1/21ページ
カタログの表紙 カタログの表紙 カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(3.9Mb)

【ホワイトペーパー】エンタ―プライズMESの活用によるものづくり支援

ホワイトペーパー

MESの概念と定義、MES投資状況、NECが提案する「IFS Applications for MES」の特長などについて調査会社のITRが執筆したホワイトペーパーです。

株式会社アイ・ティ・アール(ITR)によるWhitePaperです。
MESの概念と定義、MES投資状況、NECが提案するエンタープライズMES「IFS Applications for MES」の特長などを、調査会社目線で執筆していただいています。

 ◇目次◇
 ・MESソリューションの概要と企業の投資動向
 ・エンタープライズMESの特徴と効果
 ・NECが提供するMESソリューション
 ・提言

--------------------
関連キーワード:MES,製造実行システム,SCM,ERPパッケージ,ERPソリューション,ERPシステム,ERP,日本電気,NEC,IFS,IFS APPLICATIONS,食品業,食品,製造業,製造,素材業,素材,メーカー,化学業,化学,大手企業,大企業,機械製造,プロセス製造,組立製造,組立製造業,プロセス,プロセス業,プロセス製造業,重工,重工業,設備機器,自部品,自動車部品,精密機器,産業機械,医療機器,ハイテク機器,繰返生産,生産管理方式,生産管理,ハイブリッド生産,ハイブリッド,プル型生産,受注設計生産,受注設計,受注組立生産,受注組立,組立型製造,PULL型生産,個別受注生産,個別受注,プロジェクト管理,MRP,製番,プッシュ型,プッシュ型生産,PUSH型生産,多通貨,多言語,多段階導入,多段階,多拠点,海外拠点,海外展開,海外対応,海外シフト,タイ,フィリピン,現地生産,現地対応,現地シフト,東南アジア,中国,グローバル展開,グローバル対応,グローバルシフト,グローバル,インドネシア,マレーシア,ベトナム,導入実績,導入事例,実績,事例,ユーザ,資料請求,費用,見積もり,英語,維持費,管理費,比較,段階的,価格,ランキング,セミナー,ステップ導入,ステップ,コスト,イベント,アジャイル,ものづくり,かんばん,お問い合わせ,おすすめ,TCO,IoT,AI,DX,製造実行管理,MES,5M,4M,IoT連携,製造指示,IFS Applications for MES,個別受注,BTO,MTO,CTO

このカタログについて

ドキュメント名 【ホワイトペーパー】エンタ―プライズMESの活用によるものづくり支援
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 3.9Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 NECグループ (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

Page1

ITR White Paper エンタープライズMESの活用による ものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ 株式会社アイ・ティ・アール C19090125
Page2

ITR White Paper 目 次 第1章 MESソリューションの概要と企業の投資動向 .......................................................1 MESの概念と定義 ..................................................................................................1 DX時代の業務変革への対応 ...................................................................................3 国内企業のMESに対する投資動向 .........................................................................4 第2章 エンタープライズMESの特徴と効果 ........................................................................6 MESソリューションの課題 ....................................................................................6 ERPとMESソリューションの最適配置 ..................................................................8 新たなMESソリューションの位置づけ ................................................................1 0 第3章 NECが提供するMESソリューション .....................................................................1 2 IFS Applications for MESの強み .........................................................................1 2 NECの強み “匠”の生産現場革新コンサル ..........................................................1 5 第4章 提言 ...........................................................................................................................1 8 i ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page3

