産業用PC選定のコツ
~現場に最適な1台を見つけるために~
2025/9/29
アドバンテック株式会社
eCommerce事業推進室/オンライン営業部
技術サポート 増田 智則
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スライド 2: 1. 産業用PCとは?
1. 産業用PCとは?
産業用PCとは?
• 産業用PC(Industrial PC)は、製造業、設備制御、交通インフ
ラ、エネルギー分野などの過酷な環境下で安定稼働することを目
的とした専用設計のコンピュータです。一般的な民生用PCとは
異なり、産業用PCは以下のような特性を備えています:
– 長期供給および製品ライフサイクルに対応した長期技術サポート(通常
5~10年)
– 国際的な電磁両立性規格(例:CE、FCCなど)に準拠
– OS、BIOS、I/O構成などの柔軟なカスタマイズに対応。製品によって
はPCI/PCIeスロットを活用したI/O拡張も可能ですが、小型BOX PCで
は筐体制約により拡張性が限定される場合があります
– 24時間365日連続稼働を前提とした高可用性・高信頼性設計
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スライド 4: 産業用PCの進化とAI活用
産業用PCの進化とAI活用
• 近年、産業用PCは従来の制御装置としての役割に加え、AI推論
やエッジコンピューティングの実行基盤としても活用されるよう
になっています。
• 画像認識、異常検知、予知保全、クラウド連携など、AI・IoT技
術との統合により、ソフトウェアとの連携を通じて新たな価値を
創出する役割が期待されています。
• これにより、製造業や設備制御分野に加え、スマートファクトリ
ー、スマートシティ、ロボティクス、物流最適化など、幅広い分
野での需要が拡大しています。
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スライド 5: 2. 産業用PC選定のポイント
2. 産業用PC選定のポイント
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スライド 6: AI時代に対応するための4ステップ
AI時代に対応するための4ステップ
• 製造業や設備制御の現場でも、AIやクラウド連携のニーズが高ま
る中、産業用PCの選定基準も大きく変わりつつあります。ここ
では、従来用途とAI用途の違いを意識しながら、選定時に押さえ
ておきたい4つのステップを整理します。
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スライド 7: Step 1:用途の明確化
Step 1:用途の明確化
• まずは、PCをどのような目的で使用するかを明確
にします。
用途分類 具体例
従来用途 制御機器との接続、HMI表示、データ収集(SCADAなど)
AI用途 AIカメラによる画像認識、エッジ推論、クラウド連携、データ前
処理
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スライド 8: Step 2:設置環境の確認
Step 2:設置環境の確認
• 設置場所や使用条件によって、必要な筐体サイズや耐環境性能が
異なります。
環境条件 チェックポイント
設置スペース コンパクト筐体、DINレール対応、ラックマウントなど
温度・振動 ファンレス設計、広温度対応(例:-20~60℃)、耐振動
電源要件 12V/24V入力、冗長電源など
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スライド 9: Step 3:I/O要件の整理
Step 3:I/O要件の整理
• 接続する周辺機器に応じて、必要なインターフェースを確認しま
す。
項目 従来用途 AI用途
USB 制御機器やストレージとの接続 高速通信やAIカメラとの接続に対応
COM PLCやFA機器との通信 レガシーI/Oとして継続利用される。
製品によってはオプション実装。
LAN 基本的なネットワーク接続 高速通信やPoEによるAI機器の給電
映像出力 HMIや監視画面表示 高解像度表示やAI結果の可視化
GPIO / CAN 簡易制御や車載通信 ロボットやAGVとの連携に活用
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スライド 10: Step 4:主要スペックの選定
Step 4:主要スペックの選定
• AI処理や高速通信に対応するため、内部スペックの見直しも重要です。
項目 従来用途 AI用途
CPU 省電力型で基本的な処理に対応 高性能型やAI向けSoCで推論処理に対応
メモリ 4~8GB程度で軽量な処理に対応 16GB以上でAI処理やマルチタスクに対応
ストレージ SATA SSD/HDDが中心 高速アクセス可能なNVMe SSDが主流
OS Windows系やLinux系OS AIライブラリ対応のLinux系OSが主流
ライセンス Windowsは個別/一括キー方式 LinuxはOSSライセンス遵守
