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%表記・レンジ依存・オフセットの違いを理解し、 測定ミスと過剰投資を防ぐ
セル/バッテリー評価では、テスターの「測定確度」が結果の信頼性を左右します。本資料では、固定誤差、レンジ%、読み値%+オフセットなど、確度仕様の4つの表記方法を具体例と計算式でわかりやすく解説。
さらに、仕様上の確度と実測時の誤差の違い、分解能と確度を混同するリスク、%表記のみの仕様が招く誤解について詳しく説明します。研究開発から製造ラインまで、用途に適したバッテリーテスターを正しく選定するための必読ホワイトペーパーです。
このカタログについて
| ドキュメント名 | その“確度仕様”、正しく読めていますか? バッテリーテスター測定確度の落とし穴と正しい選び方 |
|---|---|
| ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
| ファイルサイズ | 1.1Mb |
| 登録カテゴリ | |
| 取り扱い企業 | キーサイト・テクノロジー株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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WHITE PAPER
バッテリーテスターの
測定確度仕様の理解
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はじめに
研究開発や製造ライン向けにセル/バッテリーテスト機器を選定して購入する際には、性能仕様を詳細に理解する
ことが重要です。価格、必要なチャネル数、1チャネル当たりの電流を述べるのは容易かもしれませんが、最も
重要な仕様は機器の確度です。しかし、ニーズを正しく仕様化することが困難な場合があります。
この技術記事では、テスト機器の領域にて確度および誤差を定義する方法、確度を仕様化する4つの方法、実際の
誤差と仕様誤差の解釈について記述します。
確度および誤差の概要
計測器メーカーのキーサイトは、測定パラメーターの誤差の大きさを、確度として示しています。例えば、電流
測定確度の場合5 Aの電流測定に対して100 μAの誤差(または不確かさ)など、電流を測定する際に発生する誤差
の量が仕様化されています。
電流プログラミング誤差やソース誤差とは、目的の電流値を設定した時の誤差です。したがって、定電流充電
レートを10 Aに設定した場合、システムのプログラミング誤差は25mAになる可能性があります。この場合、出力
値は10 Aではなく10 A±25 mAの範囲内になります。
この例では電流のソース/測定を扱いましたが、この概念は測定可能なあらゆるパラメータに当てはまり、電圧(V)、
電流(A)、抵抗(Ω)、温度(℃)、圧力(各種単位)にも適用可能です。同様に、システムによるソースが可能なパラ
メータにはソース誤差やプログラミング誤差があり、これは通常、電圧/電流に限定されます。
以上のトピックは、セル/バッテリーテスターやセルの化成システムのチャネルに適用されるように思われますが、
これらの確度仕様の概念は、あらゆる測定機器(電圧計、内部抵抗測定器など)とあらゆる信号源機器(電源、
ソース/メジャー・ユニット、アナログ出力信号発生器など)でも有効です。
多くの場合、測定確度の議論では測定分解能も取り上げられます。測定分解能については本書の最後に説明します。
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確度を仕様化する4つの方法
確度を仕様化するには4つの方法があります。確度仕様が定めている実際の数値は、発生する誤差の量です。この
誤差の量と必要なパラメータの真の値に基づいて、確度を決定することができます。本技術記事では、以降の解説
で測定確度について述べますが、この概念はプログラミング確度やソース確度にも同様に適用することができます。
1. 固定誤差
固定誤差の場合、誤差は10 mAなどの固定値です。そのため、測定するパラメータの大小にかかわらず、同じ量
の誤差が生じることになります。例えば、誤差が2 mAであれば、測定値が100 mAでも100 Aでも2 mAの誤差が
生じます。
2. レンジの固定パーセント値
この場合、誤差は測定機器レンジに応じて大きさが決まり、フルスケールのパーセント値(FSの%)、すなわち
レンジの%で表されます。例えば、誤差がFSの0.2 %でフルスケールレンジが10 Aの場合は、10 Aの0.2 %である
0.02 A(20 mA)の誤差が生じます。多くの測定機器には複数のレンジがあります。この利点の1つは、測定する
パラメータの大きさにレンジを合わせれば、測定での誤差を最小限に抑えられることです。