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ 第1章 MESソリューションの概要と企業の投資動向 “From Factory Floor to Top Floor”とは、製造の現場システムであるMESと基幹システムであるERPをシーム レスにつなげるコンセプトであるが、従来から理想とされてきたものの実現が難しかった。MESの国内市場 は、専業ベンダー、制御機器・システムとMESを併売するベンダー、ERPベンダーなどが割拠しており、最 適なソリューションの見極めが難しい側面もある。本章では、MESと呼ばれるシステムの背景と立ち位置を 改めて確認するとともに、国内企業の導入検討状況を概観してみよう。 MESの概念と定義 製造実行システムとして知られているMES(Manufacturing Execution System)で あるが、その発祥は1992年に設立されたMESA(Manufacturing Enterprise Solutions Association)Internationalの時代に遡る。MESAは、そのまま直訳すると製造業ソ リューション協会となる。製造業のバリューチェーン全体にかかわる範囲に活動対象を 広げてきたが、製造現場の業務処理および機器・制御システムと上位システムを高いレ ベルで統合することにより、エンタープライズシステム全体での最適化、自動化、可視 性促進を中核のミッションとしている。MESは、MESA International(以下、MESA) が1997年に提起したMESA-11 Modelに起源を見ることができる(図1)。 図1 MESA-11 Model(MESの11機能区分) 1 Resource Allocation and Status 生産資源の配分と監視 設備や人などの生産資源を配分、予約、監視、管理する機能 2 Operations/Detailed Scheduling 作業のスケジューリング 生産計画に基づき、詳細なスケジュールを策定・管理する機能 3 Dispatching Production Units 差立て・製造指示 差立て・製造指示発行、ロット管理、作業標準を管理する機能 4 Document Control 仕様・文書管理 製造にかかわるドキュメントや仕様書、製造記録を管理する機能 5 Data Collection & Acquisition データ収集 製造現場データの収集/管理、生産進捗や状況を管理する機能 6 Labor Management 作業者管理 作業情報・資格、作業者の作業状況・履歴などを管理する機能 7 Quality Management 製品品質管理 統計的品質管理、製品品質情報の収集・分析を管理する機能 8 Process Management プロセス管理 製造プロセス・工程の処理や例外状況などを管理する機能 9 Maintenance Management 設備の保守・保全管理 設備の定期保全、予防保全の計画および実行を管理する機能 Product Tracking and 製品の追跡と製品体系の 10 原材料・部品・仕掛り品・製品を体系的に追跡・管理する機能 Genealogy 管理 11 Performance Analysis 実績分析 計画・予算の達成率、稼働率などを分析/管理する機能 出典:MESAの資料を基にITRが作成 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 1
Page4

ITR White Paper MESAは、図1における「データ収集」「プロセス管理」「設備の保守・保全管理」 などでは、製造現場に設置された設備・機器のハードウェアおよび制御システムの上位 層としてMESを位置づけている。同時に、「作業のスケジューリング」「差立て・製造 指示」などにおいては、ERPなどの生産管理システムの下位層にMESを位置づけてい る。単純化して整理すれば、①計画層②実行層③設備・機器・制御層における、中間層 としてMESを位置づけたのがMESA-11 Modelである。当然ながら、中間層であるMES には、①計画層とも③設備・機器・制御層とも重なる機能やデータを持たざるを得ない ことになる。こうした点について、MESA-11 Modelにはやや曖昧性があり、計画層に 対する実行層としてのMESの位置づけや必然性が明確とはいいがたい部分が残る。そ の後、MESAは、2004年にc-MES(Collaborative MES)を制定し、中間層というより ビジネスオペレーションとの相互連携性を考慮したモデルへとMESA-11を拡張してい る。そして、現行のMESA Modelは2008年に初版が制定され、最新版1は以下の4系で構 成されている。 ①戦略的イニシアティブ系 ②ビジネスオペレーション系 ③製造/生産オペレーション系 ④設備・機器・制御系 ①戦略的イニシアティブ系は、「リーン製造」「化学物質規制・コンプライアンス」 「PLM(製品ライフサイクル管理)」「APM(アセットパフォーマンス管理)」など が含まれており、今日の製造業に共通する業務変革テーマや、IoT/センサーなど新た なテクノロジを活用した予防・予知保全への対応なども考慮されている。この最新の MESA Modelでは、MESは③製造/生産オペレーション系に位置づけられるが、 MESA-11 Modelのような中間の実行層というよりは、ERP、SCM、CRMによる②ビ ジネスオペレーション系よりも詳細でリアルタイムに近いタイミングのオペレーショ ンを担うシステムとして再定義されている。そして、こうした新しい体系化においてさ らに重要なのは、③で製造の原語であるManufacturingと生産の原語であるProduction を併記・統合して一体性を高めた方向性である。④設備・機器・制御系は、従来から大 きな変更はない。 1 http://www.mesa.org/en/modelstrategicinitiatives/MESAModel.asp 2 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page5

