)、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、 ◆撥水・撥油性 リチウム)とは反応を起こします。また、低分子化合物(モノマー)は、テフロン™フッ素樹脂の分子間の隙間  表面に水や油がついても良くはじきます。よって汚れがつきにくく簡単に洗浄できます。 に入り込み、堆積します。 ◆耐熱性・耐寒性  樹脂のなかでは耐熱性が高く、高温(260℃)に耐えます。また-250℃の低温にも耐えます。 耐薬品性を利用してできること ◆低摩擦性  すべりやすく低い摩擦係数をもっています。また、潤滑性に非常に優れています。 テフロン™フッ素樹脂の優れた耐薬品性を利用したものとして、各種ガスケットやパッキン類、配管やホー ◆耐薬品性 ス、貯蔵タンクや反応槽、熱交換器などがあり、これらは古くから化学プラント分野で使用されています。 酸やアルカリ等の化学薬品に侵されたり、腐食することがほとんどありません。   被膜が薄いと被膜はおかされませんが、薬品・溶液が被膜を浸透して基材を腐食させますので、被膜を厚く ほかにも酸・アルカリ・有機溶剤を使用する環境で、汎用樹脂では変形や変質をしてしまうときや、配管やタン して基材の腐食を防ぎます。 クの金属が腐食してしまう場合にテフロン™フッ素樹脂の成形品やライニング、コーティングが採用されてい ◆電気特性 ます。  絶縁耐力(絶縁破壊の強さ)、体積抵抗率、表面抵抗率は大きく、電気絶縁性に優れます。 おもな種類 四フッ化エチレンや、4Fと呼ばれています。 F F 連続使用温度が260℃と最も高く、耐熱性のほか、非粘着 C C 性、低摩擦性などにも優れています。 F F n PTFEの改良樹脂で、PTFEと同じ連続使用温度260℃を有し ⎛ F F ⎛ F F ています。 | C C | C C しかも熱溶融粘度が低く、PTFEでは得られなかったピンホー ⎝ F F ⎝ℓ O F ルの少ない連続被膜を得ることができるため、防食用コー C m F 2m+1 ℓ' n ティングとしては、最高の性能を持つフッ素樹脂加工です。ま た、PFAはPTFEより非粘着性に優れているため、高温離型用 として使用されています。 16 
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CHAPTER 03 | テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとは CHAPTER 03 | テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとは PTFEの改良樹脂ですが、耐熱性はPTFEより低くなります。 ⎛ F F ⎛ F F 焼成により滑らかなピンホールの少ない被膜を得ることがで | C C | C C きます。 ⎝ F F ⎝ℓ F F C F 4F6Fとか四・六フッ化と呼ばれています。 F m n 前記3つのフッ素樹脂と比べると、非粘着性、耐熱性、耐薬 ⎛ H H ⎛ ⎛ F F ⎛ 品性において、多少劣ってはいますが、優れた機械的性質に | C C | | C C | より耐摩耗性に優れていますし、防食用途にもよく使用され ⎝ H H ⎝m ⎝ F F ⎝n ています。 ◆高温型変成タイプ ※1 塩素系アミン系有機酸系を除く  フッ素樹脂の耐熱性を下げることなく、基材との密着力を増し、また、耐摩耗性を向上させたものです。 ◆低温型変成タイプ  フッ素樹脂の持つ低摩擦性や非粘着性を生かし、低温で加工できるようにしたタイプです。  低温焼成が必要な金属やゴム、プラスチックにも加工できるタイプもあります。 仕様・性能比較 膜厚…5μm~1mm(種類によって2~5mmまで可能) ※詳細は営業員にご相談ください。 基材…金属、セラミックス(樹脂、ゴム、紙も可能な場合があります) 色…ブラック、グレー、グリーン、ブラウン、メタリック系など ※コーティングの色は仕様により異なります。 ※1 耐食耐熱温度までの範囲とする ※2 塩素系アミン系有機酸系を除く おもな用途 ◆食品用機器 練り機/ロール/焼き型など ◆産業用非粘着分野 攪拌機/遠心分離機/ヒートシーラ/成形用金型/ロール類など ◆化学プラント 配管/タンク類/バルブ/ポンプ類など ◆半導体製造装置 めっき治具関係/はんだ治具/半導体製造ラインなど ◆潤滑関係 ベアリング/ピストンリング/精密機器部品/エスカレーターガイドなど ◆OA機器 定着ロール/分離爪など ◆絶縁関連 各種電極/精密機器部品/碍子など ◆航空宇宙産業機器 17 
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CHAPTER 03 | テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとは CHAPTER 03 | テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングとは PTFEの改良樹脂ですが、耐熱性はPTFEより低くなります。 ⎛ F F ⎛ F F 焼成により滑らかなピンホールの少ない被膜を得ることがで | C C | C C コーティング 加工温度 標準膜厚 耐熱温度 室温硬度 撥水角( )゚ 耐溶剤性 レジン (℃) (μm) (℃) (鉛筆) 非粘着性 すべり性 水 /油 ※1 きます。 ⎝ F F ⎝ℓ F F C F (nHD) (室温) 4F6Fとか四・六フッ化と呼ばれています。 F m n PTFE 400 20 260 F 〜 2H ○ ◎ 110-115/ 45-50 ○ FEP 400 50 200 F 〜 H ◎ ○ 110-115/ 45-50 ○ 前記3つのフッ素樹脂と比べると、非粘着性、耐熱性、耐薬 ⎛ H H ⎛ ⎛ F F ⎛ PFA 400 50 200-260 F 〜 H ◎ ○ 110-115/ 品性において、多少劣ってはいますが、優れた機械的性質に | C C | | C C | 45-50 ○ より耐摩耗性に優れていますし、防食用途にもよく使用され ⎝ H H ⎝m ⎝ F F ⎝n 変性 タイプ 400 20 250 H〜 2H ○ ◎ 100-105/ 48-53 ○ ています。 変性 タイプ 180 20 150 2H 〜 4H △ ○ 90-95/ 35-40 ○ ◆高温型変成タイプ ※1 塩素系アミン系有機酸系を除く  フッ素樹脂の耐熱性を下げることなく、基材との密着力を増し、また、耐摩耗性を向上させたものです。 ◆低温型変成タイプ  フッ素樹脂の持つ低摩擦性や非粘着性を生かし、低温で加工できるようにしたタイプです。  低温焼成が必要な金属やゴム、プラスチックにも加工できるタイプもあります。 耐食用途で使用 ※ 1 コーティング 標準 加工 耐熱 接触角( )゚ レジン 膜厚 温度 温度 非粘着性 水 /油 備考 (μm) (℃) (℃) 耐食耐熱 耐酸性 耐アル 耐溶剤性 仕様・性能比較 (nHD) 温度(℃) カリ性 ※2 膜厚…5μm~1mm(種類によって2~5mmまで可能) PFA 300 400 260 〜 150 ◎ ◎ ◎ ◎ 110-115/ 防食 45-50 用途 ※詳細は営業員にご相談ください。 ETFE 500 300 150 〜 80 ◎ △ ○ △ 85-90/ 防食 基材…金属、セラミックス(樹脂、ゴム、紙も可能な場合があります) 30-35 用途 色…ブラック、グレー、グリーン、ブラウン、メタリック系など ※コーティングの色は仕様により異なります。 EFEP 300 250 130 〜 60 ◎ △ ○ △ 85-90/ 防食 30-35 用途 PFA 50 400 260 常温 ◎ ◎ ◎ ◎ 110-115/ 軽防食 45-50 用途 ※1 耐食耐熱温度までの範囲とする ※2 塩素系アミン系有機酸系を除く おもな用途 ◆食品用機器 練り機/ロール/焼き型など ◆産業用非粘着分野 攪拌機/遠心分離機/ヒートシーラ/成形用金型/ロール類など ◆化学プラント 配管/タンク類/バルブ/ポンプ類など ◆半導体製造装置 めっき治具関係/はんだ治具/半導体製造ラインなど ◆潤滑関係 ベアリング/ピストンリング/精密機器部品/エスカレーターガイドなど ◆OA機器 定着ロール/分離爪など ◆絶縁関連 各種電極/精密機器部品/碍子など ◆航空宇宙産業機器 18 