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スライド 11: 3. 産業用PC選定ワンポイント
3. 産業用PC選定ワンポイント
構成部品・OS・電源・保守性など、選定時に見落としがちな
ポイントを整理します
構成部品の選定
• CPUの選定ポイント
– 従来用途:
• 省電力型CPU(例:Atom系、Core i3など)で十分な処理性能
• ファンレス構成や低消費電力を重視
– AI用途:
• 高性能CPU(例:Core i7/i9、Xeon系)やAI向けSoC(例:Jetson系、ARM系)
を選定
• GPU内蔵型や外部アクセラレータとの連携も考慮
構成部品の選定
• マザーボードの選定ポイント
– バックプレーン+SBC(シングルボードコンピュータ):
• バックプレーン側に複数スロットを持ち、モジュール交換が容易。
– ATX/Micro ATX:
• 拡張スロットはバックプレーン式より制限あり。
• ATモードとATXモードの違い
– ATモード:
• 電源投入と同時にPCが自動起動。無人運用や制御盤内での使用に適する。
– ATXモード:
• 電源投入後に電源ボタンを押して起動。民生用PCと同様。
※ ジャンパー設定やBIOS項目で切り替える製品もあるため、仕様書で確認が必要。
構成部品の選定
• エラー訂正機能付きメモリ(ECC)選定時の注意点
– ECC対応には、CPU・マザーボード・メモリの3要素すべてが対応して
いる必要があります。
– ECCメモリは、非ECC対応の構成に取り付けると、起動しない場合があ
るため注意が必要です。混在させず、構成全体での互換性を確認してく
ださい。
– 長時間稼働やデータ整合性が重要な用途では、ECCによるメモリエラー
検出・訂正機能が有効です。
構成部品の選定
• M.2モジュール選定時の注意点
– キー形状と信号種別:
• M-Key、B & M-Keyが一般的ですが、A & E-KeyでNVMe対応の2230サイズSSD
も一部存在します。スロット側の対応信号(PCIe/SATA)を仕様書で確認してく
ださい。
– サイズ(フォームファクタ):
• 2280が主流ですが、2230や2242などの小型サイズも産業用途で使用されます。
筐体やマザーボードの対応サイズに合わせて選定してください。
– ヒートシンク付きSSD:
• 放熱性向上のためにヒートシンク付きモデルを使用する場合、筐体内部の高さ制
限や他部品との干渉に注意が必要です。特にファンレス筐体では、放熱と物理ス
ペースの両立が重要です。
構成部品の選定
• GPU搭載時の電源・冷却に関する注意点
– ラックマウント型PCの場合
• 高性能GPUでは補助電源(例:6ピン/8ピン)が必要
• 電源ユニット(PSU)のコネクタ形状(4ピン×2分岐など)により、物理的に接
続できない場合あり。
• 電源容量とコネクタの事前確認が必須。
• GPU搭載時の電源・冷却に関する注意点
– ファンレスPCの場合
• 消費電力制限(例:120W以下)により、搭載可能なGPUが限定される。
• ファンキット追加が必要になる場合あり → 完全なファンレス構成ではなくなる
構成部品の選定
• 電源供給方式
– DC入力は9~36Vの広範囲対応や、12V/24V固定タイプが存在
– ラックマウント型では冗長電源対応もあり
– ファンレスPCでは端子台やロック付きコネクタが使われることもある
冗長電源 端子台 ロック付きコネクタ
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スライド 18: OS選定時の注意点
OS選定時の注意点
• Windowsライセンス(PKEA / EPKEA)
– Windowsライセンスには個別のプロダクトキー(PKEA)と一括キー(
EPKEA)があり、出荷形態に応じて選定が必要。
• Windows 11とTPM 2.0の関係
– 最新OSではTPM機能が必須。
– 対応方式は以下の3パターン:
1. TPM 2.0チップがオンボード搭載されている製品
2. TPMモジュールを物理的に追加する製品(オプション品)
3. BIOS設定で有効可能なTPM機能(例:Intel PTTなど)対応モデル
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スライド 19: OS選定時の注意点
OS選定時の注意点
• Linux OSとBSP / SDKの提供状況
– AI用途ではLinux系OS(例:Ubuntu、Yoctoなど)が主流
– 開発支援パッケージ(BSP/SDK)の有無
• OSSライセンス遵守の重要性
– LinuxベースのOSやAIライブラリには、OSSライセンス(GPL、
Apache、MITなど)が適用されている
– 商用製品に組み込む場合は、再配布条件やライセンス条項の確認が必須
– 特にGPL系ライセンスでは、ソースコード公開義務が発生する場合があ
るため注意
環境耐性
• 動作温度範囲
– 本体だけでなく、メモリ・ストレージも同等以上の温度対応が必要
– ファンレス構成では、データシート記載のエアフロー条件も重要
• 振動・衝撃耐性
– EN 60068-2-64(振動)、EN 60068-2-27(衝撃)などの振動・衝撃に
関する国際規格に準拠
– 筐体の固定方法やマウント方式も選定時に考慮