1/94ページ
カタログの表紙 カタログの表紙 カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(13.4Mb)

新しい超音波洗浄 2010・05.22

事例紹介

超音波洗浄―― テキスト&ヒント集 ――

新しい超音波洗浄 2010・05.22
―― テキスト&ヒント集 ――
この資料は以下の内容です
1)超音波洗浄において「超音波」を有効に利用するための説明資料
2)「洗浄システム」を検討・提案するための超音波洗浄についての説明資料 3)「洗浄装置」を設計するための設計についての説明資料
4)実験データを解析するための時系列データ処理についての説明資料
5)新しい洗浄方法の提案資料

このカタログについて

ドキュメント名 新しい超音波洗浄 2010・05.22
ドキュメント種別 事例紹介
ファイルサイズ 13.4Mb
取り扱い企業 超音波システム研究所 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

この企業の関連カタログ

このカタログの内容

Page1

新しい超音波洗浄 ―― テキスト&ヒント集 ―― この資料は以下の内容です 1)超音波洗浄において「超音波」を有効に利用するための説明資料 2)「洗浄システム」を検討・提案するための超音波洗浄についての説明資料 3)「洗浄装置」を設計するための設計についての説明資料 4)実験データを解析するための時系列データ処理についての説明資料 5)新しい洗浄方法の提案資 Ver.2 2010・05.22 超音波システム研究所 1
Page2

目次 <洗浄の概要>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 <現状の問題>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 <問題の整理>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 <対処について>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 <新しい洗浄の特徴>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 <論理モデルの作成について> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 <データの統計解析に関する資料> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 <新しい洗浄技術開発の手順および注意事項> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 <効果的な超音波洗浄技術について> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 <固有の洗浄物に対する具体的検討項目について> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 < Washing Portfolio> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 <超音波の周波数と出力を決めるための資料>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 実験データ の資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 <洗浄水槽の液体と気体の激しい反応を示すグラフ1> ・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 <マイクロバブルについて>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 <実施例>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 < 具体的な改良ポイントの説明 >・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 <新しい超音波システムの制御 !!> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 <メガネの超音波洗浄器について>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 2
Page3

<洗浄の概要> 洗浄とは、洗浄物から汚れを除去すること <超音波洗浄> 定義1(一般的な超音波洗浄) 超音波洗浄とは、洗浄液中に超音波を照射し、発生する衝撃波で洗浄物から汚れを除去 すること 定義2(理想的な超音波洗浄) 超音波洗浄とは、汚れが除去された被着体の表面性が満足される状態になるようにする こと 定義3(超音波洗浄の原理) 超音波洗浄には、物理作用と化学作用による 2種類の要素がある 物理作用はキャビテーションあるいは水の流速により洗浄を行うこと 化学作用は水や洗浄液の化学反応を促進させることで洗浄を行うこと 効果のある洗浄の条件 効果のある洗浄とは 汚れのある洗浄物の界面擬集エネルギーに打ち勝つ超音波エネルギー を界面に与えることで汚れが除去されること 汚れのない洗浄物の表面擬集エネルギーよりも小さい超音波エネルギー を界面に与えることで洗浄物にダメージを与えないこと 条件 1) 1年の中で、季節変化の影響による洗浄効果の変化を最小限にする 2) 1日の中で、時間経過の影響による洗浄効果の変化を最小限にする 3) 洗浄液の変化による洗浄効果の変化を最小限にする 4) 除去した汚れの再付着量を最小限にする 5) 洗浄液・洗浄物・洗浄治具・洗浄水槽・超音波 等の最適化により洗浄効率 を高くする 3
Page4