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CHAPTER 04 テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)の 加工方法 CHAPTER 04 | テフロン™コーティング(フッ素樹脂コーティング)の加工方法 フッ素樹脂コーティングは、基材(金属やセラミックスなどの部材の表面)にフッ素樹脂の特徴を与える目的で サンドブラスト 加工する表面処理です。非粘着性を必要とする場合や耐食性を必要とする場合など、用途や機能に応じてさ まざまな種類がありますが、ここでは代表的なフッ素樹脂コーティングの加工方法をご紹介します。 サンドブラスト工程では、基材表面に圧縮空気を用いて高速で砥粒を打ち付けることにより粗面化します。 サンドブラストの目的 1 2 3 4 5 6 脱 サ プ 中 焼 検 ン ラ 間  ・錆や汚れの除去            ・目視できない酸化膜の除去による表面活性化  脂 ド イ コ   ブ マ ー 成  査  ・粗面化することで塗料との接触面積を上げる ・濡れ性の向上 受入 ラ ー ト・ 納品 ス 塗 ト ト 装 ッ プ 先ほどご説明した通り、空焼き後の基材(金属)表面には、酸化膜が形成されています。 コ ー 酸化膜は基材との密着性が弱いため、そのままコーティング加工を行った場合、密着の低下を起こします。 ト 塗 そこで、サンドブラストを行うことにより酸化膜を除去し、コーティングが密着しやすい下地を作ります。 装 また、サンドブラスト後の粗面化した表面は面積が増え、酸化膜が除去されることで活性化します。これがア ンカー効果を生むと同時に、濡れ性が向上し、コーティングと基材の密着強度が高まります。 脱脂 アンカー効果のイメージ お客様から基材をお預かりしたら、はじめに脱脂を行います。 基材には、加工時の油や錆止めなど、さまざまなものが付着している可能性があります。 樹脂 汚れや付着物がある状態でコーティングすると塗膜密着不良の原因になるため、これらを除去する目的で脱 脂を行います。 基材(金属) 吉田SKTでは主に、「空焼き」 という方法で脱脂を行います。 焼成炉内で400℃~500℃程度の加熱を行います。最終の焼成温度(最終工程でコーティング膜を焼成する そもそもテフロン™フッ素樹脂は非粘着性という特徴を備えるがゆえに、基材にくっつきにくい材料です。 際の温度)以上で基材表面の汚れや付着物を完全に分解・炭化します。 くっつきにくい材料を基材にくっつけるため、以上のようなしっかりとした下地作りが重要になります。 ただしこの方法は、上記温度に耐えられる基材にのみ採用し、低融点の金属やゴム、プラスチックに対して は、それぞれの適切な脱脂を行います。 サンドブラスト後の基材状態 基材:ステンレス 空焼きの場合、金属を大気中で加熱するので表面に酸化膜が形成されます。酸化膜は金属の種類や加熱温 度などにより色調が変化し、一般的に「テンパーカラー」と呼ばれます。 空焼き前後の基材状態 基材:ステンレス サンドブラストの留意点 ・高速で砥粒を打ち付けるため、薄肉の基材だと歪みや変形の可能性があります。 (薄物の場合は、砥粒を打ち付ける方向や速度、量を調整することで、できるだけ歪みが出ないように対策を 行うこともあります。) ・サンドブラストに適さない基材(ゴム、樹脂や非常に薄い金属など)には、それぞれの基材に合わせてエッチ 空焼前 空焼後(加熱により黄金色に変色) ングなど別の手法を用いる場合があります。 19