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ DX時代の業務変革への対応 企業は、全社横断的なDX推進のための取り組みを活発化させてきている。DXを円滑 に推進するためには、変革を促進させる制度の新規採用と、変革を阻害する既存の社内 制度の緩和の両面からの施策が求められる。伝統的な大企業においては、人事評価と報 奨制度、副業・兼業や在宅勤務などの働き方に関する規則、部門の業績管理や個人の目 標管理に関する制度、契約や特許・知財の帰属に関するルールなど、既存の制度の中で 変革を阻害する部分を緩和するほうが有効な打ち手となる場合もある。 工場設備などに中長期的な投資が必要な製造業は、緩和施策が欠かせない典型的な業 種のひとつであろう。同時に、第4次産業革命による技術革新を踏まえた我が国産業の 目指すべき姿として、経済産業省が提起する「Connected Industries(コネクテッド・ インダストリーズ)」やCPS(Cyber Physical System)におけるITとOTの融合といっ た、従来の枠組みや制約をブレークスルーしたイノベーションにも取り組んでいかなけ ればならない。 デジタル技術を活用したイノベーションや業務変革の取り組みは、従来の業務プロス セス改革とは異なり、企業の根幹にかかわる多岐にわたる変革が求められる。ITRでは、 DX推進を「意識」「組織」「制度」「権限」「人材」の5つの分野で整理し、レベル0 からレベル5の6段階で企業におけるDX推進環境の成熟度を設定している。ITRが2019 年6月に従業員1,000名以上の国内企業を対象にこれらの5分野で調査した回答を全て積 み上げた結果を見てみよう(図2)。 図2 国内企業のDX推進環境の成熟度 0 20 40 60 80 100 120 レベル5(定着) 19(5.9%) レベル4(浸透) 33(10.3%) レベル3(部分的整備) 85(26.5%) レベル2(発展途上) 98(30.5%) レベル1(初期) 63(19.6%) レベル0(未着手) 23(7.2%) *数値は回答数、%は全回答321件中の回答割合 出典:ITR(2019年6月調査、従業員1,000名以上を対象、N=321) ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 3
Page6

ITR White Paper DX推進のための企業内の変革が進み、誰もが意識することなくDXを推進できるレベ ル5の企業は全体の6%弱にすぎない。また、全社的な環境整備が取り組まれ、具体的活 動が広がってきているレベル4の企業も10%程度と非常に少ない。一方、必要性も認識 されておらず、全く何も着手していないレベル0の企業も7.2%と非常に少なく、全体の 4分の3以上を占める企業がレベル1(初期)からレベル3(部分的整備)の間に位置して いることが明らかとなった。DX推進に取り組む製造業が今後避けて通れないテーマの ひとつとして、従来から理想とされてきた“From Factory Floor to Top Floor”によるも のづくりにおけるITとOTの融合の実現、ならびに技術・設計部門、生産管理部門、製 造部門などの壁を超えた横断的なオペレーショナルシステムとしてのMESの重要性が 増している、とITRでは見ている。 国内企業のMESに対する投資動向 ITRでは、毎年「IT投資動向調査」を実施している。同調査項目のひとつである製品・ サービス分野に対する投資意欲のなかでは、業務系システム分野に「MES/スマート ファクトリー」を含めている(図3)。 図3では、製造業に限定して業務システム分野の投資意欲を「導入済み」から「導入 予定なし」までの7段階に分け回答を得ている。「MES/スマートファクトリー」は、 製造業においてさえ「導入予定なし」と回答する企業が過半数を占め、「PDM/PLM」 より低調である。しかも、「DMP(Data Management Platform:マーケティング・ データを統合管理するための管理基盤)」「MA(Marketing Automation)」といった 比較的新規性が高いソリューションに対して、わずかながら普及しているにとどまる。 MESは、MESAが初期のモデルを提起してから20年以上経過するにもかかわらず、 「導入済みであり、今後も拡充予定」「導入済みであり、現状維持」とする回答割合が 最下位グループとなっている。しかし、「直近に導入予定」「中期的に導入予定」「時 期は未定だが導入予定」との回答の合計は約25%であり、「DMP」「サプライチェーン 管理」の約26%から僅差の3位であり、「生産管理」より上位であることが注目される。 また、従業員規模5,000人以上に限定した分析では、「MES/スマートファクトリー」 の新規導入可能性および投資増減意欲とも全体に比べて高い傾向にあることも確認で きており、大企業は投資に対して前向きである。量産から多品種少量生産、変量生産か らさらにマス・カスタマイゼーションやサービスビジネスへの対応が迫られている製造 4 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page7

