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サーモパイルの応用

ハンドブック

サーモパイルを使用した温度計を理解するために

サーモパイルがわかる!!

非接触で温度管理をしたい方必見です。
弊社ホームページでも大変好評の内容となっています。

このカタログについて

ドキュメント名 サーモパイルの応用
ドキュメント種別 ハンドブック
ファイルサイズ 1.3Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 エスエスシー株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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【内容】サーモパイルの応用_R1

サーモパイルの応用技術 -非接触温度センサの設計・製作 - 度管理ができる非接触温度計の需要が増大しまし はじめに た。また、体温計分野でも、瞬時に測れる耳式体温 計の急速な普及が追い風となって、 民生用の非接触 -なぜ非接触で温度を計測できるのか 温度計が注目されてもいます。  すべての物体は絶対温度を基準にした放射エネル ギを放出しており、 この放射エネルギを測定すれ -接触温度計との違い ば、非接触で温度を測ることができます。 放射エ  非接触温度計は従来型の接触温度計と違って、下 ネルギには波長依存性がなく、黒い物に吸収される 記のような特徴があります。 という性質があります。物体がエネルギを吸収する と温度が上昇します。この温度上昇を測定すれば、 ◆測定物の熱容量を考慮する必要がない 対象物の温度を測定したのと同じこと になります。 測定する物に触らないので,接触による温度変化を ここで紹介するサーモパイル素子は熱電対の一種で 考慮せずに済みます。 す。 サーモパイルを応用した非接触温度計(センサ) は「放射温度計(センサ)」〈写真 1〉とも呼ばれて ◆測定値が短時間で安定する います。 つまり短時間で測定できます。 <写真 1>非接触温度計 SST シリーズ ◆センサの熱劣化 センサの熱劣化がない 非接触なのでセンサ素子部が高温などによって化学 変化(熱劣化)しません。 ◆衛生的 被測定物に接触しないので、衛生的です。 -急速に普及してきた背景  これまで、非接触の温度計は、主に工業分野で使 われてきました。 例えば、高温物体を測るのに、 接触式ですと温度計の熱劣化などで出力が低下する ため、 非接触型が利用されています。 特に鉄鋼、 石油化学、石油精製などの産業分野で利用されて きました。 そのため測定レンジ幅が広く,精度や 再現性が重要であり、高価な測定器でした。 とこ ろが O - 157 による食中毒以降は、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point) などの食 品安全規格が施行され、食品に触れずに衛生的に温
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<図 1>熱電対による温度測定の基本構成 -光学フィルタの必要性 基礎知識  サーモパイルの受光部には波長依存性のない金黒 -動作原理と内部構造 を塗布されているのが一般的で、どの波長の光(電  熱電対とは,ゼーベック効果によって生じる熱起 磁波)にも反応します。しかし、実際には温度測定 電力を利用したもので、温度測定に使われます。 < する用途に 応じてセンサ前面に波長選択フィルタ 図 1> は熱電対による温度測定の基本構成です。 熱 を付けます。温度測定用には、一般的には赤外線領 電対の出力電圧は温接点(測定点)と冷接点(基準 域を通過するフィルタを付けて可視光を遮断し太陽 点)の温度差に比例します。サーモパイル(センサ 光影響の低減及び 大気中水分の影響についても低 素子)は、この極微小熱電対を多数直列接続(パイ 減しています。絶対温度と赤外線波長との関係はウ ル)したものです。当社のサーモパイル(センサ素子) イーンの変位則と呼ばれ、簡単にその温度の最大エ の外観を〈写真 3〉に、内部構造を〈写真 4〉に示 ネルギ放射波長を計算(1) できます。波長をλ[μ します。センサ内に温接点と冷接点が同居している m]、絶対温度を T[K]とすると、その関係は次式 ため、熱電対のように補償導線を使って測定点から で表されます。 受信器まで、出力信号を延長できないのがこのセン サ素子の特徴です。通常、熱電対素子はビスマスと λ= 2897 / T 例えば体温が 37℃なら, アンチモンなどの異種金属でできています。 T ≒ 273 十 37 = 310K ですから、 λ= 2897 / 310 ≒ 9.35 μ m と求められます。 通常使われる光学フィルタは約 6 ~ 14 μ m のバ ンドパス特性なので、 この程度の温度はよく測れる ことになります。 <写真 3>当社のサーモパイルセンサの外観 波長選択フィルタ 金黒の受光面 (薄膜フィルム ) 温 接 点 端 子 ヒートシンク 冷接点端子 (アルミナ基板 ) <写真 4>当社のサーモパイルセンサの内部
