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入山章栄氏に聞く「なぜ日本の製造業は変革できないのか」

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経営視点でDXを理解する

この資料は、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授による、経営層向けのデジタルトランスフォーメーション(DX)セミナーの内容をまとめたものです。入山先生はビジネススクールで教授をとる傍ら、さまざまな企業の経営にかかわる中でDXの重要性も指摘されており、「製造業のDXが進めば、日本のものづくり産業の地位が復権する」と語ります。

入山教授は、DXを事業成長の手段として、日本の製造業における変革の必要性を強調しています。特に、DXを目的ではなく手段と捉え、イノベーションを実現するための戦略的思考が重要であると指摘しています。このセミナーでは、DXを進める上での誤解を解き、成功に導くための経営者の意識変革やリーダーシップ、そしてデジタル人材の育成に焦点を当てています。
また、AIやIoTをはじめとするデジタル技術が製造業にもたらす可能性についても触れており、経営層が直面する課題とそれに対する具体的な対策が語られています。

経営者が事業を伸ばすために心がけるべき「手段としてのDX」という発想、そして、DXを使いこなす、とはどういうことか、お聞きしました。

このカタログについて

ドキュメント名 入山章栄氏に聞く「なぜ日本の製造業は変革できないのか」
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 2Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 株式会社スカイディスク (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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⼊⼭章栄⽒に聞く・前編 前編 経営視点でDXを理解する なぜ⽇本の製造業は 変⾰できないのか 早稲田大学大学院 経営管理研究科 入山章栄教授をお招きし、スカイディスク代表取締役CEO内 村 安里と取締役 CSO後藤 健太郎と共に、経営視点で見る、事業で結果を出すためのDX活用につ いて考えていきます。 入山先生はビジネススクールで教鞭をとる傍ら、さまざまな企業の経営に関わるなかでDXの重要 性も指摘もされており、「製造業のDXが進めば、日本のものづくり産業の地位が復建する」と語 ります。今の時代に経営者が事業を伸ばすために心がけるべき「手段としてのDX」という発想、 そして、DXを使いこなす、とはどういうことか、お聞きしました。 本記事は2023年8月開催セミナー 「【製造業経営層向けプレミアム塾】  DXを賢く使って事業を伸ばすために。経 営視点で結果を出すDXを考える」を元に 作成されたものです。 登壇者プロフィール 早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄 早稲田大学ビジネススクール教授。専門は経営戦略論および国際経営論。 1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学大学院経済学研究科修士課程 修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コ ンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ 大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を 取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールの アシスタント・プロフェッサー(助教授)に就任。2019年4月から現職につ き、さまざまな企業への講演やアドバイザーなども行う。 経営視点でDXを理解する:なぜ日本の製造業は変革できないのか 入山章栄氏に聞く・前編
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なぜ⽇本企業で DXが進まないのか DXへの誤解! まずは「なぜ日本企業でDXが進まないのか」につ いてお話ししたいと思います。今の時代は変化が 激しいため、日本企業が今後業績を上げていくた 魔法の杖ではない現実 めにはイノベーションが必要になってきます。し かし、現在多くの企業が既存の事業をこれまでの 後藤:本日はよろしくお願いいたします。入山先 仕事の進め方で行っているという状況で、そうし 生は経営戦略をご専門とされていて、さまざまな た企業は、DXをある種、イノベーションが起こる 講演で経営視点におけるDXとの向き合い方につい 魔法の杖のように理解しているようです。 てお話しされています。