例えば、500 mAの信号を正確に測定したいとします。測定機器に、1 A、10 A、100 Aという3つのレンジがあり、
誤差がFSの0.2 %の場合、各誤差は、1 Aレンジでは2 mA、10 Aレンジでは20 mA、100 Aレンジでは200 mAに
なります。500 mAの信号は、これら3つのレンジのいずれでも測定可能ですが、誤差が最小になるのは、最小
レンジを使用したときです。
3. 利得+固定オフセット
利得+固定オフセットの場合は、誤差成分が2つあります。利得項は測定しているパラメータの大きさに応じて変
わる誤差成分です。固定項は常に存在します。この誤差は、「読み値の%+値」という形式で表記されます。利得
+固定オフセットとして仕様化された確度は、測定機器のレンジが1つでも複数でも適用することができます。
これは、仕様に「レンジ」が含まれないためです。
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先と同様に、500 mAの信号を正確に測定しようとする場合を考えます。測定機器の確度仕様は、0.1 %+750 μA
です。利得項は0.1 %なので、誤差の利得項成分は500 mAの0.1 %(500 μA)になります。固定項成分は750 μA
です。そのため、500 mAを測定するときの全誤差は(500 μA+750 μA)=1.25 mAになります。
測定する信号が1 Aに上がれば、誤差も増加します。1 Aでは、誤差の利得項成分は1 Aの0.1 %(1 mA)になります。
しかし、固定項成分は750 μAのままです。したがって、1 Aを測定するときの全誤差は(1 mA+750 μA)=1.75 mA
になります。
計算は複雑になりますが、利得+固定オフセット手法は、確度を仕様化する最適な方法です。これは計測器メーカー
が測定機器の特性評価を徹底的に行ったことを意味しています。さらに、利得+固定オフセット手法では、誤差が
測定値の大きさに応じて変わるため、各測定値の誤差が最小になります。
4. 利得+オフセット(レンジの%)
基本的に、利得+オフセット(レンジの%)の例はケース3と同じですが、固定項は測定レンジに基づいて計算し
ます。1つの測定レンジしか存在しない場合、第3と第4のケースは同じです。
第4のケースについても、5 Aレンジを備えたシステムで500 mAの信号を正確に測定する場合を考えます。
測定機器の確度仕様は、(読み値の0.1 %+レンジの0.1 %)です。利得項は0.1 %なので、誤差の利得項成分は
500 mAの0.1 %(500 μA)になります。固定項成分は、5 Aの0.1 %(0.005 A)になります。そのため、全誤差は
(500 μA+5 mA)=5.5 mAになります。
実際の誤差と仕様誤差
前述のケースでは確度仕様を解釈して適用する方法について説明しましたが、実際に知りたいのは測定で生じる
誤差です。誤差項を計算した後は、それを測定値と比較する必要があります。以降で、ケース2、3、4を再検討し
ます。
ケース2で、500 mAの信号を正確に測定しようとする場合を考えます。測定機器には、1 A、10 A、100 Aの3つ
のレンジがあります。誤差がFSの0.2 %では、1 Aレンジでの誤差は2 mAになるので、最も正確な測定を確保する
ためには1 Aレンジを選択します。
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この誤差項と実行した測定の値を比較すると、500 mAの測定値に対して2 mAの誤差が生じます。確度仕様はFS
の0.2 %でしたが、測定においては、これは2 mA/500 mA=0.4 %の誤差になります。明らかに、仕様がFSの0.2 %
だからといって、測定の確度が0.2 %だと断言することはできません。
ケース3および4でも、500 mAの信号を正確に測定しようとする場合を考えます。測定機器の確度仕様は、読み値
の(0.1 %+750 μA)です。利得項の誤差成分は読み値の0.1 %なので、誤差成分は500 mAの0.1 %(500 μA)に
なります。固定項の誤差成分は750 μAです。そのため、全誤差は(500 μA+750 μA)=1.25 mAになります。
この誤差項と実行している測定を比較すると、500 mAの測定値に対して1.25 mAの誤差が生じています。確度
仕様は(0.1 %+750 μA)でしたが、測定においては、これは1.25 mA/500 mA=0.25 %の誤差になります。
重要な注意事項としては、誤差項は±で測定値に適用することです。そのため、500 mAの測定値に対する誤差項
が2 mAのときに結果の範囲を知りたい場合は、以下のように測定値に対して誤差項の加算と減算の両方を行う
必要があります。