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- 光学フィルタの種類 <シリコン (Si) >透過波長 1.2 ~ 15 μm  比較的安価で、幅広い波長帯に対応でき、一般的 には用途に応じたコーティングを施して使用されま す。温度計測、人検知、炎検知等に使用されること が多いです。 <ゲルマニウム (Ge) >透過波長 1.8 ~ 23 μm <図 2>黒体炉によるサーモパイルの 出力電圧測定方法  Si フィルターの標準品では 9 μmの波長で深い 吸収がありますが Ge フィルターではそれがありま せん。ガス濃度計測、温度計測等に使用されること -温度とセンサ出力の関係 が多いです。  放射温度センサの校正には黒体炉を用います。   黒体炉といっても、炉が黒いわけではありません。 <サファイア (Al2O3) >透過波長 0.17 ~ 6.5 μm 放射率 100%とは、発熱体からの赤外線放射が  高価ですが対環境性と透過率が優れており、可視 100%という意味です。 現在、メーカ製の黒体炉は 光も透過するため、対象を視認しながらの計測に用 放射率 95%程度のものが作られているようです。 いることが出来ます。ガス計測、炎検知等に使用さ そのため市販の非接触温度計は放射率 95%(0.95) れることが多いです。 で校正表示されているのが多いようで、 この黒体炉 温度の放射熱量とセンサ出力の関係を調べるとほぼ <カルコゲナイドガラス (Ch) > 同じ傾向にあります。 < 図 3> は各温度における放 透過波長 0.75 ~ 14 μm 射 エネルギ量とサーモパイル出力の関係を0℃で  成形を金型でおこなうことが出来るため、大量生 グラフ化したものです。センサの出力電圧は放射 産時のコスト性に優れております。温度計測、ガス 熱量に比例していますが直線的ではないので、 線形 計測等に使用されることが多いです。 化にはソフトウェアやハードウェアでの処理が必要 です。 -サーモパイル素子の種類 <図 3>各温度における放射エネルギー量と サーモパイル出力の関係  サーモパイル素子は、材料によって大きく2分さ れています。 この材料の違いによって感度や出力 インピーダンスなどが異なります。 (1) シリコン系材料 シリコンウェハの異方エッチ ングと酸化膜技術をベースに異種金属を蒸着固定化 したもので、 冷接点はシリコンウェハ本体です。 (2) メンブレン(プラスチック)系材料プラスチッ ク薄膜上に異種金属を蒸着、固定化したものです。 冷接点は薄膜固定材料です。  当社のセンサはフィルムタイプで、高感度であり ながら内部抵抗は低く、取扱い易いセンサ素子です。 < 図 2> に出力電圧の測定方法を示します。
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- 放射率を定める -対象物との距離に依存しない条件を守る  測定対象物から放射される熱量を測って温度に換  センサの視野角(FOV : Field of view)以上に 算する原理なので、測定対象物からの放射率を知る 測定対象物が大きい事が必要条件です。 図5のよ 必要があります。放射率は < 図 4> のように物体の うな視野角と距離が無関係になる 条件を守るよう 表面状態に大きく影響されるので注意が必要 であ にしてください。 一般的には、測定対象の寸法が り、ご参考までに各種物体の放射率を < 表 1> に示 視野径に 関する提示仕様値の 1.5 倍程度(以上) します。簡易的には測定対象物に特殊なテープ(黒 を 確保する事が望ましいようです。 体テープなど)や、放射率が既知のスプレー(黒色 艶消し 耐熱スプレー塗料など)を貼付すると比較 <図 5>距離と視野角 (FOV) の関係 的簡単に放射準を測定できます。放射率をあらかじ め測定できない場合は、補正が必要です。 <図 4>同一温度の物体でも表面状態によって 放射率が異なる <表 1>各種物体の放射率