弊社は「最適ワークス」 というサービスを主力事業として、製造業のDX支 実際、多くの企業はDXさえすれば業績が上がると 援を行っているのですが、現場目線で進めると 思い込んでいて、「とりあえずDXがしたい」と支 「DXが目的化」してしまいやすいと感じていま 援企業に丸投げしてしまいがちです。 す。入山先生は、「DXは手段であって目的ではな い」とよくお話しされていると思うのですが、ま そうすると、実際の課題と認識、そしてソリュー ずはこの点についてお聞かせください。 ションのズレが生じやすく、DXの導入がうまく機 能しないということで途中でやめてしまうことに 入山先生:よろしくお願いいたします。まず先に なります。つまり、DXが進まない一番の理由は お伝えしたいのですが、日本の製造業のDXは日本 「世間でDXが手段ではなく、目的として理解され の改革において一番重要だと考えています。です てしまっていること」なんです。しかし、DXはあ が、実際はあまり進んでいません。この理由が くまで道具であり、手段として使わなければなり 「DXは手段であって目的ではない」というお話に ません。 繋がってきます。 経営視点でDXを理解する:なぜ日本の製造業は変革できないのか 入山章栄氏に聞く・前編
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DXを⼿段として 使うには? 入山先生:DXが手段とすると、目的となるのがイ ノベーションです。そして、企業によってイノベ DX推進のための ーションの方向性を定めていくことが求められま す。そのため、まずはDXを取り入れる前に、トッ 新リーダーシップ プが会社のビジョンや戦略を腹落ちするまで徹底 的に考えることが必要でしょう。その上で、DXを 入山先生:トップは必ずしもプログラミングなど 道具としてうまく使うことでイノベーションが実 の専門知識を持っている必要はありません。仮に 現され、業績拡大に繋がっていきます。 iPhoneが使えない経営者だったとしても、DXを手 段として使わないと自社の長期的な目標が達成で 内村:私もスカイディスクの代表として、DXを導 きないと理解していれば、専門的な要素は適切な 入する企業のトップが会社についてよく理解して 人をアサインするなどして補填することができま いる必要があると感じています。ただ現実では、 す。 さまざまな企業と関わっていても、トップが途中 で変わってしまって難しい、ということも少なく つまり、DXを進める人材には、会社を動かすこと ありません。そこで弊社としては、クライアント のできる立場と、会社の事業と経営を理解してい 企業にひとまずDXを導入していただき、目に見え ることが求められるということです。そのため、 る成果を現場の人に感じてもらうことで、ボトム 経営者の代わりにDX担当のトップとして抜擢され アップで経営者にもメリットを理解してもらいた た人物にも裁量権が必要になり、事業と経営を理 いと努力しているのですが、この点についてどう 解していることが求められるのです。 思われますか。 これはとても重要なポイントですが、日本企業の 入山先生:簡単に導入できて、すぐに目に見える 多くが苦手としていることで、企業のDXの大きな 成果が出るのは非常に効果的です。ただ、経営者 ボトルネックになっています。これへの対応策と の判断で会社が左右されるため、経営者、もしく して最近よく見られるのは、経営者がデジタル感 は同等の力を持った人物が、会社をよく理解して 覚のある息子さんをDX担当としてアサインしてい いることは絶対に必要な要素だと考えています。 るパターンです。 経営視点でDXを理解する:なぜ日本の製造業は変革できないのか 入山章栄氏に聞く・前編
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スモールスタートで 簡単な取り組みですが、今まで見えなかった全て の社員の行動や情報が繋がり、これによって大き なコストカットが実現しました。そして、狙い通 DXへの⼼理的 り現場の人はデジタル技術は簡単に利用できるこ とを知り、会社全体のDXに対する心的なハードル ハードルを下げる を下げることができたんです。 入山先生:また、外部から人材を抜擢し、結果を 内村:まさにスカイディスクも、そういったスモ 出した企業もあります。私がアドバイザーを務め ールスタートを意識しています。加えて、SIer・外 る会社では、経営者がDX促進のために外部から専 注依存など、DXを企業に丸投げする人が多い実態 門家をアサインしています。彼は、もともとメガ も踏まえて、クライアント企業がオーナシップを ベンチャーでCTOをしていて、デジタルの専門家 会社が持つべきで、少なくとも、会社の目的や課 でもあるのですが、会社の業務のしくみを理解し 題感は言語化していただきたいと伝えるようにし ているために全体を変えていくことができる人で ています。 した。 そして、デジタルを導入を進めるには、実際に使 う人たちが「簡単なんだな、分かりやすく結果が 出るものなんだな」と理解してもらうことが先決 と考えて、まず全社にslack(企業向けチャットツ ール)とGoogle Workspace(メールなど業務に必 要な機能をまとめた組織向けクラウドサービス) を導入しました。 経営視点でDXを理解する:なぜ日本の製造業は変革できないのか 入山章栄氏に聞く・前編