<現状の問題> 1) 洗浄条件(洗浄物や汚れ)により目的が異なるため一般論を利用できない場合がある 同じ材質の同様な汚れでも、加工方法・製造方法に対する違いにより、汚れの付着状態 が異なり洗浄システムは変わってくる場合がある 2) 超音波メーカの問題 超音波メーカは音圧を中心とした単純な測定値を洗浄効果に結びつけて提案している ものが多い 超音波メーカは規模(資本、売り上げ、社員数 等)が小さく、超音波の基礎事項につい て幅広く研究することは難しい 例 ロシアの超音波資料を十分に活用しているメーカは少ない 3) 製造方法・材料 等の技術進歩により洗浄の対象が常に大きく変化している 適切な洗浄を行うためには、 最先端の工学的な技術(機械工学・電気工学・物理学・化学 等) に対する理解と応用(工夫)が必要である 4) IT技術に対する取り組みの遅れがある 特に、制御方法と制御による効果の確認技術が大きく遅れている 5) 各メーカ独自の技術に対して 適切な超音波洗浄システムを提案するためには 複合技術を追求していく必要がある 例 固有技術が特殊研磨技術の場合 問題は洗剤や超音波に対する洗浄効果が不明であること 固有技術がオリジナル洗剤の場合 問題は超音波による化学反応の影響が不明であること 固有技術が高いレベルの機械加工技術の場合 問題は高い加工レベルにより汚れの付着力が強くなる傾向にあること <超音波による表面改質> 超音波洗浄の「表面性が満足される状態」と言うことは以下のような表面の改質につながります 超音波による物理作用・化学作用は表面に対して様々な効果があります 例1 金属表面の応力除去 例2 樹脂表面の均質化 例3 OHラジカル反応による表面の改質 注:樹脂への超音波照射は洗浄物に合わせたダメージを発生させないための工夫が必要です 4
Page5

<問題の整理> 「 洗浄物から汚れを除去できるエネルギーを安定(注)して発生し続けられ なければ超音波洗浄の効果について言及できない 」 一定の超音波の音圧を実現し、制御による音圧変化を行うことが出来る洗浄システムの 場合、目的とする洗浄効果について検討することが可能になります (一定の超音波の音圧を実現する方法については別項目に記載します) 注:安定と言うことは一定と言う場合もありますが、変化することで洗浄エネルギーが安定し ている場合もあります 注:環境変化(洗浄液の変化、洗浄水槽の形状、材質、気温、湿度 等)、時間変化に対 して安定した洗浄力をコントロールしている超音波洗浄装置はありません 注:超音波と洗浄力の関係をキャビテーションのみ、あるいは加速度のみで扱うとトラブ ルを起こしやすい 「 超音波による洗浄は大変複雑な現象なので、 超音波による洗浄力を安定させることは大変難しい 」 1::洗浄力を一定にするための基礎技術として、超音波による音圧変化を洗浄水槽内 で一定にするために水槽の構造力学と洗浄液の流体力学と化学反応に対して それぞれの関係性を検討する必要があります 2::音圧の時間変化と洗浄力との関係を調べると音圧を制御して目的の洗浄力を実現 することが出来ます 3::洗浄液の化学反応の状態と音圧の時間変化の関係を調べ、超音波と各種洗浄条 件の制御を行うと洗浄力(あるいは表面の改質)を目的の状態にすることが出来 ます 5
Page6

<対処について> 1) 洗浄物から汚れを除去できるエネルギーを推定して、超音波の周波数と出力を検討 する(キャビテーションによる洗浄効果のレベルを見積もる) 2) 洗浄物に対する汚れの付着状態と汚れの特性を考慮して、洗浄液(あるいは洗浄液 の状態)を検討する(洗剤や液温 等の時系列変化と関係性を調査する) 3) 超音波の周波数に適した洗浄水槽を検討する (洗浄水槽の材質や形状を超音波が最適に利用できるようにする 洗浄液の流れの最適化と超音波の減衰を最小限にするような機械構造設計を する 水槽の設置方法・設置位置も超音波減衰の大きな要因なのでその点について も注意する ) 4) 洗浄水槽に適した洗浄液と除去した汚れの流れ(あるいは液循環)を検討する (洗浄液の流れは超音波の音圧に影響を与え、そのことが洗浄力を大きく変化させる 音響流という現象を目的にあわせて利用していく 洗浄効果(目的)にあわせた循環量を設定する 超音波による騒音は非効率な超音波の利用状態ですから液循環等により効率化 することで対処できます 但し、騒音と洗浄力の最適化を行うためには総合的に非効率な部分を検証確認し て無くす必要があります) 5) 洗浄に適した制御(超音波、洗浄液の状態など)を検討する (超音波の発振制御と液循環の状態を制御することにより目的とする洗浄力を実現で きます) 6) 以上を洗浄システムとして再検討(最適化・バランス調整)する (洗浄・リンス・乾燥の各工程に対する位置づけと関連を明確にする 「洗浄水槽・超音波・洗浄液・液の流れ・制御」を最適化する 洗浄物と洗浄目的にあわせ、場合によっては最小の使い捨てで洗浄液を利用する 方法を採用することもあります 2-3mの水槽で2-3000リットルの液を使用する場合には、液循環による洗浄効 果を最優先する必要があります 水槽・洗浄物・汚れ 等によりシステムの各パラメータをバランスの取れた状態に 調整することが重要です ) 6
Page7

