日産自動車様「ニッサン インテリジェント ファクトリー」；デジタルIoTネットワーク導入事例

コロナ禍をチャンスに変えていく Cisco Industrial Ethernet（IE）シリーズ 導入事例 「人」が主役のビジネスで勝機をつかむ 日産自動車株式会社 鈴木　新型コロナウイルスの感染拡大により、日本では緊急事態宣言が を支えてくれるものとして、シスコ 発令され、多くの企業が出勤削減に取り組みました。日産様はどのよう 製品の進化には期待しています。 「生産技術のインテリジェント化」を目指し な対応をされたのですか。 鈴木　具体的に、当社に期待する 日産自動車株式会社 パワートレイン生産技術開発本部 村田氏　エンジニアリング部門では多くの部署がテレワークに切り替え ことを教えてください。 常務執行役員 最新技術を採用した IoT ネットワークを構築 て業務を継続しました。いざ実施してみると、難しいと思っていた生産 村田氏　設計開発、生産技術開 村田 和彦 氏 技術の業務も対応できることがわかりました。緊急事態宣言中は、海外 発、工場部門がつながれば、設計 から納入する工場設備の現地検収立ち会いもリモートで行い、わざわざ したものを素早く試作できるようになります。また、工場の自動化・イン 大勢で出張しなくても済むようになりました。もう、以前の状況に戻るこ テリジェント化がさらに進めば、ロボットが行う組み立てや搬送作業の とはないでしょう。ただ同時に、対面で得られる“共感”の大切さを感じ 領域も広がります。「工場のロボットを人が遠隔から操作する」といった たのもこの時期でした。 ことも、夢物語ではなくなるかもしれません。こうした高度なネットワーク 鈴木　コミュニケーションで重要になる微妙な空気感は、やはり対面の方 の構築では、シスコ製品の強みが活きてくると考えています。 がつかみやすいですよね。コミュニケーションツールを提供する当社とし また別の視点では、ラインや工場の立ち上げをリモートで指示・管理で ては、テレワーク環境は誰でも扱え きれば、今よりはるかに効率的に作業を進められるでしょう。シスコの る便利さとともに、対面に肉薄する 先進コミュニケーションツールで“共感”が醸成できれば、リモートでも 臨場感が求められていると感じます。 一層スムーズに仕事が進められるはずです。 村田氏　そうですね。私は、どん 鈴木　ありがとうございます。コロナ禍で世界経済は厳しい状況にあり 最先端の技術で「クルマの未来」を提案し続ける日産自動車。同社は、新型クロス なにデジタル技術が普及しても、 ますが、私は危機をチャンスに変えるべきだと考えています。以前の状 製品 ＆ サービス オーバー EV「 日産 アリア」の新開発パワートレイン生産ラインにおいて、IoT を ビジネスの主役が「人」であることは 態に「立て直す」だけでなく、より生産性の高い働き方による「一層の成長」 ・ Cisco Industrial Ethernet 2000（IE 2000） 活用した生産技術の革新に取り組んでいます。この IoT を制御するネットワーク 変わらないと考えています。人とデ を目指したいですね。今後も先進的なネットワーク製品、およびその機 ・ Cisco Industrial Ethernet 5000（IE 5000） シスコシステムズ合同会社 能を拡張するソフトウェアなどの提供を通じて、日産様のビジネス成長 ・ Cisco Catalyst シリーズ に採用されているのがシスコ製品です。IT と OT（運用技術）を融合させた新たな代表執行役員会長 ジタルがスパイラルで成長していく ・ Cisco Identity Services Engine（ISE） 鈴木 和洋 をご支援できればと思います。 ネットワークは、次世代のクルマづくりのコンセプト「ニッサン インテリジェント ことが大切です。スパイラルアップ 課題 ファクトリー」を実現する上で欠かせないインフラとなっています。 ・ 労働集約型の生産を脱却しつつ “匠” の 日産自動車株式会社 最新のデジタル技術をキャッチアップして生産技術をインテリジェント化していく。技術を継承するため、ロボットや IoT を活用した生産技術のインテリジェント化が これが次世代のクルマづくりのカギになっています。この活動を推進する上で、 重要に ネットワークは極めて重要な役割を担います。 所在地 （本店） 神奈川県横浜市神奈川区宝町 2 番地 従業員数 2 万 2791 名（単独）、13 万 8893 名（連結） ・ 様々な機器やデジタル技術を工場に導入 ─ 日産自動車株式会社 パワートレイン技術企画部 主管 村井 勇一氏 （本社） 神奈川県横浜市西区高島一丁目 1 番 1 号 URL https://www.nissan-global.com/JP/ する際は、それらの稼働を見える化し、適 設立 1933 年（昭和 8 年）12 月 切に管理・制御する仕組みが不可欠 ・ 生産ラインはビジネスの生命線であり、 革新的なクルマやサービスの創造を通じ、より豊かな暮らしや社会の実現に貢献する日産自動車 技術革新や先進的な商品の開発に取り組み、独自性 表。ロボットや IoT を活用するとともに、“匠”の技を 稼働を支える IoT ネットワークにも、高い安定性・信頼性・拡張性が求められる （以下、日産）。電気自動車（EV）や自動運転などの新技術開発に力を注ぎ、自動車業界の発展を に溢れる革新的なクルマやサービスをグローバルに提 継承し、生産技術の自動化・インテリジェント化を推進 リードしています。 供する。2019 年 11 月には次世代のクルマづくりのコ している。また、人が働きやすい環境づくり、女性や ソリューション 近年は自動車業界を取り巻く環境が大きく変化し、次世代モビリティの競争が激化しています。ク ンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を発 高齢者も活躍できる職場づくりにも積極的に取り組む。 ・ 製造業界向けの多彩な製品ポートフォリオ ルマの機能や構造も複雑化し、生産工程の技術革新が不可欠です。 とグローバルの実績で培った技術力を評価 ・ 産業用イーサネットスイッチの Cisco IE 一方、日本は少子高齢化が深刻化する中、労働集約型の生産方式を脱却する時期を迎えています。 シリーズをベースに、生産系と情報系を モノづくりを支えてきた“匠”の技術をいかに継承するか――。