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安く、簡単で、気軽に 導⼊できるようになったDX 入山先生:アメリカでDXが進んでいる理由は、社 内にIT人材が豊富にいるためです。日本はアメリ カに比べて、社内のIT人材は非常に少ないという 事実があります。 そのため、従来のデジタル活用について見ていく と、ほとんどの企業はSIerに丸投げして外注してい ました。そうすると、導入してから数年後にシス テム改変が必要になった際に、内情が全く分から ないため、見積もりがかなり高額でも引き続き同 じ企業に任せざるを得ないという状況になりま す。これまでは、こうした「経路依存性」によっ て、DXはハードルが高いものとなっていました。 しかし現在のDXといえば、安く、簡単で気軽に導 入することが可能になっています。 一番ハードルとなっていた価格が安価になり、誰 前述のslackのようなSaaS(必要な機能を必要な分 でも使いやすく、さまざまなサービスを気軽に試 だけサービスとして利用できるようにしたソフト すことができるわけですから、むしろ、これだけ ウェア)は、従来のデジタル化の手法よりも圧倒 DXが導入しやすくなっている状況で利用しない方 的に安く、気軽に試すことができて、不要になっ が損だと言えます。 たら経路依存性にとらわれることなく解約するこ ともできます。また、貴社の「最適ワークス」も ただし、繰り返しになりますが、その時に求めら そうですが、プログラミング技術や専門知識など れるのが業務と経営を分かっているトップの判断 を持たなくても簡単な操作で利用ができますよ になります。会社の大きな目的に対して、どのよ ね。 うなサービスが適切かを考え、どんどん試してい ける人が必要になるのです。 そして、これらの変革によって、今までDXを導入 しづらかった中小企業にとっては非常に大きな好 機が訪れたと言えます。 経営視点でDXを理解する:なぜ日本の製造業は変革できないのか 入山章栄氏に聞く・前編
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⼊⼭章栄⽒に聞く・後編 後編 製造業の経営視点で学ぶ DX戦略を進める 組織体制と⼈材育成 早稲田大学大学院 経営管理研究科 入山 章栄教授をお招きし、スカイディスク代表取締役CEO内 村 安里と取締役 CSO後藤 健太郎と共に、経営視点で見る、事業で結果を出すためのDX活用につ いて考えていきます。 入山先生はビジネススクールで教鞭をとる傍ら、さまざまな企業の経営に関わるなかでDXの重要 性も指摘もされており、「製造業のDXが進めば、日本のものづくり産業の地位が復建する」と語 ります。後編では、デジタル人材育成や、DXを円滑に進める組織の作り方、そして製造業の可能 性について、入山先生に詳しく解説していただきました。 本記事は2023年8月開催セミナー 「【製造業経営層向けプレミアム塾】  DXを賢く使って事業を伸ばすために。経 営視点で結果を出すDXを考える」を元に 作成されたものです。 登壇者プロフィール 早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄 早稲田大学ビジネススクール教授。専門は経営戦略論および国際経営論。 1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学大学院経済学研究科修士課程 修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コ ンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ 大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を 取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールの アシスタント・プロフェッサー(助教授)に就任。2019年4月から現職につ き、さまざまな企業への講演やアドバイザーなども行う。 製造業の経営視点で学ぶ:DX戦略を進める組織体制と人材育成 入山章栄氏に聞く・後編
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デジタル感覚は好奇⼼ 若⼿だけではない! また、一般論として、若い人の方がデジタルが得 意で、年配の方は苦手という認識があると思うの ですが、必ずしもそうではありません。 経験とデジタルスキル ある企業に対して、「営業のDXが進むとシニア層 の融合 よりも若い世代の方が活躍するようになるので は?」と質問したところ、「若い人材はデジタル 内村:DXを実践する上では、専門知識よりも会社 に詳しいが実力があるわけではありません。なの を理解し、さまざまな成功体験を少しずつ積み上 で、経験を積み実力のあるベテラン層がデジタル げていくことがトップ層に求められている、とお に強くなれば最強なんです。」という答えが返っ 話しされていました。導入を推進する上で、社内 てきました。 にデジタル感覚を持っている人材が少ないため、 息子さんをアサインする会社も多いとおっしゃっ それを聞いて、好奇心を刺激することで、ベテラ ていましたが、デジタル感覚を持つ人材の必要要 ン層のデジタルに対する壁を無くしていくことが 件とは、つまり何でしょうか? できれば、日本の製造業の改革に繋がっていくと 感じています。 入山先生:これはとてもシンプルで、デジタル感 覚とは「デジタルの知識を持っていること」では なく、「好奇心を持っていること」だと思ってい ます。 一見関係のなさそうなことにも好奇心をもって試 すことができる人は、そのうちの一つとしてデジ タルにもチャレンジしていくはずですよね。 製造業の経営視点で学ぶ:DX戦略を進める組織体制と人材育成 入山章栄氏に聞く・後編