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ 業では、企業規模を問わず「MES/スマートファクトリー」の潜在需要は大きいと想定 され、高いポテンシャルと今後の成長性が期待される業務システム分野といってよいだ ろう。 図3 製造業における業務系システム分野への投資意欲 出典:ITR「IT投資動向調査2019」 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 5
Page8

ITR White Paper 第2章 エンタープライズMESの特徴と効果 従来のMESは、Factory Floor、つまり工場の設備・機器・ラインなどの生産資源と一体で検討され導入 されることが一般的であった。そのため、Top FloorであるERPなどのエンタープライズシステムとのタ イムリーな連携が困難なだけでなく、クローズドでレガシー化したMESを抱え容易に刷新できないケー スも少なからず存在する。製造業は、第4次産業革命に代表されるデジタルものづくりや、ビジネスや生 産資源の変更や多拠点展開などにも対応できる新たなMESを選択肢として検討すべきである。 MESソリューションの課題 社会・産業のデジタル化が進展するなか、情報通信技術の積極活用による新たな価値 創造でビジネス成長を促進する取り組みが国内でも成果をあげ始めている。クラウド、 IoT、ビッグデータといったテクノロジは普及段階に入り、モノ(在庫、移動車両)の トラッキングやモニタリング、設備・機器のセンサーデータによる予防保全・予知保全、 エネルギー消費の最適化などで活用され始めている。AIについては、検証段階を経て積 極的に活用を進める企業がある一方で、適用範囲や対象を見定めつつ慎重な姿勢で技術 評価を行っている企業もある。 しかし、そうしたシステム化の検討が進むなかで、新たなテクノロジに対応できない ばかりか、老朽化やブラックボックス化によりメンテナンス性の問題を抱えた、いわゆ るレガシーシステムの問題も表面化してきている。レガシー化したシステムは、単に技 術的に古いことが問題であるだけでなく、拠点ごと異なるシステムが導入されるサイロ 化、案件の括りや所管部門が異なることに起因する業務プロセスの分断、不十分な標準 化やシステム機能を補強するための紙や手作業およびExcelなどによる継ぎ接ぎなど、 絡み合った複雑な状態になっていることが多い。さらに、こうしたシステムは問題が先 送りされやすく、レガシー化がより進行する悪循環に陥りがちである。 MESもまた、そのようになりがちなシステムであり、さらにMES固有の難しさも加 わり、以下のような問題に悩む企業が少なくない。 1. 工場の設備・機器・ラインなど生産資源と一体化しており、極端な場合は製品別ど ころかライン別に異なるMESが導入されている。また、システムもエンジニアリン グ部門が所管し、IT部門からはブラックボックスとなっていることも多い。 6 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page9