そこで日産が打ち出したのが、「ニッ 連携した統合ネットワークを構築 ・ Cisco Industrial Network Directo（r IND） サン インテリジェント ファクトリー」というコンセプトです。「工場内の多彩なセンシング情報を取 とCisco Identity Services Engine（ISE） 得・活用することで、次世代のクルマづくりのカギを握る『生産技術のインテリジェント化』を目指し を活用した IoT ネットワーク接続デバイス のセキュリティ管理を実現 ています」と日産の村井 勇一氏は語ります。 結果～今後 課題 ・ 正式稼働に向け、新ネットワークを活用し た e-パワートレイン自動生産ラインの立 ち上げ作業が進行中 ・ 新ネットワークは生産ラインのテスト段階 あらゆるデータを有効に活用する「プラントのデジタル化」を推進 から活用し、品質課題や設備稼働ロスな 日産は、2 つの大きな軸で開発・生産を行っています。1 つ目は「限りないお客様への同期」。顧 どの洗い出し・改善を進めている ・ 情報系ネットワークとの連携メリットを活 客ニーズに沿った高品質な製品を、ニーズが発生した時に、最適な価格で提供することを重視し かしたリモートコミュニケーションを実施。 ています。2 つ目は「限りない課題の顕在化と改革」です。開発や生産現場の課題を見える化し、 コロナ禍でも現場業務を継続 ・ 栃木工場で実現したネットワークデザイン 皆で知恵を出し合いながら一つひとつ解決していきます。その 2 つを高次元で実現するために、 を標準化し、統一されたポリシーをグロー 同社の生産部門では様々な領域の改革を進めています。中でも力を入れているのが、「プラントの バルに展開していく デジタル化」です。その一環として IoT プラットフォームを導入した VC-T エンジンの自動生産ライ 2171-2009-000-BL ンが、2017 年から同社の横浜工場で稼働を開始しました。VC-T エンジンとは、量産で世界初 Cisco IE シリーズをベースとした の可変圧縮比を実現した画期的なエンジンであり、世界で高い評価を得ています。「このエンジン 統合ネットワークを実現 は複雑かつ高精度な部品で構成されており、今までにない高い品質が要求されます。安定して高 こうして同社は、栃木工場の e-パワートレイン 品質なエンジンを生産し続けるために品質測定結果だけでなく、IoT を使い重要な要因系のデー 自動生産ラインを支える、高度な IoT ネットワー タを測定し活用しています。日産での IoT プラットフォームの導入は、この VC-T エンジン生産ラ クを構築しました。 インが初めてであり、全てが試行錯誤の連続でした」と村井氏は振り返ります。 具体的には、耐熱・防塵対策などを施した環 境性能の高い産業用イーサネットスイッチの 生産のインテリジェント化にはネットワークの高度化が必須 Cisco Industrial Etherne（t IE）シリーズをベー 同社は主力生産拠点の1つである栃木工場で、e-パワートレイン自動生産ラインを新設することに スに、生産系ネットワークと情報系ネットワーク しました（e-パワートレインとは、モーターやインバーターなどを組み合わせた電気自動車専用の を統合した IoT ネットワークを構築。構成を簡 動力ユニット。内燃エンジンに代わり、パワフルな動力を生み出す）。 素化することで、運用のシンプル化を実現して その際、横浜工場での経験を活かした一層のインテリジェント化も計画。「不良品発生ゼロ」を目 います。上位層にはコアネットワーク向けの大 標に、最適な仕組みを構築。「品質データをリアルタイムに取得し、傾向などを分析することで不 規模スイッチの Cisco Catalyst シリーズも導入 良を未然に防ぎたいと考えました。また設備の異常停止は即座に担当者に通知され、ライン停止 し、ネットワーク全体を統合的に制御する形とし 時間も最小に抑えます」と説明するのは、同社の千代田正義氏です。 ました。 これを実現するには、ラインの稼働を支える「IoT ネットワーク」が非常に重要になります。 さらに、ネットワークのエッジには Cisco Identity まず求められたのが安定性でした。デジタル化の進展に伴い、設備を監視・制御するセンサーや Services Engine（ISE）を導入。多様なネット カメラから送られてくるデータ量は増大し、通信の頻度も上がっています。ネットワークがボトル ワークアクセスと生産ライン、設備に対するセ ネックになると、生産活動への影響は避けられません。「100 台以上の高解像度ネットワークカメ キュリティ管理を可能にしています。これにより、 ラの活用、および数千種以上の品質データを収集・活用するためには、信頼性の高いネットワーク ラインを構成する末端の製造設備の IoT 情報ま が不可欠でした」（千代田氏）。 でを取り出せる、セキュアで運用性の高い IoT また運用定着を図る上では、現場にとって使いやすい仕組みでなくてはいけません。ラインの稼働 ネットワークを具現化しています。 を常時監視し、異常があれば即座に対応する。そのために、多様な情報を一覧で見える化し、直 感的かつシンプルに運用・管理できるインターフェースが必要だと考えました。 さらに、長く使える環境であることも重要でした。OT 領域の生産系とIT領域の情報系を融合して いけば、工場外のシステムとつながるケースも増えていくでしょう。「柔軟性や拡張性が高く、アド レス管理を簡素化できること。さらに産業プロトコルの統合や省配線化できる仕組みが必要でした」 稼働を目指し、e-パワートレイン自動生産ラインを構築中 と村井氏は言います。 現在、栃木工場では新ネットワークを活用した e-パワートレイン自動生産ラインの立ち上げ作業 を進めています。 IoT ネットワークは、生産ラインが正式稼働する前に稼働を開始する予定です。実際の生産を開始 する前の試作段階から活用することで、最適な設定などを検証する狙いです。そのために、製造 や保全、技術、品質保証、物流などの各部署と連携してユースケースを作成し、実際の活用イメー 技術力とナレッジ、実績を評価し、シスコをパートナーに選定 ジを共有。意見交換を繰り返しながら、調整・改善を進めています。 そこで日産は、栃木工場で構築される最新の EV モーターラインで、上位システムから設備側まで 「栃木工場の活動は横浜工場の IoT の活動を基に改善を加えながら、進化させています。IoT ルー 一気通貫で運用できる、高速かつセキュアなネットワーク環境を構築することにしました。 