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デジタル⼈材育成と、 会社の⽬的の明確化 内村:前編で、アメリカ企業よりも日本企業内の また、他にも先ほども言ったような、経営者の息 DX人材が極端に少ないというお話もありました 子など若い世代を抜擢する方法もあります。 が、日本でDX人材を育てていくことについてはど うお考えですか? 社外からの抜擢で言うと、雇用の流動が激しいベ ンチャー企業出の人材を採用したり、兼職をして 入山先生:デジタル人材の育成や派遣は、ある程 いる外部のアドバイザーを雇う手もあります。ち 度、必要だと思っています。たとえば、ある大手 なみに、前述の外部から専門家をアサインしたケ 空調機メーカーは日本企業で今一番DX人材の育成 ースにおいても、このCIOの方は業務委託契約で、 に力を入れている企業だと思います。空調が今後 その会社以外の大手企業においてもCIOとして複数 のIoT活用により伸びていくことが予想されること を兼業されています。 から、しっかり予算をかけて、新入社員のプログ ラミング研修などに投資しています。また、大手 保険会社では、DXに対する意識と知識の改革が重 要件定義に必要なのは 要と意識されていて、ミドル層向けのプログラミ ング研修が行われています。 明確な⽬的の設定 中小企業の場合は、業務のためにこのようなプロ 内村:日本のDXの遅れについて考えたときに、DX グラミング技術などの習得が求められることは少 人材の不足だけでなく、要件定義がそもそもでき ないでしょう。 ないことが多いのではないかと感じているのです そのため、まずは簡単に利用できるSaaSサービス が、この点についてはどのようにお考えでしょう を導入して、何を得たいかを明確にした上で、そ か。 れを使いこなすことができればいいと思います。 入山先生:まず、この場合の要件定義とは何かと もしそういった対処ができる人材がいないのであ 考えると、「これからこの会社でこうした課題を れば、DX人材を内外から抜擢してしまえばいいん 解決していきたい」と考えることですよね。 です。 課題は目的と現実のギャップなので、目的がはっ きりしていれば、この課題に対してはデジタルで このように解決できる、と考えることができるは デジタル反対派が ずです。 そのため、多くの現場で要件定義ができない理由 DX成功の鍵? は、会社の戦略やプロジェクトの目的が概念的だ ったり、そもそもはっきりしていないことにある 入山先生:やっていないだけで実はできるという と思っています。 ベテラン層は意外と社内にいますし、むしろデジ タル化に反対している人に任せてしまう手もあり ます。どういうことかと言うと、そういう人たち はDXを推進する上で一番初めに衝突する人物にな るわけですが、DXによって生じるコンフリクトを 一番知っている人でもあるのです。 コンフリクトを知っているが故に、それらを回 避・緩和するようにうまくプロジェクトを推進す る可能性もあると思います。 製造業の経営視点で学ぶ:DX戦略を進める組織体制と人材育成 入山章栄氏に聞く・後編
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DX導⼊体制の整備について 部⾨間のコンフリクト 入山先生:また、DXの目的は、会社全体に働きか け、イノベーションを起こし、持続的に儲かる体 質の企業に変革することなので、DXを行う際には を回避する策 会社全体を変えていかなくてはいけません。 内村:社内にDX部門を設置する際に、DX部門は結 前述したようにDX部門が独立して行うと、成果に 果が見えにくいことから、肩身が狭くなりがちと つながる前にDX部門が批判されて取り組みが廃止 いうお話をよく聞くのですが、DX部門をどう評価 されてしまうことになりがちです。こうした場 していくべきか、うまく運営していらっしゃる事 合、DX部門のやることは他部署とコンフリクトが 例があれば教えていただきたいです。 起こりやすいことから、実は、一番コンフリクト しそうな部署とトップを兼任させてしまうのが有 入山先生:DX部門を社内に作る場合は、社長が絶 効な手段です。 対的に守る必要があります。しかし、DXのプロフ ィットは見えにくいものなので、いさぎよく別会 人事部門のトップと兼任させることも一案です。 社化して離れて運営してしまうくらいでもよいと この理由は、トップを兼任させることで役員間の 思っています。 