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ 2. システム要件が、業務プロセスではなく、工程のプロセスや設備・機器基準である ことから、その変更による影響を受けやすい。逆に、MES部分のみを切り離して刷 新しにくい。また、他の拠点にも展開できる標準性の高いシステムとすることが難 しい。 3. 手作業や紙による作業指示/実績管理、作業標準書、図面・仕様書などが混在し、 熟練作業者のノウハウや人海戦術頼りで運用されている。いまどこで何を作ってい るかの進捗や、予算対実績がタイムリーかつ誰でも見えるようにできていない。 補足すると、1の生産資源と一体化したMESだからといって、Top Floorのビジネス オペレーション系システムと連携できないということではない。設備・機器や制御シス テムを扱う計装ベンダーなどがMESを販売していることも多く、製品の種別や形態に 特化した専用のMESが選択できる場合は、トレードオフではあるが、MESA Modelの ③製造/生産オペレーション系と④設備・機器・制御系を優先した最適化が追求できる 利点もある。 2の問題は1とも関連するが、一般的なビジネスオペレーションにおける作業や業務プ ロセスの流れではなく、物理的な工程のシーケンスを基準とすれば、要件の曖昧性が排 除しやすく導入も容易との判断から、トレードオフとなるビジネスシステムとしての標 準性や柔軟性を見落としてしまいがちである。複数方式・複数案の長所短所を評価した 結果の選択肢であれば問題ないが、MESにおいても、ベンダーや製品以上に、システム 化の方式を評価することは重要である。3については、実例をベースに補足する(図4)。 図4は、ある製造業の海外拠点の業務プロセスを20程度に簡略化したものであり、上 列の「作業計画」から「製品検査」までがビジネスオペレーションと製造/生産オペレー ションが重なり合う部分である。このケースでは、表面的には何の問題もなく一連の業 務にパッケージが導入されていたが、ライセンスが限定されているため現場層で十分に 利用できない、導入後のサポートや教育が不十分で使われなくなる、新たな要件をシス テム化するための要員やノウハウも不足している、といったことから、Excelが業務の 主力に置き換わってしまった典型である。 ここではExcelと記述しているが、Excelが介在する業務のインプットとアウトプット には当然ながら紙や手作業のバリエーションが多数ある。そのような状況でも、受注、 製造指図、出荷指図といった決算につながる不可欠な業務ではソフトウェア製品を使わ ざるを得ないため、Excelで集計したデータを製造実績、売上実績としてソフトウェア ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 7
Page10

ITR White Paper 製品に二重入力しなければならず、日次月次の実績確定作業に大きな負担がかかってし まう。さらに、このケースの場合、ソフトウェア製品への入力負荷を軽減するために、 明細を集約したデータ処理をしてしまうことによって、業務全体で一貫したデータの蓄 積・利活用もできないようになっていた。 図4 手作業やExcelによる業務の分断 出典:ITR 海外生販拠点など、納期優先、必要最低限、低コストが重視される場合、いまだにこ うしたケースが少なくないが、問題を先送りしてきた企業も、域内共通、事業共通といっ た、グローバルシステムの検討を始めてきている。 ERPとMESソリューションの最適配置 MESは、工場現場における製造/生産オペレーションとその情報を統合するシステ ムであり、小日程計画以下の詳細な製造指示のほか、品質管理、作業者管理、実績管理 などの業務処理を担う。同時に、計画レベルの粗いビジネスオペレーション系のERP、 SCMなどのシステムにデータを還流させることで、企業全体の計画対実績を管理する 役割を果たす(図5)。 8 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page11

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ 図5 生産と製造の還流 出典:ITR ビジネスオペレーション系のシステムだけで「どのように作るのか」「どのように作 られたのか」の「分」レベルの時間軸で処理される詳細データを全て蓄積し続けること は、複雑性が高すぎて性能的にも非常にハードルが高くなるため難しい。逆に、製造/ 生産オペレーション系のシステムで、出荷、売上げ、購買などの処理結果を売掛金、買 掛金といった財務的なデータに紐づけつつ、「何を作るのか」「何を作ったのか」を粗 いレベルで管理することは、本来の機能とミスマッチで適材適所とならない。業務プロ セスに沿ったモノとカネの流れで見れば、MESの活用によりERPとの適切な棲み分け でシステムを配置する方式が適切な場合が多い(図6)。 図6 ERPとMESの棲み分け E RPの領域 伝票・指図 伝票・指図 伝票・指図 伝票・指図 購買プロセス 加工・処理 組立・調合プロセス プロセス 梱包プロセス モノの流れ オペレーション要求 保管 素材 中間 最終 場所 加工 加工 加工 工程 原材料 工程 仕掛品 工程 仕掛品 工程 半製品 在庫 オペレーション オペレーション オペレーション オペレーション オペレーション 指示・記録 指示・記録 指示・記録 指示・記録 指示・記録 MESの領域 出典:ITR ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 9
Page12

