環境に配慮した水銀フリーの超純水製造装置

環境に配慮した 水銀フリーの超純水製造装置 どの手続きが必要になりました。また、これまで家庭で使用していた 古い蛍光灯や水銀を使った体温計、水銀電池なども家庭ゴミとして処 分するのではなく、自治体によって回収されるようになりました。 水銀フリーの超純水製造装置を開発する ここで企業や研究所を対象に実施した、簡単なアンケートの結果を紹 介します。図 1 は、所属機関において物品購入時に水銀含有に関す る規定が存在するか、についての回答をまとめたものです。 この円グラフを見ますと、「なるべく水銀を含まない製品を選ぶ必要 水銀規制の動きが地球規模で広がる理由 がある」との回答が最も多く47％、「水銀を含む製品は購入できない」 との回答も 19％あり、合計 66% もの機関で規定があるという結果 水銀は健康や環境に極めて有害な影響を及ぼす危険な化学物質で になりました。近年では、水銀を含まない製品へのユーザーの関心 す。高濃度の水銀を摂取したり吸い込んだりすると、脳の損傷や腎機 は高く、需要が増していることがうかがえます。 能障害が起こります。また、妊婦が摂取した場合は、胎児の神経系 の発達が阻害され、記憶力や言語能力、運動能力に悪影響を及ぼす 水銀は水俣条約・水銀汚染防止法などによる規制物質です。 という報告もあります。 近年は各所において水銀規制の動きがありますが、貴社・貴所では、物品購入時に水銀含有に関する規定はありますか？ 日本の四大公害病として知られる水俣病は、メチル水銀を含んだ工 19% 場排水によって引き起こされた大規模な有機水銀中毒です。ほかにも (154) 工業廃水によって新潟（1960 年代）やカナダ（1970 年代前後）で 34% (283) 同様の水銀中毒事件が起こりました。さらに、イラク（1971 ～ 72 年） では、小麦の殺菌剤にメチル水銀が含まれていたせいで中毒が発生 47% し、多くの人が犠牲になりました。 (389) このような健康被害や環境破壊を繰り返さないために、2013 年 10 ■ 水銀を含む製品は購入できない 月に熊本市と水俣市で外交会議が開催されました。そこで採択され、 ■ 水銀を含まない製品をなるべく選ぶようにする必要がある ■ 規定はない 2020 年現在、「水銀に関する水俣条約」には、121 ヵ国が批准して います。 図 1 所属機関における水銀含有製品の規定に関するアンケート結果 この条約には、水銀を用いた製品の製造や輸出入の規制が定められ （2020 年メルク調べ） ています。具体的には、2017 年末までに水銀封入量が 5 mg を超え 実はライフサイエンスの現場でも、水銀が登場します。身近な例を挙 る蛍光ランプの製造・輸出入を禁止。さらに、2020 年までに、電池 げると、超純水製造装置では、水質を高めるために照射する紫外線 や一定含有量以上の高圧水銀ランプ、禁止製品リストに掲載された （UV）ランプに水銀が使われています。 化粧品などについても同様の措置が取られています。 現在、理化学機器は水銀規制の対象外です。超純水製造装置も製造 2016年には日本国内でも「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」 停止が求められる「特定水銀使用製品」には含まれていません。 （以下、「水銀汚染防止法」）が施行され、水銀使用製品の使用者は、 水銀製品を廃棄するためには、許可証や委託契約書、マニフェストな しかし、メルクは、時代のニーズに合わせた製品を開発することを The life science business of Merck operates as MilliporeSigma in the U.S. and Canada.