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<表 2>試作した温度計モジュールの仕様 非接触温度センサ の設計 (実験用 ) -設計仕様と基礎データの確認  入門用として当社のサーモパイルを使った基本回 路を設計してみました。 出力の線形化は行わず、 サーモパイルによる温度測定の考え方を理解しても らうことに主眼を置きました。そのため線形化に必 要な信号として、周囲温度V th(サーモパイルの 冷接点温度)、測定物の温度対応の信号V tp(サー モパイル素子の出力)の両方を出力します。必要な らこれらの信号からマイコンなどで線形化すること ができます。< 表 2> に設計仕様をまとめました。 サーモパイルとしては MIR-1002( 自社製品 )を使い ます。 これは、冷接点検出用サーミスタを内蔵し たタイプです。温度計の設計上、あらかじめ決めな ければならないのは次の事項です。 <図 6>サーモパイルセンサの測定温度 (黒体炉 ) に対する出力電圧の実測結果 (1) 測定する対象物を考慮して FOV を決定する光学 系の設計が必要  今回の提案ではフレネルレンズを使って FOV を 6:1としました。 (2) 非接触温度計の測定範囲の決定  測定温度範囲は- 20 ~+ 250℃とします。 サー モパイルの測定温度(黒体炉)に対する出力電圧の 実測結果を <図 6> に示します。 (3) 使用温度範囲を決め、周囲温度上昇に対する出 力電圧の減少割合を測定  動作原理上、センサ出力電圧は周囲温度変化の影 響を受けるので、それを相殺するために 出力電圧 の減少割合を測っておきます。 (4) モジュールの出力電圧感度を測定  出力電圧感度を測るのに黒体炉がない場合は、高 温なら温度均一なホット・プレート、100℃以下な ら温調付き水槽のガラス面を黒く塗りつぶすか黒色 テープを貼合して実験装置にします。実験装置で周 囲温度を一定にして、ターゲット温度(黒体炉)を 変化させたときの出力変化をサーモパイル感度とし て mV/℃ で求めます。また、ターゲット温度をー 定にして周囲温度を変化させたときの減少感度を求 めます。一般的には同じ感度になります。
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- 回路の基本的動作 <図 9>サーミスタ出力を直列抵抗で リニアライズした場合の温度特性  基本的な回路構成を < 図 7> に、実際の回路を < 図 8> に示します。 IC1 にはオフセットやドリフ トの心配をせずにすむチョッバ型 OP アンプとして LTC1050 を、IC2 にはレール・ツー・レール出力の LMV358 を使いました。測定物の温度を To、周囲温 度を Ta で表すと,サーモパイルは、前述したよう に差分(To - Ta)を 出力します。このため Ta が 変化すると指示値も変化します。そこで Ta の変化 分を To に加算するような回路にします。回路では Ta 相当分のサーミスタ出力 は IC2 a の出力をサー -定数決定 モパイル出力の一個に接続します。こうすると Ta  回路はサーモパイルの出力信号の増幅に IC1 を, が変わってもサーミスタ出力でセンサ出力を補償す サーミスタ出力信号の増幅に IC2a をそれぞれ使い るので周囲温度の影響を解消できます。 ます。サーミスタには直列抵抗 R21 ~ R23 を入れて 簡易的に直線化し、<図 9> の特性を得ています。 <図 7>非接触温度計の基本回路 -To & Ta の感度合わせ  先に実験で求めた出力変化データとサーモパイル の出力仕様から IC1 の増幅度を決めます。FOV が 6:1のホルダを使ったサーモパイル自身の出力 は 0.00801mV /℃@ 100℃です。 したがって温度 計の出力を約 10 m V /℃として設計すると、アン プゲインは 10/0.00801 ≒ 1250 倍 必要となりま す。 センサばらつきを士 20%とすると、ゲインは 1000 ~ 1500 倍あればよいことに なります。R6を <図 8>非接触温度計の実用回路 1MΩとすると R7 + VR1 ≒ 0.66k ~ 1k Ωとなりま す。 なお、LTC1050 は内部チョッパ周波数 2.5kHz のチョッパ型 OP アンプです。チョッパ・ノイズ除 去用 LPF のカットオフ周波数は R6 と C4 で決まり, 約 1.6Hz としました。