ムは自動生産ラインの情報を見える化して分析し、現場の品質向上を支援する、いわばコントロー 複数の仕組みを検討したのち、選定したのがシスコ製品です。「シスコは業界をリードするグロー ルセンター。栃木工場ではさらにこれを進化させる予定です。試作時の品質課題に関するデータ バルなネットワーク機器ベンダー。スマートファクトリーを支える製造業界向けのソリューションも や、立ち上がり時の設備稼働ロスなどを分析します」と千代田氏は語ります。 豊富に提供しています。技術力が高く、グローバルに広がるリファレンスやベストプラクティスの提 生産系と情報系のネットワークを統合したことはコロナ禍の働き方を支える上でも機能しました。 供も期待できます。日産が目指す次世代のクルマづくりを支えるパートナーとして最適と判断しまし 全国に発令された緊急事態宣言を受け、日産でも工場の操業停止や工場・拠点間の移動制限など た」と村井氏は選定理由を述べます。 の措置を講じました。しかし、ネットワークを刷新していたため、国内外の拠点・工場のメンバー また、すでに稼働中の横浜工場の VC-T エンジン生産ラインで、シスコ製品を採用していたことも とも、セキュアな環境でスムーズにリモートコミュニケーションを行えたといえます。 後押しになりました。導入以来、自動生産ラインは安定稼働を続けており、これを支える IoT ネッ 「この環境は、ライン稼働後も工場のメンバーやサプライヤをつなぐものとして、積極的に活用し トワーク、およびシスコ製品の信頼性を高く評価した形です。 ていきたいですね」と千代田氏は話します。ラインの正式稼働後は、ネットワークデザインの標準 「お客様満足度や生産性の向上に役立てるためのデータは、正しく取得・伝達されなければなりま 化を進め、グローバルの他工場、他ラインへスピーディに横展開していく計画です。「デジタル分 せん。そのため、セキュアで信頼性、運用性の高いライン内ネットワークが不可欠でした。また将 野の技術革新スピードは非常に速いので、常に新しい技術を取り込むことが欠かせません。常に 来的にネットワークデザインを標準化し、統一されたポリシーをグローバルで展開していくために 標準のブラッシュアップを図ることで、お客様満足度の向上に貢献していきます」と村井氏は展望を も、シスコを選択しました（」村井氏）。 述べます。 ニッサンインテリジェントファクトリーの取り組みを進める上で、シスコ製品を核とした IoT ネット ワークは不可欠なインフラとなっています。栃木工場の新ネットワークを足掛かりに、今後も日産 は「限りないお客さまへの同期」「限りない課題の顕在化と改革」を推進。グローバル市場における 次世代のクルマづくりをリードしていく構えです。

最先端の技術で「クルマの未来」を提案し続ける日産自動車。同社は、新型クロス オーバー EV「 日産 アリア」の新開発パワートレイン生産ラインにおいて、IoT を 活用した生産技術の革新に取り組んでいます。この IoT を制御するネットワーク に採用されているのがシスコ製品です。IT と OT（運用技術）を融合させた新たな ネットワークは、次世代のクルマづくりのコンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を実現する上で欠かせないインフラとなっています。 革新的なクルマやサービスの創造を通じ、より豊かな暮らしや社会の実現に貢献する日産自動車 （以下、日産）。電気自動車（EV）や自動運転などの新技術開発に力を注ぎ、自動車業界の発展を リードしています。 近年は自動車業界を取り巻く環境が大きく変化し、次世代モビリティの競争が激化しています。ク ルマの機能や構造も複雑化し、生産工程の技術革新が不可欠です。 一方、日本は少子高齢化が深刻化する中、労働集約型の生産方式を脱却する時期を迎えています。 モノづくりを支えてきた“匠”の技術をいかに継承するか――。そこで日産が打ち出したのが、「ニッ サン インテリジェント ファクトリー」というコンセプトです。「工場内の多彩なセンシング情報を取 得・活用することで、次世代のクルマづくりのカギを握る『生産技術のインテリジェント化』を目指し ています」と日産の村井 勇一氏は語ります。 あらゆるデータを有効に活用する「プラントのデジタル化」を推進 日産は、2 つの大きな軸で開発・生産を行っています。1 つ目は「限りないお客様への同期」。顧 客ニーズに沿った高品質な製品を、ニーズが発生した時に、最適な価格で提供することを重視し ています。2 つ目は「限りない課題の顕在化と改革」です。開発や生産現場の課題を見える化し、 皆で知恵を出し合いながら一つひとつ解決していきます。その 2 つを高次元で実現するために、 同社の生産部門では様々な領域の改革を進めています。中でも力を入れているのが、「プラントの デジタル化」です。その一環として IoT プラットフォームを導入した VC-T エンジンの自動生産ライ 栃木工場に適用されている様々な最新テクノロジー ンが、2017 年から同社の横浜工場で稼働を開始しました。VC-T エンジンとは、量産で世界初 Cisco IE シリーズをベースとした の可変圧縮比を実現した画期的なエンジンであり、世界で高い評価を得ています。「このエンジン 統合ネットワークを実現 は複雑かつ高精度な部品で構成されており、今までにない高い品質が要求されます。安定して高 こうして同社は、栃木工場の e-パワートレイン 品質なエンジンを生産し続けるために品質測定結果だけでなく、IoT を使い重要な要因系のデー 設備版 品質管理情報の 不良情報の 自動生産ラインを支える、高度な IoT ネットワー ドライブレコーダー リアルタイム見える化 リアルタイム見える化 タを測定し活用しています。日産での IoT プラットフォームの導入は、この VC-T エンジン生産ラ クを構築しました。 インが初めてであり、全てが試行錯誤の連続でした」と村井氏は振り返ります。 具体的には、耐熱・防塵対策などを施した環 境性能の高い産業用イーサネットスイッチの 生産のインテリジェント化にはネットワークの高度化が必須 Cisco Industrial Etherne（t IE）シリーズをベー 同社は主力生産拠点の1つである栃木工場で、e-パワートレイン自動生産ラインを新設することに 日産自動車株式会社 ネットワーク スに、生産系ネットワークと情報系ネットワーク パワートレイン技術企画部 主管 しました（e-パワートレインとは、モーターやインバーターなどを組み合わせた電気自動車専用の セキュリティ強化 を統合した IoT ネットワークを構築。