<新しい洗浄・改質の特徴> 特徴 1) 各種の洗浄条件(注)の関係性を解析・モデル化し、総合的な洗浄システム (論理モデル)を構築する 注:洗浄液、流量、流速、液温、音圧、溶存酸素濃度、気圧、湿度、ph値、洗浄治具、 超音波、マイクロバブル、各パラメータの分布・時間変化、 等 2) 解析手法としてサイバネティクスの考え方に基づいた統計的手法(化学プラントの 制御技術 等)を利用する 2) システムの構築にITシステムの開発手法(オブジェクト指向)を取り入れる 説明 やはり,決められた枠組みがないと,問題点を理解していても,動くプロセスのみを追究し, データの抽象化などが行われた正しいプロセスを軽んずるものです。 「技術者にとって技術向上の第一歩は, 動くプロセスと正しいプロセスを作ることの違いを認識することです。」... オブジェクト指向の考え方は内容よりも形式を大事にします。抽象化を武器にして,内容から 形式を切り離し,独創的な構想から新たな形式を創り出すことを尊ぶのです。その意味で,哲 学の構造主義や,数学の公理主義に近いと思います。 しかし、内容の抽象化を経て得られた形式の背後には,無数の具体的なものが控えているはず であり,現実世界からかけはなれたものではありません。 オブジェクト指向と同様に、洗浄プロセスについても抽象と具象の微妙なバランスの 上に成立していると考えます。 7
Page8

具体的な項目 1) 洗浄水槽の形状(構造)を最適化する(洗浄水槽の最適化) 2) 最適な液循環システム(液循環の最適化) 3) 洗浄物に対する洗浄トレイの影響を考慮したシステム対応 (洗浄物と洗浄トレイ(治具)の最適化) 4) 超音波の反射・透過と洗剤に対応した最適な間接水槽 (超音波の性質(反射・透過や洗剤への化学反応)に対する最適化) 5) 各種洗浄水槽間の音圧最適化 (洗浄装置全体から見たときの洗浄システムとしての最適化) 6) 現状を認識する手法として多変量自己回帰モデルを利用する (モデル化(多変量自己回帰モデル 等の利用)による洗浄構造の適切な解析) 8
Page9

<論理モデルの作成について> (情報量基準を利用して) 1) 各種の基礎技術(注)に基づいて、対象に関する、 D1=客観的知識(学術的論理に裏付けられた洗浄理論) D2=経験的知識(これまでの洗浄結果) D3=観測データ(現実の状態) からなる 「情報データ群 」、DS=(D1,D2,D3) を明確に認識し その組織的利用から複数のモデル案を作成する 2)統計的思考法を、 情報データ群(DS)の構成と、それに基づくモデルの提案と検証の繰り返し によって情報獲得を実現する思考法と捉える 3) AIC の利用により、様々なモデルの比較を行い、最適なモデルを決定する 4) 作成したモデルに基づいて洗浄装置・洗浄システムを構築する 5) 時間と効率を考え、以下のように対応することを提案します 5-1)「論理モデル作成事項(効果的な超音波洗浄技術について)」を考慮して 「直感によるモデル」を作成し複数の人が検討する 5-2)実状のデータや新たな情報によりモデルを修正・検討する 5-3)検討メンバーが合意できるモデルにより装置やシステムの具体的打ち合わせに入る 上記の参考資料 ダイナミックシステムの統計的解析と制御:赤池弘次/共著 中川東一郎/共著:サイエンス社 生体のゆらぎとリズム コンピュータ解析入門:和田孝雄/著:講談社 注 化学工学:反応工学、化学プラント工学、LSIプロセス工学、薄膜作成工学 表面工学 等 機械工学:自動制御(システム工学)、熱力学、材料力学、流体力学、加工工学 等 電気電子工学:超音波工学、音響学、医用画像処理、分子エレクトロニクス工学 等 その他:物理学、物性工学、ナノテクノロジー、超分子、最適化、マイクログラビティ応用学、 プロセスマテリアル、ITエレクトロニクス、ドラッグデリバリー、バイオテクノロジー 等 AIC:赤池情報量規準(Akaie Information Criterion 統計モデルの相対的評価) 考え方(全体を貫く基本的な概念): 多くの真実らしき断片を見据え、その奥にある統一的メカニズムを描像する。 9
Page10