• 誤差項=±2 mA
• 測定したい値=500 mA
• 測定結果の最小値=500 mA-2 mA=498 mA
• 測定結果の最大値=500 mA+2 mA=502 mA
すなわち、500 mAの読み値に対する誤差が2 mAの場合、測定機器が返す測定値は498 mA~ 502 mAの範囲にな
ります。
表1で、4つのケースの計算方法と適用方法を比較しています。
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表1. 確度仕様の種類と測定値(フルスケールレンジの10 %/50 %/90 %)
フル・スケール・レンジ フル・スケール・レンジ フル・スケール・レンジ
の10 %での電流測定 の50 %での電流測定 の90 %での電流測定
測定機器のレンジ 1 Aレンジ 1 Aレンジ 1 Aレンジ
測定電流 100 mA 500 mA 900 mA
ケース1:確度仕様:固定誤差 ±2 mA ±2 mA ±2 mA
測定値に対する誤差の割合(%) 2 %の誤差(100 mA) 0.4 %の誤差(500 mA) 0.22 %の誤差(900 mA)
測定結果の最小値 98 mA=100 mA-2 mA 498 mA=500 mA-2 mA 898 mA=900 mA-2 mA
測定結果の最大値 102 mA=100 mA+2 mA 502 mA=500 mA+2 mA 902 mA=900 mA+2 mA
ケース2:確度仕様: フル・スケール・レンジ フル・スケール・レンジ フル・スケール・レンジ
レンジの固定パーセント値 の0.2 % の0.2 % の0.2 %
誤差項 ±2 mA ±2 mA ±2 mA
測定値に対する誤差の割合(%) 2 %の誤差(100 mA) 0.4 %の誤差(500 mA) 0.22 %の誤差(900 mA)
測定結果の最小値 98 mA=100 mA-2 mA 498 mA=500 mA-2 mA 898 mA=900 mA-2 mA
測定結果の最大値 102 mA=100 mA+2 mA 502 mA=500 mA+2 mA 902 mA=900 mA+2 mA
ケース3&4:確度仕様: 読み値の0.1 %+750 μA 読み値の0.1 %+750 μA 読み値の0.1 %+750 μA
読み値の%+固定オフセット
利得誤差項(読み値の0.1 %) 100 μA=100 mAの 500 μA=500 mAの 900 μA=900 mAの
0.1 % 0.1 % 0.1 %
固定誤差項 750 μA 750 μA 750 μA
利得+オフセットの全誤差項 ±850 μA ±1,250 μA ±1,650 μA
測定値に対する誤差の割合(%) 0.85 %の誤差(100 mA) 0.25 %の誤差(500 mA) 0.18 %の誤差(900 mA)
測定結果の最小値 99.15 mA=100 mA 498.75 mA=500 mA 898.35 mA=900 mA
-0.85 mA -1.25 mA -1.65 mA
測定結果の最大値 100.85 mA=100 mA+ 501.75 mA=500 mA+ 901.65 mA=900 mA+
0.85 mA 1.25 mA 1.65 mA
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測定値に対する誤差の割合は、測定値が上昇して測定レンジの上限に近付くほど大幅に小さくなることに注意して
ください。ケース1や2のような固定誤差の場合は、誤差が固定されているため、測定値に対して誤差の割合がお
よぼす影響が大きくなります。対照的にケース3や4では、誤差の大きさが読み値に応じて変わるため、小さな
測定値では測定値に対する誤差の割合が小さくなり測定が改善されます。
%のみで記載されている確度仕様に関する
注意
確度を仕様化する方法はもう1つありますが、これを使用する場合は注意が必要です。例えば、0.2 %の確度とい
うように%のみで定義されている確度仕様は誤解を招きます。この手法はわかりやすく計算も容易ですが、現実的
ではありません。
どうしてでしょうか? 0.2 %の確度仕様を備えた測定機器で500 mAを測定しようとする場合、500 mAの0.2 %に
相当する誤差項は1 mAの誤差になります。代わりに1 Aを測定しようとする場合、誤差は単純に増加して2 mAに
なります。
しかし、その逆ではどうなるでしょうか。500 mAを測定するのではなく、50 mAを測定したい場合にはどうなる
でしょうか?誤差は100 μAになるのでしょうか? 5 mAの測定はどうなるでしょうか?誤差は10 μAになるので
しょうか?電流が0 mAのオープン回路を測定しようとする場合、システムは0 μAの誤差で0 mAを通知して、
完璧な測定を示すということでしょうか?