構成を簡 村井 勇一 氏 動力ユニット。内燃エンジンに代わり、パワフルな動力を生み出す）。 素化することで、運用のシンプル化を実現して その際、横浜工場での経験を活かした一層のインテリジェント化も計画。「不良品発生ゼロ」を目 います。上位層にはコアネットワーク向けの大 標に、最適な仕組みを構築。「品質データをリアルタイムに取得し、傾向などを分析することで不 規模スイッチの Cisco Catalyst シリーズも導入 良を未然に防ぎたいと考えました。また設備の異常停止は即座に担当者に通知され、ライン停止 し、ネットワーク全体を統合的に制御する形とし 時間も最小に抑えます」と説明するのは、同社の千代田正義氏です。 現場帳票のデジタル化 生産 L/T（在庫）見える化 ました。 これを実現するには、ラインの稼働を支える「IoT ネットワーク」が非常に重要になります。 さらに、ネットワークのエッジには Cisco Identity まず求められたのが安定性でした。デジタル化の進展に伴い、設備を監視・制御するセンサーや Services Engine（ISE）を導入。多様なネット カメラから送られてくるデータ量は増大し、通信の頻度も上がっています。ネットワークがボトル ワークアクセスと生産ライン、設備に対するセ ネックになると、生産活動への影響は避けられません。「100 台以上の高解像度ネットワークカメ キュリティ管理を可能にしています。これにより、 ラの活用、および数千種以上の品質データを収集・活用するためには、信頼性の高いネットワーク 異常発生時の ラインを構成する末端の製造設備の IoT 情報ま が不可欠でした（」千代田氏）。 作業記録用カメラ スマートウォッチ通知 AR 作業支援ツール でを取り出せる、セキュアで運用性の高い IoT また運用定着を図る上では、現場にとって使いやすい仕組みでなくてはいけません。ラインの稼働 ネットワークを具現化しています。 日産自動車株式会社 を常時監視し、異常があれば即座に対応する。そのために、多様な情報を一覧で見える化し、直 パワートレイン生産技術部 感的かつシンプルに運用・管理できるインターフェースが必要だと考えました。 千代田 正義 氏 さらに、長く使える環境であることも重要でした。OT 領域の生産系とIT領域の情報系を融合して 結果～今後 いけば、工場外のシステムとつながるケースも増えていくでしょう。「柔軟性や拡張性が高く、アド レス管理を簡素化できること。さらに産業プロトコルの統合や省配線化できる仕組みが必要でした」 栃木工場では、 稼働を目指し、e-パワートレイン自動生産ラインを構築中 と村井氏は言います。 まさに今ライン構築が進められている 現在、栃木工場では新ネットワークを活用した e-パワートレイン自動生産ラインの立ち上げ作業 を進めています。 IoT ネットワークは、生産ラインが正式稼働する前に稼働を開始する予定です。実際の生産を開始 ソリューション する前の試作段階から活用することで、最適な設定などを検証する狙いです。そのために、製造 や保全、技術、品質保証、物流などの各部署と連携してユースケースを作成し、実際の活用イメー 技術力とナレッジ、実績を評価し、シスコをパートナーに選定 ジを共有。意見交換を繰り返しながら、調整・改善を進めています。 横浜工場の IoT ルーム。多様な情報が そこで日産は、栃木工場で構築される最新の EV モーターラインで、上位システムから設備側まで 「栃木工場の活動は横浜工場の IoT の活動を基に改善を加えながら、進化させています。IoT ルー モニターに映し出されている 一気通貫で運用できる、高速かつセキュアなネットワーク環境を構築することにしました。 ムは自動生産ラインの情報を見える化して分析し、現場の品質向上を支援する、いわばコントロー 複数の仕組みを検討したのち、選定したのがシスコ製品です。「シスコは業界をリードするグロー ルセンター。栃木工場ではさらにこれを進化させる予定です。試作時の品質課題に関するデータ バルなネットワーク機器ベンダー。スマートファクトリーを支える製造業界向けのソリューションも や、立ち上がり時の設備稼働ロスなどを分析します」と千代田氏は語ります。 豊富に提供しています。技術力が高く、グローバルに広がるリファレンスやベストプラクティスの提 生産系と情報系のネットワークを統合したことはコロナ禍の働き方を支える上でも機能しました。 供も期待できます。日産が目指す次世代のクルマづくりを支えるパートナーとして最適と判断しまし 全国に発令された緊急事態宣言を受け、日産でも工場の操業停止や工場・拠点間の移動制限など た」と村井氏は選定理由を述べます。 の措置を講じました。しかし、ネットワークを刷新していたため、国内外の拠点・工場のメンバー また、すでに稼働中の横浜工場の VC-T エンジン生産ラインで、シスコ製品を採用していたことも とも、セキュアな環境でスムーズにリモートコミュニケーションを行えたといえます。 後押しになりました。導入以来、自動生産ラインは安定稼働を続けており、これを支える IoT ネッ 「この環境は、ライン稼働後も工場のメンバーやサプライヤをつなぐものとして、積極的に活用し トワーク、およびシスコ製品の信頼性を高く評価した形です。 ていきたいですね」と千代田氏は話します。ラインの正式稼働後は、ネットワークデザインの標準 「お客様満足度や生産性の向上に役立てるためのデータは、正しく取得・伝達されなければなりま 化を進め、グローバルの他工場、他ラインへスピーディに横展開していく計画です。「デジタル分 せん。そのため、セキュアで信頼性、運用性の高いライン内ネットワークが不可欠でした。また将 野の技術革新スピードは非常に速いので、常に新しい技術を取り込むことが欠かせません。常に 来的にネットワークデザインを標準化し、統一されたポリシーをグローバルで展開していくために 標準のブラッシュアップを図ることで、お客様満足度の向上に貢献していきます」と村井氏は展望を も、シスコを選択しました（」村井氏）。 述べます。 ニッサンインテリジェントファクトリーの取り組みを進める上で、シスコ製品を核とした IoT ネット 新ネットワークはアドレス管理や構成がシンプルになった ワークは不可欠なインフラとなっています。栃木工場の新ネットワークを足掛かりに、今後も日産 ため、ラインの改善や増設にも柔軟に対応できます は「限りないお客さまへの同期」「限りない課題の顕在化と改革」を推進。グローバル市場における 生産予定の新型クロスオーバー EV「日産 アリア」 次世代のクルマづくりをリードしていく構えです。