<データの統計解析に関する資料> <統計的な考え方について> 統計数理は以下のように考えられています 統計的な物の見方というのは、 1)我々がどのように自分が持っている知識や情報を利用しようとするのかと言うことに関係する (すなわち、主観的な発想に基づいている) 2)具体的な経験・知識に基づいた心の枠組みで考える(すなわち、具体的である) 3)物事の量的な特性に対するいろいろな考え方が豊かになっていく展開 (すなわち、抽象的である) まとめ 統計数理には、抽象的な性格と具体的な性格の二面があり、 具体的なものとの接触を通じて 抽象的な考えあるいは方法が発展させられていく、 これが統計数理の特質である <モデルについて> モデルは対象に関する理解、予測、制御等を効果的に進めることを目的として構築されます。 正確なモデルの構築難しく、常に対象の複雑さを適当に”丸めた”形の表現で検討を進めます。 その意味で、モデルの構成あるいは構築の過程は統計的思考が必要です。 図1 全体の音圧が均一な液面の様子(低周波の例) 10
Page11

<新しい洗浄技術開発の手順および注意事項> <開発の流れ(手順)> 1.要求(目的・問題)を調査・分析する 注意事項 事実(現状)の認識が最も重要である 例1 現状の洗浄システムを理解することの難しさ 1)ハードの進歩(微細化、新しい材料、新しい汚れ 等) 2)システムの複雑化(高い制御レベルの要求、反応速度への対応 等) 3)構築には沢山のノウハウが取り入れられている(ノウハウに気が付かない でトラブルが発生している) 例2 「洗浄メーカと使用メーカの協力ですばらしい洗浄システムが出来上がる」 と言うのは理想論で、実状は洗浄目的の明確化(共有化)が十分に行われ ていない 理由1 除去する汚れの性質や、汚れの付着の原因が製造に関するノウハウである場合は洗浄の状況について詳細に追及 するとメーカの重要技術が明るみになってしまう 理由2 仕様書にかかれない部分に重要(材質の製造・処理方法や保管環境 等)な洗浄条件に関する事項がある 理由3 少ない成功経験による単純な分析・開発が洗浄の失敗につながる 理由4 前提となる「背景・目的・考え方」が明確(論理的)になっていない 例3 洗浄システムの要因を全体で捕らえる必要がある 1)洗剤を含めた洗浄液に関する知識 2)洗浄の対象となる製品・部品に関する知識 3)洗浄装置(ハードウェア)に関する知識 4)洗浄方法(洗浄プロセス 洗浄理論)に関する知識 5)洗浄システムの最適化に関する知識 理由1 洗浄は複雑な現象なので、単純な比較実験により効果を結論づけると、変化したパラメータの影響により洗浄結果が 変わる場合があります 理由2 各種のパラメータの相互関係を検討しなければ安定した洗浄効果は得られません (そのために論理モデルの構築 は大変重要です) 11
Page12

例4 現状の調査・要求の分析は、必要なレベルを科学的な方法論(注)で行う 1)技術にとらわれすぎない 2)不明な点は不明として利用・使用する 3)多大な労力と危険にたいしても調査する 4)正しい分析には経験とセンスが重要である 理由1 マイクロバブルの性質に代表されるように不確定で解明されていない部分が沢山あることも事実です、すべてを明確 にするのではなく経験と現状を考慮した工学的なモデル作成が必要です 注:要求工学 「ゴール指向分析」 「ステークホルダー分析」 「非機能要求の分析」 等 注:乾燥についても現状の調査・要求の分析を科学的な方法で行い、最適な乾燥モデルを作成する 特に、水分の流れに対する適切な対策・対応(網籠はうずの発生により乾燥効率が悪い 等)が必要である 2.設計する(最終的に、誰が見ても製作できる設計書を作成する) 1) 調査・分析・設計に時間をかける(分析手法の利用) 2) 要求分析には事務処理フローの作成を行う 3) 目的を実現する手法が洗浄知識の無い人でも理解できるようにする ( キャビテーションによる洗浄 水の流速による洗浄 化学作用による洗浄 その他(複合作用)による洗浄 について論理モデルを利用して効果の推定を行う) 4) 量的側面と質的側面を明確にする 5) 設計上では、メンテナンス(廃液処理 等)を考慮する 汚れに対する検討事項 1) 汚れの分類 1-1)粒子汚れ 1-2)有機汚れ 1-3)無機汚れ 1-4)その他 2) 汚れの結合力 (分子間結合:水素結合、双極子効果、誘導効果) 3) 汚れの結合エネルギーあるいは擬集エネルギー状態 4) 汚れの界面擬集エネルギーに対する反応 (洗浄剤、洗浄液の温度、超音波、攪拌、蒸気、真空、紫外線、電子線照射 等) 12
Page13