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- 周囲温度 (3) レンズを使用して視野を絞る方式  周囲温度の変化分についても、センサ出力と同様 FOV が最大15:1 程度 の感度になるよう IC2 a の増幅度を決めます。Ta が上昇したらセンサ出力が低下するので、サーミ  概略 FOV は上記のとおりです 。 特殊な光学系で スタ出力信号はその分上昇するような 特性をもつ ピンポイントを測定できるものもありますが、かな 必要があります。動作温度範囲内(0 ~ 50℃)で り高価となっています。ホルダには < 写真 5> のよ は、シミュレーション結果から R21 + R23 = 27k Ω、 うなものがあります。 今回は FOV が6:1 のフレ R23 = 5.6k Ωと すると約 8.3mV/℃の出力となりま ネルレンズとホルダ <図 10> を使いました。 した。 設計目標の 10mV/℃とするためにアンプゲ インは 10/8.3 ≒ 1.2 倍、サーミスタのばらつきは <写真 5>各種ホルダの外観 ± 2%程度ですが、± 10%見込むと最終ゲインは 1.08 ~ 1.32 倍あればよい ことになります。非反 転増幅器なので、R0 = 2.7k Ω、R10 = 1k Ω、VR2 = 5k Ωとしました。 -放射率の補正について  前述したように同一温度の物体でも放射率に応じ て赤外線放射量が異なります。そこで、その分をセ ンサ・アンプの VR1 を可変して対応することにしま す。 < 図 8> の回路では放射率を約 0.7 ~ 1.0 まで 調整可能です。 <図 10 >使用したレンズ・ホルダの寸法 (単位:mm) 光学系の設計 -視野角(FOV)の選定 *定義  FOV は、前出の < 図5> のように測定物までの距 離とそのときのスポット径で表します。FOV が 10: 1 とは,100mm 離れた物体の直径 10mm の円を測定 することを表しています。 *レンズの材質  光学系の設計では、赤外線を透過する材質を使う 必要があります。通常のガラスは、放射温度計の測 定波長域の光を通しません。フレネルレンズの材質 は赤外線を比較的通すポリエチレン製ですが、耐熱 温度が 100℃程度なので、 ご使用にあたっては注意 が必要です。 *視野を絞る方法  次のような方法が考えられます。 (1) 物理的に視野を絞る力式 FOV が最大 3:1程度 (2) フレネルレンズで視野を絞る方式 FOV が最大 8:1程度
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*FOV の測定法によっても数値にかなりの差が出る -光学系を設計する上での留意点  測定方法には,スリット法、シャッタ法と首振り * 光学系で視野を絞ると測定物体からセンサに到達 法 が主に使われています。< 図 11> は FOV の測定 するエネルギが減少 法です。 平行移動法の方が面積 減少法や首振り法  見かけ上のセンサ感度が下がるので、 アンプの増 に比較して FOV の数値は大きく表示 されます。ま 幅度を上げる必要があります。 しかし、アンプの た、有効エネルギを何%にするかに よっても値が 増幅度を高めると、OP アンプのドリフトや温度特 達ってきます。現在、各社では 90%エネルギを基 性が温度計の性能に影響してきます。 準にしているようです。 *レンズ・ホルダの温度変化がセンサ入力へ影響 <図 11 > FOV の選定方法  レンズを使うには、それを保持するホルダが必要 で、 その温度変化(周囲温度)がセンサヘの入力信 号となって、 温度ドリフトなどへ影響してきます。 *赤外線は目に見えない為、試行錯誤で調整  レンズなどの焦点距離がわかっても、光軸合わせ、 センサのセンシング部との調整などが試行錯誤の 作業になり、このために有効な治具の開発も各企業 のノウハウとなります。 < 図 12> は、今回使った ホルダの冶貝です。この治具で大抵の視野角絞りを 確認できます。 実際に使用したフレネルレンズの FOV 値6:1は、メーカ公表値の焦点距離 25mm で の値ですが、 実機では 27mm の位置に設置して最高 感度を得ています。 <図 12 >使用したホルダの治具(単位:mm)
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製作と調整  準備する物は、熱源(温度のわかっている物)と 室温(環境温度=Ta)測定器です。 <写真 6>完成した温度計モジュール -ゲイン調整  < 図 8> の回路はリニアライズしない信号を出力 します。 そこで、調整点として 100℃近辺の出力 を 10mV/℃に設定しました。 *調整方法 (1) 室温計で現在の温度 Ta℃を確認します。 サー モパイル素子の3番ピンと1番ピンをみの虫クリッ プ などで短絡し、アンプ出力が Ta × 10 m V にな るように VR1 を調整します。 (2) 前述した短絡を外し、温度 To℃の熱源に向け ます。そのときのアンプ出力 Vtp が To × 10 m V となる ように VR1 を調整します。 <図 13 >センサ底部の処理前後の特性の違い - センサ底部の処理によって熱伝導率が変わるの <図 14 >試作した温度計モジュールの 出力電圧 -温度特性 で,VR2 を再調整  VR1 と VR2 を調整した後で、回路の動作特性を 確認するために目標温度 To を一定にして、周囲温 度 を変化させます。 例えば、出力変化しないはず が < 図 13>(a) のように変化した場合の原因は、セ ンサ 内蔵サーミスタが、主としてセンサの取り付 け方法(ビス留め)に起因し熱伝導状態に大きく変 化が起こり、 周囲温度変化を補償(追従)できなく なっていたことによります。 VR2 を再調整して、< 図13>(b)に示すような特性を得ることができます。 センサ底部の取り付け方を最初に決め、その後で基 礎データを取る手法が有効です。 < 写真 6> は完成 した温度計モジュールの外観です。 このモジュー ルの特性を < 図 14> に示します。 このモジュール の温度ドリフトは、ほぼ問題ないレベルとなります。
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- 湯気のある調理器の温度測定や手持ちでの -評価 測定時のドリフト *USB 接続のデータ収集装置  モジュールを使って湯気の出ている電磁調理器の  USB 用A-Dコンバータ(5)にソフトウェア 温度を測定或いは手でもって測定すると、 指示値に を追加し、試作モジュールのデータを取り込んで ばらつきや温度変化の発生する場合が有ります。 評価 しました。 この装置を通じてセンサ出力を 原因は基板がむき出しであることや、手でもつこと Windows 上の Excel に取り込み、温度計モジュー によってホルダの温度がわずかに上昇し、 温度ドリ ル の電圧出力をリニアライズして温度に変換し、 フトが発生するためです。 対策として、モジュー パソコン画面に表示します。 電源は USB から 供 ルを断熱チューブに入れて ニ重管構造 <写真 7> に 給します。 しますと、ばらつきや温度変化は大きく軽減できま す。 *測定例  当社製作のモジュールを用い、< 写真 7・8・9> <写真 7>沸騰数位の温度を測定中の様子 の如く実験設備を対象に測定した結果に ついて以 下に記述していますのでご参考として下さい。 ▶ 沸騰水の温度  市販の電磁調理器にすき焼き鍋を載せ、運転出力 調整を弱に設定し、水を入れ沸騰させて温度を測 定。 写真7 が測定の様子です。 本機の測定値は 100.2℃、市販の放射温度計では 98.1℃を示してい ます。 ▶ 過熱した鉄板の温度  < 表 1> に記したように物体表面の放射率を十分 <写真 8>鉄板の温度を測定中の様子 考慮して測定する必要があることが分かります。 ▶ 電源供給ブスバーの温度  分電盤の幅 30mm のブスバーの温度を測定。セン サの視野角を考えて、< 写真 9> のようにブスバー の直近から測定した結果は 24.8℃でした。また、 約 20cm 離れて測定すると 21℃を示しました。 室 温は 20℃だったので、稼動状態では室温より上昇 していることか分かりました。なお市販の放射温度 計では 23.0℃でした。 この結果からも、視野角範 囲で測定しないと誤差の生じることがわかります。 <写真 9>配電盤のブス・バーの温度を 測定中の様子
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参考・引用文献 (1)大森豊明;赤外線の話、日刊工業新聞社 (2)高峰廣友;やさしい遠赤外線工学,工業調査会 (3)トランジスタ技術 1998 年 6 月号 , 特集「す ぐ使えるセンサ応用回路集」, pp.223 ~ 306,CQ 出版㈱ (4)柳川誠介:熱電対の動作原理と応用回路 , ト ランジスタ技術 1998 年 6 月号 , p.230, CQ 出版 ㈱ (5)渡辺明禎:USB用A-Dコンバータの製作、 トランジスタ技術 2000 年 6 月号, pp.210 ~ 219, CQ 出版㈱ (6)田中伸雄:サーモパイル・センサによる非接触 温度計の設計と製作、トランジスタ技術 2003 年 5 月号、pp.233 ~ 241,CQ 出版㈱
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【裏表紙】サーモパイルの応用_R1

エスエスシー株式会社 〒511-0911 三重県桑名市大字額田 293番地  TEL : 0594-33-3080 FAX : 0594-33-3081 https://www.ssc-inc.jp 記載内容は、 発売時点での当社調べであり、 予告なく変更する場合があります。