最先端の技術で「クルマの未来」を提案し続ける日産自動車。同社は、新型クロス オーバー EV「 日産 アリア」の新開発パワートレイン生産ラインにおいて、IoT を 活用した生産技術の革新に取り組んでいます。この IoT を制御するネットワーク に採用されているのがシスコ製品です。IT と OT（運用技術）を融合させた新たな ネットワークは、次世代のクルマづくりのコンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を実現する上で欠かせないインフラとなっています。 革新的なクルマやサービスの創造を通じ、より豊かな暮らしや社会の実現に貢献する日産自動車 （以下、日産）。電気自動車（EV）や自動運転などの新技術開発に力を注ぎ、自動車業界の発展を リードしています。 近年は自動車業界を取り巻く環境が大きく変化し、次世代モビリティの競争が激化しています。ク ルマの機能や構造も複雑化し、生産工程の技術革新が不可欠です。 一方、日本は少子高齢化が深刻化する中、労働集約型の生産方式を脱却する時期を迎えています。 モノづくりを支えてきた“匠”の技術をいかに継承するか――。そこで日産が打ち出したのが、「ニッ サン インテリジェント ファクトリー」というコンセプトです。「工場内の多彩なセンシング情報を取 得・活用することで、次世代のクルマづくりのカギを握る『生産技術のインテリジェント化』を目指し ています」と日産の村井 勇一氏は語ります。 あらゆるデータを有効に活用する「プラントのデジタル化」を推進 日産は、2 つの大きな軸で開発・生産を行っています。1 つ目は「限りないお客様への同期」。顧 客ニーズに沿った高品質な製品を、ニーズが発生した時に、最適な価格で提供することを重視し ています。2 つ目は「限りない課題の顕在化と改革」です。開発や生産現場の課題を見える化し、 皆で知恵を出し合いながら一つひとつ解決していきます。その 2 つを高次元で実現するために、 同社の生産部門では様々な領域の改革を進めています。中でも力を入れているのが、「プラントの デジタル化」です。その一環として IoT プラットフォームを導入した VC-T エンジンの自動生産ライ 栃木工場に適用されている様々な最新テクノロジー ンが、2017 年から同社の横浜工場で稼働を開始しました。VC-T エンジンとは、量産で世界初 Cisco IE シリーズをベースとした の可変圧縮比を実現した画期的なエンジンであり、世界で高い評価を得ています。「このエンジン 統合ネットワークを実現 は複雑かつ高精度な部品で構成されており、今までにない高い品質が要求されます。安定して高 こうして同社は、栃木工場の e-パワートレイン 品質なエンジンを生産し続けるために品質測定結果だけでなく、IoT を使い重要な要因系のデー 設備版 品質管理情報の 不良情報の 自動生産ラインを支える、高度な IoT ネットワー ドライブレコーダー リアルタイム見える化 リアルタイム見える化 タを測定し活用しています。日産での IoT プラットフォームの導入は、この VC-T エンジン生産ラ クを構築しました。 インが初めてであり、全てが試行錯誤の連続でした」と村井氏は振り返ります。 具体的には、耐熱・防塵対策などを施した環 境性能の高い産業用イーサネットスイッチの 生産のインテリジェント化にはネットワークの高度化が必須 Cisco Industrial Etherne（t IE）シリーズをベー 同社は主力生産拠点の1つである栃木工場で、e-パワートレイン自動生産ラインを新設することに 日産自動車株式会社 ネットワーク スに、生産系ネットワークと情報系ネットワーク パワートレイン技術企画部 主管 しました（e-パワートレインとは、モーターやインバーターなどを組み合わせた電気自動車専用の セキュリティ強化 を統合した IoT ネットワークを構築。構成を簡 村井 勇一 氏 動力ユニット。内燃エンジンに代わり、パワフルな動力を生み出す）。 素化することで、運用のシンプル化を実現して その際、横浜工場での経験を活かした一層のインテリジェント化も計画。「不良品発生ゼロ」を目 います。上位層にはコアネットワーク向けの大 標に、最適な仕組みを構築。「品質データをリアルタイムに取得し、傾向などを分析することで不 規模スイッチの Cisco Catalyst シリーズも導入 良を未然に防ぎたいと考えました。また設備の異常停止は即座に担当者に通知され、ライン停止 し、ネットワーク全体を統合的に制御する形とし 時間も最小に抑えます」と説明するのは、同社の千代田正義氏です。 現場帳票のデジタル化 生産 L/T（在庫）見える化 ました。 これを実現するには、ラインの稼働を支える「IoT ネットワーク」が非常に重要になります。 さらに、ネットワークのエッジには Cisco Identity まず求められたのが安定性でした。デジタル化の進展に伴い、設備を監視・制御するセンサーや Services Engine（ISE）を導入。多様なネット カメラから送られてくるデータ量は増大し、通信の頻度も上がっています。ネットワークがボトル ワークアクセスと生産ライン、設備に対するセ ネックになると、生産活動への影響は避けられません。「100 台以上の高解像度ネットワークカメ キュリティ管理を可能にしています。これにより、 ラの活用、および数千種以上の品質データを収集・活用するためには、信頼性の高いネットワーク 異常発生時の ラインを構成する末端の製造設備の IoT 情報ま が不可欠でした（」千代田氏）。 作業記録用カメラ スマートウォッチ通知 AR 作業支援ツール でを取り出せる、セキュアで運用性の高い IoT また運用定着を図る上では、現場にとって使いやすい仕組みでなくてはいけません。ラインの稼働 ネットワークを具現化しています。 日産自動車株式会社 を常時監視し、異常があれば即座に対応する。そのために、多様な情報を一覧で見える化し、直 パワートレイン生産技術部 感的かつシンプルに運用・管理できるインターフェースが必要だと考えました。 千代田 正義 氏 さらに、長く使える環境であることも重要でした。OT 領域の生産系とIT領域の情報系を融合して 結果～今後 いけば、工場外のシステムとつながるケースも増えていくでしょう。「柔軟性や拡張性が高く、アド レス管理を簡素化できること。さらに産業プロトコルの統合や省配線化できる仕組みが必要でした」 栃木工場では、 稼働を目指し、e-パワートレイン自動生産ラインを構築中 と村井氏は言います。 