3.製作する(このとき設計者は製作作業を管理すると共に、全体の調整を行う) 1) 大きなシステムは分割し、段階的に製作する。 2) 製作するための体制とスケジュールを立てる。 3) 製作状況を数値で捉え、評価する。 4) 製作状況は定期的に測定と評価を行い、次の行動につなげて行く。 4.動作確認する(試験の結果が品質の証明となる) 1)テスト 単体テスト、 結合テスト、 システムテスト、 機能テスト、 性能テスト、 負荷テスト、 運用テスト 退行テスト、 検収テスト 等 2)システムの信頼度を把握する指標として、次の稼働率を利用する。 「稼動率=(全運転時間-故障時間)÷全運転時間」 5.装置(システム)を納品する 納品チェックシステムで確認する 13
Page14

<効果的な超音波洗浄技術について> 洗浄液について 1) 汚れに対する洗浄液の効果について論理モデルを持つこと 2) 汚れによる洗浄液の変化(トムス効果 等)について洗浄効果の論理モデルを持つこと 3) 環境変化による洗浄液の変化について洗浄効果の論理モデルを持つこと 4) 洗浄液の交換サイクルについて洗浄効果の論理モデルを持つこと 5) 洗浄液の管理状態(バラツキ)について論理モデルを持つこと 6) 洗浄液の液循環(バラツキ)について論理モデルを持つこと 7) 洗浄液に対する超音波の発振状態について論理モデルを持つこと 8) 洗剤の界面活性剤による泡や空気(溶存酸素)の性質が変化することについて 論理モデルを持つこと (超音波の周波数・界面活性剤の濃度・溶存酸素濃度の関係に ついてはインターネット上に多数の報告があります) 9) 洗浄液に対する洗浄物の影響(量的側面と質的側面)について論理モデルを持つ こと 10) 洗剤の濃度等(液温、溶存酸素)による洗浄効果について論理モデルを持つこと 11) 洗剤による洗浄時の泡の発生状況と泡と汚れの影響について論理モデルを持つこと 12) 上記の各項目について時系列データの変化に対する最適化を検討すること 洗浄物について 13) 洗浄物に対する材料特性と超音波の影響について論理モデルを持つこと 14) 洗浄物の製造方法・表面処理・超音波の関係性について論理モデルを持つこと 15) 洗浄物の環境変化(各種バラツキを含む)による影響についての論理モデルを持つ こと 16) 洗浄物の連続洗浄作業について洗浄効果の論理モデルを持つこと 17) 洗浄物と洗浄治具の関係について洗浄効果の論理モデルを持つこと 18) 洗浄物・洗浄治具・超音波(音響流、レンズ効果 等)の関係についての論理モデ ルを持つこと 19) 洗浄物の種類・大きさ・洗浄数の変化について洗浄効果の論理モデルを持つこと 20) 洗浄物の超音波(音響流 等)による環境変化(液温の上昇 等)の影響について 洗浄効果の論理モデルを持つこと 21) 上記の各項目について時系列(データ)の変化に対する最適化を検討すること 14
Page15