ITR White Paper また、ERP領域の粗いレベルの業務プロセスをシステム化することから先行すれば、 MES領域の検討は格段に容易になる。大括りの業務の起承転結が確定できれば、その過 程を整理することは容易だからである。両方の領域を同時に検討し導入することができ れば理想的ではあるが、かなり難易度が高いため共倒れになるリスクも高い。万全のリ ソース・体制を整えたうえで、取り組む必要があることに留意すべきである。 新たなMESソリューションの位置づけ あまり明言されることはないが、元来、ERPは生産すなわちProductionの計画対実績 レベルのデータを想定して開発されたシステムであり、製造すなわちManufacturingの 詳細な業務処理の過程を管理することを前提にしていない。海外では、Productionと Manufacturingを明確に使い分けており、ERPは前者を主眼として開発され、MESは 後者を主眼に棲み分けてきた。 この点は、ERPの代表ベンダーであるSAPのモジュールを見ても、PP(Production Planning)はあるが、MO(Manufacturing Operation)やME(Manufacturing Execution)といったモジュールはSAP ERPの標準システムではなかった。2015年2月 に発表されたSAP S/4 HANAも基本的に同様であり、オンプレミス版ではPPを踏襲し、 MESは業種別の拡張ソリューションとなっている。ERPベンダー自らが、自社の製品 で製造/生産オペレーション系が動かせないと公言することはない。また、原理的に不 可能というわけではないことも確かである。 しかしながら、モノの動きの裏で常にカネの流れを密結合で紐づける大福帳型指向の 強い製品は、あちら立てればこちら立たずのトレードオフが発生しやすく、ピンポイン トの非常に複雑な設計が求められることが多い。にもかかわらず、結果として、ビジネ スオペレーションとしても製造/生産オペレーションとしても中途半端な、最適性を追 求できないシステムとなりがちなことには注意を要する。 ERPで製造/生産オペレーションができないといわれることが多いのは、機能の過不 足というより、製品の成り立ちや構造の特性に依存する部分が大きい。逆に、ERPと MESの2つのシステムを使い分ける方式が常に正解ということではなく、ものづくりの 特性や工程など、自社の要件や今後の方向性に依る部分も大きい。 最新のMESA Modelが、こうした点を踏まえながら、ビジネスオペレーション系と製 10 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page13

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ 造/生産オペレーションを区別しつつ、製造(Manufacturing)と生産(Production) を併記してシステム化の方式や選択肢を反映させたように読み取れる点は、前述のとお り非常に重要であり興味深い。 企業は、ERPかMESかの迷路に入り込むことなく、自社の要件を踏まえながら適切 な方式(片寄/並存)を検討していくべきである。また、要件の変化により方式を柔軟 に変更したり組み合わせたりできる、標準性と最適性が両立可能な製品を選定すること が望ましい。 時々刻々のMESレベルのデータが、製造現場の業務プロセスから企業レベルのプロ セス領域へと循環できれば、詳細かつ即時性の高いデータ活用によるビジネスへの貢献 が期待できる。なにより、実現が難しかった“From Factory Floor to Top Floor”のコン セプトが具体化できる(図7)。先進的な製造業がこうしたコンセプトに着目して、適 宜かつ適切に情報の取り出しを可能にするデータハブとしてもMESの実装を進めてい くと、ITRでは見ている。そして、従来の狭義のMESとあえて区別すれば、企業のバッ クボーンを構成するMESをエンタープライズMESと位置づけることができるだろう。 図7 エンタープライズMESによるデータの循環 出典:ITR ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 11
Page14

ITR White Paper 第3章 NECが提供するMESソリューション IFS Applications for MESの強み IFS Applications for MESは、スウェーデンのIFS社が開発するERPであるIFS Applicationsに、NECが独自に開発した機能を付加して提供しているソリューションで ある。その全体像は、国内PLMにおける代表的製品であるObbligatoやIoTアプリケー ション/プラットフォーム、エッジ領域のデバイスなど多岐に渡るソリューションを組 み合わせたものである(図8)。 図8 IFS Applications for MESによる製造ソリューション概要 出典:NEC IFS Applications for MESの最大の特徴は、ERPであるIFS Applicationsをベースに 開発されていることであり、主要なERPでこのような成り立ちのMESソリューション が利用できる製品は他にないといってよい。一般的にERPベンダーは、専業のMESベ ンダーをパートナーとして相互の製品を連携させることで、MESソリューションに対 応する。また、ERPベンダーが自社でMESソリューションを拡張機能として提供する 場合も、買収したMESソリューションをリブランディングしたり、自社で開発していて も製造/生産オペレーション部分だけを切り出したイメージのシステムであることが 12 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page15