まさに今ライン構築が進められている 現在、栃木工場では新ネットワークを活用した e-パワートレイン自動生産ラインの立ち上げ作業 を進めています。 IoT ネットワークは、生産ラインが正式稼働する前に稼働を開始する予定です。実際の生産を開始 ソリューション する前の試作段階から活用することで、最適な設定などを検証する狙いです。そのために、製造 や保全、技術、品質保証、物流などの各部署と連携してユースケースを作成し、実際の活用イメー 技術力とナレッジ、実績を評価し、シスコをパートナーに選定 ジを共有。意見交換を繰り返しながら、調整・改善を進めています。 横浜工場の IoT ルーム。多様な情報が そこで日産は、栃木工場で構築される最新の EV モーターラインで、上位システムから設備側まで 「栃木工場の活動は横浜工場の IoT の活動を基に改善を加えながら、進化させています。IoT ルー モニターに映し出されている 一気通貫で運用できる、高速かつセキュアなネットワーク環境を構築することにしました。 ムは自動生産ラインの情報を見える化して分析し、現場の品質向上を支援する、いわばコントロー 複数の仕組みを検討したのち、選定したのがシスコ製品です。「シスコは業界をリードするグロー ルセンター。栃木工場ではさらにこれを進化させる予定です。試作時の品質課題に関するデータ バルなネットワーク機器ベンダー。スマートファクトリーを支える製造業界向けのソリューションも や、立ち上がり時の設備稼働ロスなどを分析します」と千代田氏は語ります。 豊富に提供しています。技術力が高く、グローバルに広がるリファレンスやベストプラクティスの提 生産系と情報系のネットワークを統合したことはコロナ禍の働き方を支える上でも機能しました。 供も期待できます。日産が目指す次世代のクルマづくりを支えるパートナーとして最適と判断しまし 全国に発令された緊急事態宣言を受け、日産でも工場の操業停止や工場・拠点間の移動制限など た」と村井氏は選定理由を述べます。 の措置を講じました。しかし、ネットワークを刷新していたため、国内外の拠点・工場のメンバー また、すでに稼働中の横浜工場の VC-T エンジン生産ラインで、シスコ製品を採用していたことも とも、セキュアな環境でスムーズにリモートコミュニケーションを行えたといえます。 後押しになりました。導入以来、自動生産ラインは安定稼働を続けており、これを支える IoT ネッ 「この環境は、ライン稼働後も工場のメンバーやサプライヤをつなぐものとして、積極的に活用し トワーク、およびシスコ製品の信頼性を高く評価した形です。 ていきたいですね」と千代田氏は話します。ラインの正式稼働後は、ネットワークデザインの標準 「お客様満足度や生産性の向上に役立てるためのデータは、正しく取得・伝達されなければなりま 化を進め、グローバルの他工場、他ラインへスピーディに横展開していく計画です。「デジタル分 せん。そのため、セキュアで信頼性、運用性の高いライン内ネットワークが不可欠でした。また将 野の技術革新スピードは非常に速いので、常に新しい技術を取り込むことが欠かせません。常に 来的にネットワークデザインを標準化し、統一されたポリシーをグローバルで展開していくために 標準のブラッシュアップを図ることで、お客様満足度の向上に貢献していきます」と村井氏は展望を も、シスコを選択しました（」村井氏）。 述べます。 ニッサンインテリジェントファクトリーの取り組みを進める上で、シスコ製品を核とした IoT ネット 新ネットワークはアドレス管理や構成がシンプルになった ワークは不可欠なインフラとなっています。栃木工場の新ネットワークを足掛かりに、今後も日産 ため、ラインの改善や増設にも柔軟に対応できます は「限りないお客さまへの同期」「限りない課題の顕在化と改革」を推進。グローバル市場における 生産予定の新型クロスオーバー EV「日産 アリア」 次世代のクルマづくりをリードしていく構えです。

コロナ禍をチャンスに変えていく Cisco Industrial Ethernet（IE）シリーズ 導入事例 「人」が主役のビジネスで勝機をつかむ 日産自動車株式会社 鈴木　新型コロナウイルスの感染拡大により、日本では緊急事態宣言が を支えてくれるものとして、シスコ 発令され、多くの企業が出勤削減に取り組みました。日産様はどのよう 製品の進化には期待しています。 「生産技術のインテリジェント化」を目指し な対応をされたのですか。 鈴木　具体的に、当社に期待する 日産自動車株式会社 パワートレイン生産技術開発本部 村田氏　エンジニアリング部門では多くの部署がテレワークに切り替え ことを教えてください。 常務執行役員 最新技術を採用した IoT ネットワークを構築 て業務を継続しました。いざ実施してみると、難しいと思っていた生産 村田氏　設計開発、生産技術開 村田 和彦 氏 技術の業務も対応できることがわかりました。緊急事態宣言中は、海外 発、工場部門がつながれば、設計 から納入する工場設備の現地検収立ち会いもリモートで行い、わざわざ したものを素早く試作できるようになります。また、工場の自動化・イン 大勢で出張しなくても済むようになりました。もう、以前の状況に戻るこ テリジェント化がさらに進めば、ロボットが行う組み立てや搬送作業の とはないでしょう。ただ同時に、対面で得られる“共感”の大切さを感じ 領域も広がります。「工場のロボットを人が遠隔から操作する」といった たのもこの時期でした。 ことも、夢物語ではなくなるかもしれません。こうした高度なネットワーク 鈴木　コミュニケーションで重要になる微妙な空気感は、やはり対面の方 の構築では、シスコ製品の強みが活きてくると考えています。 がつかみやすいですよね。コミュニケーションツールを提供する当社とし また別の視点では、ラインや工場の立ち上げをリモートで指示・管理で ては、テレワーク環境は誰でも扱え きれば、今よりはるかに効率的に作業を進められるでしょう。シスコの る便利さとともに、対面に肉薄する 先進コミュニケーションツールで“共感”が醸成できれば、リモートでも 臨場感が求められていると感じます。 一層スムーズに仕事が進められるはずです。 村田氏　そうですね。私は、どん 鈴木　ありがとうございます。コロナ禍で世界経済は厳しい状況にあり 最先端の技術で「クルマの未来」を提案し続ける日産自動車。同社は、新型クロス なにデジタル技術が普及しても、 ますが、私は危機をチャンスに変えるべきだと考えています。