あらゆる測定器において、誤差が信号の大きさに関係なく一定の0.2 %になるという仮定は非現実的です。確度が
読み値のパーセント値で仕様化されている場合、その測定機器の下限での制限を説明するものが欠落しています。
そのため、特に最小レンジでの測定は、この測定器の性能を信頼することはできません。
最後に:分解能について
多くの場合、分解能は確度よりも重要だと考えられていますが、そうではありません。分解能は、16ビットより
18ビットの方が優れているというように、測定機器の品質や性能をある程度示す性能指数ですが、確度は、どの
程度優れた測定を実行できるのかを決定する現実的で支配的な仕様です。
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例えば、測定機器の分解能が10 μAで確度が50 μAの場合、誤差は±50 μAになるため、10 μAは実質的に意味
を持ちません。10 μAの分解能により、測定機器の確度が影響を受けたり向上することはなく、また、測定に
高い水準の信頼性がもたらされることもありません。測定が±50 μAの確度を上回ることはないからです。
高い分解能は、連続した測定値の相対的な関係を確認するためには有効です。例えば、温度ドリフトを観測して
±2 ℃の確度で25 ℃を測定すると、0.1 ℃の時間変化が見られることがあります。しかし、絶対値に基づくと、個々
の読み値の測定確度は±2 ℃なので、例えば、完全な確からしさで温度が25.7 ℃や25.8 ℃だと断言することはで
きません。下の図1に、高分解能の温度測定システムを使用した温度ドリフト対時間測定を示します。測定値は
30秒間隔で取得されています。この場合、温度測定の絶対確度は±2 ℃で、分解能は0.01 ℃よりも優れています。
これにより、相対的な最小の温度変化を確認することができます。しかし、どの測定ポイントでも絶対確度は
±2 ℃のままです。
図1. 温度測定対時間のグラフの例
要約
セル/バッテリー・テスト・システムの性能仕様を理解することは非常に重要です。確度仕様を解釈して適用する
方法をしっかりと理解すれば、見積もりを請求するときにニーズを過大または過小に仕様化することなく、より
確実に適切な性能を要求することができます。カスタムシステムのデータシートや作業範囲記述書に目を通せば、
何を購入しようとしているのか、それがどの程度ニーズに合っているのかを理解することができます。
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詳細情報
キーサイトは幅広いテスト機器を提供しており、お客様は研究開発ラボや製造ラインのバッテリーテスト要件に
最適な機種を選択することができます。
詳細はキーサイトの各ページをご覧ください:34465A/34470A Truevoltデジタルマルチメータ(高水準の確度
仕様を備えた9種類の測定機能を搭載)、DAQ970A/DAQ973A/34980A データ収集システム(温度測定用)、
N6705C DC電源アナライザ、BV9210B/11B PathWave BenchVueアドバンスト・バッテリー・テスト&エミュ
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専用のバッテリー・テスト・システムに関しては、Keysight Scienlabバッテリー・テスト・システム、BT2152B
リチウムイオン電池自己放電測定ソリューション、BT2200 リチウムイオン電池充放電プラットフォームをご覧く
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本書の情報は、予告なしに変更されることがあります。© Keysight Technologies, 2022,
Published in Japan, November 17, 2022, 7122-1127.JA