洗浄水槽について 22) 洗浄水槽の液循環について論理モデル(よどみ対応、反応、拡散流 等)を持つこと 23) 洗浄水槽の洗浄液の各種分布状態(液温、溶存酸素濃度 等)について論理モデ ルを持つこと 24) 洗浄水槽の超音波の各種分布状態(流速、音圧 等)について論理モデルを持つ こと 25) 洗浄水槽の材質(表面処理 等)と洗浄液の反応について論理モデルを持つこと 26) 洗浄水槽の均一性(反応率、プラグ流)について洗浄論理モデルを持つこと 27) 洗浄水槽・洗浄液・洗浄物について最適化を行うこと 28) 洗浄水槽・リンス水槽の関係(ラインバランス 等)について最適化を行うこと 29) 洗浄水槽の作業性(メンテナンス 等)について作業モデルを持つこと 30) 洗浄水槽の改良(間接水槽の利用 洗浄液の変更 等)について論理検討を行うこと 31) 洗浄水槽に対する超音波の影響(量的側面と質的側面)について論理モデルを持つ こと 32) 上記の各項目について時系列の変化に対する最適化を検討すること 説明 溶存酸素:溶存酸素(Dissolved oxygen,DOと略す)とは,水中に溶存している酸素のこと 音響流:流体中を強い音波が伝搬すると媒質流体の移動現象が発生します。静止流体中で物体が振動 するときも,物体の周りに流れが生じます。いずれも音響流といいます。 レンズ効果:ないものが画像に映ってしまうものや、形が歪んで見えたりする場合を超音波診断では アーチファクトと呼びます。アーチファクトの中にレンズ効果による虚像があります。 凹レンズ効果では音波は拡散します。 最適化:特定の制約を与えられた中で結果の最大値(最小値)をもたらす組み合わせを見つけ出すこと。 数理最適化の手続きは一般に 3つのステップから成ります. 1. 問題のポイントを整理して数理的モデルを作成する. 2. モデルの特性を考慮した適切なアルゴリズムを用いて解を求める. 3. 解をもとに現実の問題の適応方法(解決策)を実施する. 時系列データ:通常同じ間隔の時間ごとに記録された数値のこと. 自己回帰:時系列データが持つこの時間的相関は、「自己相関」と呼ばれる。自己相関を持つ系列が逐次的に 決定される構造を、「自己回帰(auto-regression)」と言う プラグ流:プラグ流とは、すべての分子が同じ時間で排出される仮想的な流れ。あるいは押し出し流れ、 ピストン流などと呼ぶ。 トムス効果:「トムス効果」とは、水に極微量(ppb程度)の高分子を、たとえばポリエチレンを溶かすと、その 水中を動く物体の抵抗が劇的に減る、という効果である。 拡散係数:k(定数)・T(温度)/6・π・μ(粘性率)・P(粒子の半径) アインシュタインの式 15
Page16

<固有の洗浄物に対する具体的検討項目について> 1) 洗浄物が樹脂の場合は超音波(レンズ効果)によるダメージが発生する傾向がある 2) 洗浄物がガラスの場合は超音波(高周波)によるパーティクルの表面集積がある 3) 洗浄物が金属の場合は表面処理に対する超音波の影響(応力除去、表面改質 等)がある 4) 超音波洗浄における洗浄槽内の音圧は、溶存空気濃度と溶存気体の分布状態により大きく変化 する 5) 溶存空気濃度は洗浄槽の形状(大気と接触する面積)・洗浄液の循環状態・液温・大気圧 等に より逐次変化して幅広く分布した状態になる 6) 超音波洗浄における洗浄槽内の音圧は、液温により溶存空気濃度が変化するのでその値により 変化する。但し、60℃以上になると液体の状態から水蒸気の状態になると超音波の減衰要因に なるため超音波の音圧は低下する 7) 洗浄液の温度を高くすることで表面張力を低下させ洗浄効果を上げる事ができる (水の場合、最適値は 50~60℃) 8) 大切なのは洗浄液の選定。使用する洗浄液の「表面張力の状態」・「界面活性剤の濃度」・「膜と 泡の状態」の最適な使用条件が必要(超音波エネルギーを高率よく伝達するために、洗剤など の界面活性剤は間接水槽の利用等で使用される場合もある 一般的には2~3%の界面活性剤は音圧を強くする) 9) 各種条件が時系列に変化する中で超音波による音圧を安定した状態にする必要がある (超音波の「屈折・反射・透過」は音響インピーダンスの変化により変わる 音圧が「屈折・反射・透過」することで洗浄物に与える洗浄効果が変わる) 注: 音響インピーダンス = 音速(伝播速度) * 密度 10) 洗浄システムを検討するためには現状のデータ採取が必要である (例 汚れに対する付着力、超音波の周波数・音圧の関係) 11)超音波による音圧は洗浄物の材質・レンズ効果により大きく変わる (洗浄治具による音圧の変化は洗浄効果が切り替わるので注意が必要である) 12)超音波による音圧は洗浄液の状態(温度分布、流速分布、溶存気体の分布)により大きく変わる 13)超音波による音圧は洗浄液の循環効率(Do濃度、界面活性剤分布)により大きく変わる 水槽内に淀みがあるような液循環の場合、音圧低下を起こすとともに、汚れの再付着を発生させる 注 Do濃度:溶存酸素濃度 14)Do濃度の変化は自己回帰傾向(自己回帰構造の動的特性)がある 15)水面の波立ちによりDo濃度が変化する 16)水槽の底面にはDo濃度の低い循環しにくい水があつまる Do濃度の変化を多変量自己回帰モデルを用いて解析することでその系の持つ フィードバック特性を直観的に把握することができる 16
Page17