以前の状 製品 ＆ サービス オーバー EV「 日産 アリア」の新開発パワートレイン生産ラインにおいて、IoT を ビジネスの主役が「人」であることは 態に「立て直す」だけでなく、より生産性の高い働き方による「一層の成長」 ・ Cisco Industrial Ethernet 2000（IE 2000） 活用した生産技術の革新に取り組んでいます。この IoT を制御するネットワーク 変わらないと考えています。人とデ を目指したいですね。今後も先進的なネットワーク製品、およびその機 ・ Cisco Industrial Ethernet 5000（IE 5000） シスコシステムズ合同会社 能を拡張するソフトウェアなどの提供を通じて、日産様のビジネス成長 ・ Cisco Catalyst シリーズ に採用されているのがシスコ製品です。IT と OT（運用技術）を融合させた新たな代表執行役員会長 ジタルがスパイラルで成長していく ・ Cisco Identity Services Engine（ISE） 鈴木 和洋 をご支援できればと思います。 ネットワークは、次世代のクルマづくりのコンセプト「ニッサン インテリジェント ことが大切です。スパイラルアップ 課題 ファクトリー」を実現する上で欠かせないインフラとなっています。 ・ 労働集約型の生産を脱却しつつ “匠” の 日産自動車株式会社 最新のデジタル技術をキャッチアップして生産技術をインテリジェント化していく。技術を継承するため、ロボットや IoT を活用した生産技術のインテリジェント化が これが次世代のクルマづくりのカギになっています。この活動を推進する上で、 重要に ネットワークは極めて重要な役割を担います。 所在地 （本店） 神奈川県横浜市神奈川区宝町 2 番地 従業員数 2 万 2791 名（単独）、13 万 8893 名（連結） ・ 様々な機器やデジタル技術を工場に導入 ─ 日産自動車株式会社 パワートレイン技術企画部 主管 村井 勇一氏 （本社） 神奈川県横浜市西区高島一丁目 1 番 1 号 URL https://www.nissan-global.com/JP/ する際は、それらの稼働を見える化し、適 設立 1933 年（昭和 8 年）12 月 切に管理・制御する仕組みが不可欠 ・ 生産ラインはビジネスの生命線であり、 革新的なクルマやサービスの創造を通じ、より豊かな暮らしや社会の実現に貢献する日産自動車 技術革新や先進的な商品の開発に取り組み、独自性 表。ロボットや IoT を活用するとともに、“匠”の技を 稼働を支える IoT ネットワークにも、高い安定性・信頼性・拡張性が求められる （以下、日産）。電気自動車（EV）や自動運転などの新技術開発に力を注ぎ、自動車業界の発展を に溢れる革新的なクルマやサービスをグローバルに提 継承し、生産技術の自動化・インテリジェント化を推進 リードしています。 供する。2019 年 11 月には次世代のクルマづくりのコ している。また、人が働きやすい環境づくり、女性や ソリューション 近年は自動車業界を取り巻く環境が大きく変化し、次世代モビリティの競争が激化しています。ク ンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を発 高齢者も活躍できる職場づくりにも積極的に取り組む。 ・ 製造業界向けの多彩な製品ポートフォリオ ルマの機能や構造も複雑化し、生産工程の技術革新が不可欠です。 とグローバルの実績で培った技術力を評価 ・ 産業用イーサネットスイッチの Cisco IE 一方、日本は少子高齢化が深刻化する中、労働集約型の生産方式を脱却する時期を迎えています。 シリーズをベースに、生産系と情報系を モノづくりを支えてきた“匠”の技術をいかに継承するか――。そこで日産が打ち出したのが、「ニッ 連携した統合ネットワークを構築 ・ Cisco Industrial Network Directo（r IND） サン インテリジェント ファクトリー」というコンセプトです。「工場内の多彩なセンシング情報を取 とCisco Identity Services Engine（ISE） 得・活用することで、次世代のクルマづくりのカギを握る『生産技術のインテリジェント化』を目指し を活用した IoT ネットワーク接続デバイス のセキュリティ管理を実現 ています」と日産の村井 勇一氏は語ります。 結果～今後 課題 ・ 正式稼働に向け、新ネットワークを活用し た e-パワートレイン自動生産ラインの立 ち上げ作業が進行中 ・ 新ネットワークは生産ラインのテスト段階 あらゆるデータを有効に活用する「プラントのデジタル化」を推進 から活用し、品質課題や設備稼働ロスな 日産は、2 つの大きな軸で開発・生産を行っています。1 つ目は「限りないお客様への同期」。顧 どの洗い出し・改善を進めている ・ 情報系ネットワークとの連携メリットを活 客ニーズに沿った高品質な製品を、ニーズが発生した時に、最適な価格で提供することを重視し かしたリモートコミュニケーションを実施。 ています。2 つ目は「限りない課題の顕在化と改革」です。開発や生産現場の課題を見える化し、 コロナ禍でも現場業務を継続 ・ 栃木工場で実現したネットワークデザイン 皆で知恵を出し合いながら一つひとつ解決していきます。その 2 つを高次元で実現するために、 を標準化し、統一されたポリシーをグロー 同社の生産部門では様々な領域の改革を進めています。中でも力を入れているのが、「プラントの バルに展開していく デジタル化」です。その一環として IoT プラットフォームを導入した VC-T エンジンの自動生産ライ 2171-2009-000-BL ンが、2017 年から同社の横浜工場で稼働を開始しました。VC-T エンジンとは、量産で世界初 Cisco IE シリーズをベースとした の可変圧縮比を実現した画期的なエンジンであり、世界で高い評価を得ています。「このエンジン 統合ネットワークを実現 は複雑かつ高精度な部品で構成されており、今までにない高い品質が要求されます。安定して高 こうして同社は、栃木工場の e-パワートレイン 品質なエンジンを生産し続けるために品質測定結果だけでなく、IoT を使い重要な要因系のデー 自動生産ラインを支える、高度な IoT ネットワー タを測定し活用しています。日産での IoT プラットフォームの導入は、この VC-T エンジン生産ラ クを構築しました。 インが初めてであり、全てが試行錯誤の連続でした」と村井氏は振り返ります。 