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ 多い。そのため、基本的には、これらはいずれも製造/生産オペレーション系と設備・ 機器・制御系を優先したMESソリューションとなる。ただし、同一のベンダーでサポー トできるという点においては利点もある。 これに対して、IFS Applications for MESはベースとするシステムの構造やソース コードがERPとMESで完全に同一であり、専業のMES製品に比べて汎用性が高く、標 準的なシステムとしやすい。当然ながらビジネスオペレーション系と製造/生産オペ レーション系のシステム双方を連携させても、親和性に全く懸念がないことはいうまで もない。それでは、第2章「新たなMESソリューションの位置づけ」で述べた、Production とManufacturingについての懸念はないのだろうか。この点をごく簡単に判断する材料 として、IFS Applicationsのアーキテクチャを確認してみよう(図9)。 図9 IFS Applicationsのアーキテクチャ 出典:NEC IFS Applicationsは最初からManufacturingを想定して開発されており、その成り立 ちの上でProductionやビジネスオペレーションの機能やデータ構造を両立している点 に特徴がある。なお、他ベンダーの最新のクラウドERPも、最近はProductionではなく ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 13
Page16

ITR White Paper Manufacturingをモジュール名とするケースが増えてきていることを補足しておく。 IFS Applications for MESは、こうした特性からMESA-11 Modelの網羅性が高いこ とも特徴である(図10)。また、PLMのObbligato、産業向けプラットフォーム、IoTア プリケーションなどを活用して、さらに高度化や補強ができる点は前述のとおりである。 図10 IFS Applications for MESの機能概要 出典:NEC 本稿で、IFS Applicationsの機能全てについて述べることはできないが、2点だけ具体 的なポイントを示したい。1点目は、在庫階層の深さであり、IFS Applicationsは標準の 保管場所で「倉庫・エリア・列・棚・段」の最大5階層で管理できることから、図6に示 すようなモノの移動や、移動に伴う業務処理の進捗状況が緻密に把握できる。 他のERPは2階層であることが多く、それ以上のレベルが必要な場合はWMS(倉庫管 理)モジュールで拡張するか、WMSソリューションと連携させて実現することになる。 当然ながら、相互のシステム間でインタフェースが必要になるため、モノの所在や移動 は一定のインターバルが経過しないと同期できないという短所がある。システム全体と して、設計や業務運用に制約が生ずることは否めない。IFS Applications for MESは、 もちろんこうした制約への配慮を不要とできる。 14 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page17

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ もう1点は、IFS Applications品質管理モジュールの標準機能で統計的品質管理 (SPC:Statistical Process Control)が提供されていることである。Xbar & R (平均値 & 範囲)、Xbar & s(平均値& シグマ)、X & MR(個体& 範囲(移動範囲))、u chart (1個あたりの欠点数:生産ロットが固定ではないため)、c chart(欠点数:生産ロッ ト固定)といったチャートの機能を提供するERPは他に類がない。品質管理部門は、こ うした要件を重視することが多く、より詳細な解析は専用ツールを利用することも多い が、昨今重視される品質管理やトラッキングにおいて有用性が高い。 NECの強み “匠”の生産現場革新コンサル IFS社とNECは一体で製品を強化してきていると述べたが、MES以外でも製番、カン バン、プロセス製造ソリューションなども提供してきていることに加えて、NECは自社 の製造拠点でIFS Applicationsを導入しているユーザーでもある。そうした導入を通じ て得たノウハウを企業にフィードバックするために、生産現場革新のコンサルティング を提供しつつ、企業が参画できるエコシステムを立ち上げている(図11)。 図11 “匠”エコシステム 出典:NEC 一例として、『共』にあたるプログラムとして、ものづくり研究グループがある。こ の活動を通じて、製造業のさまざまな業種・業態の企業が情報交換・交流して相互研鑽 できる場が提供されており、「テーマ別研究会・分科会(ロジスティクス、設計-生産イ ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 15
Page18