コンフリクトを物理的に減らす目的と、人事部評 価や採用、人材育成を担う観点からスピーディー たとえば大手流通企業では、DX部門を別会社化し な変革が難しい分野で、DX部署とぶつかるためで ています。また、日本の新聞社はDXに苦戦してい す。この形を実際に採用している企業として、大 ますが、アメリカのある新聞社は、既存の事業部 手クレジットカード会社や某うどん専門チェーン と拠点もルールも全く変えてデジタル部門を別会 店があります。 社化し、最後の責任は全体のトップが持つという 仕組みにすることでDXを成功させています。これ がもしDX部門のトップだけに責任を取らせる仕組 みであったら実現は厳しくなりますね。 製造業の経営視点で学ぶ:DX戦略を進める組織体制と人材育成 入山章栄氏に聞く・後編
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AIと製造業のこれから AIと製造業の未来、 これは、大きな視点でchatGPTが社会全体にどの ような影響を与えるかという話です。 chatGPTはプログラミングをすることも得意です chatGPTが開く よね。これは製造業に対して大きな変革を与えう ると考えています。AIと製造業という話に関して 新たな可能性とは 言うと、私は今、業績が急上昇しているIoTのプラ ットフォーマー企業の取締役をしているのです 後藤:最近chatGPTが話題になっています。弊社 が、あらためてIoTの普及による製造業への可能性 もPoCプロダクトとして、生成系AI商材を他社に提 をひしひしと感じています。 供しはじめているのですが、AIはこれから製造業 に も 取 り 入 れ ら れ て い く と 思 っ て い ま す 。 これまで製造業のIoTに関するプログラムデータが chatGPTをはじめとしたAIプロダクトを製造業で 外部へ明かされることはありませんでしたが、今 活用していくことに関してはどのようにお考えで 後はさまざまな企業のデータをchatGPTに学習さ すか? せることで、各企業の独自のプログラムが掛け合 わされたサービスが生まれる可能性があるので 入山先生:まずchatGPTについては、先日IT批評 す。たとえば、ある建機メーカーの建設DXツー 家の尾原さんとお話した際に感じたことを私なり ル、他の自動車メーカーが持つ自動走行、また他 に解釈したのですが、高精度の生成系AIが出現し の企業が開発したドローン、さらにエネルギー企 た今、「問いを立てる能力」が必要と言われてい 業の地熱発電を相互に作用させるプログラムを生 て、chatGPTはその「問いを立てる」という行為 成する、なんてこともあり得るのです。 を助けてくれるものだと思っています。 インターネットの普及が知識のコモディティ化だ とすると、chatGPTの普及はインテリジェンスの コモディティ化であり、chatGPTを使えば誰が質 問しても、同じ質問であれば似たような答えを生 むことができます。そのため、今後はいかにオリ ジナリティのある問いを出せるかが勝負になって くるはずです。 また、答えが均質化することで、何を言ったかで はなく、「誰が言ったか」という人のブランド力 が重要になると考えています。 製造業の経営視点で学ぶ:DX戦略を進める組織体制と人材育成 入山章栄氏に聞く・後編
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IoTが切り開く いま、DXを取り入れている企業はどんどん強くな っています。IoTの浸透は大きなチャンスである一 方、日本の製造業の多くがこのままアナログであ 製造業の新局⾯ り続けると、日本は負けてしまいます。 入山先生:また、IoTの普及によって、デジタル商 日本は一度波に乗ってしまえば強いので、製造業 材市場の拡大も期待されています。今まではイン の皆さんには、ぜひデジタルを手段として取り入 ターネットの時代で、人とインターネットがスマ れていってほしいと思っています。 ートフォンなどを通して紐づいていました。その 世界観では、スマートフォンが世界中に広まれば 内村.後藤:製造業の未来に期待が溢れるお話でし 販売市場規模は80億個となりますが、これからく た。素晴らしいお話をありがとうございました。 るIoT時代では、インターネットが「モノ」と紐づ くので、市場規模の可能性はさらに大きなものと なります。 その結果、IoTが栄えるとインターネットとつなが ったモノが増え、モノづくりが栄えることにな り、そうなるとモノの品質が競争優位性となりま す。世界の中でモノづくりの質が高いと言われて いるのは、ドイツと日本です。つまり、この機会 を逃さなければ、IoTを取り入れた日本の製造業は 復権する可能性を秘めているのです。 製造業の経営視点で学ぶ:DX戦略を進める組織体制と人材育成 入山章栄氏に聞く・後編
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お問いわせ 株式会社スカイディスク Skydisc,Inc. 0120-29-1331 contactus@skydisc.jp https://saiteki.works/