具体的には、耐熱・防塵対策などを施した環 境性能の高い産業用イーサネットスイッチの 生産のインテリジェント化にはネットワークの高度化が必須 Cisco Industrial Etherne（t IE）シリーズをベー 同社は主力生産拠点の1つである栃木工場で、e-パワートレイン自動生産ラインを新設することに スに、生産系ネットワークと情報系ネットワーク しました（e-パワートレインとは、モーターやインバーターなどを組み合わせた電気自動車専用の を統合した IoT ネットワークを構築。構成を簡 動力ユニット。内燃エンジンに代わり、パワフルな動力を生み出す）。 素化することで、運用のシンプル化を実現して その際、横浜工場での経験を活かした一層のインテリジェント化も計画。「不良品発生ゼロ」を目 います。上位層にはコアネットワーク向けの大 標に、最適な仕組みを構築。「品質データをリアルタイムに取得し、傾向などを分析することで不 規模スイッチの Cisco Catalyst シリーズも導入 良を未然に防ぎたいと考えました。また設備の異常停止は即座に担当者に通知され、ライン停止 し、ネットワーク全体を統合的に制御する形とし 時間も最小に抑えます」と説明するのは、同社の千代田正義氏です。 ました。 これを実現するには、ラインの稼働を支える「IoT ネットワーク」が非常に重要になります。 さらに、ネットワークのエッジには Cisco Identity まず求められたのが安定性でした。デジタル化の進展に伴い、設備を監視・制御するセンサーや Services Engine（ISE）を導入。多様なネット カメラから送られてくるデータ量は増大し、通信の頻度も上がっています。ネットワークがボトル ワークアクセスと生産ライン、設備に対するセ ネックになると、生産活動への影響は避けられません。「100 台以上の高解像度ネットワークカメ キュリティ管理を可能にしています。これにより、 ラの活用、および数千種以上の品質データを収集・活用するためには、信頼性の高いネットワーク ラインを構成する末端の製造設備の IoT 情報ま が不可欠でした」（千代田氏）。 でを取り出せる、セキュアで運用性の高い IoT また運用定着を図る上では、現場にとって使いやすい仕組みでなくてはいけません。ラインの稼働 ネットワークを具現化しています。 を常時監視し、異常があれば即座に対応する。そのために、多様な情報を一覧で見える化し、直 感的かつシンプルに運用・管理できるインターフェースが必要だと考えました。 さらに、長く使える環境であることも重要でした。OT 領域の生産系とIT領域の情報系を融合して いけば、工場外のシステムとつながるケースも増えていくでしょう。「柔軟性や拡張性が高く、アド レス管理を簡素化できること。さらに産業プロトコルの統合や省配線化できる仕組みが必要でした」 稼働を目指し、e-パワートレイン自動生産ラインを構築中 と村井氏は言います。 現在、栃木工場では新ネットワークを活用した e-パワートレイン自動生産ラインの立ち上げ作業 を進めています。 IoT ネットワークは、生産ラインが正式稼働する前に稼働を開始する予定です。実際の生産を開始 する前の試作段階から活用することで、最適な設定などを検証する狙いです。そのために、製造 や保全、技術、品質保証、物流などの各部署と連携してユースケースを作成し、実際の活用イメー 技術力とナレッジ、実績を評価し、シスコをパートナーに選定 ジを共有。意見交換を繰り返しながら、調整・改善を進めています。 そこで日産は、栃木工場で構築される最新の EV モーターラインで、上位システムから設備側まで 「栃木工場の活動は横浜工場の IoT の活動を基に改善を加えながら、進化させています。IoT ルー 一気通貫で運用できる、高速かつセキュアなネットワーク環境を構築することにしました。 ムは自動生産ラインの情報を見える化して分析し、現場の品質向上を支援する、いわばコントロー 複数の仕組みを検討したのち、選定したのがシスコ製品です。「シスコは業界をリードするグロー ルセンター。栃木工場ではさらにこれを進化させる予定です。試作時の品質課題に関するデータ バルなネットワーク機器ベンダー。スマートファクトリーを支える製造業界向けのソリューションも や、立ち上がり時の設備稼働ロスなどを分析します」と千代田氏は語ります。 豊富に提供しています。技術力が高く、グローバルに広がるリファレンスやベストプラクティスの提 生産系と情報系のネットワークを統合したことはコロナ禍の働き方を支える上でも機能しました。 供も期待できます。日産が目指す次世代のクルマづくりを支えるパートナーとして最適と判断しまし 全国に発令された緊急事態宣言を受け、日産でも工場の操業停止や工場・拠点間の移動制限など た」と村井氏は選定理由を述べます。 の措置を講じました。しかし、ネットワークを刷新していたため、国内外の拠点・工場のメンバー また、すでに稼働中の横浜工場の VC-T エンジン生産ラインで、シスコ製品を採用していたことも とも、セキュアな環境でスムーズにリモートコミュニケーションを行えたといえます。 後押しになりました。導入以来、自動生産ラインは安定稼働を続けており、これを支える IoT ネッ 「この環境は、ライン稼働後も工場のメンバーやサプライヤをつなぐものとして、積極的に活用し トワーク、およびシスコ製品の信頼性を高く評価した形です。 ていきたいですね」と千代田氏は話します。ラインの正式稼働後は、ネットワークデザインの標準 「お客様満足度や生産性の向上に役立てるためのデータは、正しく取得・伝達されなければなりま 化を進め、グローバルの他工場、他ラインへスピーディに横展開していく計画です。「デジタル分 せん。そのため、セキュアで信頼性、運用性の高いライン内ネットワークが不可欠でした。また将 野の技術革新スピードは非常に速いので、常に新しい技術を取り込むことが欠かせません。常に 来的にネットワークデザインを標準化し、統一されたポリシーをグローバルで展開していくために 標準のブラッシュアップを図ることで、お客様満足度の向上に貢献していきます」と村井氏は展望を も、シスコを選択しました（」村井氏）。 述べます。 ニッサンインテリジェントファクトリーの取り組みを進める上で、シスコ製品を核とした IoT ネット ワークは不可欠なインフラとなっています。栃木工場の新ネットワークを足掛かりに、今後も日産 は「限りないお客さまへの同期」「限りない課題の顕在化と改革」を推進。グローバル市場における 次世代のクルマづくりをリードしていく構えです。