ITR White Paper ンタフェース、つながる工場IoTインフラ、ものづくりAI活用など9分野)」「工場見学 会(NECグループ、顧客企業の工場含む)」「会員交流会・セミナー」などが企画され ている。NEC自身が製造業であり、その工場は、いわば匠活動による現場改善とシステ ム化のショーケースとしても参考とできるだろう。こうした各種イベントを通じて、共 通の課題を持つ企業同士がディスカッションできるようになっており、このような「も のづくり共創プログラム」の充実を求める企業から歓迎されている。 NECは、国内PLMにおける代表的製品であるObbligatoの開発ベンダーであり、IFS Applications for MESだけでなく、トータルソリューションを提案できる点でも、他の SIに比べ優位といえる。こうしたノウハウは、図12でⅠ/Ⅱ類などのギリシャ数字表記 されているPCやデバイスなど量産/ユニット生産から、大規模サーバや放送機器など セミカスタム生産、防衛や宇宙に関わる製品のフルカスタム生産などの事業をシステム 化してきた統合ノウハウが反映されたものである。さらに、工場内の生産革新だけでは なく、サプライチェーン全体についてNECで実際に生産改革を推進してきたメンバー が、匠として見える化や改善施策を提案しつつ導入を支援することが特徴となっている。 図12 NECにおける統合アプローチのノウハウ 出典:NEC また、NEC自身のものづくり革新やシステム化においては、決して順風満帆ではな かったことや過去に失敗があったことなどを隠さず、そこから得たノウハウを顧客に 16 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.
Page19

エンタープライズ MESの活用によるものづくり支援 ~“From Factory Floor to Top Floor”の実現~ フィードバックすることを表明している点は評価できる。NECは、製造業向けの機能に 優れたIFS Applicationsをベースとしつつ、自社における生産現場やSCMなどでの改革 経験を踏まえたシステム構築により、企業のものづくり高度化をトータルで支援できる ベンダーであり、その同社の姿勢は、業務改革とシステム構築を一体かつスピーディに 推進したい意向を持つ経営者から好感を得るだろう。 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved. 17
Page20

ITR White Paper 第4章 提言 MESの定義や経緯を確認しながら、デジタル化する製造業が目指すべき“From Factory Floor to Top Floor”のコンセプトに近づくために、製造/生産オペレーション を担うシステムをどう実現していくべきかを述べてきた。 いうまでもなく、IFS Applications for MESは万能ではなく、MESを製造/生産オペ レーション系や設備・機器・制御系のシステムと一体化する方向性の企業には適さない。 そうした企業は、従来どおり専業のMESソリューションを評価していくべきである。 設計から製造、そしてサービに至るライフサイクルでのものづくりシステムの強化と エンタープライズMESを目指す企業にとって、IFS Applications for MESは有力な選 択肢となることは確かである。特に、MESを域内、事業別にグローバル展開することで、 将来のビジネスの変化にスピーディに対応することを重視する場合は有効と考える。 製造業は、ビジネスオペレーション系システムとのトレードオフのみならず、今後想 定されるエンジニアリングチェーン、サプライチェーン、サービスチェーン、そして多 様化するニーズや製品の仕様を顧客接点から管理するデマンドチェーンを包含するラ イフサイクルで、ものづくりを高度化させていかねばならない。現状のIFS Applications for MESは、デマンドチェーンやマーケティングの機能を提供していないが、他の供給 連鎖を一貫して管理できる点は評価できる。 NECは、自社におけるものづくり革新とユーザーとしてIFS Applicationsの導入・活 用を進めてきたことに加えて、PLM、IoTアプリケーション/プラットフォーム、グロー バルSCM、経営システムを横断するトータルのソリューションを提供できる点におい て、IFS Applications for MESのプロバイダーとして優位性がある。今後は、独自に提 供するIFS Applications for MESの、特に、ビジネスオペレーション系のIFS ApplicationsとMESを同期させる仕組みをより高度にしていくことが望まれる。 分析/執筆:浅利 浩一 text by Koichi Asari 18 ©2019 ITR Corporation. All rights reserved.