常に心がけてきました。これからはサステナビリティを考えた技術の 水銀フリー殺菌用UVランプのメカニズム 開発が不可欠です。超純水製造装置のトップメーカーとして、水銀を 使わない UV ランプの開発を決意しました。 完全水銀フリーを達成するための挑戦。次は、殺菌用に用いられる UV ランプの代替品の開発についてみていきましょう。 超純水の精製には 2 種類の UV ランプが必要です。一つ目は有機物 酸化分解用、二つ目は殺菌用です。その両方に水銀が使われていま 水銀を用いた UV ランプが殺菌に用いられるのは、254 nm の波長の したが、メルクではそれぞれの代替方法を模索し、2017 年には水銀 UV を効率よく発光するからです。この波長は細菌の DNA を破壊する フリーの有機物酸化分解用 UV ランプを採用した「Milli-Q IQ 7000」 260 nm 前後の波長に近いため、菌を効果的に殺します。 を発売。さらに、2018 年には、水銀を使わない殺菌用 UV ランプを これに代わるものとしてメルクが注目したのが、UV-C と呼ばれる波 搭載した、超純水・純水製造装置「Milli-Q IQ 7003/05/10/15」を 長 280 nm 以下の深紫外領域用を含む UV LED です。UV LED は、様々 発売することで、完全水銀フリーを実現しました。 な分野で製品化が目指されていましたが、光エネルギーへの変換効 2 種類の UV ランプは、それぞれメカニズムが異なります。どのように 率の問題や、可視光 LED よりも格段に大きい素子の発熱による短寿 して水銀フリーを実現したのか、順に見ていきましょう。 命が解決できず用途は限定的でした。ところが最近、定期交換を前 提とした十分な殺菌能力と寿命が得られるようになり、純水製造装 置への導入を試みたところ、製造した純水の殺菌用途として十分な 有機物を分解する水銀フリーUVランプの 成果が得られました（図 3）。 メカニズム Milli-Q IQ 7003/05/10/15 は、超純水製造装置としては世界で初め 従来の超純水製造装置では、低圧水銀灯と呼ばれる放電管の UV ラ て UV LED を搭載しました。ここに、世界初（メルク調べ）完全水銀 ンプを使用していました。基本的な構造は蛍光灯と同じです。内部に フリー超純水製造装置を世に送り出すことに成功しました。図 3 のキャ 水銀を封入して、放電によるエネルギーで水銀を励起し、基底状態に プションに示す通り、UV LED の波長のピークは 265 nm にあり、殺 戻るときに発生するいくつかの紫外線を利用して有機物を分解します。 菌効率曲線に近くなっています。このことから従来装置に比べて、よ り効果的に殺菌できることがわかります。 この「水銀」に代わるものは何か―試行錯誤の末、メルクは水銀の 代わりにキセノンを用いた水銀フリー紫外線（UV）ランプを開発しま した。キセノンを放電エネルギーで励起させ、分子の二量体を経て基 底状態に戻るときの紫外線を利用するのです。 従来の有機物酸化分解用の水銀ランプは、254 nm を中心に 185 nm から可視光までのいくつかの線スペクトルで構成されていました。 しかし、キセノンを用いた水銀フリー UV ランプは、中心波長 172 nm から少し幅をもった単色のスペクトルで構成されています。 このため、発光エネルギーのほとんどが短波長帯に集中し、水銀ラン プより高い効率で有機結合を直接切断できます。また、172 nm とい う波長は、水銀ランプの 185 nm よりもエネルギーが大きいため、分 解能が高くなります。さらに、水中に発生したヒドロキシラジカルも 有機物を分解します。 図 3　水銀フリー殺菌用UVランプの波長特性と殺菌効率 水銀フリー有機物酸化分解用 UV ランプの特長はそれだけではありま せん。水銀ランプでは発光が最大効率に達するために数分間かかる のに対して、キセノンを用いたランプでは、瞬時に最大出力に達する 以上、地球規模の水銀規制の動きと、メルクの水銀フリー超純水製 というメリットがあります。 造装置について紹介しました。水銀使用製品は年々廃棄が難しくなっ ています。製品を導入する際にはぜひ、水銀フリー製品をご検討くだ それぞれの特徴を図 2 にまとめてみました。 さい。 ＜関連情報＞ 水銀使用製品の廃棄に関する情報 図 2　低圧水銀ランプと水銀フリーランプの比較

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