< Washing Portfolio> 超音波の周波数と出力の関係性を示す資料(図2) キャビテーション洗浄: キャビテーション(液体中に加えた減圧力(膨張力)によって空洞を生じる現象)により行われる洗浄 加速流(音響流)による洗浄: 通常,流体中を強い音波が伝搬すると媒質流体の移動現象がみられます。また,静止流体中で物 体が振動するときも,物体の周りに一定方向の流れが生じます。いずれも音響流といいます。この 音場特性に依存した駆動力により洗浄が行われる ミックス洗浄: キャビテーションと加速流(音響流)の両方を利用した洗浄 20kHz-1000kHzを使用した洗浄実験によりミックス洗浄効果を確認しています 洗浄効率を検討していく上で大変重要な考え方です 特に「治具・洗浄物」を考慮していく上で参考になると思います 17
Page18

<超音波の周波数と出力を決めるための資料> 音響流とキャビテーションのバランスを最適化する 1)洗浄液が淀まない洗浄水槽を使用する 2)強度について、特別に弱い部分のない洗浄水槽を使用する 3)洗浄液の分布を均一にする(Do濃度、液温、流速 等) 4)振動子の上面の洗浄液の流れを調節する(流量・流速・バラツキをコントロールする) 5)超音波の周波数と出力にあわせた液循環を行う 6)機械設計としての洗浄水槽の強度は超音波周波数に対して設定する 7)洗浄水槽の製造方法を明確にして、超音波の水槽による減衰レベルを設定する 8)流体に対する洗浄水槽の特性を明確にする(例 コーナー部の設計) 9)超音波の周波数・出力に対する洗浄水槽の特性を明確にする ( 振動子・振動板の位置と水槽の関係を調整する 洗浄水槽の超音波伝播特性を明確にする ) 10)洗浄システムとしての制御構造などとの最適化を行う 以上のパラメータを念頭に超音波洗浄を検討する(あるいは、現状の洗浄を見直す) コメント 音響流とキャビテーションは相反する現象だと考えています しかし、どちらかをなくすことは大変難しいためバランスを調整し、最適化することが重要だと考えていま す(具体的な事項については後述します) 18
Page19

以下は上記説明のための 実験データ の資料です < 代表的な音圧と液温の関係(水の場合)> 超音波の発生により液温は一定の温度まで上昇する 40kHz以下の場合:約45℃以下 100kHz以上の場合:約55℃以上 超音波の音圧は液温により変化する(最適な液温範囲がある) 理由1:液温の上昇により溶存気体の量が減少し、超音波の減衰が小さくなるから 理由2:液温の上昇により水蒸気の量が増え、超音波の減衰が大きくなるから 図3 代表的な音圧と液温の関係(水の場合) 19
Page20

液温と音圧について これはしばしば測定される結果ですが、利用する場合には注意が必要です 論理的な事項として 音速(伝播速度)は水温により 約3-4%(20℃から40°への変化)の変化があります 従って、測定値の音圧変化が大きい原因は別にあることが考えられます ひとつの事例として 30℃から60℃の水の状態は、 何もしなくても分布(温度、気体の比率)が比較的安定しているということがあります 確認の測定をしました 上記を確認するために、液の分布状態を均一にさせると 低かった温度での音圧測定値は最大値以上の値になりました 注:10℃や70℃の均一な環境は恒温槽等を利用して、 環境温度の影響を小さくしないと大きな温度分布が発生します 使用条件の影響に正しく対応(設定)する必要があります、 しかし何もしなくても安定する状況があるため 検討が行われない状況ではないかと思います 従って、個別(注)に検討すれば大きな効果を出すことが可能です 注) 超音波の周波数・出力・制御に合わせた、水槽の構造・材質・形状・厚さを設定する必要があり ます 最適な設計は難しいのですが、「超音波を無効にする設定をしないようにする」と言う考え方で 設計を繰り返すと最適設計になるように思います 20